乳がんの治療の副作用には漢方薬?
目次
新しい抗がん剤の開発、副作用の予防法や対処法の進歩などによって、抗がん剤による副作用はかなり抑えられるようになってきています。しかしそれでも副作用が全く出ないということはありませんし、副作用の出方には個人差もあります。
がん治療を行っていくにあたってつらい症状を減らし、生活の質(
1. 口内炎や下痢に対する半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
抗がん剤による口内炎は、抗がん剤が口腔粘膜の細胞に作用し細胞死を引き起こした結果、粘膜表面の層が破壊されて
半夏瀉心湯は元々、口内炎の
粘膜組織が障害される原因の一つに
半夏瀉心湯は吐き気・食欲不振・軟便傾向の状態に適するとされる漢方薬ですので、口内炎以外にも吐き気や下痢などの消化器症状があらわれる抗がん剤に対して有効な治療の一つとなっています。
乳がんなど多くのがん治療に使われるイリノテカンの主な副作用に下痢があります。イリノテカンの下痢は、薬剤の投与中から直後に現れる早発性の下痢と、投与から数日経って現れる遅発性の下痢に分かれますが、半夏瀉心湯は速効性と持続性の両面の作用により、どちらの下痢にも有用であるとされています。
2. 食欲不振への六君子湯(リックンシトウ)
食欲不振は抗がん剤の副作用によって起こる場合も、がんそのものによって引き起こされる場合もあります。食欲不振があると生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、食欲不振による栄養状態の悪化などの好ましくない影響を与える可能性もあります。
六君子湯の特徴は
3. 末梢神経障害(筋肉痛)への芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
抗がん剤によるしびれなどの症状は末梢神経(まっしょうしんけい:体の各部分に分布している神経)への影響によるものと考えられていますが、はっきりと解明されてない部分もあります。
抗がん剤による末梢神経障害では筋肉痛のような症状が現れる場合もありますが、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)によって症状軽減ができることもあります。構成生薬である芍薬(シャクヤク)の主要成分(ペオニフロリン)によるカルシウムイオンの細胞内流入抑制作用や甘草(カンゾウ)の主要成分であるグリチルリチンによるカリウムイオンの細胞外流出促進作用などによって筋肉の痙攣(けいれん)やそれに伴う
4. 骨髄抑制への十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)
抗がん剤の副作用の中でも
十全大補湯は体力増進作用などの効果が期待できる人参(ニンジン)と黄耆(オウギ)を含む参耆剤(じんぎざい)や足りないものを補う補剤(ほざい)に含まれる漢方薬で、一般的に手術後や病後の体力低下、食欲不振、全身
近年、十全大補湯には抗がん作用や造血機能の改善作用などがあることが確認されてきています。作用の仕組みとして、マクロファージの活性化やそれに伴うT細胞の活性化による免疫賦活(ふかつ)作用によって、がん
5. 乳がんのホルモン療法による副作用と漢方薬
乳がん治療の中でもホルモン療法(内分泌療法)は重要な治療のひとつとなっていますが、ホルモン療法で現れる副作用として、一過性の顔面紅潮、発汗、熱感、のぼせ、
これらの症状は主に女性ホルモンである
加味逍遙散(カミショウヨウサン)や桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は更年期障害などの婦人科疾患でよく使われる漢方薬ですが、ホルモン療法によるホットフラッシュにも有用であるとされています。他にも不安などの精神神経系症状を伴うような症状への女神散(ニョシンサン)や便秘を伴うような症状への桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、関節痛に対する桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)など、個々の症状に合わせて漢方薬を選択し時に複数の漢方薬を組み合わせることなどによって、QOL(生活の質)の改善が期待できるとされています。
6. 漢方薬の副作用は?
もちろん比較的安全性が高い漢方薬も「薬」の一つですので、漢方薬による副作用が起こる可能性はあります。
例えば、生薬の甘草(カンゾウ)の過剰摂取などによる偽
7. その他の漢方薬の用法
半夏瀉心湯の例をみてもわかるように漢方薬は複数の症状に効果が期待できるため、複数の副作用が起こる可能性があるがん治療に対しては非常に有用な薬と言えます。
ここで紹介した薬の他にも、全身倦怠感に対して補剤である補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、術後や