性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

HIV感染症とエイズ(AIDS)の初期症状、検査、治療

エイズは性行為で感染するHIVというウイルスが原因です。不特定多数との性行為などが特に危険です。検査を受けるべき場合、症状、治療中に気を付けることなどを説明します。

1. HIV/エイズ(AIDS)にかかる原因は?

エイズAIDS)を起こすHIVは、性行為や注射の回し打ちで感染します。特に以下の行動は危険とされているため、思い当たる節のある方は、一度HIV検査を受けてください。

  • 不特定多数と性行為を行う
  • 肛門性交を行う
  • 同性間性交を行う
  • 注射の回し打ちを行う

HIVの検査は、近くの保健所で無料の検査があれば、ぜひ受けてください。泌尿器科などの病院・クリニックでも検査を受けられます。

HIVはいつ感染する?

エイズAIDS)の原因はHIV(Human Immunodeficiency Virus、ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスです。感染した人の血液、精液、膣分泌液にはHIVが含まれていて、ほかの人の体の中に入ると感染させる可能性があります。1980年代の日本では、非加熱製剤(ウイルスを除去する作業を行っていない血液製剤)による感染が問題となりましたが、現在の日本では性行為が主要な感染経路となっています。

口や肛門の粘膜からも感染します。粘膜以外の部分に手で触れたり、銭湯に入る程度ではうつりません。映画『告白』ではHIVに感染した人の血液を牛乳に混ぜるシーンがありますが、仮にこんなことがあったとしても、HIVは体液以外の環境ではすぐに壊れてしまうので、食べ物や飲み物から感染することはほぼ考えられません。

医療機関で使っている注射や点滴は、繰り返し使うことがないので感染源にはなりません。ただし、薬物乱用やイレズミなど、医療機関以外で体に傷をつけ、道具を複数の人で使い回す行為は感染の原因になりえます。

2. HIVの感染率は?

HIVに感染している人と性行為をするとどのくらいの確率でうつるのでしょうか?

コンドームを着けないで性行為を行った場合、HIVがうつる確率は1%以下と考えられています。1%というのはクラミジア淋菌よりは低い確率ですが、決して見逃すことはできません。

特に、他にも性病があったりして性器に傷が付いていると、HIVの感染率はもっと高くなります。クラミジア感染のような何か他の性病の感染があった場合は、必ずHIVの検査も行いましょう。性病がある人は通常の人よりもHIVに感染するリスクが高くいので、きちんと調べておく必要があります。

HIVの感染はコンドームで防げる?セイファーセックスとは

コンドームを着けておけば、HIVをうつされる可能性はほとんどありません。ただし、コンドームを着ける意義は粘膜に触れないようにするということなので、口や肛門の粘膜にも触れないようにしなければいけません。また感染は射精のタイミングとは関係ないので、行為の最初から最後まで、性器が守られていないことは一度もないように、コンドームをつけたままにしてください。

HIV感染症を予防する意味でも、セイファー・セックス(Safer Sex)を心がけましょう。セイファーセックスとはより安全な性行為という意味で、コンドームを正しく使うことや不特定多数との性行為を避けることなどを指します。

3. HIVに感染したときの初期症状は?

HIVに感染すると、体内のHIVは血液の中にある細胞に侵入します。特に、白血球の一種であるリンパ球、中でもCD4陽性リンパ球(T細胞、Tリンパ球)というものがHIVの影響を受けます。

リンパ球は免疫を担当している細胞です。HIVはリンパ球を破壊してしまうので、HIVに感染することで、身体の免疫が弱くなってしまいます。最後にはエイズになります。

HIVに感染してからエイズになるまでは3段階で進行します。

  1. 感染初期(急性期)
  2. 無症候期(慢性安定期)
  3. エイズ発症

感染初期では、インフルエンザに似た発熱、咽頭炎(のどの痛み・腫れ)、倦怠感、筋肉痛などの症状が出ることがあります。その後、症状は数週間でなくなり、無症候期に入ります。

無症候期には症状がありません。しかし、気付かないうちにHIVはどんどん増殖し、リンパ球は破壊されて減っていきます。HIVに感染したリンパ球では1日に100億個のウイルス(HIV)が新たに産生されています。リンパ球が経ることで、免疫がしだいに弱くなっていきます。

無治療で経過すると、およそ数年から10年でエイズに至ります。

HIVに感染したかもしれないと思う出来事があれば、数週間以内にインフルエンザのような症状が出たときはもちろん、症状がなくてもHIV検査を受けてください。

4. エイズの初期症状は?

HIVに感染して免疫力が低下した結果、特殊な病気が引き起こされた状態をエイズAIDS)と言います。エイズは英語のAcquired Immunodeficiency Syndromeの略で、日本語で言うと後天性免疫不全症候群です。

HIVによって引き起こされる病気(合併症)は、ほかの細菌やウイルスによる感染症に加えて、認知症を起こすものや腫瘍など数多くあります。HIVに感染してから治療しなければおよそ数年から10年で、合併症による症状が現れはじめます。

合併症による症状は非常に多様なので、HIVに感染したとわかっている人は、どんな症状でも身体の異変を感じたらすぐに検査を受けてください。

エイズで起こる23の病気とは

エイズの診断基準として、HIVに感染したときにかかりやすい23種類の病気が指標とされます。23種類のいずれかひとつ以上がHIV感染者に出現した場合にエイズと診断されます。

この23種類の病気は免疫力が正常な人には起こりにくい病気です。しかし、HIVに感染して免疫が落ちてしまった場合には起こってくる病気で、そういった病気を日和見疾患(ひよりみしっかん)といいます。

23種類の病気は以下のとおりです。

まれな病気がほとんどですので、病名を見てもピンとこない方も多いでしょう。これらの病名を覚える必要はありません。症状も23種類のそれぞれに違う症状があるので、数え上げれば長いリストになり、すべて覚えておくのは難しくなってしまいます。

HIVに感染している人は、体調に異常を感じたら、どんな症状でも検査を受けるようにしてください。

「いきなりエイズ」とは?

HIVに感染しても気づかないまま何年も過ぎてしまい、合併症が起こったことでいきなりエイズとして発見されることもあります。そうなった時には身体はかなり蝕まれてしまっている状態です。

「いきなりエイズ」が発見されるきっかけになりやすいのは、結核や繰り返す肺炎などです。

HIVに感染したかどうかわからない人、特に次のことに当てはまる人は、体の不調で診察を受けることがあれば「HIVに感染していないか心配です」と伝えてください。

  • 不特定多数と性行為を行う
  • 肛門性交を行う
  • 同性間性交を行う
  • 注射の回し打ちを行う

HIVに感染したらすぐにエイズになるわけではなく、HIV感染による免疫力の低下は段々と進行するものです。HIVに感染してから数年以上経って合併症が現れてくることが多いので、「最近は心配なことがない」と思っても、以前に心当たりがあれば感染している可能性があると思ってください。

5. 日本にもHIV感染/エイズはある?

多くの先進国ではエイズ発症者は減っているのにもかかわらず、日本では未だに新規HIV感染者もエイズ発症者も増えています。決して油断はできません。「まさか自分が…」と思っても、感染しやすい点に当てはまっていれば、一度は検査を受けてください。

6. HIV/エイズ(AIDS)の検査は信頼できる?

HIVに感染していることを検査で調べるには以下の方法を用います。(特殊な母子感染に関しては記載していません。)

  1. HIVの抗体スクリーニング検査が陽性
  2. 以下の確認検査のいずれかが陽性
    1. 抗体確認検査(ウエスタンブロット法、蛍光抗体法)
    2. HIV抗原検査、ウイルス分離及び核酸診断法(PCR法)等の検査

1.と2.の両方を満たした場合にHIV感染症と診断されます。つまり、スクリーニング検査が陽性で確認検査も陽性であった場合に、HIVに感染していると判断されます。

スクリーニング検査で陽性だっただけではHIV感染とは言い切れません。スクリーング検査が陰性の人はほぼ間違いなくHIV感染にはかかっていないですが、スクリーニング検査が陽性であっても実際にはHIV感染にかかっていないということはしばしば起こります。

スクリーニング検査は、実際にはHIVに感染していない多くの人の中から、感染している少数の人を見つけ出すために行われます。このため、見逃しがないように、少しでも怪しければ実際には感染していない人も陽性と出るように設定されています。

したがって、HIVスクリーニング検査で陽性と言われても、感染してしまったとは限りません。必ず確認検査を受けてください

また、HIVが陽性の人はその他の性病にかかっていることが多いですので、必ず他の性病の検査も受けて下さい。性病の症状が気になる方はSTD(性感染症・性病)の症状の項を参考にして下さい。

7. HIV/エイズ(AIDS)の治療

HIV感染症の治療とエイズの治療はやや異なります。エイズの段階になったら、HIV感染症の治療の加えて合併症の治療も行うことになります。

HIVに感染していれば、治療をしていてもしていなくても、ほかの人にうつしてしまう可能性があります。性行為には必ずコンドームを使い、うつしてしまわないよう気を付けてください。

身体の中のHIVを減らす薬

一昔前はHIVに感染したら、不治の病で死の宣告をされたようなものという状態でした。近年はHIV感染に対する治療薬(抗HIV薬)の進歩がめざましく、HIVに感染しても適切に治療すれば病気を進行させないことが期待できます。

数種類の抗HIV薬を飲むことで、血液中に存在していたウイルスは検査でわからないくらいにまで数を減らすことができます。また、HIVによって減っていたリンパ球も治療薬によって数が戻ります。免疫力が回復することで、日和見疾患が減り、日和見疾患による死亡を防ぐことにもつながります。

しかし、HIVが完全に身体からいなくなることはありません。HIVに一度感染してしまうと完治はできないというのが現状です。ウイルスが再び増えてこないように、薬を飲み続ける必要があります。

また、HIVの治療薬は、毎日欠かさずに飲まないと効力を発揮できません。1月に数回飲むのを失念するだけでウイルスは体内で一気に増えてきます。そのため、おくすりカレンダーや携帯のアラームを使って、飲み忘れを予防することが重要です。

HIVに対する治療薬は副作用にも注意が必要です。主な副作用には次のものがあります。

  • 発熱
  • 下痢
  • 吐き気
  • 身体がだるくなる
  • 頭痛
  • しびれ
  • めまい
  • 眠気
  • 肝機能低下
  • 腎機能低下
  • 貧血

薬を飲みだしてなにか異変を感じたら、ためらわずお医者さんに相談してください。

エイズの治療で気を付けること

エイズとはHIV感染症に加えて日和見疾患が合併している状態です。エイズの治療は、抗HIV薬に加えて日和見疾患も同時に治療することを意味します。

日和見疾患として起こる病気には、致命的なもの、治療が難しいものも多くあります。

エイズの治療の難しさは複数の病気を同時に治療することにあります。

HIVの治療薬は、上で述べたように副作用が出やすいです。また、薬の相互作用として他の薬に影響を与えることも多く、薬の飲み合わせにも注意が必要です。

エイズの治療を受けることになったら、薬を忘れず飲み続けること、副作用と疑わしい症状を感じたら相談すること、ほかにも何か異変を感じたらすぐに相談することに気を付けてください。

治療はパートナーと同時に

HIVの感染が見つかった人のパートナーは、HIVに感染している可能性が非常に大きいと考えられます。HIVに感染していると言われたら必ずパートナーも検査を受けて、同時に治療をするようにして下さい。ほかの性病でも同じです。

8. まとめ

エイズについて覚えておきたいポイントをまとめます。

  • HIVはコンドームで防げる
  • 危険な性行為をした覚えがあれば検査を受けよう
  • ほかの性病を指摘されたらHIVの検査も受けよう
  • HIVに感染してもエイズは防げる
  • HIVの薬は飲み忘れと副作用に注意

エイズについてよく知ることで、正しく防ぎ、正しく治療を続けてください。



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