にゅうがん
乳がん
乳腺に発生する悪性腫瘍。女性に多いが、男性に発症することもある
14人の医師がチェック 163回の改訂 最終更新: 2021.03.31

乳がんの手術後の治療:再発予防に用いる薬物療法・放射線療法

乳がんは手術でうまく取り除くことができても、あとで再発する場合があります。そこで、再発の可能性が無視できない場合には、手術後にも再発予防の治療を続けます。再発したときの治療とあわせて説明します。 

乳がんの再発予防には放射線療法と薬物療法があります。放射線療法は乳房部分切除術の後には必須と考えられています。それぞれが使われる場合について解説します。

がんの治療を行うときには、再発や転移という言葉を聞くと思います。がんの再発や転移はある程度の割合でどうしても起こってしまうものです。
がんの再発とは、根治治療(目に見えるがんをすべて取り除くか死滅させる治療)を行ったあとにがんが再び現れることを指します。再発の原因としては、手術時にすでがん細胞が目には見えないくらい潜んでいて、あとになって増殖して目に見える大きさのがんになることなどが考えられます。一個一個の細胞は目に見えないので、ひとつもがん細胞を残さないように手術するには、周りの組織ごと広い範囲を取り除くしかありません。しかし、体の組織にはどの部分にも本来の役割があるので、取り除ける範囲には限界があります。
再発は体の至る所で起こりえます。乳がんの再発は手術を行ってから2-3年以内に起こることが多いとされていますが、10年以上経ってから再発が見つかることもあります。
乳房部分切除術や乳房切除術を行った後、乳房や領域リンパ節に再発を認めることを局所再発といいます。
再発は乳房から離れた場所にも起きます。がんがもともと発生した場所から離れた場所に移動して増殖することを転移(てんい)もしくは遠隔転移(えんかくてんい)といいます。広い意味では転移の中にリンパ節転移も含まれますが、ただ「転移」とだけ言った場合は遠隔転移を指すことが多いです。
局所再発と同様に、がんの治療後しばらく経ってから転移が見つかることもあります。原因としては手術時点で局所にがん細胞が残っていたことや、すでに目に見えない大きさの転移が発生していたことなどが考えられます。
乳がんで転移が起きやすい場所は、骨、肺、肝臓、脳です。転移は症状がない場合もあれば、症状が出て見つかる場合もあります。例えば骨転移の場合は転移した場所が痛んだり、肝臓に転移がある場合はみぞおちの辺りに圧痛(押さえると痛む症状)が現れることがあります。
再発が見つかった場合は、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)で治療が行われます。転移についても大まかに説明します。

放射線療法は乳房部分切除術後の再発予防を目的に行われます。
乳房部分切除術では、乳房を可能な限り残すように手術を行います。このため、乳房を全て切除する乳房切除術に比べて多いとされるのが局所再発です。局所再発とは手術によってがんを取り除いた部分にがんが再発することです。局所再発を防ぐ目的で放射線療法を手術の後に行います。
乳房部分切除術後の再発予防を目的とした放射線療法では、乳房全体に対して照射を行います。リンパ節転移の状況によっては鎖骨の上のリンパ節を標的として放射線を照射することがあります。
乳房部分切除術後の人に対しては再発予防の放射線治療を行うと局所再発を抑えられることが実際の治療結果として確かめられています。放射線療法の効果について検討した研究を紹介します。

リンパ節転移陰性(なし)

放射線療法の有無 放射線療法あり 放射線療法なし
5年後までの再発 7% 23%
10年後までの再発 10% 29%

     

リンパ節転移陽性(あり)

放射線療法の有無 放射線療法あり 放射線治療なし
5年後までの再発 11% 41%
10年後までの再発 13% 47%

参照:Lancet 2005;366:2087-2106
 

局所再発が多い人の特徴としてリンパ節に転移があったことが挙げられました。リンパ節転移の有無に関わらず乳房部分切除術後に局所に放射線を照射すると再発予防に有利に働きました。

乳房部分切除術のあとだけでなく、乳房切除術のあともいくつかの条件が当てはまる人に対しては放射線治療が勧められます。

  • がんの大きさが5cm以上
  • 腋窩(えきか)リンパ節に転移がある

がんが大きかった人では局所再発(がんがもとあった場所に再発すること)が多いことが分かっています。また腋窩リンパ節に転移がある場合にも再発する危険性が高いと言えます。腋窩というのは脇の下のことです。腋窩リンパ節は乳がんのリンパ節転移が発生しやすい場所です。
特に、リンパ節転移が4個以上の場合に放射線療法が強く勧められます。1個から3個の場合はほかの治療を優先することも考慮されます。
乳房切除術後の放射線療法では、胸壁(手術をして乳房を取り除いた部分)と鎖骨の上の部分に放射線を照射します。手術でがんが全て取りきれていないことが懸念される場合は、その部分に対して追加で放射線を照射(ブースト照射)することで胸壁での再発が減少します。

手術により乳がんを切除したあとに、再発予防で薬物療法を行うことがあります。放射線療法を行うかどうかとは別に薬物療法を検討し、結果として両方の併用になる場合が多いです。
薬物療法の特徴は、全身に薬剤を行き渡らせることで、目に見えない小さい転移があっても攻撃できると考えられることです。
乳がんは小さなときから全身に小さな転移を発生させている可能性があるという考えがあります。小さな転移が隠れているとすれば、乳房の手術と同時に薬物療法で全身を治療することが再発防止につながると考えられます。
乳がんの薬物療法は抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的薬治療の3つです。他のがんでは分子標的薬を抗がん剤の一つとして分類することがありますが、乳がんでは抗がん剤とは分けて説明します。
どの薬を使うかは、乳がんの性質を調べたうえで選びます。
乳がんを切除したあとに病理検査を行います。病理検査は取り出したがんの組織を調べる検査です。病理検査でどの薬が効きそうかも予測できます。以下の指標を使います。

  • ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)
  • HER2タンパク
  • Ki67

これらの3つを元にして乳がんを分類することにより、再発予防に適した薬物療法を選びます。
これらの指標をバイオマーカーと言います。バイオマーカーは乳がんの性質を評価できます。以下はバイオマーカーについてやや詳しく説明します。

ホルモン受容体はホルモン療法を選ぶ基準になります。ホルモン受容体陽性ならばホルモン療法が使えますが、ホルモン受容体陰性なら使えません。
ホルモン受容体にはエストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)があります。がん細胞がエストロゲン受容体かプロゲステロン受容体のどちらかを持っていれば(発現していれば)ホルモン受容体陽性と言います。
ホルモン受容体陽性の乳がんでは、体が自然に作っているエストロゲンがホルモン受容体に結合すると、がんの増殖が促されます。そこで、ホルモン受容体とエストロゲンが結合するのを防ぐことで、がんの増殖を抑えることができると考えられています。この仕組みで治療効果を狙うのがホルモン療法です。
ホルモン受容体を調べることで、ホルモン療法の効果があるかどうか(ホルモン感受性)を推測できます。

HER2(ハーツー)タンパクの検査で、分子標的薬の効果を予測できます。
HER2タンパクは正常な乳房の細胞も持っている物質です。乳がんはHER2タンパクを異常に多く持っている(過剰発現している)場合があります。
HER2タンパクは細胞の表面にあります。HER2タンパクの役割は、細胞の増殖をコントロールする信号を細胞内に伝えることです。HER2が過剰発現している乳がんは、細胞増殖を制御できなくなった、悪性度が高いがんだと考えられています。実際にHER2が過剰発現している乳がんでは転移や再発の危険性が高いことがわかっています。
トラスツズマブ(商品名ハーセプチン®)などの分子標的薬はHER2を狙って攻撃します。HER2が過剰発現している細胞が分子標的薬の攻撃を受けて死滅することで効果が発揮されます。

Ki67の検査は抗がん剤治療を使うかどうかの判断に役立ちます。
Ki67は細胞の増殖機能を反映する物質です。Ki67陽性の細胞は増殖機能が盛んな状態と考えられます。Ki67の検査結果はKi67陽性細胞の割合で表現します。Ki67が高値である場合は、乳がんの中で細胞増殖が盛んであり、悪性度が高いと考えられます。
Ki67によって治療方針が変わるのは、ホルモン受容体が陽性でKi67が高値の場合です。ホルモン受容体が陽性ならばホルモン療法の効果が期待できますが、Ki67が高値のときは、ホルモン療法より強力な抗がん剤治療が検討されます。Ki67の評価基準は、施設によって若干の違いはあります。20%程度で分けていることが多く、それ以下の場合は陰性と判断し、増殖機能が低いと考えます。

バイオマーカーの検査結果をもとに、乳がんをサブタイプという種類に分類します。
下の表は3つのバイオマーカーとサブタイプの対応を示します。

サブタイプの名称 ホルモン受容体 HER2 Ki67
ルミナルA型 低値

ルミナルB型
(HER2陰性)

高値
ルミナルB型
(HER2陽性)
問わない
HER2陽性 問わない 
トリプルネガティブ 問わない 

+=陽性、−=陰性

サブタイプごとに適した薬剤がわかっています。次に説明します。

下の表はサブタイプと治療法の組み合わせです。

サブタイプの名称 ホルモン療法 抗がん剤 分子標的薬
ルミナルA型 -

ルミナルB型
(HER2陰性)

-
ルミナルB型
(HER2陽性)
HER2陽性 - ◯ 
トリプルネガティブ - -

◯=推奨、△=提案されることがある、-=通常推奨されない

その他、ホルモン受容体が陽性でもホルモン療法より抗がん剤の方が効果が高いと判断される場合があります。

  • 腋窩リンパ節転移が4個以上
  • Ki67が高値である

以上のいずれかに当てはまる場合は抗がん剤が優先して勧められます。

乳がんは手術の後にも放射線療法や薬物療法を行い再発の予防に努めます。ここでは医療行為以外の日常生活の中で再発の予防の助けになるものがあるかを考えてみます。

食事による脂肪の摂取と乳がん再発の直接的な関係ははっきりしていません。肥満がある人は乳がんを再発しやすいことが明らかになっています。ここで言う肥満とはBMI(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])が30以上のことを指します。身長160cmの女性なら体重76.8kg以上が肥満です。
脂肪を過剰に摂取することが肥満に結びつくことは明らかです。とはいえ、脂肪を炭水化物に置き換えても肥満防止に効果的とは言えません。脂肪を適正な範囲内(肥満にならない程度)で摂取すること自体は問題ないと考えられます。

乳製品と乳がん再発の関係性については現在のところはっきりとしていません。
乳製品と一口にいっても牛乳、バター、アイスクリームなど多くの種類があります。成分の調整なども考えると非常に多様です。誰もが納得する意味で乳製品と乳がんの関係を推し図ることは困難です。
乳製品の過剰な摂取は肥満につながる可能性があります。肥満は乳がん再発の危険性を上昇させることが知られています。とはいえ多少の乳製品を摂取したからといって急に太ることはありません。適正な範囲内での乳製品ならば問題ないと考えられます。

大豆食品は乳がんを予防する可能性についてもときどき話題になります。再発予防についても関心が集まる食品です。
大豆に含まれているイソフラボンが、乳がん手術後のホルモン療法で用いられる抗エストロゲン薬と同じような働きをするといった推測があります。この作用からは特にホルモン受容体陽性の乳がんに対して効果的ではないかと考える意見もあります。
世界がん研究基金の報告によると、乳がんと診断されたあとの大豆および大豆たんぱく質の摂取はその後の死亡率を下げる可能性があるとされています。
http://www.wcrf.org/sites/default/files/Breast-Cancer-Survivors-2014-Report.pdf

イソフラボンをサプリメントで飲むことは勧められません。サプリメントで大量にイソフラボンを摂取することの安全性や有効性は確認されていません。イソフラボンを摂りたいと思ったときは、無理のない範囲で食事から摂取することが望ましいと考えられます。

大豆食品には何らかの利点がある可能性があります。しかし、それは努力して大豆をたくさん食べるべきだという意味ではありません。
前提として食事は日々の栄養バランスを保つことが第一です。食事と関係する病気は乳がんだけではありません。乳がんへの影響を気にするあまり栄養バランスを崩してしまっては本末転倒です。
また、食事が乳がんに影響する強さはわずかです。乳がん再発の確率を下げる食事に長年努めることで実際に確率が下がったとしても、ゼロにはなりません。どんなに気を付けても再発する人がいる一方、乳がんとの関係をまったく気にしない食生活を送って一生再発しない人もいます。
実際の食生活に大豆を取り入れようと思うときは、栄養、乳がんとの関係の弱さ、好きなものを食べられる楽しい生活とのバランスを考えて、個人や家族の価値観に基づいて判断してください。

肥満は乳がんの発症の危険性を高めると考えられています。肥満と乳がんの再発についての検討も行われています。
乳がんと診断されたあとの体重の増加と再発の関係を検討した研究は多くはありませんが、以下のような研究結果が示されています。

  • 乳がん診断後1年でBMIが2.0以上増加すると乳がん死亡の危険性が1.64倍になる 
  • 体重が5kg増加すると乳がんによる死亡が増加する
  • 体重増加が顕著であった人々はそうでない人と比べて乳がん死亡の確率は1.6倍となった

肥満は多くの病気に関わることが明らかです。体重を過度に気にする必要はありませんが、バランスのとれた運動や食事を行うことで適正な体重を保つことは乳がん再発の危険性を少なくすると考えられます。
ただし、乳がんの治療の副作用や乳がん自体の症状によって体重が減少する場合もあります。体重が減るほどよいと考えるのは間違いです。また、心当たりのない体重の変化には気を付けてください。
J Clin Oncol.2005;23:1370-1380
J Clin Oncol.1990;8:1327-1334
Breast Cancer Res Treat.2010;122:822-833
 

飲酒は乳がんの発症と強い関連がある生活習慣の一つです。しかし飲酒と乳がんの再発についての関連性に関しては不明な点が多いです。世界がん研究基金の報告でも乳がんの再発と飲酒の関係性についてははっきりとしないとされています。
http://www.wcrf.org/sites/default/files/Breast-Cancer-Survivors-2014-Report.pdf

適量の飲酒に対して、乳がん再発について明らかな害は見つかっていません。肝機能やほかの持病との関係で飲酒量について心配な点があれば、主治医と相談して量の目安を考えることをお勧めします。

喫煙は乳がんを発症する危険性を高めます。乳がん手術後にも喫煙を継続すると乳がん再発の危険性が上昇すると考えられています。喫煙と乳がん再発の関連性については確実とまでは言えませんが、いくつか関連性を示唆する報告があるので一つ紹介します。

喫煙歴と乳がんの再発、乳がんによる死亡の関係

喫煙歴 乳がんの再発 乳がんによる死亡
喫煙歴なし 1倍(基準) 1倍(基準)
pack-years 20-34.9 1.22倍 1.14倍
pack-years 35以上 1.37倍 1.54倍
喫煙中 1.41倍 1.61倍

J Natl Cancer Inst.2014;106:dj359

解説します。

pack-yearは喫煙年数と1日に消費するタバコの箱の数を掛けたものです。1箱を20本として次の計算式で求めます。

  • pack-years=(1日に消費するタバコの本数/20)×喫煙年数

pack-yearsが大きいほど、乳がんの再発や乳がんによる死亡が多かったとの結果でした。喫煙は呼吸器の病気や心臓の病気の原因にもなり、健康に悪いことは確実です。
乳がんは手術後もホルモン療法や抗がん剤治療を行います。体の負担を減らすためにも、できるだけ速やかに禁煙を行うことが重要です。

乳がんの再発は3つに分けて考えられます。

  • 局所再発
    • 乳房部分切除術後の温存した乳房に再発
    • 切除した側の胸壁に再発
  • 領域再発:領域リンパ節に再発
  • 全身転移:遠隔再発(遠隔転移)

再発に対する治療は、再発した場所によって違います。
再発した場合は初発時とは状況が大きく変わるので、治療法を決めることが難しい場合があります。
主治医としっかりと相談して、どのような選択肢があり、それぞれどのような利益と不利益が予想されるのかを理解したうえで治療法を選択することが大事です。

乳房部分切除術後は乳房内に再発することも有り得ます。他の全身の状態との兼ね合いにもよりますが、乳房内の再発では手術による切除を考慮します。
再発に対する手術には、乳房部分切除術と乳房切除術の2通りが技術的には可能だと考えられます。再手術は最初の手術の影響が大きく、医師にとっても難しい手術になります。手術法については再々発を防ぐ意味で乳房温存よりも治療効果を優先する必要性が強くなります。

乳房切除術後などで胸壁(筋肉)に再発することがあります。胸壁に再発した場合は、再発が胸壁に留まっていれば切除も考慮します。大事なのは胸壁だけの再発なのか、他の部位にも転移しているかどうかです。

  • 胸壁のみに再発:薬物療法、手術も考慮 
  • 胸壁だけではなく他の臓器にも転移がある:薬物療法を考慮

胸壁のみに再発した場合は、手術によって切除することですべてのがんを取り除く可能性も残されています。しかし、胸壁に再発した時点で目には見えないくらいの小さな転移が体中にあることも考えられます。手術後一時完治したように見えても目には見えなかった小さな転移が大きくなって、しばらく経ってから現れることも考えられます。この点には注意が必要です。
胸壁以外に他の臓器の転移も見つかった場合は、再発した胸壁の部分だけを切除してもほかにがんが残ることになります。また、目に見えない転移が隠れている可能性も比較的大きい状態と考えられます。このため手術よりも薬物療法で全身を治療したほうが理にかなっていると考えられます。
例えば胸壁以外に肝臓に転移が見つかった場合には、薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的薬治療)を行うほうが効果が高いとも考えられます。

リンパ節に再発した場合は以下の2通りに分けられます。

  1. 郭清(かくせい)を行った範囲に再発 
  2. 郭清を行っていない場所に再発

郭清というのは一定範囲のリンパ節をまとめて取り除くことです。乳がんの手術では近くのリンパ節の郭清を一緒に行うことがあります。
乳がんに対してリンパ節郭清を行った範囲内に再発した場合は、リンパ節郭清時に取り残されていたリンパ節と考えて、改めて手術によって切除する場合があります。リンパ節は脂肪組織の中に埋まっているので、リンパ節郭清をするとき実際にはリンパ節の入った脂肪組織を丸ごと取り除きます。リンパ節を一つ一つ確認して取り出すわけではないので、リンパ節が少数残ることはあり得ることです。
郭清を行っていない範囲のリンパ節(領域リンパ節以外)に再発をした場合は、基本的には放射線療法と薬物療法が主体になります。
領域リンパ節はがんが最初に転移する場所です。リンパ節郭清では領域リンパ節を取り除きます。リンパ節転移は隣り合ったリンパ節に順々に広がっていく性質があるので、領域リンパ節以外にも転移がある状況は、すでに全身に転移している可能性が高いと考えられます。
この場合はできるだけ広い範囲をカバーできる治療が望ましいと考えられます。そこで、全身を治療できる薬物療法を使うか、放射線療法によって転移が疑われる範囲をカバーすることが通常選択されます。
なお、最初の手術後に、再発かどうか紛らわしいものが見つかる場合があります。たとえば画像検査でリンパ節が大きくなっているのが見つかると、再発なのか、ほかの原因があるのか判断しにくいことがあります。判断が難しいときには診断を兼ねてリンパ節の切除(外科的生検)を行うことがあります。

乳がんは脳に転移をしやすいことが知られています。脳転移に対する治療法は、手術以外にも放射線療法があります。
脳転移を手術によって取り除くことは放射線療法に比べてかなり負担が大きいです。手術の良い点として、しっかりと切除することができれば、放射線療法より早く症状が改善することなどが期待できます。また手術と放射線療法を組み合わせると症状が軽減したりがんの局所制御の効果が高まることなども期待されています。
手術を行うには患者さんが元気であることが前提条件です。手術の効果があるかを判断するには腫瘍の状態(大きさ、個数)などが鍵になります。
手術を考えるときは主治医としっかり話をして利益・不利益をしっかりと理解した上で臨むことが大事です。

乳がんが肺、骨、肝臓に転移をした場合は、基本的には手術よりも薬物療法が勧められます。
手術を行い転移した場所を取り除くことで得られる利益は少ないと考えられています。大腸がん腎がん(腎臓がん)などは転移した場所の切除を行うことで余命の延長が期待できるとされていますが、そういったがんは少ないです。乳がんに関しても転移した場所を切除することが試みられていますが、その効果(余命の延長など)はまだ不明です。
また乳がんに対しては効果の高い薬物療法(抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬)が多く登場しています。転移した部位を切除する手術よりも、薬物療法のほうが利益が大きいと考えられます。
状況によっては手術の効果がある人も少数ですがいるとは思われるので、主治医から手術を提案されたときは予想される効果や不利益などを十分に聞いた上で判断してください。