性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

キスでうつる「キス病」とは?原因、症状と飲んではいけない薬

キスでうつるのでキス病とも呼ばれる伝染性単核球症は、EBウイルスの感染が原因で、発熱やのどの痛みが出ます。ほとんどは自然に治りますが、身体がだるいときなどは病院に行きましょう。避けるべき薬にも注意してください。

1. キス病(伝染性単核球症)とは?

キス病とは伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)の別名です。キスでうつることから、キス病(英語ではKissing disease)と呼ばれています。

2. キス病(伝染性単核球症)は性病?

キス病は性病ではありません。キスでうつるので性行為の中でうつることはありえますが、性行為に及んでいなくても感染します。

キス病(伝染性単核球症)の原因は?

伝染性単核球症キスをすると感染します

伝染性単核球症の原因は、主にEBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス、EBV)と呼ばれるウイルスです。まれにサイトメガロウイルス(CMV)の感染でも伝染性単核球症が起こります。

EBウイルスとサイトメガロウイルスヘルペスウイルスの仲間です。ヘルペスと言うと性病のイメージがあるかもしれませんが、口唇ヘルペス性器ヘルペスを起こす単純ヘルペスウイルスはEBウイルスとは別です。キス病に口や性器の水ぶくれの症状はありません

EBウイルスに感染している人の唾液にはEBウイルスが大量にいます。感染経路は接触感染です。つまり、キスで唾液に触れることで感染します。空気感染はしません。

キス病(伝染性単核球症)はキスをしなければかからない?

伝染性単核球症キス以外でうつることも考えられます。思春期までにほとんどの人が一度はEBウイルスに感染します。EBウイルスを予防するためにキスをしないでおこうと考える必要はありません。確実な予防法もありません。

EBウイルスに感染していても気付かない人はかなりいます。赤ちゃんや子供にも感染します。小さいころに感染すると、普通は軽度の症状で済みます。症状がほとんど出ない場合も、単なる風邪のような症状だけの場合もあります。たいてい自然に治っていきます。

一方、思春期以降にはじめて感染したときはキス病の症状が出やすいです。

EBウイルスに感染してもほとんどの場合は単なる風邪程度の症状で済みます。キス病は自然に完治します。気付かないうちに感染して自然に治っている人がほとんどです。リンパ腫や肝炎という重症の合併症はごくまれです。EBウイルスをあまり恐れる必要はありません。

3. キス病(伝染性単核球症)の症状は?

キス病の代表的な症状は以下のものです。

  • リンパ節の腫れ
  • 発熱
  • 咽頭炎扁桃炎
    • ​喉が赤く腫れる、喉の痛み
  • だるさ、倦怠感
  • 頭痛
  • 腹痛、吐き気、嘔吐
  • 寒気、悪寒
  • 発疹皮疹
  • まぶたの腫れ、まぶたのむくみ
  • 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸
  • 肝臓や脾臓が腫れて大きくなる

EBウイルスに感染してから発症までに4週間から6週間ほどの潜伏期間があります。この章ではキス病の主な症状を、身体診察でわかる点とあわせて説明します。

発熱

キス病では38℃以上の高熱が1-2週間くらい持続します。単なる風邪にしては熱の出る期間が長いのが特徴です。

ただし、小さな子供はキス病でも数日で熱が下がることも多いです。

咽頭炎(いんとうえん)・扁桃炎(へんとうえん)

咽頭はのどの奥のことです。扁桃扁桃腺)はのどの中の両側にある膨らんだ部分です。キス病では咽頭や扁桃がEBウイルスに荒らされて炎症を起こし、強い喉の痛みが出現します。

扁桃にはベッタリとした液体がくっついたり、白い付着物が見えることもあります。付着物が苔(コケ)のように見えるので白苔(はくたい)といいます。

舌が赤くなることもあります。

首のリンパ節が腫れる

キス病では顎(あご)の下から首の横や首の後ろにあるリンパ節が1個から数個、1cm以上に腫れます。

首のまわりにはリンパ節がたくさんあります。ふだんは皮膚の上からは見えません。

キス病になると腫れたリンパ節が目に見える塊になります。触ると周りより少し硬くグリグリとしています。押すと痛むことが多いです。

肝臓や脾臓が腫れる

肝臓はふだんは肋骨に隠れています。キス病では腫れて大きくなり、右脇腹の一番下の肋骨より下にはみ出てきます。脾臓も腫れると左脇腹の肋骨より下にはみ出てきます。肋骨より下に出てきた肝臓や脾臓は、指で注意深く押すと手ごたえがあります。肋骨の下2cm以内は出ていても正常です。

その他の症状と血液検査

キス病で身体のだるさや皮疹(発疹)が出ることもあります。皮疹が出やすい場所は腕と胴体です。湿疹のように赤いブツブツした皮疹のことも、麻疹に似た赤い斑点状の皮疹のこともあります。

キス病の症状はたいてい4-6週間ほどで自然に消えていき、完治します。

病院ではほかの病気と見分けるため採血されることがあります。

4. キス病(伝染性単核球症)で死亡することはある?

キス病が原因で死亡することはほとんどありません風邪で死亡するぐらいの少なさと考えていいでしょう。

きわめてまれに悪化する例として以下の場合があります。

  • 脳炎、髄膜炎
    • ウイルスが脳や脳の周りに侵入します。
  • 脾破裂
    • 腫れた脾臓が破裂して大出血します。
  • 上気道閉塞
    • 扁桃炎などでのどの奥がふさがり、呼吸ができなくなります。
  • 自己免疫性溶血性貧血
    • 赤血球が破壊されて貧血になります。
  • 肝炎
    • 肝臓の組織が破壊されます。
  • 慢性活動性EBウイルス感染症
    • EBウイルスの感染が続き、肝臓やリンパ節が侵されます。
  • バーキットリンパ腫ホジキンリンパ腫
    • 血液の細胞に発生する悪性腫瘍です。

いずれも非常にまれです。病院でキス病と診断されても「死ぬのではないか」と心配する必要はありません。

5. キス病(伝染性単核球症)の治し方は?

キス病は自然に治る病気です。キス病を起こすEBウイルスに対する特効薬はありません。そのため、キス病では安静にするのが一番いい治し方です。治療期間は4-6週間ほどです。

まれに、キス病の病状がひどくなって肝臓の機能が悪化し、入院になることがあります。悪化に気付くには身体のだるさを目安にしてください。ほかに明らかに異常と感じる症状が出たときも病院で相談してください。

キス病(伝染性単核球症)の治療薬は?

キス病はほとんどの場合、薬も必要ありません。発熱や痛みがつらいときはアセトアミノフェンなどで和らげることもできます。重症の場合にステロイド薬を使うことがあります。

一方、抗生物質は効かないだけでなく有害です。次の章で説明します。

キス病(伝染性単核球症)は再発する?

キス病は完治します。安静にして元気になったら、再発の心配はありません

キス病(伝染性単核球症)で運動してはいけない?

キス病と言われたら激しい運動は1か月ほどは避けてください。きわめてまれですが、腫れた脾臓が破裂することがあります。

6. キス病(伝染性単核球症)と間違えやすい溶連菌咽頭炎に注意!

キス病の治療で気を付ける点は、抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は効かないだけでなく有害だということです。

キス病と同じく高熱やのどに強い痛みが出る溶連菌咽頭炎(ようれんきんいんとうえん)には抗菌薬がよく効くのですが、本当は伝染性単核球症なのに誤診されて抗菌薬を飲んでしまうと皮疹が出ることがあります。

のどが痛くて病院に行き、抗生剤をもらって飲んだら皮膚にボツボツが出たというときは、薬をやめるべきかもしれません。急いでもう一度相談してください。

キス病(伝染性単核球症)と溶連菌咽頭炎は見分けられる?

キス病と溶連菌咽頭炎は症状がよく似ているので専門のお医者さんでも迷うことがあります。キス病では血液に異型リンパ球という特殊な細胞が現れるなどの特徴がありますが、キス病が疑われる状況でも必ず異型リンパ球の検査をするとは限りません。

大きな違いとして、溶連菌咽頭炎ではペニシリン系の抗菌薬を飲んだら一両日中に症状が良くなっていきます。

抗菌薬を飲んで数日経っても症状が良くならなければ、溶連菌咽頭炎ではないかもしれません。もう一度相談してください。

7. キス病(伝染性単核球症)になったらキスできない?

キス病と診断されても、パートナーの検査や治療は必要ありません。性病は原則として相手も同時に治療しないといけないのですが、キス病は違います。キスでうつるからキスできないのではないかと考える必要もありません。理由を説明します。

ほとんどの人はEBウイルスの抗体を持っている

思春期を超えると、ほとんどすべての人がEBウイルスに一度は感染しています。EBウイルスに一度感染すると抗体ができて、キス病にはかからなくなったり、かかっても症状が軽くなります。そのため、パートナーがキス病にかかる可能性は低いので、特に検査や治療は必要ないことになります。

EBウイルスに感染しても自然に治る

もしパートナーに感染したとしても、EBウイルスの感染は自然に治ります。重症になることは非常にまれです。子供にうつるのが心配な人も、親や周りの大人からうつさないようにと心配する必要はありません。子供では特に、キス病の症状を出すこともなく知らないうちに治っていることが多いです。



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