にゅうがん
乳がん
乳腺に発生する悪性腫瘍。女性に多いが、男性に発症することもある
14人の医師がチェック 207回の改訂 最終更新: 2024.05.29

乳がんの検査②:マンモグラフィの説明(カテゴリーや石灰化)

マンモグラフィは乳がんの早期発見を目的とした乳がん検診などで行われる検査です。乳がんが増加してくる40歳以上の女性に対して2年に1回の検査が推奨されています。乳がんの診断に重要な役割を果たしているマンモグラフィについて解説します。

マンモグラフィで乳がんを早期発見することができます。

実際にマンモグラフィを多くの人が行った結果によって性能が確かめられています。マンモグラフィによる早期発見と早期治療により、乳がんで死亡する確率を下げることができます。

ただし、少数ですがマンモグラフィで発見できない乳がんもあります。また、検査と検査の間の時期に乳がんが発生し、検査よりも先に自覚症状が出て発見されるなどの例もあります。乳がんではないものが写り込み、乳がんと紛らわしく見える場合もあります。マンモグラフィは有効ですが、万能ではありません。

マンモグラフィはレントゲン写真です。乳房を圧迫して、乳房全体をレントゲン写真として撮影します。検査結果の読み方については「マンモグラフィの結果はどういう意味?」で説明しています。

マンモグラフィで詳しい検査が必要とされその後の精密検査で治療の必要なしと判断された場合にも、引き続き経過観察で乳がんが発生しないか警戒することが大事です。

また、日本乳癌学会による「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」では、自己検診といって乳房や脇を自分で触ってみることも勧められています。乳がんの半数以上が、自覚症状をきっかけに発見されています。詳しくは「しこりって何?乳がんの初期症状のセルフチェック」で説明しています。

マンモグラフィは乳がんを発症する人が増えてくる40歳以上の女性に対して2年に1回行うことが推奨されています。

またマンモグラフィを受ける時に気を付けなければならないのは、月経(生理)です。排卵から月経終了までの間は乳腺組織が腫脹(しゅちょう)しやすくなります。これは、月経時にプロラクチンというホルモンが増えるため乳腺という組織が増殖することが原因です。乳腺が増殖していると乳腺が白く写ります。乳がんも白く写ります。乳腺が増殖していると乳がんがはっきりとしないことがあります。

マンモグラフィを受ける時期としては、乳腺の張りが落ち着いてきた月経終了後1週間くらいが良いと考えられます。

40歳以上の女性は2年に1回のペースでマンモグラフィを行うことが推奨されています。

40歳以下の人は検診の対象ではありませんが、「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」は自分で乳房を触ったり観察したりする自己検診を勧めています。

これらは症状などがない人の検診に限った話です。乳房にしこりなどの症状があるときは乳腺外科などで診察を受けてください。

マンモグラフィには痛みが伴います。撮影のため乳房をできるだけ圧迫して平たくするため、検査中に痛みがあります。

乳房を圧迫するのには理由があります。1つは、乳房を延ばすことで乳房内をくまなく観察することができ、鮮明なレントゲン写真を得ることができるからです。もう1つは、乳房を平たく圧迫することで放射線の照射量が減少して、被曝量を少なくすることができるからです。

マンモグラフィは痛い検査ですが、それはより正確に、より安全に検査を行う目的があります。

マンモグラフィのほかに超音波検査エコー検査)も乳がんの検査としてよく使われます。

ほかの例としては、マンモグラフィのような乳房の画像を撮影できる検査としてトモシンセシスという方法があります。

トモシンセシスも一般的なマンモグラフィと同様に乳房を圧迫します。放射線を使用して複数の方向から乳房を撮影します。マンモグラフィは一方向から撮影を行うので乳腺の重なりにより診断が難しくなる場合があります。トモシンセシスでは複数箇所から撮影を行うことで重なりのない画像を得ることが可能になります。

トモシンセシスの信頼性については、マンモグラフィに比べると歴史が浅い分データが少ないのが現状です。「乳癌診療ガイドライン」では「トモシンセシスを用いたマンモグラフィ検診に,いまだ十分な科学的根拠はないが,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。」としています。

信頼性以外の問題点としては、複数箇所から撮影を行うために被曝量が多くなることがあります。またトモシンセシスは、どの施設でも受けられるわけではなく設備が整った医療機関でのみ施行できます。トモシンセシスを実施するにあたっては検査の良い面と悪い面の説明を担当医からよく聞いてください。

他には乳房用に開発されたPET検査もあります。PET(ペット)は放射線を使います。PETは、がん細胞が通常の細胞に比べて糖分を活発に取り込むことを利用した検査です。FDG(フルオロデオキシグルコース)という物質を使います。FDGは糖(グルコース)に似た物質です。FDGが取り込まれた場所では放射線が発生します。発生した放射線を利用して画像を撮影することができます。全身を撮影するPETが普及していますが、乳房専用のPETも開発されています。

乳がんの診断の正確性を向上させるために色々な検査が開発されています。新しい検査は優れた面もあれば今後検証が必要な側面もあります。新しい検査を希望される場合は、そのメリット・デメリットを聞いて受けることが重要です。全ての場面で新しい検査が従来の検査よりも役に立つとは限らないからです。

マンモグラフィは「乳腺科」、「乳腺外科」、「乳腺外来」などを標榜(ひょうぼう)する科ではおおむね行っています。小規模なクリニックでは行えないことがあるので事前に問い合わせてから受診してください。お近くの医療機関で行えるかどうかについては、「日本乳がん検診精度管理中央機構」のサイトで調べることもできますので利用してみてください。

マンモグラフィは検診が自治体で実施されています。検診の対象にならない状況では、自己負担で検査を受けることになり、負担する費用が変わります。

  • 検診:0-3000円
  • 全額を自己負担した場合:5000円前後

住んでいる自治体や実施する医療機関で金額は異なることが予想されます。症状はないけれども心配でマンモグラフィを受けたいと思ったときは、まず自治体の検診を受けるにはどうすればいいか、自治体の窓口などに問い合わせてください。

マンモグラフィは月経(生理)の周期などに影響されるので、適した時期を選ぶことをお勧めします。そのほかの注意とあわせて説明します。

マンモグラフィは月経(生理)に大きく影響を受けます。生理中は乳房が発達するために通常より乳房全体が白く写り込んでしまい、白く写るがんを見逃しやすくなってしまいます。

またマンモグラフィは正確に乳房を映し出すために乳房を圧迫して撮影します。生理中はただでさえ乳房が張ることによって痛みが出る人もいます。

生理中は検査の精度が落ちるだけでなく、痛みも伴うためにあまりお勧めはできません。できれば月経終了後の1週間前後が適切な時期だと考えられます。マンモグラフィの予定と生理が重なりそうならば、検査の日を調整することをお勧めします。もし、日程の調整ができないのであれば乳房の張りなどを医師に見てもらい、相談の上でマンモグラフィを撮影するのはいいでしょう。

マンモグラフィは妊娠中に受けてもいいと考えられています。

しこりなどの症状がある場合には、検査を受けておいたほうがいいでしょう。妊娠中にも乳がんが発症することはあります。ほかの原因でしこりなどを感じる場合もあります。

妊娠中は気をつけなければならないことが多くあります。悩みを自分一人で抱えずに気になることは専門家に意見を求めることが重要です。

参照:乳癌学会 患者さんのための乳癌ガイドライン

マンモグラフィで使う放射線により、母乳に影響が出る心配はありません。

問題は授乳中の乳腺の発達です。乳がんはマンモグラフィで白く写りますが、乳腺が発達した状態でマンモグラフィを受けると、乳房全体が白く写り込んでしまい、乳がんが疑われる病変があったとしても乳がんかどうかの判断が難しくなります。そのため授乳中はマンモグラフィに最適の時期ではありません。2年ごとのマンモグラフィの予定が授乳に重なったときは、検査日をずらすことなどを含めて担当医と相談してください。

授乳中に気になる症状があるときは、検診ではなく乳腺外科などの通常の診察を受けてください。

乳房の状態を見て、撮影しても問題ないと判断されたうえでマンモグラフィを使う場合もあります。マンモグラフィに代えて超音波検査を行うことを提案されるかもしれません。自己判断せずに気になる点については医師に相談してみることが大事です。

マンモグラフィは上半身裸になって受けるので服装が検査に特に影響するわけではありません。検査をスムーズに運ぶという意味ではできるだけ着たり脱いだりしやすい服装で行ったほうがいいでしょう。

マンモグラフィの写真は専門の医師が観察して、写った特徴(所見)をもとにカテゴリー1から5の5段階に評価します。

カテゴリーの数値が大きいほど悪性(がん)の可能性が高いという意味です。カテゴリー3以上が精密検査の対象になります。

マンモグラフィの検査結果が出るまでの期間は、検診を利用したか任意で検査を受けたかで異なります。自治体の実施する検診で受診した場合は、検査の実施から結果の通知までは2-4週間程度の時間を要することが予想されます。対して、乳腺外科などの専門医のいる施設で任意の検査を受けた場合はマンモグラフィを受けてから結果が判明するまで短いところで1週間以内の場合もあります。

乳がんは石灰化といってマンモグラフィでは白く写ることを特徴としています。乳がんが大きくなるとがんの中心の細胞に酸素が行き渡らなくなり細胞が死んでしまいます。壊死(えし)ともいいます。壊死を起こした細胞の周りにはカルシウムが沈着します。カルシウムはレントゲンで白く写り石灰化と表現されます。良性の病気でも石灰化を起こすことがありますが、その特徴が異なります。マンモグラフィではこの特徴を読み取り乳がんかどうかの判断を行っています。

  • 良性の石灰化 
    • 単発(1つ)  
    • ポップコーンのように粗い感じ 
    • 中心が透けている
  • 乳がんの石灰化
    • 針のような形
    • 大きさが不揃いの石灰化が多数ある
    • ぱらぱらとした砂状の形

画像の特徴を読み取ることを読影(どくえい)と言います。マンモグラフィの読影は医師なら誰でもできるものではありません。検診マンモグラフィ読影認定医という専門的な知識をもつ医師がいます。下記のサイトに氏名と所属施設の一覧が掲載されています。

参照:日本乳がん検診精度管理中央機構

マンモグラフィ検査が行われると、カテゴリー分類が行われて5段階で評価されます。カテゴリーとは、画像の見た目の特徴を分類したものです。カテゴリーごとにがんが検出される可能性については以下のようになります。

カテゴリー 所見 がんが検出される確率
カテゴリー1 異常なし ごくまれ
カテゴリー2 良性 まれ
カテゴリー3 良性、しかし悪性を否定できず 約5-10%
カテゴリー4 悪性の疑い 約30-40%
カテゴリー5 悪性 約90%

参考:乳がん診療ガイドライン

カテゴリーは、「乳がんがありそうか、なさそうか」を分類したものです。がんの分類で「ステージ」という言葉もありますが、カテゴリーとステージの意味はまったく違います。カテゴリー4やカテゴリー5だからといって「末期がんに違いない」と思う必要はありません。カテゴリー4でも調べてみると乳がんではない場合はよくあります。

マンモグラフィの結果は「陽性」という言葉で説明されることもあると思いますが、正確ではありません。「陽性」はカテゴリー3以上を指していると思われます。カテゴリー3とカテゴリー5でがんの可能性は大きく異なります。あるいは、良性の石灰化などがあるだけでも「陽性」と表現されている可能性も考えられます。

マンモグラフィの結果が「陽性」や「要精密検査」でも「乳がんがあった」という意味ではありません。落ち着いて今後の検査方針を聞いて精密検査に臨んでください。

腫瘤(しゅりゅう)とは塊(かたまり)を意味します。しこりと表現されることも多いと思います。乳房にしこりがあったとしても必ずしも乳がんを意味するわけではありません。

しこりには良性腫瘍悪性腫瘍(乳がん)の両方が含まれます。さらに腫瘍ですらないただの塊も含まれます。しこりの中身がどのようなものなのかは、しこりの一部を採取して、顕微鏡を用いた検査(生検)で判断します。

検診で「腫瘤あり」との結果が返ってくると、「がんかもしれない」と怖くなってしまうかもしれません。しかし腫瘤があってもがんではないものの場合はあります。落ち着いて精密検査を受診し、正しい診断につなげてください。

マンモグラフィの結果で石灰化という言葉が使われます。石灰化とはカルシウムが沈着したものです。カルシウムは骨の成分です。骨がレントゲンで白く写るようにカルシウムがある場所は白く写ります。白く写ったものを「石灰化あり」と表現します。良性でも乳がんでも石灰化している場合はあります。

がんが発生して増殖すると、真ん中のがん細胞には酸素が行き渡らずに細胞が死滅します。死滅は壊死(えし)ということもあります。壊死した細胞の周りにはカルシウムが集まり石灰化します。良性疾患を原因とする石灰化もありますが、乳がんによる石灰化では特徴が異なります。

  • 良性の石灰化
    • 単発(1つ)
    • ポップコーンの様に粗い感じ
    • 中心が透けている
  • 乳がんの石灰化
    • 針のような形
    • 大きさが不揃いの石灰化が多数ある
    • ぱらぱらとした砂状の形

上には典型的とされる特徴を挙げましたが、当てはまるか判断しにくい場合もあります。

石灰化があることは必ずしも乳がんの存在を意味しません。良性のものも多く存在します。良性の石灰化が乳がんになることもありません。

次に行う検査としては、超音波検査になると思います。超音波検査で確認できる腫瘍に対しては明らかに良性(がんではない)と考えられる場合には経過観察とします。

しかしながら乳がんの可能性が拭いきれないものに関しては生検を行います。生検は、腫瘍の一部を取り出して顕微鏡で観察する検査です。

超音波検査で病変がはっきりしない場合には、もう一度マンモグラフィを行うこともあります。

超音波検査で確認できない病変(石灰化病変)の場合は、ステレオガイド下マンモトーム生検などを行います。ステレオガイド下マンモトーム生検はマンモグラフィを撮影しながら生検を行う方法のことです。

生検の結果、がんと診断された場合には治療方針を決定するためにCT検査、MRI検査などで全身を調べる検査に進むことになります。詳しくは「乳がんの検査:超音波検査、MRI検査、生検の方法や違いについて」で説明しています。

マンモグラフィ検査の結果はカテゴリー分類で5段階で評価されます。カテゴリー3以上だった場合、精密検査が行われます。

カテゴリー3以上ならば、乳がんの可能性は否定できません。しかし、カテゴリー3とカテゴリー5では乳がんの疑いの強さにかなりの違いがあります。

乳がんかどうかを確定させるために精密検査を行います。精密検査ではエコー検査(超音波検査)を組み合わせて使います。

精密検査でも乳がんの疑いが強いと考えられた時は、生検という検査を行います。生検は乳がんが疑われる場所から組織を切り取ってきて、顕微鏡でがんがあるかどうかを調べる検査です。生検でがんが確認された場合は乳がんの確定診断となり、全身を調べて治療計画が立てられます。

再検査ではエコー検査(超音波検査)を使うことがあります。マンモグラフィの弱点を補う狙いがあります。

マンモグラフィは乳がんを発見するのに優れた検査です。しかしながら、マンモグラフィで全ての乳がんを検出できるわけではありません。乳腺が発達している女性に対する検査では注意が必要と考えられています。発達した乳腺はデンスブレスト(高濃度乳腺)と呼ばれます。デンスブレストはマンモグラフィで白く写ります。乳がんもマンモグラフィでは白く写るためにデンスブレストの人ではがんの検出が難しくなることがあります。なおデンスブレストは乳房の大きさとは別のことです。

再検査でエコー検査を追加することで、マンモグラフィの弱点をカバーしつつ、がんかどうかの判断に活かすことができると考えられます。

再検査を待つ時点では、乳がんが見つかる確率は最初のマンモグラフィの結果から予測することになります。

初回のマンモグラフィの結果と乳がんである確率の対応を再掲します。

カテゴリー 所見 がんが検出される確率
カテゴリー1 異常なし ごくまれ
カテゴリー2 良性 まれ
カテゴリー3 良性、しかし悪性を否定できず 約5-10%
カテゴリー4 悪性の疑い 約30-40%
カテゴリー5 悪性 約90%

参考:乳がん診療ガイドライン

マンモグラフィの画像に写った特徴が、カテゴリー分類で評価されます。カテゴリー分類では数字が大きいほどがんの可能性が高いという意味です。

基本的に再検査になるのはカテゴリー3からです。カテゴリー3ならば、がんが検出される確率は無視できませんが、精密検査でがんが否定される見込みのほうが大きいという判定です。

再検査になったら「乳がん」という言葉が頭から離れずに悩ましい時間を過ごすと思います。しかし、再検査で乳がんが否定されることはあります。乳がんだったとしても治療法はあります。まずは乳腺外科などの専門的な医療機関で順序よく検査を進めることが正しい診断につながります。