性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

性器カンジダ症の症状は? 女性は抗生物質と妊娠に要注意

性器カンジダ症は、カンジダというカビが原因です。女性の主な症状は膣や性器の周囲に出る痛みやかゆみです。抗生物質は効きません。妊娠中は子どもに影響させないため注意して治療する必要があります。

1. 性器カンジダ症の原因は?

性器カンジダ症を起こすカンジダは真菌(カビ)の一種です。カンジダは常在菌といって、健康な人の身体にもいます。カンジダがいるから異常というわけではありません。したがって、身体にカンジダが見つかっても性行為でうつされたとは限りません。常在菌は通常は身体に害を与えることはありませんが、何らかの影響を受けてカンジダが異常に増殖してしまうと症状が出ます。

カンジダが増殖して性器カンジダ症を起こす原因は主に以下の2つです。

理由1:身体の免疫力が落ちた

カンジダなどの常在菌は、健康な身体の中では免疫によって抑えこまれています。つまり、免疫によって完全に排除されなくても、ある程度以上は増殖しません。

糖尿病ステロイドの長期内服により免疫力が落ちると、ふだんは抑えこまれているカンジダもしだいに増殖して、体内にはびこるようになります。

理由2:抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使った

抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使うと体内の細菌が殺されます。もちろんこれは感染を治すうえで大事な効果なのですが、体内の常在菌も殺してしまうことが問題となります。

体内には無数の常在菌が住んでいます。「腸内フローラ」と言われるのも常在菌の一部です。常在菌は常在菌どうしでバランスを保っています。しかし、抗菌薬(抗生剤)によって常在菌が殺されてしまうと、そのバランスが崩れてしまうのです。

カンジダには通常の抗菌薬(抗生剤)は効きません。カビに対して効果のある「抗真菌薬」という特殊な薬の一部のみカンジダに有効です。そのため、通常に出される抗菌薬を飲むと、カンジダ以外の常在菌が減ってカンジダが住みやすい環境ができてしまい、カンジダがはびこってくることがあります。

特に女性が抗菌薬(抗生剤)を飲んだあとに性器に症状を覚えたら要注意です。

2. 性器カンジダ症の症状は?

ほとんどの場合、性器カンジダ症の症状は女性に起こります。膣に症状が出るので膣カンジダ症とも言います。男性の性器でカンジダが増殖して症状が出ることはほとんどありません。

女性の性器カンジダ症の症状にはどんなものがあるでしょうか?

  • 性器のかゆみ
  • おりものの量が増える
  • 膣に白色の酒かす、ヨーグルトのようなものが付着する

以上がメインの症状になります。頻度は低いですが時々認められる症状としては、

  • 性器の熱感
  • 性器の痛み
  • 性交時の痛み
  • 排尿のしづらさ

などが挙げられます。

糖尿病患者やステロイドを飲んでいる人は症状が強いことが多いです。

3. 性器カンジダ症の診断

性器にカンジダがいても、症状を起こさなければ治療の必要はありません。

膣にカンジダがいる人は、妊娠している女性の約30%、妊娠していない女性の約15%と言われています。そのうちのおおよそ3割程度が治療が必要になると考えられています。ほかの7割ほどの人は、カンジダがいても悪さをしないので放っておいていいのです。

このため、診察と検査では以下の2点を調べることになります。

  • 性器にカンジダがいる
  • 性器にかゆみ、痛み、おりものが増えるなどの症状がある

カンジダを見つける方法は?

膣などの性器に炎症を起こす病気は、性器カンジダ症以外にも膣トリコモナス症や細菌性膣症などがあります。これらと区別するためには、膣にカンジダがいることを正確に検査しなくてはなりません。

性器カンジダ症と膣トリコモナス症、細菌性膣症は症状が違います。

  • 性器カンジダ症の症状
    • かゆみが強い、たまに痛みを伴う、性器周囲に炎症あり
  • 膣トリコモナス症の症状
    • おりものが多い、たまに臭いがきつくなる、性器周囲は正常
  • 細菌性膣症の症状
    • おりものは多くない、臭いがきつい、性器周囲は正常

症状の違いに注目すると、どの病気が怪しいのか見当がつきます。

さらに診断を正確にするために行う検査は以下のとおりです。

  • 問診
    • 実際にどんな症状で困っているかを話すことで、お医者さんに病気のことを分かってもらいます。どういうときに症状が出る、症状がどのくらい続いているといったことも伝えて下さい。多くの病気では、問診が適切な診断に近づく最も有効な作戦になります。自分で感じている症状のことをできるだけ詳しく、関係ありそうだと思ったことはなるべく多く伝えてください。
  • 性器とその周囲の様子の観察
    • 性器カンジダ症の特徴は、性器周囲に症状が出ることです。性器周囲に症状があった場合は、ほとんどが性器カンジダ症です。内診という椅子のようなものに座って足を開いて検査します。恥ずかしさを感じてしまうと思いますが、これも適切に治療するための大事な検査になります。
  • 腟の中のpH測定
    • 性器カンジダ症があると膣分泌液は強い酸性になります。酸性の度合いを表すpH(ピーエイチ、ペーハー)は4.5より低くなります。数字が小さいほうが強い酸性です。
  • 鏡検(きょうけん)
    • 鏡検とは顕微鏡検査のことです。性器カンジダ症を調べるためには膣分泌液を採取して顕微鏡で調べます。数十分程度で結果が出ます。
  • 培養
    • 膣分泌液を綿棒で取り出してシャーレに塗ります。腟分泌液にカンジダがいれば、24時間から48時間ほど培養すると増えて目に見える塊になります。

受診した時に明らかに性器カンジダ症と診断がつく場合はその日から治療が始まります。しかし、なかなか診断がつかない場合があります。その場合は培養検査が重要になります。

培養検査は数日で結果が出ることがほとんどです。なかなか菌が増えてないときは1週間くらいかかることはあります。このため、最初に受診した日に診断が決まらず、数日後にまた外来に来てくださいと言われることがあります。培養検査の結果を見てカンジダがいれば性器カンジダ症に診断が決まり、治療法も決められることになります。

4. 性器カンジダ症の治療

性器カンジダ症は主に薬で治療します。

症状が急激でよほど強くないかぎりは治療中に性交をしても問題ありません。カンジダは症状が出ない人の身体にもいる常在菌で、うつることに神経質になる必要はありません。

性器カンジダ症でよく使われる薬の例を示します。下の薬のどれかを使って治療します。

  • クロトリマゾール(エンペシド®)100mgを1日1回膣深くに入れる×7日間
  • ミコナゾール(フロリード®)100mgを1日1回膣深くに入れる×7日間
  • フルコナゾール(ジフルカン®)200mgを1日1回内服(飲む)×7日間

この他にも週に1度膣に入れれば良い薬や塗り薬もあります。

ただし、市販の塗り薬などを試すのはお勧めできません。カンジダには抗生物質が効かないだけでなく、間違った薬を使うと性器カンジダ症を悪化させる可能性もあります。

自分の生活により適している治療方法を選ぶためにも、お医者さんに相談してみましょう。特に、飲み薬は妊娠中は避けるべきなので、妊娠していないか確かめたうえ治療を始めることが大切です。

5. 妊婦の性器カンジダ症は要注意!

出産時に膣内に大量のカンジダがいると、子供が産道を通るときに感染がうつる恐れがあります。このため、妊娠中には症状がなくてもカンジダがいるか調べる検査が勧められます。膣内にカンジダが見つかったときは、以下の場合に治療が勧められます。

  • かゆみ、おりものの増量などの症状があるとき
  • 36週以降で膣内に大量のカンジダがいるとき

ところが、飲み薬のフルコナゾール(ジフルカン®)やイトラコナゾール(イトリゾール®)は胎児に影響する恐れがあります。

そこで、治療には飲み薬を避けて、膣に入れる薬や塗り薬で治療することになります。

妊娠していないと思っているときに症状が出てカンジダが見つかったときは、性器カンジダ症の治療を始める前に妊娠していないか確かめることが大切です。

6. まとめ

性器カンジダ症の特徴をまとめます。

  • 女性に多い
  • 主な症状はかゆみ、おりもの、膣に白い酒かすのようなものが付着する
  • 免疫力が落ちたとき、抗生物質を使ったときにかかりやすい
  • カンジダの薬を使うときは妊娠していないか注意

性器カンジダ症が心配になったら、産婦人科や泌尿器科で相談してみましょう。



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