性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

A型/B型/C型肝炎とは?感染経路と症状、検査、治療について

A型肝炎B型肝炎C型肝炎の一部は性病として感染します。感染する原因、症状などをそれぞれ説明します。

1. A型肝炎の原因は?

A型肝炎の原因はA型肝炎ウイルスです。A型肝炎ウイルスは感染力が非常に強いウイルスで、水や食べ物から感染します。

男性同性愛者に性感染症として流行することもあります。

2. A型肝炎の症状は?

A型肝炎ウイルスに感染してから症状が出るまでに1ヶ月ほどの潜伏期間があります。

A型肝炎の代表的な症状は以下のものです。

  • 発熱
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 黄疸(皮膚の色が黄色になる)
  • 全身がだるくなる

症状は1-2週間ほど続きます。症状が出た時点で血液検査をすると、肝障害(AST、ALT、γ-GTPの上昇など)が見られます。

症状は時間とともに段々と軽くなり、2-3ヶ月で完全に消えます。症状が消えて数ヶ月以内には肝臓の機能も正常に戻ることがほとんどです。最終的にはほとんどの場合でウイルスは完全にいなくなります。

3. A型肝炎の治療は?

A型肝炎に有効な治療薬はありません。そのため、感染がわかっても安静にして回復を待つしかありません。

A型肝炎は自然と治る病気ですのであまり慌てることはないのですが、症状が強くて身体が疲弊してしまう場合は病院へ行きましょう。病院で検査をすれば、B型肝炎C型肝炎のように症状の似た病気を見分けることができます。また、点滴を行うことで身体のバランスを整えることはできます。

4. A型肝炎対策のために何ができる?

A型肝炎ウイルスに感染しないように予防するワクチンがあります。

  • 男性同性愛者
  • A型肝炎が流行っている東南アジアやアフリカなどに旅行あるいは移住する人
  • 医療関係者
  • 食品を扱う仕事をしている人

どれかに当てはまる人はA型肝炎ウイルスに触れる可能性が高いので、ぜひワクチンを打ってください。

予防接種は1度では効力が不十分で3回打つ必要があります。

A型肝炎は熱帯地域の食べ物を介して感染することも多いです。性行為の中でも肛門から口へと感染する例もあります。そのため、A型肝炎はコンドームをつけるだけでは予防できません。

5. B型肝炎の原因は?

B型肝炎の原因はB型肝炎ウイルスです。

B型肝炎は性行為でうつる性感染症です。同性間でも異性間でもうつります。B型肝炎劇症肝炎という緊急事態を起こしたり、長年続く慢性感染になる危険性があります。

6. B型肝炎の症状は?

性行為でB型肝炎ウイルスに感染すると、2-6週間ほど症状の出ない潜伏期間があります。

潜伏期間を超えて数週間経つと肝臓がだんだん傷付いてきて症状が出ます。代表的な症状は以下の通りです。

  • 身体のだるさ
  • 食欲低下
  • 吐き気
  • 尿が茶色になる
  • 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
  • 蕁麻疹じんましん)に似た皮疹
  • 関節の痛み

B型肝炎は1%以下の割合で劇症肝炎(げきしょうかんえん)という非常に危険な状態になります。劇症肝炎では、肝臓移植をしないと死亡率は60%以上とも言われます。

劇症肝炎にならなければ、B型肝炎の症状が出たあと、ウイルスが免疫に駆逐されていなくなることがほとんどです。ウイルスがいなくなるにつれて肝炎の症状もなくなります。

しかし、B型肝炎ウイルスが身体に残ってしまう慢性感染になることもあります。その場合も症状が一旦消えることが多いのですが、ウイルスは駆逐されていません。血液検査でB型肝炎ウイルスがいるのかどうかを確認することで判明します。

B型肝炎ウイルスの慢性感染は、肝臓のダメージだけでなく、腎臓の病気(膜性腎症)や全身の血管の炎症結節性多発動脈炎)を引き起こすことがあります。このため、腎臓や血管の異常が出てこないか検査で繰り返しチェックする必要があります。

7. B型肝炎の検査は?

B型肝炎を調べる検査は主に血液検査です。

ウイルスのDNAを見つけ出す検査(PCR)、ウイルスが持っている物質(抗原)やそれに対する体の免疫反応(抗体)を測定する検査によって、感染しているかを調べます。

肝臓のダメージを測る項目(AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビンなど)も血液検査でチェックできます。

8. B型肝炎の治療は?

たいていのB型肝炎は自然に良くなります。悪化しそうな要素がなければ、通院で検査をして自然に治っていることを確かめれば十分です。

以下の場合は悪化する恐れが比較的強いため、薬を使ってください。

  • 免疫が弱っているため劇症肝炎になりやすい状況の人
  • すでに肝臓に持病のある人
  • 感染が6ヶ月以上続いている人

特に、肝臓の状態が悪く、急変の恐れがあれば入院になります。

入院または通院の治療では、インターフェロン、ラミブジン、エンテカビルなどの薬を使います。

インターフェロンの代表的な副作用は以下のとおりです。

  • 早期(使用開始から2週間以内)
    • 発熱
    • 関節痛
    • 倦怠感(身体のだるさ)
    • 皮疹
  • 中期(2週間から3ヶ月)
    • 食欲低下
    • 不眠
    • イライラ
    • うつ状態
    • 視力障害
  • 後期(3ヶ月以降)
    • 脱毛
    • 間質性肺炎(感染ではない肺炎)による息苦しさなど
    • 甲状腺機能異常による動悸やいらいら、だるさなど
    • 糖尿病による口の渇きや尿量の多さ

副作用が出たかもしれないと思ったら、すぐに薬を処方したお医者さんに知らせて下さい。

B型肝炎ではHIVにも注意!

B型肝炎HIV感染症はともに性病ですので、同時にうつされて感染することがあります。B型肝炎と言われたら、HIVの検査もしてください。

HIV感染症について詳しくは「HIV感染症とエイズ(AIDS)の初期症状、検査、治療」の項で説明しています。

治療はパートナーと同時に

B型肝炎ウイルスに感染した人のパートナーはすでに感染している可能性が高いです。必ず、パートナーも一緒に検査を受けるようにして下さい。パートナーが感染していると、せっかく自分が治療しても、ピンポン感染と言ってすぐまたパートナーからうつされてしまいます。

治療もパートナーと同時にしてください。

9. C型肝炎とは?

C型肝炎は性病ではありません。原因のC型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスとは違って、ほとんど性感染しません。もし検査でC型肝炎と言われても、パートナーを疑う必要はありません。

ただ、ごく少数ですが、C型肝炎の慢性感染が長年続くことによって、パートナーにうつしてしまうことはありえます。また、妊婦がC型肝炎ウイルスに感染していると、子供にうつる可能性があります。

C型肝炎は長引くことが多く、肝硬変肝細胞がんを引き起こします。

性病ではありませんが、C型肝炎にはB型肝炎と共通の注意点もあるので一緒に説明します。

10. C型肝炎の原因は?

C型肝炎ウイルスに慢性的に感染している人(キャリア)は、日本に200万人ほどいると推定されています。C型肝炎ウイルスが血液中に入ると感染します。

どういったときに感染するのでしょうか?

  • 1992年より前の輸血
  • 注射薬物の乱用
  • 入れ墨(刺青)

上の3つが主な原因になります。妊娠中に母親から胎児にうつることもあります。授乳ではうつりません。

1980年代には輸血の管理が今よりも緩く、まれに輸血にウイルスが混入していることがありました。1992年以降はウイルスのチェックが厳密になったため、輸血による感染は激減しました。

性行為によるC型肝炎ウイルスの感染は非常に少数です。夫婦間でどのくらいうつるのかを調べた研究では、1年間で夫婦が相手にC型肝炎ウイルスをうつす割合は0.23%と報告されています。

11. C型肝炎は何が危険?

C型肝炎ウイルスは、一度感染すると60-70%の確率で慢性的な感染に至ります。C型肝炎ウイルスによる劇症肝炎はほとんどありません。

慢性C型肝炎は、肝硬変肝細胞がんを引き起こします。

B型肝炎C型肝炎の違いを表にまとめます。

表 B型肝炎C型肝炎の特徴

 

B型
肝炎

C型
肝炎

性感染

多い

少ない

慢性化/
がん

少ない

多い

劇症化

少ない

きわめて
少ない

C型肝炎では慢性化してがんになることが多いので、将来の命の危険を防ぐために治療を続けることが大切です。

なお、妊娠中に感染が見つかった人や、感染していて妊娠を希望する人は、妊娠前の治療などを検討する必要があります。産婦人科などで相談してください。

12. C型肝炎の症状は?

C型肝炎ウイルスに感染すると、2-3ヶ月の症状のない潜伏期間があります。続いて身体のだるさや食欲低下などの症状が出てきます。症状が軽くて気づかないこともあります。C型肝炎は60-70%の人で慢性化します。慢性化するとウイルスがだんだん肝臓を破壊していきます。慢性C型肝炎が進行すると肝硬変に、さらに肝細胞がんに至ります。

肝硬変になると全身に症状が出てきます。

  • 尿の色が濃くなる
  • 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
  • 出血が止まりにくくなる
  • 血を吐く
  • 痔(痔静脈瘤)ができる
  • 手が震える(羽ばたき振戦)
  • 意識がもうろうとする

以上の症状が出たらかなり危険な状態です。すぐに病院に行ってください。

がんになっても症状は大きく変わりません。

肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、重い状態になるまでなかなか症状が現れません。C型肝炎と言われたら、消化器内科などに通って、決して途中で通院をやめないでください。

13. C型肝炎の検査はどんなことをする?

C型肝炎ウイルスに感染しているかは血液検査で調べます。C型肝炎ウイルスのDNAを見つける検査(PCR法)と、C型肝炎ウイルスが持っている物質(抗原)やウイルスに対する身体の免疫反応(抗体)をみる検査があります。

肝臓のダメージの深さも血液検査で推定できます。

また、C型肝炎は慢性肝炎になると肝硬変肝細胞がんになりやすいことがわかっています。そのため、定期的にCT検査を行って肝臓に変化がないかを見ていきます。

肝細胞がんを疑う変化が出てきたら、肝生検と呼ばれる、麻酔を用いて体の外から肝臓に針を刺して細胞を持ってくる検査を行います。

CTで疑わしいところを肝生検するというコンビネーションを行うことで、患者の身体にむだに負担をかける検査をなくすという努力がなされています。

14. C型肝炎の治療で気を付けることは?

C型肝炎ウイルスに感染した人の30-40%は自然に治るので、感染してから12週間は薬を使わずに様子を見てください。ただし、検査はしておいてください。肝機能が悪化したり黄疸が出たら入院が必要になります。

自然に改善する様子がなければ、感染して12週間から20週間の間に、薬を始めてください。

よく使われる治療は、インターフェロンの注射または点滴と、飲み薬のリバビリンなどを24週間同時に使う方法です。副作用にも注意が必要です。インターフェロンの代表的な副作用は以下のとおりです。

  • 早期(2週間以内)
    • 発熱
    • 関節痛
    • 倦怠感(身体のだるさ)
    • 皮疹
  • 中期(2週間〜3ヶ月)
    • 食欲低下
    • 不眠
    • イライラ
    • うつ状態
    • 視力障害
  • 後期(3ヶ月以降)

副作用が出たかもしれないと思ったら、すぐに処方したお医者さんに知らせて下さい。

C型肝炎の薬、ハーボニー®とは

C型肝炎を治療する飲み薬で、レジパスビルとソホスブビルという2成分を配合した「ハーボニー」が2015年から発売されています。ハーボニーは、12週間毎日飲んで効果を見る試験で、C型肝炎ウイルスのうちあるタイプのものを100%駆逐したという結果を出しています。今後のC型肝炎の治療を大きく変える可能性がありますが、登場したばかりの薬なので、多くの人が使う中で未知の副作用などが出てこないか慎重に見守る必要があります。

15. まとめ

A型肝炎B型肝炎C型肝炎について覚えておきたいポイントをまとめます。

  • 肝臓の症状は吐き気、だるさ、黄疸
  • A型肝炎B型肝炎は性感染する
  • 劇症化と慢性化はときに致命的
  • 性感染だったら治療はパートナーと同時に
  • 妊娠には特に注意

A型肝炎B型肝炎C型肝炎が心配になったら、消化器内科などで相談してください。



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