性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

性病は女性にも!症状はおりものの変化、腹痛、性器の周りに注意

女性が性病にかかったときに出やすい症状はおりものの変化です。ほかに腹痛、性器の周りの変化など、女性が気を付けたい性病の症状と、性病を見分けるポイントについて説明します。

1. 女性の性病によるおりものの変化

おりものに変化が出るときの多くは、妊娠やホルモンバランスの崩れが原因で、性病ではありません。おりものの症状がある性病には、膣トリコモナス症、性器カンジダ症、細菌性腟症、淋菌感染症淋病)、クラミジア感染症などがあります。性病が心配な女性はおりもののにおいや色の変化に特に注意してください。

膣トリコモナス症

膣トリコモナス症は、膣トリコモナス原虫による性病です。女性がかかると泡状のおりものが多量に出てきます。おりものに悪臭が伴うこともあります。詳しくは「膣トリコモナス症とは?原因、症状、検査、治療について」で説明しています。

性器カンジダ症

性器カンジダ症は、カビの一種のカンジダによる性病です。女性に出やすい症状としては強いかゆみが出て、おりものの量が増えます。膣の中にはチーズのような内容物が見えます。においはほとんどありません。

詳しくは「性器カンジダとは?原因、症状、治療薬について」で説明しています。

淋菌感染症(淋病)

淋菌感染症は代表的な性病です。淋菌に感染すると、を含んだ白色から黄色のおりものが出てきます。女性の淋菌感染はおりもの以外に症状が目立たないことが多いです。

淋菌クラミジアと同時に感染することが多いので、性病の症状かもしれないと思った女性は淋菌だけでなくクラミジアの検査も一緒にしてください。

淋菌感染症について詳しくは「淋菌感染症(淋病)とは?男女別症状の違い、検査、治療について」の項で説明しています。

クラミジア感染症

女性がクラミジアに感染したときの症状としては、白色から黄色のおりものが出てきます。膿を含んでいることも、膿がなく透明であることもあります。

明らかなおりものの症状があれば性病と気付きやすいですが、クラミジアに感染しても症状は軽いことが多く、ほかの症状は出にくいため、気づかないことが多いです。

女性にとってクラミジア不妊症の原因にもなります。

詳しくは「クラミジア感染症とは?症状、検査、治療薬など」の項で説明します。

細菌性膣症

細菌性腟症(細菌性腟炎)は、膣に雑菌がはびこった状態です。淋菌感染症クラミジア感染症は、膣に症状が出ていても細菌性腟症とは言いません。

女性の性病の中でも、細菌性膣症によるおりものは強い臭いがします。

おりもの以外に症状はないことが多いです。

2. 性器が赤くなる、ただれる女性の性病

女性の性器が赤くなったりただれたりする症状は、性病によるものと、帯状疱疹ベーチェット病、あるいは薬が原因のものがあります。それぞれの特徴を説明します。

性器ヘルペス

性器ヘルペス単純ヘルペスウイルスによる性病です。

性器の周りに水ぶくれやただれが多数出現します。女性と男性で症状が少し違います。

肛門性交をする人は肛門やその奥の直腸に水ぶくれやただれが出ることがあります。

性器ヘルペスはよく再発します。性器ヘルペスと診断されたことがあり、似た症状が出てきたときは再発の可能性が高いです。女性は特に妊娠への影響に注意が必要です。

性器ヘルペスについて詳しくは「性器ヘルペスとは?女性に多い症状、治療、再発予防について」で説明しています。

梅毒による硬性下疳(こうせいげかん)

梅毒は性病の中でも女性からお腹の赤ちゃんにうつる可能性がある点で注意が必要です。

梅毒に感染してから10-30日ほどで陰部の皮膚が固くなります。固くなった皮膚は次にただれてえぐれたむき出しの状態(潰瘍)を作ります。梅毒で陰部の皮膚が固くただれを作る症状を硬性下疳といいます。

梅毒では足の付根のリンパ節が腫れることも多いです。

梅毒について詳しくは「梅毒とは?症状、検査、治療について」で説明しています。

軟性下疳(なんせいげかん)

軟性下疳は軟性下疳ウイルスによる性病です。性器の周りの皮膚にアズキくらいの小さな赤いぼつぼつ(丘疹)が出てきます。ボツボツの中央では膿が出てきて、潰瘍になっていきます。

出血や痛みを伴います。

性病性リンパ肉芽腫(にくげしゅ)

陰部や直腸に、ただれや赤く小さなボツボツ(丘疹)が出てきます。

痛みやかゆみは出ないことが多いので、自分で気付かなかったり、気付いても病気だと思わないこともあります。

象皮症という症状もあります。性病性リンパ肉芽腫による象皮症は、皮膚ががさがさになる症状です。

その他の原因

他の女性の性病でも、淋菌感染症、膣トリコモナス症、膣カンジダ症でも性器が赤くなったりただれたりすることがあります。

性病以外では、帯状疱疹や薬に対する過敏反応(薬疹)、ベーチェット病といった病気でも女性の性器が赤くなったりただれたりすることがあります。

  • 帯状疱疹
    • 帯状疱疹では、小さな水ぶくれや皮膚の赤い変化が皮膚に出現します。出現する範囲は一部です。広い範囲に出ることは非常にまれです。
  • 薬疹
    • 皮膚に水ぶくれや赤い変化など大小さまざまな皮疹が出てきます。皮疹の範囲はお腹や背中を中心に広範囲であることが多いです。
  • ベーチェット病
    • ベーチェット病では陰部の潰瘍が有名です。潰瘍は女性では大陰唇、小陰唇、膣粘膜に出現します。潰瘍は痛みを伴うのも特徴になります。

性病にかかりそうな心当たりがないのに性器の皮膚に変化を感じたら、帯状疱疹ベーチェット病などを見逃さないため、皮膚科などで診察を受けるようにして下さい。

3. 性器にできものができる女性の性病

性病によって性器にできものが出現することがあります。性器にできものができるとびっくりして、性病に違いないと不安になってしまいますが、性病以外にも性器のできものを作る原因はあります。女性が気を付けたい代表的な病気の見分け方を説明します。

尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ)

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(主に6型、11型)による性病です。

原因のウイルスに感染してから3ヶ月ほどで茶色から黒色のボツボツが出現します。女性では外陰部、腟、子宮頸部、肛門の周囲や中、尿道口に感染し、感染した部位にボツボツが多発します。尖圭コンジローマのボツボツは出現した当初は数mm程度ですが、放っておくと段々と大きくなって、数cm以上になります。

詳しくは「尖圭コンジローマとは?症状、治療、原因(パピローマウイルス)について」で説明します。

扁平コンジローマ(へんぺいコンジローマ)

扁平コンジローマは梅毒の症状です。性病として梅毒に感染して3ヶ月位してから現れます。

女性器や肛門周囲に、白色から灰色で、皮膚から切り株のように隆起するできものができます。

尖圭コンジローマと名前が似ていますがまったく別の病気です。

梅毒について詳しくは「梅毒とは?症状、検査、治療について」で説明します。

性器伝染性軟属腫(せいきでんせんせいなんぞくしゅ)

伝染性軟属腫はウイルスによる感染症ですが、必ずしも性病ではありません。水いぼとも言う大きさ数mmくらいのできものです。

ただ性病として女性が感染することもあります。陰部に出現した伝染性軟属腫を性器伝染性軟属腫といいます。できものは光沢があり、中央はくぼんでいます。できものの内部に白い物質が入っています。

伝染性軟属腫の多くは自然に治ります。診断を確かめるために皮膚科で相談してください。

4. 下腹部に痛みが出たら女性は性病にも注意

女性の下腹部の痛みといえば生理痛ですが、性病でも下腹部痛が出現し、生理痛に隠れてなかなか気付かないことがあります。

骨盤内炎症性疾患(PID:Pelvic Inflammatory Disease)

骨盤内炎症性疾患(こつばんないえんしょうせいしっかん)は、お腹の中で子宮や卵巣、卵管、腹膜など広い範囲に炎症が起きている状態です。性病が悪化して骨盤内炎症性疾患を起こすことがあります。

原因になりやすい病原体はクラミジア淋菌です。

クラミジア淋菌は、女性なら最初は子宮頸部(しきゅうけいぶ)に感染します。感染はしだいに子宮や卵管を通ってさらにお腹の中のほうへと広がってきます。腹腔(ふくくう)という、臓器のすきまの空間にまでクラミジア淋菌が侵入すると骨盤内炎症性疾患を起こします。

下腹部を中心に激烈なお腹の痛みを感じることもある一方で、まったく症状がないことも多いです。感染に気づかず放置していると、不妊症子宮外妊娠につながることがあります。詳しくは、「症状の現れにくい性病は要注意!不妊の原因、子供への感染も」の項で説明しています。

子宮外妊娠

子宮外妊娠は性病ではありません。しかし、女性が性病にかかると子宮外妊娠が起こりやすくなります。

受精卵が正常に子宮に着床しないで、卵管や腹腔に着床してしまうと、ある程度大きくなったときに激痛が出たり大量に出血したりします。子宮外妊娠は非常に危ない状態で、多くの場合手術が必要になります。子宮外妊娠になってしまった胎児は生きて産まれることができません。妊娠したと思っていたら突然激痛や大量の出血があったときは救急車を呼んでください。

子宮外妊娠と性病の関係については、「症状の現れにくい性病は要注意!不妊の原因、子供への感染も」の項で説明しています。

5. 女性の性病を見分けにくいのはどんなとき?

女性の性病では、症状が出ない場合や症状が弱くて気付かない場合、腹痛の症状が出ていても生理痛と紛らわしい場合があります。

症状がなくても、性病に感染したかもしれないと思う出来事があれば、一度は検査をしてください。検査ができる施設について「性病は保健所と病院のどちらに行くべき?行かなくても治ることはある?」で説明しています。



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