2018.01.18 | ニュース

医学研究の対象者の選び方について、米国立機関の研究者が提言

未来の医療のために
from JAMA
医学研究の対象者の選び方について、米国立機関の研究者が提言の写真
(c) Ints - Fotolia.com

実際の患者を対象とした研究のデータが医療に活かされていますが、データが得にくい場面もあります。たとえば妊娠中の女性などが研究の対象から除かれることがあります。そうした状況を問題視する意見を紹介します。

アメリカの研究者の意見

アメリカの国立小児保健発達研究所(NICHD)の研究者2人が、医学誌『JAMA』に寄稿した意見文で、医学研究の対象から除かれる傾向にある人たちがいるという問題を提起しました。

 

個別化医療と研究データ

意見文は、患者個人に適した治療を細かく選ぶ「個別化医療」を例にとって問題点を説明しています。

個別化医療の例としては、乳がん悪性黒色腫皮膚がんの一種)の治療で、がん細胞の遺伝子検査を行い、結果に応じて効果を見込める治療薬を選ぶといったことが一部の場合で可能になっていることを挙げています。

治療効果などを細かく予測するためには、対応する研究データが必要です。実際の患者が実際に治療を受けた結果が全世界で共有されることによって、同様の状況に当てはまる人についての予測が可能になります。

この考え方に対して、意見文は当てはまるデータが限られている人々がいることを指摘しています。

 

データが限られている人々とは?

著者らが注目する人々の一例が、妊娠中の女性です。

新薬の研究では、対象とする患者が妊娠していないことを参加条件のひとつとする場合があります。新薬が胎児に影響するかしないか不明な段階では、胎児の安全のために妊娠中の人を研究の対象としないことが考えられます。このような目的もある一方、妊娠中の女性を対象とした研究が1件も行われなければ、新薬を妊娠中にも安全に使えるかどうかは不明のままとなります。

著者らは、このように研究データが少ない傾向にある人たちの例を挙げています。

  • 子供
  • 高齢者
  • 妊娠中または授乳中の女性
  • 身体の障害や知的障害を持つ人

著者らの計算では、アメリカで以上のどれかに当てはまる人の数を合計すると全人口の58%になるとされています。

著者らはこうした人々を対象に含む研究の必要性を主張しています。

現状について、著者らが臨床試験データベースから収集した338件の研究計画を調べたところ、妊娠中の女性については68%、授乳中の女性については47.3%、子供については75.7%、高齢者については27.8%、知的障害または発達障害のある人については12.4%、身体障害のある人については1.8%の研究計画が、対象としないことを明記してありました

 

データが限られている人々のために何ができるのか

研究データが限られている人々に対して、著者らはそうした人々の身体の状態などによって研究結果が変わる可能性を強調し、研究対象に含めることの重要性を主張しています。

研究がこうした人々を対象としないことには正当な理由もあることを著者らは認めていますが、採用に時間がかかる・害を受けやすいと思われるというだけの理由で対象から除くことには反対しています。

より多様な人々についてのデータを確保するための提案もあります。製薬企業の研究が多様な人を対象に含めるよう政策によって求めること、臨床試験ではなく個々の判断で適応外使用(効能・効果を認められた病気や状態以外に対する使用)をした人の記録を収集することなどが提案されています。

 

研究対象が広がると何が変わるのか

アメリカの研究者による、研究データが限られている人々についての意見を紹介しました。紹介した意見文も認めているように、研究を行うこと自体が患者を危険にさらす可能性もあるなど、望まれるデータを手に入れるためにはいくつもの課題があります。解決に向けて政策や製薬企業、研究者、そして対象となる患者が協調するには、世の中を巻き込んだ議論が欠かせないでしょう。

将来こうした議論が進み、より幅広く情報が得られるようになれば、より多くの状況で証拠のある合理的な判断が可能になり、患者や家族と医師などの話し合いがスムーズになることが期待できます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Improving Public Health Requires Inclusion of Underrepresented Populations in Research.

JAMA. 2017 Dec 28. [Epub ahead of print]

[PMID: 29285540]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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