早期乳がん手術後の治療に薬剤の新たな役割、米学会が推奨 | MEDLEYニュース
2018.06.25 | ニュース

早期乳がん手術後の治療に薬剤の新たな役割、米学会が推奨

カペシタビン、ペルツズマブ、ネラチニブについて更新
from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology
早期乳がん手術後の治療に薬剤の新たな役割、米学会が推奨の写真
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早期乳がんの治療では手術が重要ですが、手術の前後に薬物治療を組み合わせることもあります。状況に応じて最適と思われる薬の選び方について、アメリカの学会が新しい推奨を示しました。

早期乳がんの一般的な治療

乳がんの進行度は一般的に「ステージ」という言葉で分類されます。ステージIからステージIVまでの分類のほか、ステージIの乳がんとなる手前の段階(非浸潤性乳管がん)を「ステージ0」と呼ぶこともあります。ステージIIはさらに細かくステージIIAとステージIIBに、ステージIIIはステージIIIA・ステージIIIB・ステージIIICに分けられます。

ここでは「早期乳がん」として主にステージIからステージIIAの乳がんを検討の対象としています。

早期乳がんに対する治療は、一般的には手術が中心となります。早期乳がんの手術では、がんを残さず取り除くことで根治を狙えることが多いですが、目に見えないほどの小さいがんが残る可能性もあるため、手術後の再発を防ぐための補助療法として、化学療法抗がん剤治療)、ホルモン療法、放射線治療などが使われます。補助療法としての薬物治療は、目的に応じて、手術のあとに行うことも、手術の前に行うこともあります。

 

早期乳がんの術後補助療法についてASCOが推奨を更新

アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)が、早期乳がんの手術後の薬物治療について、ガイドラインを更新し、新たに3点の推奨を加えました。2016年以来の更新となりました。

更新されたガイドラインは、早期乳がん(主にステージIからステージIIAの浸潤がん)に対して根治目的の手術を行ったあと、薬物治療を検討しているまたは実行中の患者を対象にしています。ここでは検討の範囲からホルモン療法は除き、分子標的薬とその他の抗がん剤を含めています。

更新にあたって専門家が研究班となり、最近報告された研究を参考に3点の疑問を選んで、それぞれに対応するデータを調査して推奨を決めました。

その結果、3点の推奨が新たに加わりました。

 

  • 標準的な術前のアントラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん剤を使った化学療法に加えて、手術で浸潤がんが残ったHER2陰性の早期乳がん患者に、補助療法としてカペシタビン6から8サイクルを検討してもよい。

  • HER2陽性の早期乳がん患者について、トラスツズマブを使った多剤併用化学療法に、補助療法として1年間のペルツズマブを加えてもよい。

  • HER2陽性の早期乳がん患者でトラスツズマブのあとにネラチニブによる拡大補助療法を使ってもよい。ネラチニブは下痢が多いため下痢を予防しなければならない。

 

ただし、新しい推奨にある内容は、カペシタビン(商品名:ゼローダ®)またはペルツズマブ(商品名:パージェタ®)の効能・効果として日本では未承認です。また、ネラチニブは日本では販売開始されていません(いずれも2018年6月時点)。

 

変更がなかった推奨

ほかの推奨は2016年版から変更なしとされました。大意は以下のとおりです。

 

  • アントラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん剤を含むレジメンが、それに耐えられる患者にとって、特に高リスクと見込まれた患者にとっては、補助化学療法として最適である。

  • 高リスクの乳がんがあるがタキサン系抗がん剤は使わない方針の患者には、アントラサイクリン系抗がん剤とシクロホスファミドを含む3剤併用療法(シクロホスファミド・ドキソルビシン・フルオロウラシルなど)を最適な用量で使うことを勧める。

  • アントラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん剤のレジメンに加える補助療法として、ゲムシタビンまたはカペシタビンは推奨しない。

  • 65歳以上の患者で、標準的なレジメンの代わりの補助化学療法としてカペシタビンは推奨しない。

  • アントラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん剤の禁忌にあたる人で、ドキソルビシン・シクロホスファミドの代わりにシクロホスファミド(経口)・メトトレキサート・フルオロウラシルは選択可能である。

  • 以下のレジメンが使用可能である。

    • フルオロウラシル・エピルビシン・シクロホスファミド×3回→ドセタキセル×3回

    • ドキソルビシン・シクロホスファミド×4回→ドセタキセル×4回

    • ドセタキセル・ドキソルビシン・シクロホスファミド×6回

    • ドキソルビシン・シクロホスファミド×4回→パクリタキセル

    • ドキソルビシン・シクロホスファミド(ドースデンス)→パクリタキセル

    • エピルビシン・シクロホスファミド(ドースデンス)×4回→パクリタキセル×4回

  • ドキソルビシン・シクロホスファミド×4回の代わりとしてはドセタキセル・シクロホスファミド×4回を推奨する。シクロホスファミド(経口)・メトトレキサート・フルオロウラシル×6回でもよい。

  • HER2陽性乳がんの患者だけが補助療法のトラスツズマブを提案されるべきである。

  • HER2陽性でリンパ節転移がある患者と、HER2陽性でリンパ節転移がなく、がんの大きさが1cmを超える患者は誰でも、トラスツズマブと化学療法の組み合わせが推奨される。

  • リンパ節転移がなく大きさ1cm以下のがんにもトラスツズマブを使う治療は検討できる。

  • トラスツズマブは、妥当な補助化学療法のレジメンのすべてと組み合わせることができる。

  • 化学療法のレジメンの中でアントラサイクリン系抗がん剤を使用するのと同時にトラスツズマブを使用することは、心臓に対する害を増強させる恐れがあり、推奨しない。

  • トラスツズマブは、アントラサイクリン系抗がん剤以外の化学療法のレジメンと同時に(続けてではなく)使うことが望ましい。

  • ドキソルビシン・シクロホスファミド→ドセタキセル・トラスツズマブよりも、ドセタキセル・カルボプラチン・トラスツズマブのほうが心臓に対する害が少ないため、心臓に対する懸念が強い患者では推奨する。

  • 化学療法にトラスツズマブを加えることの効果が研究結果としては未確認の場合もあるが、心臓に対する害をやわらげるなどの目的に対して合理的な選択肢と言える。

  • 患者はトラスツズマブの年間使用量の合計を提示され、使用期間には定期的に心臓の機能を確認されるべきである。

 

より効果的な薬物治療を目指す試み

アメリカ臨床腫瘍学会による、乳がんの薬物治療についての新しい推奨を紹介しました。この推奨の範囲のほか、ホルモン療法が使われる場合や、放射線治療が併用される場合などもあります。

がん治療薬は年々新しく開発されています。同時に、既存の薬についても、状況に応じて最適な使い方を探る研究データが積み上げられています。こうした新しい情報に基づいて、個々の患者の選択を助けるガイドラインも更新されています。

アメリカ臨床腫瘍学会は国際的な影響力を持っています。薬剤の承認状況など、アメリカでの推奨がそのまま日本に当てはまらない点もありますが、この更新が近い将来、日本に何らかの影響を及ぼすことも考えられます。

執筆者

MEDLEY編集部

参考文献

Selection of Optimal Adjuvant Chemotherapy and Targeted Therapy for Early Breast Cancer: ASCO Clinical Practice Guideline Focused Update.

J Clin Oncol. 2018 May 22. [Epub ahead of print]

[PMID: 29787356]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。