じこめんえきせいかんえん
自己免疫性肝炎
免疫の異常が原因で体内で作られた自己抗体(自分の体を攻撃する物質)によって、ゆっくりと肝臓の働きが障害されていく病気
6人の医師がチェック 100回の改訂 最終更新: 2022.10.17

自己免疫性肝炎の基礎知識

POINT 自己免疫性肝炎とは

自己免疫性肝炎は、免疫の異常が原因で体内で作られた自己抗体(自分の身体を攻撃する物質)によって肝臓の働きが悪くなる病気です。SLE・関節リウマチ・橋本病・シェーグレン症候群などの自己免疫疾患を合併することがあります。進行するまで症状を自覚することはあまりありませんが、進行した場合は疲労感・黄疸(皮膚や目の黄ばみ)・食欲不振・関節痛などが起こります。 症状や身体診察に加えて、血液検査や肝生検を行って診断します。治療には自己免疫反応を抑える目的でステロイド薬や免疫抑制薬などを用います。自己免疫性肝炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科を受診して下さい。

自己免疫性肝炎について

  • 免疫の異常が原因で体内で作られた自己抗体(自分の体を攻撃する物質)によって、ゆっくりと肝臓の働きが障害されていく病気
    • 自己免疫疾患の一種
    • 抗核抗体や抗平滑筋抗体が陽性になりやすい
  • ウイルス感染後や薬の服用後、妊娠・出産後に発症することもあり、これらが病気の発症の引き金になっている可能性もある
  • 他の自己免疫疾患を合併することがある
  • 日本では推定で約3万人程度の患者がいると言われている
    • 女性に多い病気(男女比は1:4)
    • 50歳-60歳代の中年女性に発症しやすい
    • 他人に感染することはなく、子孫にも直接遺伝しない
  • 日本では厚生労働省の指定する難病の1つであり、申請して認定されれば医療費の助成を受けることができる
  • 慢性肝炎の患者さんのうち、自己免疫性肝炎の割合は1.8%とされている

自己免疫性肝炎の症状

  • 通常は自覚症状がなく、健診などで偶然発見されることが多い
  • 出現しうる症状
    • 疲労感
    • 黄疸(皮膚の黄ばみ)
    • 食欲不振
    • 関節痛
  • 病気が進行して肝硬変になった場合に出る症状
    • 脚のむくみ
    • お腹の張り(腹水による)
    • 吐血食道静脈瘤からの出血)

自己免疫性肝炎の検査・診断

  • 肝炎ウイルス・アルコール・薬物・脂肪肝・他の自己免疫疾患による肝臓障害でないことを調べる
    • 問診、身体検査:飲酒歴などを聴取
    • 血液検査:肝臓機能の低下していないか調べる
    • 生検:肝臓の機能を調べる
      • 肝臓のごく一部を切り取って顕微鏡で観察し、診断をつけることもある

自己免疫性肝炎の治療法

  • 現時点では原因を取り除いて完全に治すことはできない
  • 肝障害の進行を止める治療(副腎皮質ステロイド薬の内服)が中心となる
    • 治療が奏功すれば肝機能検査値は速やかに改善し、病気の進行を止めることができる
    • ステロイド薬を自己判断で中止すると自己免疫性肝炎の再燃(一度治まった症状が再び出現する)につながるため、きちんと服用することが大切
    • ステロイド治療で効果が不十分な場合、再燃した場合、ステロイドの副作用が問題になる場合には、免疫抑制薬であるアザチオプリンの内服を検討する
  • 妊娠・出産は可能であるが、主治医との相談が必要
    • 治療薬が胎児に及ぼす影響をしっかりと検討する
    • 妊娠中は比較的症状が落ち着くことが多いものの、産後に悪化する例もあるため、経過に注意する
    • 悪化した場合は専門の医療機関を受診する

自己免疫性肝炎のタグ

自己免疫性肝炎に関わるからだの部位