にゅうがん
乳がん
乳腺に発生する悪性腫瘍。女性に多いが、男性に発症することもある
14人の医師がチェック 163回の改訂 最終更新: 2021.03.31

乳がんの放射線治療:効果・治療期間・費用・仕事への影響

乳がんの放射線治療は、手術の後に再発の予防を目的に行う場合や、転移した場所の痛みを和らげる目的で行われる場合があり、乳がん治療のいたるところに登場します。乳がんの放射線治療の効果や副作用について解説します。 

乳がんの治療で放射線治療は多くの場面に登場します。

  • 乳房の一部だけを取り除く手術(乳房部分切除術)後の再発予防
  • 乳房を全て取り除く手術(乳房切除術)後で再発の危険性が高い人に対する再発予防
  • 骨転移などによる痛みや神経への影響を回避する

放射線治療はがん治療に欠かすことができません。放射線がどのようにしてがん細胞に対して影響を与えるかを解説します。やや専門的な内容を含んでいます。

放射線とは電離作用(原子の電子軌道から電子をはじき飛ばす作用)を持つ電磁波と粒子の総称です。人工物がなくてもあらゆる場所で微量の放射線が飛び交っています。自然に存在する物質が放射線を出す能力(放射能)を持っていることや、太陽など宇宙からも放射線が降り注いでいることによります。人類が放射線を発見するよりも前から、自然界に放射線はつねに存在し、すべての人の体内から放射線が発生していました。
医療用途で最も一般的に使われている放射線は、リニアックを用いて電子を加速して発生させるX線と電子線です。他にはγ(ガンマ)線やβ(ベータ)線が治療に用いられることがあります。現時点で標準的にはなっていませんが、陽子線や重粒子線を治療に用いる試みもあります。
放射線治療の分量にはGy(グレイ)という単位が用いられます。Gyは吸収線量の単位です。吸収線量とは、放射線を照射された物質が単位質量あたりで吸収するエネルギー量を指します。2011年の原発事故以来、Sv(シーベルト)という単位がよく報道にも現れるようになりました。Svは線量当量・等価線量・実効線量などの単位です。1GyのX線は1Svに相当します。
放射線治療では30Gyから50Gyといった大量の放射線を体に浴びせます。一度に全身に浴びせると命に関わる量です。がんがある場所だけを狙って、少しずつ分割して浴びせることで、正常組織への影響を最小限に抑えつつ、がんを攻撃する効果を得ることができます。
環境から来る放射線はおおむね1時間あたり0.1μSv程度です。「μ(マイクロ)」は1,000,000分の1という意味です。1Sv=1Gyと考えると、放射線治療では環境から来る放射線の数万年分を治療期間の数週間ほどで当てる計算になります。それほどの量を使っても深刻な副作用が現れる人は限られています。

放射線ががん細胞を攻撃する効果は細胞のDNAを損傷させることで発揮されます。DNAの損傷は正常細胞とがん細胞の両方で発生します。このために正常組織を避けつつ標的となるがんに対して十分に放射線を当てる必要があります。
実は放射線治療をしなくても細胞のDNAはつねに少しずつ損傷を受けています。自然環境から放射線を浴びていることのほか、さまざまな原因によりDNAが損傷します。しかし、細胞は自然に傷付いたDNAを修復する機能を持っています。このため日常生活の中でDNAの損傷が病気に結び付くことはほとんどありません。
放射線治療によりDNAが損傷しても、自然に修復する機能が働きます。しかし修復不能な場合には細胞死に至ります。
放射線によるダメージの強さは、放射線を浴びた細胞の種類によって差があります。経験上、放射線による損傷を受けやすい細胞には次の特徴があることが知られています。

  • 細胞分裂の頻度が高いもの
  • 将来行う細胞分裂の数の多いもの 
  • 形態および機能において未分化なもの

この3点の法則をベルゴニエ・トリボンドーの法則(Bergonié-Tribondeauの法則)と言います。
がん細胞は以上の3つによく当てはまります。実際に、放射線をがん細胞に照射することで、がん細胞を死滅させる効果が現れます。

放射線治療は乳がん治療の多くの場面に登場します。

  • 乳房の一部だけを取り除く手術(乳房部分切除術)後の再発予防
  • 乳房を全て取り除く手術(乳房切除術)後で再発の危険性が高い人に対する再発予防
  • すでに遠隔転移が見つかっている人の乳房に対する治療
  • 骨転移、脳転移などによる症状を和らげる目的の治療

乳房部分切除術は、乳房の整容性(見た目)を維持するため、乳がんの周りの部分だけを取り除いてなるべく乳房を残す手術です。
乳房全体を切除する乳房切除術に比べると、乳房が残っている分、乳房の中に微量のがん細胞が残っていて再発(局所再発)の原因になることが懸念されます。局所再発とは手術によってがんを取り除いた部分にがんの再発が現れることです。局所再発を防ぐ狙いで、乳房部分切除術のあとに放射線治療を行います。
乳房部分切除術後の放射線治療では、乳房全体に放射線を照射します。またリンパ節転移の状況をみて鎖骨の上のリンパ節を標的として放射線を照射することがあります。
乳房部分切除術後の人に対して、放射線治療によって局所再発を抑える効果は実際に確かめられています。放射線治療の効果について検討した研究を紹介します。リンパ節転移があると局所再発が多くなるため、リンパ節転移の有無で分けて効果が判定されました。

リンパ節転移陰性(なし)

治療 放射線治療あり 放射線治療なし
5年後までの再発 7% 23%
10年後までの再発 10% 29%

リンパ節転移陽性(あり)

治療 放射線治療あり 放射線治療なし
5年後までの再発 11% 41%
10年後までの再発 13% 47%

参考:Lancet 2005;366:2087-2106

リンパ節転移の有無に関わらず乳房部分切除術後に放射線治療を行うことで局所再発の予防に有利に働きました。
乳房部分切除術後の再発予防で行われる放射線治療は、放射線の照射量として45-50Gyです。1回(1日)に照射する量は2Gy程度に分けます。分割して少しずつ照射することで、正常組織への影響を最小限にとどめる狙いがあります。通院して繰り返し照射します。治療期間は5週間程度かかります。
手術後に抗がん剤治療ホルモン療法も行わない人に対しては、手術の傷が治り次第(20週以内)放射線治療を開始することが望ましいとされています。傷が落ち着くのを待つのは、放射線治療が傷に対して悪影響を及ぼさないよう配慮するためです。

乳房部分切除後には放射線治療が強く勧められます。対して乳房切除術では乳房全体を取り除くので、残した乳房の中で再発することは考える必要がありません。乳房切除術後の局所再発は、胸壁(手術をして乳房を取り除いた部分)などに発生します。
乳房切除術後に、再発予防目的で放射線治療を行った方がよい人の条件がいくつか分かっています。

  • がんの大きさが5cm以上だった
  • 腋窩(脇の下)のリンパ節に転移があった

がんが大きかった人には局所再発が多いことが分かっています。また腋窩リンパ節に転移があった場合には、手術の際にリンパ節を取り除いていても再発する危険性が高く、リンパ節転移が4個以上の場合には放射線治療が強く勧められます。
放射線治療では胸壁と鎖骨の上の部分に放射線を照射します。手術でがんが全て取りきれていないことが懸念される場合は、その部分に対して追加で放射線を照射(ブースト照射)することで胸壁での再発が減少します。
乳房切除術後の放射線治療では、放射線の照射量を45-50Gyとします。1回に照射する量は2Gy程度に分けます。分割することで正常組織への影響を抑える狙いがあります。分割しただけ通院で繰り返し放射線照射を行うことになるので、放射線治療を終えるまでに5週間程度かかります。

乳がんと診断された時点で、乳房から離れた場所に転移(遠隔転移)が見つかる場合があります。腋窩リンパ節転移は遠隔転移ではありません。遠隔転移があるとステージlVです。
ステージlVに対する治療は薬物療法(抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬)が中心になります。加えて、症状を和らげる目的の治療も検討されます。
乳房自体を原因とする症状のために、生活に障害が出ることがあります。それは疼痛(とうつう;痛み)や、がんによって周りが破壊されて発せられる悪臭などです。これらの症状を抑えるために放射線を照射することがあります。放射線治療以外にも手術療法や薬物療法で症状を抑えられる場合があります。

乳がんは皮膚を超えて体の表面に露出することがあります。乳がんが体表に露出するとがん性潰瘍を形成します。潰瘍(かいよう)というのは皮膚の表面がえぐれた状態です。潰瘍が壊死する過程において、細菌(嫌気性菌)が産生するにおい物質(プトレシン、カダベリンなど)や、組織が破壊されている部分からの滲出液(しんしゅつえき)などによって悪臭が発生します。
また露出した乳がんが増大するに伴って出血、びらん(ただれ)、痛みなどを引き起こし、悪臭と合わせてこれらの症状が患者本人だけでなく家族などの生活の質(QOL)をも低下させる要因となります。
このようながん性の皮膚潰瘍へのケアとしては、生理食塩水により圧をなるべくかけないように洗浄するなどのほか、外用塗布薬(塗り薬)によるケアも選択肢の一つになっています。

◎モーズ軟膏(モーズペースト)
モーズ軟膏(なんこう)は、米国の外科医のフレデリック・モーズ(Frederic E. Mohs)などが考案した塩化亜鉛を主成分とする軟膏製剤です。モーズペーストとも言います。塩化亜鉛は水分によりイオン(亜鉛イオン)となり、腫瘍細胞や腫瘍血管などをタンパク変性させて組織を固定・硬化させる作用や、細菌の細胞膜を硬化・変性させることによる抗菌作用などをあらわします。モーズ軟膏は亜鉛の化学的固定作用などを利用することで腫瘍からの出血、滲出液、悪臭、疼痛などを抑え、QOLなどの改善が期待できます。モーズ軟膏の使用によって結果として皮膚潰瘍由来の疼痛に関しては軽減効果が期待できますが、正常の細胞にモーズ軟膏が付着すると、その部分にもタンパク変性が起こり炎症や比較的強い痛みを生じることが考えられます。そのため周囲の皮膚に対してワセリンなどを塗ったり、痛みに合わせて鎮痛薬(NSAIDsなど)を適切に使用するなどの対処がとられます。


◎メトロニダゾール外用塗布薬
メトロニダゾールはDNAの切断作用などによって嫌気性菌や原虫を攻撃する作用を現す薬剤です。がん性潰瘍が壊死する過程で発生する悪臭の原因の一つは、嫌気性菌が産生するプトレシンやカダベリンなどの悪臭物質であるため、メトロニダゾールの外用薬を塗ることで抗菌作用による症状改善が期待できます。
以前はメトロニダゾールの内服製剤(フラジール®錠)などを用いて病院の中で調製し、メトロニダゾールの外用塗布薬を作成していましたが、2015年2月にメトロニダゾールのゲル剤(商品名:ロゼックス®ゲル0.75%)が薬価収載され、処方薬としても使用可能となりました。

◎がん性皮膚潰瘍に対するその他の治療
出血を伴う場合にはアルギン酸ナトリウムを含む薬剤を使う場合も考えられます。アルギン酸ナトリウムはコンブなどの海藻に含まれる成分です。滲出液を吸収したり止血する効果が期待できます。一般的に軟膏剤に混合して使用したり、アルギン酸塩を含むドレッシング剤として使われます。
悪臭の原因となる嫌気性菌に対して抗菌活性を示すクリンダマイシン外用薬やヨウ素含有製剤などが使われる場合も考えられます。
がん性の皮膚潰瘍がある場合には、これらの薬剤を適切に使うだけでなく精神的なサポートや日常生活の支援を得ることなども非常に重要です。

乳がんが骨に転移したときに、放射線治療によって症状を改善する効果が期待できます。
骨は体を支える重要な臓器です。乳がんの特徴として骨への転移が多いことが挙げられます。骨転移の問題点を挙げます。

  • 疼痛(とうつう;痛み)
  • 神経への影響
  • 骨折の危険性

骨転移は痛みを伴います。転移している場所に対して放射線を照射することで、痛みの緩和(かんわ)などが期待できます。
骨転移は脊椎(せきつい)に多く発生します。脊椎とはいわゆる背骨のことです。脊椎の中には体の各部に向かう神経の通り道があります。脊椎転移が進行すると神経へ影響が及ぶことがあります。神経に影響が及ぶとしびれなどの症状が出現します。さらに進行すると運動麻痺などが症状として現れることがあります。運動麻痺などが現れると生活の妨げになります。神経への影響に対しても、脊椎転移に放射線を照射することで、症状の進行などを緩和することが期待できます。
骨転移の診断には骨シンチグラフィを使う場合もあります。最近ではPET-CTも使用されることが多くなりました。骨シンチグラフィは変形性膝関節症などの病気でも陽性になることがあり、PET-CTの方が検出に優れているとの意見もあります。PET-CTで不確定な骨転移に対しては造影CTなどを行い骨破壊像の評価などを行います。
骨は体重を支えることに大きな役割を果たしています。骨転移が主要な骨に発生すると骨を溶かして骨折の危険性が高まります。骨転移に対して放射線を照射することで骨折の危険性を軽減させます。
骨転移に対しては、放射線照射以外にも骨を頑丈にする薬(ゾレドロン酸、デノスマブなど)を投与して骨の強度をできるだけ保つ治療法があります。
Surg Oncol.2013;22:86-91
 

ストロンチウム89は放射線を出す物質です。ストロンチウム89を注射して体の中から放射線を当てる治療法があります。
ストロンチウム89は、骨が固まるタイプの骨転移(骨硬化性骨転移)に対して効果があると考えられています。骨転移には、放射線を外から当てる外照射も有効です。しかし、骨転移が多発している場合には、外照射では対応できないこともあります。このため全身の骨に転移がある場合は、全身の骨に行き渡るストロンチウム89のほうが有効と考えられる場合もあります。
ストロンチウム89は、注射薬です。治療後、2−3日で痛みが増すことがありますが1−2週間で痛みが和らいできます。体に入ったストロンチウム89は尿から排泄されます。投与後しばらくは排尿時に尿がトイレ内に残らないような工夫をする必要があります。詳しくは下記サイトをご参照ください。

日本メジフィジックス 一般の方向け情報
日本医放会誌 2005;65:399-410

乳がんは脳にも転移します。乳がんの脳転移は初期治療から1年後に起こることもあれば、数年経ってから出てくる場合もあります。乳がんの脳転移に対しては抗がん剤の効果が期待できないために放射線治療が中心になります。
脳転移が発生したときには、転移がある場所によって症状が大きく変わってきます。

  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 体の動かしにくさ(麻痺)
  • 痙攣(けいれん)

がんは脳の中でどんどん大きくなるので、それに従って脳の組織が影響されて上記のような症状が出現します。脳転移に対しては症状の緩和を目的とした治療を行います。
脳転移の放射線治療は大きく分けて2種類あります。

  • 全脳照射:脳全体に放射線を照射する
  • 定位放射線照射:狭い範囲を正確に狙って放射線を照射する

転移している部分が少ないときなどは定位放射線照射が適しています。全脳照射では正常な部分にも放射線が照射されるので、正常な部分への影響が懸念されます。隠れた転移をカバーする目的では全脳照射に利点があるとも考えられています。

放射線治療にかかる期間は、全脳照射で2-4週間程度と見込まれます。一般的には1回あたり2-3Gy(グレイ)に分けて、合計30Gy程度の放射線を照射します。10回以上に分割するのは、正常組織へのダメージを最小限に抑える狙いがあります。
転移している場所や状況などによって照射する放射線の量や回数などを微調整します。放射線治療により神経症状の緩和などが期待できます。

放射線治療は、がん細胞の死滅を目的とした治療ですが、がんだけではなくがん以外の部分にも影響を与えます。その意味で放射線治療にも副作用があります。副作用と聞くとかなり厳しい症状を想像するかもしれませんが、放射線治療の副作用は症状としては比較的軽いものが多いです。放射線治療が外来通院でも可能なのは、入院治療が必要になるほどの急変が少ないからという見方もできます。
副作用について理解するだけで不安感が少しは和らぐと思います。副作用は症状が出て来る時期によって早期障害と晩期障害に分かれます。それぞれに分けて解説します。

早期障害とは放射線治療中から放射線治療終了までの間に生じる副作用のことです。出やすい症状の例を挙げます。

  • 放射線を当てた部分の皮膚が赤くなる 
  • 放射線を当てた部分に痛みが生じる
  • 鎖骨上のリンパ節に照射をした場合には食道に影響して喉の違和感や飲み込みにくさなどが生じる

放射線治療の早期の障害はひどい日焼けのような状況を想像してみるとわかりやすいと思います。注意が必要なのは食道への影響です。食道に影響することで食べ物が飲み込みにくくなったりします。鎖骨上への照射を行っている期間に飲み込みにくさなどを感じたら、主治医や放射線治療の担当医に相談してください。早期障害は治療が終了すると大部分が改善します。症状自体も日常生活に影響する程ではないことが多いので安心してください。
もし症状や体調の変化を感じたら、主治医や放射線治療の担当医に相談してください。自分で解決しようとすることは症状を悪化させることも考えられます。また、放射線治療の効果が期待通り現れていない場合も考えられます。

晩期障害とは、放射線の照射が終了してから数か月経って初めて現れる症状です。出やすい症状の例を挙げます。

  • 皮膚が縮み、固くなる
  • かゆみがでる
  • 乳房が固くなる 
  • 乳房がむくむ
  • 咳や微熱(放射線肺臓炎)

晩期障害では、皮膚が固くなることが大きな変化の一つです。放射線が当たった皮膚は皮脂から出る分泌物が減少します。分泌物が減少すると皮膚が乾燥しかゆみの原因になります。症状を改善する方法としては、保湿剤を塗ることなどが有効です。
晩期合併症の中でも特に注意が必要なのが、放射線肺臓炎です。放射線肺臓炎は軽症のことが多いのですが、まれに重症化する人がいます。ひどい場合は命に関わります。
放射線治療の終了後に咳や発熱を感じたときにまず行うべきことは放射線肺臓炎の疑いがあるのか、また疑わしいときにはどの程度の重症度なのかを把握することです。我慢せず主治医に相談してみることが重要です。

乳がんの放射線治療は色々な場面に登場します。使う場面によって放射線治療にかかる期間もかわってきます。
乳がんの放射線治療を行う主な状況をまとめます。

  • 手術後に行う再発予防
    • 乳房をがんの部分のみを取り除く手術(乳房切除)後の再発予防
    • 乳房を全て取り除く手術(乳房切除)後で再発の危険性が高い人に対する再発予防
  • 転移した部位に対する症状緩和目的
    • 骨転移 
    • 脳転移

それぞれの治療期間の目安を表に記します。
 

放射線治療の目的 治療にかかる期間
手術後の再発予防 約5週間
骨転移(1か所の場合) 約1-3週間
脳転移 約2-4週間

上の表はおおよその見積もりです。実際は人によって幅があります。また複数の場所に照射する場合は放射線治療に要する期間も長くなります。

放射線治療は、基本的には外来で行われる治療です。1回の通院ごとに、治療にかかる時間は準備を含めても20-30分程度です。時間的な制約は比較的少ないので仕事を継続することは可能です。時折、診察が仕事の予定と重なってしまうことはあると思います。通院の予定をずらせるかどうかは主治医や放射線治療の担当医と相談してください。
がんの症状や放射線治療の副作用について、職場の理解は必要になります。体調不良の場合どのように仕事をするかなどをあらかじめ明確にしておくことも重要でしょう。仕事の内容によって、また重症度によっても大きく異なりますが、体力が維持されている状態なら、放射線治療をしながら仕事を続けることは十分可能と思われます。

乳房部分切除術や乳房切除術後に行う局所再発予防の放射線治療を想定します。実際はかなりの幅があるのでごく大まかな目安だと思ってください。
合計50Gyの放射線を1回2Gyずつ25回に分割して照射する計画を立てたとします。平日の5日を治療に費やすと考えると、25日なので治療にかかる期間は5週間程度になります。1回の治療費は3割負担の場合5,000円から8,000円ほどです。25回として125,000円から200,000円です。初回の実施には管理費などが算定されて10,000円から16,000円が加算されます。合計で14万円から21万円前後という計算になります。
上の計算には放射線治療中に行う検査や同時にほかの症状などに対して行う治療が入っていません。放射線治療だけを見ても、手術の結果などによって放射線照射を行う部位を追加したりすることがあるので、費用は前後します。
患者さんの経済状況によっては費用の負担が大きいことも考えられます。高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)などを利用することで負担額が軽減する場合があります。次に説明します。

高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)とは、収入に応じて医療費の自己負担額に上限を定めている制度です。
医療機関の窓口において医療費の自己負担額を一度支払った後に、月ごとの支払いが自己負担限度額を超える部分について後で払い戻しがあります。払い戻しを受け取るまでに数か月かかることがあります。
たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。
この人に対して医療費が1,000,000円発生したとします。窓口で払う自己負担額は300,000円になります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。
払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-842,000円)×1%まで幅があります。
高額療養費制度については下記の厚生労働省による説明やこちらの「コラム」も参考にしてください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/