にゅうがん
乳がん
乳腺に発生する悪性腫瘍。女性に多いが、男性に発症することもある
14人の医師がチェック 163回の改訂 最終更新: 2021.03.31

乳がんの統計:年齢・罹患・死亡など

乳がんは女性のがんで最も多く、年間におよそ9万人が乳がんを診断されています。また、年間でおよそ1万4千人が乳がんで亡くなっています。乳がんに気をつけるべき年齢などについて解説します。 

では、一人の女性が生涯に乳がんになる割合はどれくらいでしょうか。

同じ統計によると、生涯におよそ8.8%の女性が乳がんにかかっています。つまり約11人に1人が乳がんを一度は経験することになります。

乳がんで死亡する人の割合も計算されています。1.5%の人が乳がんで死亡すると推計されています。つまり68人に1人が乳がんで亡くなることになります。

【乳がんの生涯罹患率と死亡率】

  生涯の間に罹患あるいは死亡する割合 何人に1人なのか
生涯罹患リスク 8.8% 11人に1人
死亡リスク 1.5% 68人に1人

11人に1人が乳がんになるというデータに驚かれる方もいると思います。乳がんは女性にはとても多いがんです。ほかの種類のがんと比べると、たとえば子宮がん(子宮体がん子宮頸がんの合計)は生涯で33人に1人くらいの罹患リスクですし、卵巣がんは生涯で87人に1人ほどの罹患リスクです。乳がんが特に多いことがわかります。

女性なら誰もが乳がんになる可能性を無視できません。怖く感じるかもしれませんが、見方を変えれば「なっても普通」の病気だと言えます。乳がんになるのは予防が足りなかったからではありません。

また、乳がんにかかる人の割合と、乳がんで死亡する人の割合に差があることにも注意してください。乳がんにかかっても治療して一生再発しない人はいます。決して「乳がんです」と言われたら死が間近とは限りません。

乳がんは身近な病気です。ただ怖がるのではなく、知識をつけて適切な対策を目指してください。

報道で「乳がんが増えている」と聞いたことがある方もいるかもしれません。増えていると言っても程度が大事です。何がどのくらい増えているのでしょうか。

一生のうち乳がんを経験する人は11人に1人です。もともと乳がんは身近な病気ですが、急に何倍にも増えたりはしません。

統計で見ると、下のグラフのように乳がんの罹患率(りかんりつ)は最近増えています。

【乳がんの粗罹患率】

乳がんの粗罹患率

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2012年)

罹患率というのは、対象期間のうちに新たにその病気を診断される人の割合という意味です。ここでは1年間に人口10万人あたりで乳がんを診断される女性の割合を示しています。粗罹患率というのは、ここでは年齢の効果を計算に入れていないという意味です。年齢の効果について次に説明します。

20歳未満で乳がんになる人は非常に少数です。対して、高齢の人では乳がんが多くなります。年齢層別に乳がんの罹患率を比べると、下のグラフのように、40歳代から60歳代で乳がんが多く発生します。

70歳代以上でも乳がんの罹患率は決して少なくありません。

【乳がんの年齢階級別罹患率】

乳がんの年齢別罹患率

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2012年)

乳がんは40歳以上で多く発生するので、乳がん検診は主に40歳以上の女性に勧められています。日本乳癌学会による「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」では、自己検診といって乳房や脇を自分で触ってみることも勧められています。

年齢によって乳がんの罹患率は大きく違うので、社会の年齢構成が変わることで、全体としての乳がんの罹患率も影響されます。次に説明します。

乳がんは中高年でできやすいことがわかっています。日本では高齢化が進んでいるので、乳がんが増えるのはある程度高齢化の結果だと言えます。

では、高齢化がなかったとすれば、乳がんは増えているのでしょうか。

統計処理によって、高齢化の影響を排除して乳がんの罹患率を計算することができます。それが年齢調整罹患率です。計算方法は「仮に現代の年齢構成が昭和60年と同じだとすれば全年齢合計の罹患率はいくらか」というものです。詳細は複雑なので省き、結果だけを紹介します。

乳がんの年齢調整罹患率の推移を図に示します。

【乳がんの年齢調整罹患率】
乳がんの年齢調整罹患率

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2012年)

このグラフを見るとわかるように、高齢化の要素を計算に入れても乳がんは近年増えています。
原因はいくつか考えられますが、どの要因によっても乳がんが増えていることを完全に説明することはできません。詳しくは「乳がんの原因は?」で説明しています。

考えられる限りの予防策をとったとしても、乳がんを完全に防ぐことはできません。「絶対に乳がんになるのは嫌だ」と思うのは自然な感情かもしれませんが、現実的ではありません。乳がんは身近な病気です。誰がなってもおかしくありません。診断・治療を前向きに考えることも大切です。

日本の女性のうち約1.5%が乳がんで死亡します。時代による変化を見ると、下のグラフのように乳がんによる死亡率は年々上昇してきています。

【乳がんの粗死亡率】
乳がんの粗死亡率

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2015年)

グラフは年間に人口10万人あたりで乳がんを死因として死亡する人の数を示しています。注意するべき点として、日本では高齢化のため原因によらず死亡率は上昇傾向にあります。死亡率を考えるには年齢の影響は無視できません。

乳がんによる死亡率は年齢によって違います。年齢層別の乳がんによる死亡率をグラフに示します。

【乳がんの年齢別死亡率】
乳がんの年齢別死亡率

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2015年)

それぞれの年齢で乳がんを持っている人が多いほど、乳がんによる死亡も多くなります。したがって、乳がんの罹患が多い40歳代以上で乳がんによる死亡率も高くなっています。しかし、死亡率のピークは罹患率のピークと一致しません。

理由のひとつとして、乳がんは罹患から死亡までが比較的長いがんです。乳がんを診断されてから10年以上生存する人は決して珍しくありません。そのため死亡率のピークは罹患率のピークより後ろにずれます。

また、若い人のほうががんの治療がうまくいきやすいことも理由として考えられます。若い人は全身の状態が良い場合が多いため、治療の選択肢が多くなります。また、治療による負担や副作用などにも耐えやすく、計画通りの治療を実行しやすいと考えられます。

全体として、若い年齢では乳がんの罹患率に対して死亡率が低くなっています。

乳がんによる死亡率の変化について考えてきました。乳がんによる死亡率は年齢によって違います。より高齢の乳がん患者が増えれば、乳がんで死亡する人も増えることになります。

そこで、高齢化の影響を排除して死亡率の推移を見る方法があります。年齢調整死亡率という計算値を使います。年齢調整死亡率は、「仮に年齢の分布が昭和60年と同じだとすれば全体としての死亡率はいくらか」を計算したものです。

乳がんの年齢調整死亡率をグラフに示します。高齢化の影響を調整しても乳がんによる死亡率は近年上昇しています。

【乳がんの年齢調整死亡率】
乳がんの年齢調整死亡率

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2015年)

なぜ乳がんによる死亡が増えているのでしょうか。大きな原因は、乳がんになる人が増えていることです。

さらに、乳がん以外の病気が治療法の進歩などで死因になりにくくなった場合、長生きした人はいつか何かの死因で死亡するので、中には乳がんで死亡する人もいます。つまり乳がん以外の病気の対策が進むことは乳がんによる死亡率を上げる方向に働きます。

乳がんの治療法は年々進歩しています。乳がんによる死亡が増えているということは、「乳がんが治らなくなっている」という意味ではありません。

乳がんは早期発見できれば治療の選択肢が増えます。早期発見のために検査を使うことができます。乳がんの罹患率が高い適切なタイミングに適切な検査を行うことで、早期発見の確率を高めることができます。

乳がんの死亡率はステージによってことなります。乳がんと診断されてもその状態は様々です。「がんの統計 '19」を元に女性の乳がんのステージごとの5年生存率を示します。

ステージ(UICC第7版) 割合 5年生存率
ステージI(1) 44% 97.7%
ステージII(2) 41.% 93.3%
ステージIII(3) 9% 77.3%
ステージIV(4) 5% 38.9%
不明 1% 83.5%


乳がんの死亡率は、ステージごとでかなり幅があります。数字が小さいほど進行していないステージであることを意味します。進行していないステージで治療を行えば乳がんは長期生存が高い確率で期待できます。

ステージIVは乳房から離れた場所に乳がんの転移がある状態です。注目したいのは、乳がんと診断された時点でステージIVの人は4.4%とかなり少数であることです。診断時に厳しい状況に立たされることは比較的少ないと言えます。

生存率はあくまでも数字にすぎないことにも注意が必要です。ステージIだからといって乳がんで死ぬことは絶対にないとはいえず、ステージIVで診断されてから10年以上生存する人もいます。自らの状態に向き合い日々を生きていくことがもっとも大事なことだと思います。

乳がん検診は、症状や検査値異常がない人も広く対象として、乳がんを見つけ出す目的で行われている検査です。

全国の市町村が主体となって、40歳以上の女性を対象に2年に1度の乳がん検診が行われています。検診では主にマンモグラフィという画像検査が使われています。

マンモグラフィは一種のレントゲン写真です。放射線の一種であるX線を乳房に当てて画像を撮影します。撮影のために乳房を板と板の間に挟んで引き伸ばします。板に挟んで圧迫されるので乳房が痛い検査です。痛いのでマンモグラフィを受けたくないと思う人も少なくなくありません。

マンモグラフィで乳房を圧迫するのには理由があります。

  • 撮影される写真がはっきりとする
  • 撮影の際に乳房がブレにくい
  • より少ない放射線で検査できるので、被曝量が減る

より精密な画像を少ない被曝量で得るために、痛みをこらえてもらっています。マンモグラフィに使う放射線はCTなどに比べるとわずかですが、放射線被曝は少ないに越したことはありません。

検診のマンモグラフィで異常が見つかった場合は、より精密な検査を行うこととなります。

マンモグラフィは診断のための性能が高い検査です。しかし、乳がんを見逃すことが絶対にないとは言えません。また、乳がんではないものが紛らわしく見える場合もあります。

日本では乳がん検診の受診率は高くありません。2013年にはおよそ3分の1の人が受診しています。最近は受診率が上がってきています。

【乳がん検診受診率(40-69歳)】

  2010年 2013年 2016年
検診受診率 36.4% 41.0% 42.3%

(「がんの統計 '19」を元に作成)

乳がん検診はがんの早期発見につなげることを目的としています。適切なタイミングで検診を受診することで、隠れた乳がんに対して早く手を打てる可能性があります。更に詳しく検診について知りたい方は、「乳がんの検診で何がわかる?検診に行くべき人と正しい検査の受け方」を参考にして下さい。