にゅうがん
乳がん
乳腺に発生する悪性腫瘍。女性に多いが、男性に発症することもある
14人の医師がチェック 163回の改訂 最終更新: 2021.03.31

乳がんの抗がん剤治療②:抗がん剤の効果・副作用の詳細解説

乳がんは手術の前後や再発・転移がある場合に薬物療法を行います。乳がんの薬物療法は長期間にわたることもあり、薬物の特徴を知ることは重要です。ここでは乳がんで使用する薬について紹介します。

乳がんには多くの抗がん剤の効果が確認されており抗がん剤の選択は重要です。それとともに問題になるのが副作用などです。乳がんで使用する抗がん剤について専門的な内容を説明します。
なお、「抗がん剤」という言葉は、広い意味ではがんを攻撃する目的の薬すべてを含みますが、このページではホルモン剤と分子標的薬を除く狭い意味の抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)について説明します。

抗がん剤には土壌などに含まれる微生物を由来とした薬剤があります。微生物由来の抗がん剤を抗がん性抗生物質(あるいは抗腫瘍性抗生物質、抗悪性腫瘍性抗生物質など)と呼び、がん治療における選択肢の一つになっています。抗生物質という名前ですが、感染症の治療に使う抗生物質(抗菌薬、抗生剤)とは違います。
ドキソルビシン(慣用名:アドリアマイシン)はアントラサイクリン系(アンスラサイクリン系)という抗がん性抗生物質に分類されます。細胞増殖に必要なDNAやRNAの合成を抑えることで抗腫瘍効果を現します。
乳がんに対してはシクロホスファミドとの併用(AC療法)などのレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順など)で使われます。ほかに膀胱がんにおけるM-VAC療法、造血器腫瘍の治療(非ホジキンリンパ腫におけるR-CHOP療法など)といった場面で使われることもあります。

ドキソルビシンの注意すべき副作用として心機能障害、骨髄抑制(こつずいよくせい)、吐き気などの消化器症状、脱毛などがあります。
心機能障害は特に注意すべき副作用の一つです。動悸(どうき)や息切れなどが現れた場合は医師や薬剤師などに急いで連絡してください。ドキソルビシンは血管刺激性という性質もあり、血管に沿った痛み(血管痛)が生じる可能性があります。またドキソルビシンの薬液の色(赤色)の影響で尿が赤くなる可能性があります。
ドキソルビシン自体の吐き気に対するリスクは中等度に分類されていますが、シクロホスファミドと併用するAC療法では高度催吐性リスクとなるため通常、NK1受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、副腎皮質ホルモンなどの併用が考慮されます。

エピルビシンはドキソルビシンなどと同じアントラサイクリン系の抗がん性抗生物質に分類される抗がん剤です。腫瘍細胞のDNAと結合し核酸(DNA、RNA)の合成を抑制することで抗腫瘍効果を現します。投与量や病態などによっても異なりますが、一般的にアントラサイクリン系薬剤の中ではドキソルビシンと比較して心毒性が軽減されているとされています。
エピルビシンは乳がんにおけるシクロホスファミドとの併用療法(EC療法)やシクロホスファミド及びフルオロウラシルとの併用療法(CEF療法)などで使われるほか、膀胱がん治療での膀胱内注入療法、肝がん(肝動注療法)、造血器腫瘍などに対しても使われることがあります。

注意すべき副作用もドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤と類似しています。心機能障害、骨髄抑制(それに伴う間質性肺炎など)、吐き気などの消化器症状、脱毛などがあります。投与時に血管刺激性による血管痛が生じる可能性があることや、薬液の色(赤色)の影響で尿が赤くなる可能性があることも同様です。
エピルビシン自体の吐き気に対するリスクは中等度ですが、乳がん治療ではEC療法やCEF療法といったようにシクロホスファミドと併用することが多く、この場合には高度催吐性リスクとなるため通常、NK1受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、副腎皮質ホルモンなどの併用が考慮されます。

ドセタキセルは、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管(びしょうかん)を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えやがて細胞死へ誘導させることで抗腫瘍効果を現す微小管阻害薬の一つです。
ドセタキセルはイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯により、微小管阻害薬の中でも、学名を由来としたタキサン系という種類に分類されます。

乳がんでは術後の抗がん剤治療化学療法)や転移・再発乳がんに対して単独で使われたり、シクロホスファミドとの併用(TC療法)、トラスツズマブ及びペルツズマブとの併用療法(PER/HER/DTX療法)などが治療の選択肢となっています。
ドセタキセルは乳がんのほかにも非小細胞肺がん卵巣がん子宮体がん前立腺がんなど多くのがん治療に使われることがある抗がん剤です。

ドセタキセルの注意すべき副作用に過敏症、骨髄抑制、関節や筋肉の痛み、しびれなどの末梢神経障害、脱毛などがあります。病態などにもよりますが脱毛は抗がん剤の中でも高頻度であらわれる薬の一つで、眉毛などが抜ける場合も考えられます。必要に応じて帽子やウイッグを用意するなどの事前準備も大切です。
またドセタキセル製剤は添加物や添付溶解液にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合には注意が必要です。

パクリタキセルは、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えやがて細胞死へ誘導させることで抗腫瘍効果を現す微小管阻害薬の一つです。
ドセタキセルと同じくイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯により、微小管阻害薬の中でも、学名を由来としたタキサン系という種類に分類されます。

乳がん治療において単独で使われる他、カルボプラチン(プラチナ製剤)との併用療法(TC療法)などで使われる場合もあります。乳がん以外にも肺がん胃がん卵巣がん子宮体がん膀胱がんなどの多くのがん治療に使われることがある抗がん剤です。

パクリタキセルの注意すべき副作用に過敏症、骨髄抑制、関節や筋肉の痛み、しびれなどの末梢神経障害、脱毛などがあります。病態などにもよりますが脱毛は抗がん剤の中でも高頻度で現れる薬の一つです。
また製剤の添加物にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合には注意が必要です。ただし、パクリタキセルを人血清アルブミンという物質と結合させることでエタノール(及びポリオキシエチレンヒマシ油)を含まないようにしたnabパクリタキセル(商品名:アブラキサン®)という薬剤もあります。nabパクリタキセルはアルコール過敏の体質を持つ場合でも投与可能で、乳がん治療の選択肢となることもあります。

シクロホスファミドはアルキル化剤という抗がん剤に分類されます。投与後に生体内で代謝を受けてから効果を現すように造られたプロドラッグです。生体内で代謝・活性化されたあと、細胞分裂に必要なDNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果を現します。
シクロホスファミドは日本では1962年に発売されました。抗がん剤の中でも歴史が長い薬剤の一つですが、2003年に「造血幹細胞移植の前治療」への保険適用が承認されるなど、現在でも多くの治療に使われています。
乳がんにおいてはドキソルビシンとの併用(AC療法)及びエピルビシンとの併用(EC療法やCEF療法)などの有用性が確認されたことから、2005年に乳がんの術前あるいは術後の抗がん剤治療(化学療法)や他の抗がん剤との併用療法が承認されています。
乳がん治療以外にも、悪性リンパ腫(R-CHOP療法、CHASE療法など)などの造血器腫瘍、褐色細胞腫、治療抵抗性のリウマチ性疾患などの治療の選択肢にもなっています。

シクロホスファミドの注意すべき副作用としてアナフィラキシー、骨髄抑制、肺障害(間質性肺炎など)、心筋障害、イレウス、吐き気や口内炎などの消化器症状、性機能障害、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群SIADH)、肝機能障害などがあります。
吐き気は抗がん剤の中でも高度催吐性リスクに分類される薬の一つで、乳がんのEC療法やCEF療法などにおいても通常、NK1受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、副腎皮質ホルモンなどの併用が考慮されます。
またシクロホスファミドは体内で分解されたあと、主に尿として排泄されますが、この尿が膀胱内に長時間溜まると膀胱炎などを引き起こすことがあります。腎機能障害などの対策として医師などからシクロホスファミド使用後の水分摂取に関する指示がされることもあるため、事前に注意事項などをしっかりと聞いておくことも大切です。

フルオロウラシルは、がん細胞の代謝を阻害しがん細胞を死滅させる代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)という種類に分類されます。細胞増殖に必要なDNAの合成を障害する作用やRNAの機能障害を引き起こす作用により、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導させます。
現在では単剤(抗がん剤として単独)で使うことは少なく、他の抗がん剤もしくは5-FUの効果を増強する薬剤(主に活性型葉酸製剤)との併用により使われます。

乳がんではシクロホスファミド及びエピルビシンとの併用療法(CEF療法)などの抗がん剤治療(化学療法)で使われます。乳がん以外にも大腸がん(FOLFOX療法、FOLFIRI療法など)、食道がん(FP療法など)など多くのがん治療で使われている薬剤の一つです。

5-FUで注意すべき副作用は吐き気や下痢、食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、うっ血性心不全、口腔粘膜障害、手足症候群などです。これら5-FU自体の副作用に加え、併用する抗がん剤の副作用が加わることが考えられます。また5-FUは亜鉛の吸収を悪くするため味覚障害が現れる場合があります。味覚障害は食欲不振と合わせて注意したい副作用です。

テガフール・ウラシル(UFT)はテガフールとウラシルの2種類の薬を配合した製剤です。
テガフールはフルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグです。体内で徐々に5-FUに変換され抗腫瘍効果を現します。一方ウラシルは5-FUを分解するDPD(dihydropyrimidine dehydrogenase;ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ)という酵素の活性を阻害することで5-FUの血中濃度を高めて抗腫瘍効果を増強する役割を果たします。テガフール単独の製剤(フトラフール®)もありますが、UFTはウラシルと配合されることで腫瘍内で5-FU(及びその活性代謝物)の高濃度維持を可能にしています。

乳がん治療においては術後化学療法などの選択肢となる場合が考えられます。その他、大腸がん胃がんなどの治療で使われる場合があります。

注意すべき副作用に下痢や食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、肝機能障害などがあります。また口腔粘膜障害が現れる場合があります。UFTは内服薬(飲み薬)なので、口内炎などによって飲みにくさが生じる可能性もあり注意が必要です。

5-FUなどと同じピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤です。
体内に吸収された後、肝臓や腫瘍組織で代謝され5-FUに変換されることで抗腫瘍効果を現します。5-FUの腫瘍内での濃度を高め、腫瘍組織以外での副作用を最小限に抑える目的で開発された経緯を持ちます。最初に乳がんの抗がん剤として承認され、胃がん大腸がんの抗がん剤としても承認されました。

乳がん治療では、術後の抗がん剤治療(化学療法)やアントラサイクリン系など他の抗がん剤の治療歴がある場合などの選択肢となることが考えられます。
カペシタビンは「14日間服用後、7日間休薬」など、休薬期間を設ける場合が多い抗がん剤ですので、服用方法などに関して処方医からしっかりと説明を聞いておくことも大切です。

カペシタビンは骨髄や消化管で活性体になりにくいため副作用は比較的軽減されているとも考えられますが、下痢などの消化器症状、手足症候群、肝機能障害、骨髄抑制などには注意が必要です。

S-1はテガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムという3種類の成分からできている配合剤です。
中心となるのはテガフールです。テガフールは体内で5-FUに徐々に変換され抗腫瘍効果を現します。他の2種類の成分はテガフールを補助する役割を果たします。ギメラシルは5-FUを分解するDPDという酵素の活性を阻害することで5-FUの血中濃度を高めて抗腫瘍効果を増強する役割を果たします。オテラシルカリウムは5-FUの主な副作用である消化器症状(消化管粘膜障害)を軽減する作用を現します。
S-1は元々、胃がんの抗がん剤として承認を受けました。のちに頭頸部がん、大腸がん肺がん(非小細胞肺がん)、乳がん、膵がんといったがんに対しても追加承認されました。

転移・再発乳がんにおける1次治療(最初に使う抗がん剤治療)や他の標準的な治療に反応のない場合などの選択肢となっています。
S-1は休薬期間を設ける場合も多く「28日間連日服用後、14日間休薬」などの服薬スケジュールが指示される場合があります。処方医や薬剤師から服薬方法などをしっかりと聞いておくことも大切です。

S-1の副作用として、オテラシルカリウムによって負担が軽減されているとはいえ食欲不振、吐き気、下痢、口内炎などの消化器症状には注意が必要です。他に骨髄抑制、肝機能障害、間質性肺炎などにも注意が必要です。
また、皮膚や爪などが黒くなる色素沈着や流涙(涙管が狭まり涙があふれ出る)といった症状が現れる場合もあります。
S-1は内服薬(飲み薬)ですが、嚥下機能(飲み込む能力)の状態などによりカプセル(ティーエスワン®配合カプセルなど)が飲み込みにくい場合には口腔内崩壊錠(ティーエスワン®配合OD錠)や顆粒剤(ティーエスワン®配合顆粒)といった剤形の変更も可能です。

ゲムシタビンは細胞分裂に必要なDNA合成の過程を阻害し、がん細胞の増殖を抑える代謝拮抗薬(たいしゃきっこうやく)という種類に分類される抗がん剤です。
細胞内で代謝されたあと、DNA鎖に取り込まれることによって細胞の自滅(アポトーシス)を誘発させる作用などによって抗腫瘍効果をあらわします。

乳がん治療においては単剤での投与やパクリタキセルとの併用療法などで使われる場合があります。乳がん以外にも非小細胞肺がん膵がん卵巣がん膀胱がん胆道がん、乳がんなど多くのがんに保険適用を持つ抗がん剤です。

ゲムシタビンの注意すべき副作用に骨髄抑制、間質性肺炎倦怠感、吐き気や食欲不振などの消化器症状、血管痛などの注射部位反応、肝機能障害などがあります。また発熱が特に初回の治療後に出現しやすいとされます。発熱が現れた場合は感染症にかかっている可能性なども考慮し、自己判断せずに医師などの指示に従い適切に対処することも大切です。

細胞分裂に必要な微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を阻害する微小管阻害薬という種類に分類される薬です。微小管はチューブリンというタンパク質が重なり合って(重合して)形成されます。エリブリンはチューブリンの重合を阻害することによって微小管の伸長を阻害することで、細胞分裂を途中で停止させ細胞死へ誘導することで抗腫瘍効果を現します。
エリブリンは、同じく微小管阻害薬に分類されるタキサン系抗がん剤(ドセタキセルやパクリタキセルなど)とは異なる部位に作用する抗がん剤です。そのこともありエリブリンは乳がん治療において主に、タキサン系及びアントラサイクリン系(アンスラサイクリン系)の抗がん剤を含む治療歴がある進行・再発乳がんに対する治療の選択肢となっています。
乳がんの他、2016年2月に悪性軟部腫瘍に対する治療薬として承認されています。

エリブリンの注意すべき副作用に骨髄抑制、過敏症、末梢神経障害、脱毛、食欲不振や吐き気などの消化器症状、肝機能障害などがあります。特に骨髄抑制は高頻度であらわれるとされ、好中球減少や血小板減少などの度合いによっては薬剤の投与量の減量などが考慮されます。
発熱(感染症)や出血、貧血など骨髄抑制の兆候に対して注意し、症状があらわれた場合は自己判断せず、医師や薬剤師などに連絡するなど適切に対処することも大切です。またエリブリン製剤のハラヴェン®は添加物としてエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合にはより注意が必要となります。

ビノレルビンは細胞分裂に必要な微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を阻害する微小管阻害薬です。ビノレルビンは微小管阻害薬の中でもニチニチソウ(旧学名:Vinca rosea)というマダガスカル島の植物成分を元に造られた薬で、旧学名を由来とするビンカアルカロイド系という種類に分類されます。同じく微小管阻害薬で乳がんなどの治療に使われるタキサン系(ドセタキセルやパクリタキセルなど)やエリブリンとは作用するポイントは異なりますが、細胞分裂を途中で阻害することで抗腫瘍効果をあらわします。
ビノレルビンは最初、肺がん(非小細胞肺がん)の治療薬として承認されたあと、アントラサイクリン系及びタキサン系の抗がん剤による治療歴がある場合などに有効であった症例報告もあり、2005年に乳がんに対しても承認されました。主に手術不能又は再発乳がんに対しての選択肢となっています。

ビノレルビンは、ビンカアルカロイド系のほかの薬に比べて神経軸索(しんけいじくさく)に対する作用が軽度ではありますが、末梢神経障害には注意が必要です。また血管への刺激が比較的強く、注射部位が赤くなったり痛みを感じる場合を考慮し、血流がよく太い血管(静脈)から投与されることもあります。その他骨髄抑制、便秘イレウスなどにも注意が必要です。

カルボプラチンは、化学構造中にプラチナ(白金:Pt)を含むことからプラチナ製剤という種類に分類される抗がん剤です。細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の分裂を止め、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導することで抗腫瘍効果を現します。
カルボプラチンは、同じくプラチナ製剤で多くのがん化学療法のレジメンで使われるシスプラチンという抗がん剤に匹敵する抗腫瘍活性を持つ薬剤です。シスプラチンに比べて腎毒性や消化器障害などの軽減が期待できます。なんらかの理由でシスプラチンが適しないような症例に対してシスプラチンの代わりとしてカルボプラチンが使われることもあります。
乳がん治療においてはカルボプラチンとパクリタキセルとの併用療法(TC療法)などが治療の選択肢になっています。また乳がん以外にも肺がん卵巣がん子宮頸がんなど多くのがん治療に使われる抗がん剤です。

カルボプラチンはシスプラチンと比べれば副作用の軽減が期待できますが、それでも副作用はあります。腎障害(急性腎障害など)、吐き気などの消化器症状、骨髄抑制、間質性肺炎などに注意が必要です。

イリノテカンは植物(喜樹:Camptotheca acuminata)由来の抗がん剤です。細胞分裂が進まないようにする作用により、がん細胞の増殖を阻止することで抗腫瘍効果を現すトポイソメラーゼ阻害薬という種類に分類される薬です。
がんを含めた細胞の増殖は細胞分裂によって起こります。細胞分裂に必要な酵素にトポイソメラーゼがあります。イリノテカンは主に「トポイソメラーゼI」のタイプを阻害する作用を持ちます。

乳がん治療ではアントラサイクリン系やタキサン系などの抗がん剤で十分な効果が得られない場合などにイリノテカンが選択肢となることが考えられます。イリノテカンは乳がんだけでなく、大腸がん(FOLFIRI療法など)、胃がん肺がん子宮頸がんなどの治療で使われることがあります。

イリノテカンは骨髄抑制、間質性肺炎などのほか、特に下痢に対しての注意が必要です。イリノテカンの下痢は薬剤の投与中から直後に現れる早発性の下痢と、投与から数日経って現れる遅発性の下痢の2種類があります。それぞれの下痢に合わせた対処が必要となります。例えば、遅発性の下痢に対してロペラミド(商品名:ロペミン®など)などの止瀉薬(下痢止め)での対応がとられる場合もあります。また漢方薬の半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)はイリノテカンによる早発性と遅発性の両方の下痢に有効とされ、下痢に対する予防薬としても有用とされています。

メトトレキサート(略号:MTX)は葉酸代謝拮抗薬(ようさんたいしゃきっこうやく)と呼ばれる種類の薬剤です。
細胞の増殖には遺伝情報を保存しているDNAの合成が必要となります。DNA合成にはビタミンの一つである葉酸(ようさん)が必要です。メトトレキサートはDNA合成に必要な活性葉酸の産生に関わる酵素(DHFR:ジヒドロ葉酸還元酵素)の働きを阻害することで抗腫瘍効果を現します。
乳がんの抗がん剤治療ではシクロホスファミド(CY、CPAなど)とメトトレキサート(MTX)及びフルオロウラシル(5-FU)によるCMF療法が標準治療として行われてきましたが、現在ではアントラサイクリン系抗がん剤を含むレジメン(CEF療法など)などがより有効であると確認され標準治療となっています。
乳がん以外では膀胱がんにおけるM-VAC療法などのレジメンにメトトレキサートが使われます。また、メトトレキサート自体はDNA合成の活性を抑えることによるリンパ球免疫細胞の一種)の増殖抑制作用などにより、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療薬(例:リウマトレックス®など)としても使われています。

メトトレキサートの注意すべき副作用として、吐き気や食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制およびそれに伴う間質性肺炎など、肝機能障害、腎障害などがあります。また粘膜障害にも注意が必要で日々の生活の中での口腔ケアなども大切です。

細胞増殖に必要なDNAに結合(架橋形成)し腫瘍細胞の核酸合成を阻害したり、DNA合成に必要な酵素(トポイソメラーゼII)を阻害することによって抗腫瘍効果を現します。
ミトキサントロンはドキソルビシンなどと同じアントラサイクリン系の抗がん性抗生物質に分類されます。ミトキサントロンは心毒性の軽減化と累積総投与量の増加を目的に開発された経緯があり、急性白血病悪性リンパ腫、乳がん、肝細胞がんの保険適用を持つ薬剤です。
ミトキサントロンは一般的には乳がん治療における標準治療の薬剤ではないですが、交差耐性(ある薬物に対して耐性が形成された時に、その薬物と類似の構造や作用を有する他の薬物に対しても耐性が生じること)が少ないという特徴を持ち、何らかの理由でアントラサイクリン系抗がん剤に対して耐性ができ治療効果が十分に得られない場合でもミトキサントロンは効果が期待できるとされています。

ミトキサントロンの注意すべき副作用として心機能障害、骨髄抑制、過敏症、吐き気などの消化器症状などがあります。またミトキサントロン製剤(ノバントロン®)は暗青色の薬剤で、投与後に皮膚や眼球、尿などが青色に近い色に着色する場合が考えられます。事前に医師や薬剤師などからしっかりと説明を聞いておくことも大切です。

抗がん剤の中でも土壌などに含まれる微生物を由来とした抗がん剤を抗がん性抗生物質(あるいは抗腫瘍性抗生物質、抗悪性腫瘍性抗生物質)と呼びます。マイトマイシンCは抗がん性抗生物質の一つです。細胞増殖に必要なDNAの複製を阻害する作用や、フリーラジカルといってDNAに対して損傷を与える物質を介してDNA鎖を切断する作用などにより、抗腫瘍効果を現します。
膀胱がん(主に膀胱内注入療法)、白血病など多くのがんに保険適用を持つ薬剤です。乳がん治療においてはアントラサイクリン系やタキサン系の抗がん剤で無効だった症例などの選択肢となることが考えられます。

マイトマイシンCの注意すべき副作用に骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血など)、発熱、過敏症、発赤(ほっせき)や潰瘍などの皮膚症状(主に注射部位)、腎機能障害などがあります。血球成分が最も減少する最低値に達するまでの期間が比較的長く(例:白血球や血小板が投与後21〜28日に最低値となると考えられる)、感染症や出血を伴うような外傷に注意するなど日常生活における対策も大切です。

ドキシフルリジンは、フルオロウラシル(5-FU)などと同じピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤です。
体内に吸収された後、主に腫瘍組織において高い活性をもつ酵素(ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ:PyNPase)によって代謝され、5-FUに変換されることで抗腫瘍効果を現します。
ドキシフルリジンは乳がんの他、胃がん大腸がん子宮頸がん膀胱がんの保険適用をもつ薬剤です。
ドキシフルリジンが開発された後、さらに高い臨床効果や副作用の軽減などを目指して、S-1(商品名:ティーエスワン®など)やカペシタビン(商品名:ゼローダ®)といった同系統の抗がん剤が開発されたことなどもあり、ドキシフルリジンが使われる状況は限定されてきてはいますが、現在でも治療の選択肢の一つになっています。

ドキシフルリジンの注意すべき副作用に吐き気や下痢、食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血など)、うっ血性心不全、口腔粘膜障害、皮膚障害などがあります。