げきしょうかんえん
劇症肝炎
肝炎の一種で、発症してから急速に病状が進行し、致命的になり得るタイプのもの
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最終更新: 2020.06.26
劇症肝炎の基礎知識
POINT 劇症肝炎とは
肝炎の中でも非常に重症で致命的になるタイプの病気です。B型肝炎や薬剤性肝炎などが原因となって起こります。主な症状は発熱・黄疸(皮膚や目が黄色くなる変化)・吐き気・意識障害などになります。 症状や身体診察に加えて、血液検査・CT検査・超音波検査で診断します。ステロイドパルス療法(ステロイドを大量に用いる治療法)や肝移植などを行って治療します。劇症肝炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科や救急科を受診して下さい。
劇症肝炎について
劇症肝炎の症状
- 主な症状
- 発熱
黄疸 - 吐き気、嘔吐
- 食欲不振
- 胸の不快感
- 全身のだるさ
- 羽ばたき振戦
- 腕を前に伸ばして手のひらを前に向けるような姿勢にすると、手首を中心に粗くゆっくりとした不規則な動きが出現する
劇症肝炎の検査・診断
- 血液検査
- AST、ALTの著しい上昇を示す
- ウイルス性肝炎マーカーを調べる
- 凝固異常:肝機能が低下すると血液が固まりにくくなる
- 血漿にカルシウムと組織トロンボプラスチンを加えてから血液の凝固するまでの時間をPTといい、これが延長する
- 肝臓で作られるタンパク質の低下:アルブミン(Alb)が低下する
腹部CT検査 :- 肝ダイナミック
造影 CT では、肝腫大 と動脈相で肝臓の不均一な強い染まりが特徴的である - 劇症肝炎が進行すると逆に動脈相での肝臓の不均一な染まりが目立たなくなる場合もある
胆管 炎やうっ血 肝と画像の特徴が似ている場合があり、画像の異常自体が分かりづらい場合もあるので注意を要する- 発熱や肝胆道系
酵素 の著明な上昇があった場合、その後の肝不全を疑う症状があった場合には可能性を積極的に考えることが必要である - 肝臓に腫瘤がないか、
腹水 の量についても調べることができる
- 肝ダイナミック
腹部超音波検査 :肝臓の腫瘤や腹水の量、肝臓の大きさなどを調べることができる
劇症肝炎の治療法
劇症肝炎の経過と病院探しのポイント
劇症肝炎が心配な方
劇症肝炎は、急性肝炎のうちでも経過が早くかつ重症化する疾患です。元々B型肝炎がある方や、A型肝炎など他の急性肝炎をきっかけに発症します。
初期症状は急性肝炎と同じで、発熱、だるさ、黄疸などが出ますが、徐々に重症化して意識障害を来たします。ご自身が劇症肝炎を含む何らかの肝炎でないかとご心配な方は、まず近くの内科、もしくは消化器内科のクリニックを受診することをお勧めします。
劇症肝炎でお困りの方
劇症肝炎の診断がついた場合には、そのまま入院して治療が必要となります。劇症肝炎には特効薬がなく、肝臓を含む全身に起こるさまざまな異常に対して対症療法を行います。具体的には、肺の機能が低下すれば酸素吸入や人工呼吸、腎臓の機能が低下すれば血液透析といった具合です。
肝移植手術を受けるかどうかが大きな治療の分かれ目ですが、いずれの場合でも命に関わることが多い重症の疾患です。原則として、ある程度の医師数があってICU(集中治療室)があるような総合病院での治療が望ましいと言えます。主に診療に当たるのは消化器病専門医や肝臓専門医です。
重症の場合には肝移植手術が行われますが、リスクの大きい手術であり、また手術が行える病院も国内では限られているのが現状です。