まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 86回の改訂 最終更新: 2026.04.01

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の症状は?

かぜの症状が落ち着いたあとも、鼻づまりやねばっこい鼻水が長引き、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)になることがあります。一方で、症状がはっきりしない、あるいは軽くて気づきにくいまま経過するケースもあります。慢性副鼻腔炎では、どのような症状がみられるのか整理していきます。

かぜの症状が落ち着いたあとも、鼻づまりやねばっこい鼻水が長引き、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)になることがあります。一方で、症状がはっきりしない、あるいは軽くて気づきにくいまま経過するケースもあります。慢性副鼻腔炎では、どのような症状がみられるのか整理していきます。

1.慢性副鼻腔炎の症状

慢性副鼻腔炎では、鼻の症状だけでなく、咳や頭痛、だるさなど多様な症状が出ることがあります。代表的な症状は次のとおりです。

  • ねばっこい鼻水
  • 色のついた鼻水
  • 鼻づまり
  • 鼻漏(こうびろう):鼻水がのどの奥に流れる症状
  • 痰がらみの咳
  • 頭痛
  • 頰の痛み
  • 歯痛
  • 嗅覚障害:匂いを感じにくくなる、くさい臭いを感じる
  • 鼻茸(びじょう/はなたけ、鼻ポリープ):鼻の粘膜がむくんで隆起したもの
  • 全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん):全身のだるさ
  • めまい

このように症状は幅広く、症状が軽くて気づきにくいまま経過する場合もあります。なお、鼻血と慢性副鼻腔炎の関係を心配する人もいますが、副鼻腔炎だけで出血することは多くありません。鼻血が続く場合は、副鼻腔炎以外の原因も含めて評価が必要になります。

炎症が起こる場所と症状について

副鼻腔は左右にそれぞれ4つあり、炎症がどこに強いかによって、痛みや「頭が重い感じ」の出方が変わることがあります。

  • 前頭洞(ぜんとうどう):額の痛み、頭が重い感じ
  • 上顎洞(じょうがくどう):頬の痛み、歯の痛み
  • 篩骨洞(しこつどう):眉間や目の奥の痛み・重い感じ、頭が重い感じ
  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう):後頭部の痛み、頭が重い感じ

図:副鼻腔の解剖イラスト。前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞の位置を示す。

ただし、炎症の部位と痛みの場所は一致しないこともあります。また、複数の副鼻腔に炎症が起きている場合は、症状が強く出たり、複数の症状が同時に出たりすることがあります。痛みの場所は手がかりにはなりますが、症状だけで炎症部位を正確に決めることはできません。

子どもの慢性副鼻腔炎の症状は、基本的には大人と共通するものが多く、主に次のような形で現れます。

  • ねばっこい鼻水
  • 色のついた鼻水
  • 口呼吸
  • 痰がらみの咳

子どもは自分の症状をうまく言葉にできないことがあります。そのため、「いつから」「どんな場面で」「どのくらい続くか」を周囲の大人が観察し、必要に応じて医療機関で相談することが、慢性副鼻腔炎に気づくきっかけになります。

慢性副鼻腔炎では、副鼻腔の中で作られた分泌物がうまく外に流れず、副鼻腔内にたまりやすくなります。分泌物が増えたり長くたまったりすると、色のついた鼻水や、ねばっこい鼻水、後鼻漏、咳などの症状につながります。
分泌物には炎症に関わる物質が含まれるため、分泌物を減らし、排出されやすい状態を作ることが、症状の軽減につながります。

慢性副鼻腔炎では、副鼻腔に分泌物を出すと、分泌物内の細菌や炎症に関係する物質を減らすことができるため、症状を和らげることができます。鼻のを出す方法を知っておくと症状に困った時の対応に役立てることができます。

  • 鼻をかむ
  • 鼻の吸引
  • 鼻洗浄(鼻うがい)

それぞれについて説明していきます。

■鼻をかむ

鼻をかむことで、鼻腔内の分泌物を外へ出すことができます。ただし、副鼻腔と鼻腔をつなぐ通り道(自然口)が腫れで狭くなっている場合や、分泌物の粘り気が強い場合は、十分に出しきれないことがあります。
その場合は、鼻洗浄や吸引など、別の方法を併用すると効果が出やすくなります。

また、薬で分泌物を出しやすくする方法もあります。たとえば粘液溶解薬(カルボシステインなど)は粘り気を下げる目的で用いられます。内服治療の適応は病状によって異なるため、お医者さんに症状を詳しく伝えてください。

■鼻の吸引

鼻水の吸引は、鼻の入り口から奥にある分泌物を吸い取る方法です。吸引によって鼻づまりが軽くなり、分泌物に含まれる炎症関連物質を減らすことができ、症状の軽減につながります。
特に、子どもがうまく鼻をかめない場合や、後鼻漏による咳が強い場合に有用です。

吸引の方法には、自宅で行う方法と医療機関で行う方法があります。

  • 自宅:親が口で吸うタイプ、ポンプ式、電動吸引器など

  • 医療機関:吸引圧が安定しており、処置後にネブライザー治療などを併用できることがある

自宅用で効果が出やすいのは電動吸引器ですが、費用や携帯性の面で負担になることがあります。医療機関での吸引は有用ですが、通院が必要になります。

■鼻洗浄(鼻うがい)

鼻洗浄は、鼻腔内を洗い流して分泌物を減らす方法です。鼻の中の粘性鼻汁を取り除き、後鼻漏や咳が軽くなることがあります。食塩水を用いるのが基本で、痛みを減らしながら洗浄できます。

慢性副鼻腔炎の治療は、鼻洗浄や薬物療法などの保存的治療が基本になりますが、次のような場合は手術治療が選択肢になります。

初回の手術は、鼻の穴から内視鏡を用いて行う内視鏡下鼻副鼻腔手術が中心で、顔に傷はつきません。再発や病態によっては、別の術式が検討されることもあります。

外来で行われることがある処置:上顎洞穿刺

上顎洞穿刺(じょうがくどうせんし)は、上顎洞(頬の奥の副鼻腔)に分泌物がたまっている場合に、針で穿刺して排出し、必要に応じて洗浄する処置です。急性副鼻腔炎で行われることが多いですが、慢性副鼻腔炎で急に悪化した場合(急性増悪)に検討されることもあります。

処置は、鼻内を局所麻酔し、鼻の中から上顎洞へ針を入れて分泌物を排出し、洗浄します。合併症として出血や穿刺部の痛みなどが起こることがあります。

後鼻漏とは、鼻水や分泌物が鼻の奥からのどへ流れ落ちることで起こる症状です。鼻の奥に何かが張りついているように感じ、鼻すすりや飲み込みで取ろうとしても取れない、と表現されることがあります。慢性副鼻腔炎の症状の一つとしてよくみられますが、ほかの鼻の病気でも起こります。

後鼻漏があると、鼻とのどの境目に痰がからむような感覚が続いたり、のどの奥にいつも何かがあるように感じたりします。ここでは「どんな症状が後鼻漏に当たるのか」と「どんな病気が関係するのか」を整理します。

後鼻漏の可能性がある症状

後鼻漏があるときにみられやすい症状は次のとおりです。

  • 鼻水がのどの奥に落ちる感じがする
  • 痰がからむ感じがする
  • 咳、咳払いが増える
  • 鼻水が多い感じがする
  • のどがヒリヒリする、違和感がある

後鼻漏は鼻水として前に出てこないこともあり、「鼻水は出ないのに咳が続く」「のどの奥の痰が取れない」といった形で目立つことがあります。

後鼻漏が増えると咳が目立つ

後鼻漏が少ないうちは、鼻の奥の違和感やのどのムズムズ感が中心になります。一方、量が増えると、のどを刺激して痰がらみの咳や咳払いが目立つことがあります。

咳が8週間以上続く状態は、慢性咳嗽(まんせいがいそう)と呼ばれます。慢性咳嗽の原因には、咳喘息逆流性食道炎胃食道逆流症)などさまざまなものがありますが、慢性副鼻腔炎による後鼻漏も原因の一つになり得ます。

咳が長引く場合は、呼吸器の病気だけでなく、鼻や副鼻腔の状態も含めて評価すると整理しやすくなります。

慢性副鼻腔炎で後鼻漏が起こる理由

慢性副鼻腔炎では、副鼻腔内にたまった分泌物がのどの奥へ流れ落ちることで後鼻漏が起こります。鼻をかんでも前に出てこず、後鼻漏だけが目立つこともあります。そのため、本人は「鼻の病気」と思わず、咳や痰の症状として受け止めている場合があります。

後鼻漏は慢性副鼻腔炎だけではない

後鼻漏は、慢性副鼻腔炎のほかに、アレルギー性鼻炎かぜに伴う急性鼻炎、血管運動性鼻炎などでも起こります。また、鼻水(分泌物)は健康な状態でも一定量が作られており、その量が多くない範囲でも、後鼻漏として強く自覚する人もいます。

つまり、後鼻漏があるからといって必ずしも病気とは限りません。一方で、後鼻漏が続いて生活に支障がある場合や、咳が長引く場合は、原因を整理するために医療機関で相談する価値があります。

嚢胞(のうほう)とは、液体成分を含む「袋状の病変」です。副鼻腔の中に嚢胞ができたものを副鼻腔嚢胞と呼びます。嚢胞はゆっくり大きくなり、周囲の骨を圧迫したり薄くしたりしながら、少しずつ症状が出てくることがあります。

副鼻腔嚢胞の原因は過去の副鼻腔炎の手術が最も多く、その他に顔面の怪我や感染ながあります。嚢胞は徐々に大きくなり、まわりの骨を圧迫したり破壊したりしながら、症状が少しずつ出てきます。

そして、症状は、嚢胞ができた副鼻腔の場所によって変わります。

  • 上顎洞(頬の奥)に嚢胞ができた場合
    • 頬の痛み
    • 歯の痛み
  • 篩骨洞や蝶形骨洞(眼に近い部分)に嚢胞ができた場合
    • 鼻や目のあたりの鈍い痛み
    • 目が見えにくくなる
    • 目のかすみ
    • 物が二重に見える(複視
  • 前頭洞(額の奥)に嚢胞ができた場合
    • 額の重い感覚や違和感がある
    • 大きくなると眼が圧迫されて位置がずれる

副鼻腔嚢胞は「鼻の症状」だけではなく、目の症状として目立つことがあります。特に視力に関わる症状は緊急性が高くなることがあります。

副鼻腔嚢胞が感染を起こした場合

嚢胞に感染が加わると、内部に膿がたまり、痛みなどの症状が強く出ることがあります。この場合は、痛み止めで症状を和らげたり、状態に応じて抗菌薬抗生物質)が検討されることがあります。抗菌薬が必要かどうかは、症状の強さや画像診断で判断します。

副鼻腔嚢胞の診断について

診断には、CTなどの画像検査が用いられます。嚢胞の位置や大きさ、周囲(特に眼窩や頭蓋内に近い部分)への影響を確認することが目的です。

副鼻腔嚢胞の治療について

症状が軽く安定している場合は経過観察となることもあります。一方で、痛みや感染を繰り返す場合、あるいは目の症状が出ている場合は治療が必要になります。治療の中心は手術です。

  • 嚢胞と鼻腔をつなぐ通り道を広げ、排出されやすくする手術

  • 嚢胞を開放・摘出する手術

多くは鼻の穴から内視鏡で行いますが、病状によっては歯ぐきや眉毛の下を切開する方法が検討されることもあります。

受診の目安について

視力低下、目のかすみ、複視などの目の症状がある場合は、早めの対応が重要です。進行すると視機能に影響する可能性があるため、これらの症状が出たときは速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。

慢性副鼻腔炎は、頭痛の原因になることがあります。頭痛を主訴に内科や神経内科、脳神経外科を受診したところ、画像検査で副鼻腔炎が指摘されることは少なくありません。鼻水や鼻づまりなどの鼻症状がはっきりしない場合でも、頭痛だけが目立つケースがあります。

ただし、頭痛の原因は副鼻腔炎以外にも多いため、「副鼻腔炎がある=頭痛の原因が必ずそれ」とは限りません。ここでは、副鼻腔炎と関係しやすい頭痛の特徴と、対処の考え方を整理します。

頭痛や肩こりに副鼻腔炎が関係する場合、痛みが出やすい場所に一定の傾向があります。

  • 額:前頭洞
  • 頬・歯のあたり:上顎洞
  • 眉間・目の奥:篩骨洞
  • 後頭部・頭の奥:蝶形骨洞

痛みの場所は手がかりになりますが、炎症部位と一致しないこともあります。痛みだけで断定せず、鼻症状(後鼻漏、においの低下など)や画像所見も含めて判断します。

慢性副鼻腔炎に伴う頭痛では、冷やして楽になる人もいれば、温めて楽になる人もいます。どちらが正解というより、症状が軽くなる方法を選ぶのが現実的です。

また、鼻づまりが強い場合は、鼻の通りが改善すると頭痛が軽くなることがあります。

  • 温かい蒸気を吸う 
  • 入浴する
  • 蒸しタオルを鼻に当てる

鼻詰まりが辛い時には試してみると良いかもしれません。

ツボ押しは、慢性副鼻腔炎そのものを治す治療ではありません。ただし、頭痛や頭が重い感じ、顔の痛みなどの不快症状を軽くする目的で、補助的に試す人もいます。

代表的に挙げられる部位は次のとおりです。

  • 上星(じょうせい):頭の中央で、髪の毛の生え際から頭頂方面に2 cmほどの部位
  • 印堂(いんどう):眉間の中央
  • 迎香(げいこう):小鼻の左右の凹み
  • 鼻通(びつう):迎香の少し上
  • 合谷(ごうこく):手の甲の人差し指と親指の付け根
  • 内庭(ないてい):足の人差し指と中指の付け根
  • 太陽(たいよう):こめかみの目尻側

慢性副鼻腔炎が頭痛の原因になっている場合は、副鼻腔炎の治療で炎症が落ち着くにつれて、頭痛も徐々に軽くなることがあります。治療には、鼻洗浄、粘液調整薬(カルボシステインなど)、点鼻ステロイドなどが用いられます。

鼻茸のない慢性副鼻腔炎では、少量マクロライド療法が選択されることがあり、効果が出始めるまでに2〜4週間かかることがあります。効果が出てくると、頭痛が軽くなる場合があります。副作用(下痢など)や耐性菌の問題もあるため、治療の必要性は症状の強さと合わせて検討します。

一方で、頭痛の原因が別にある場合は、副鼻腔炎が改善しても頭痛が残ることがあります。その場合は、頭痛そのものの評価が必要になります。

7. 慢性副鼻腔炎で咳は出る?

慢性副鼻腔炎では、分泌物が後鼻漏(こうびろう)としてのどに流れ落ち、気道粘膜を刺激することで、咳の原因になることがあります。咳の原因はさまざまですが、慢性副鼻腔炎もその一つです。ここでは「副鼻腔炎の咳の特徴」「対処」「受診の目安」を整理します。

慢性副鼻腔炎が関係する咳では、次のような特徴がみられることがあります。

  • 痰がからむ、のどに何かが落ちる感じがある
  • 咳払いが多い
  • 朝や就寝前に悪化しやすい
  • 鼻症状(後鼻漏、鼻づまり、ねばっこい鼻水)を伴うことがある

後鼻漏は「気管に入りそうな分泌物を外へ出す反射」でもあるため、咳だけを強く抑えると、状況によっては不快感が残ることがあります。咳の背景に後鼻漏がある場合は、鼻・副鼻腔側の治療に重きをおくことになります。

子どもの咳が止まらないときはどうする?

子どもの咳の原因で最も多いのは、かぜウイルス性の急性上気道炎)です。ウイルスが気道を刺激して咳が出る場合もあれば、鼻水が後鼻漏になって咳が出る場合もあります。

何科に相談するか迷う場合は、まず小児科で評価を受けるのが現実的です。必要に応じて耳鼻咽喉科へ紹介してくれます。

かぜ症状が落ち着いても咳が残る時

発熱やのどの痛み、鼻水などが落ち着いたのに咳が長引く場合は、慢性副鼻腔炎や後鼻漏が関係していることがあります。子どもの副鼻腔炎は自然に軽快することもありますが、症状が続く場合は耳鼻咽喉科で評価すると原因が整理しやすくなります。

慢性副鼻腔炎の治療中に咳と発熱が出た場合は、次のことが考えられます。

  • 別のかぜを引いた
  • 慢性副鼻腔炎が急に悪化した(急性増悪)

軽症で全身状態が保たれている場合は経過で落ち着くこともありますが、悪化する場合や心配が強い場合は、小児科または耳鼻咽喉科で相談してください。

軽症で全身状態が保たれている場合は経過で落ち着くこともありますが、悪化する場合や心配が強い場合は、小児科または耳鼻咽喉科で相談します。

  • 鼻洗浄(鼻うがい)
  • 鼻水の吸引(子どもでは特に有用)
  • 鼻・副鼻腔の治療(必要に応じて薬の調整)

子どもでは鼻うがいが難しいこともあるため、鼻水吸引が実用的です。自宅では手動タイプや電動吸引器などがあります。病院での吸引は確実ですが通院が必要になるので、負担が増える可能性もあります。どの方法が合うかは年齢や家庭状況で変わるため、医療者と相談して決めるのが安全です。

咳で眠れないなど生活に支障が大きい場合は、咳止めを短期間使うことが検討されることもあります。咳止めは万能ではないため、症状の強さと目的(睡眠の確保など)を明確にして使います。

咳でのどが痛い場合は、次のような対策が役立つことがあります。

  • 室内を加湿して乾燥を避ける
  • こまめに水分補給をする
  • 大声を出すのを避け喉への負担を下げる

後鼻漏が強い場合は、鼻洗浄や吸引を併用し、必要に応じて耳鼻咽喉科で処置や薬の調整を相談します。

市販薬には次の成分が含まれています。

  • 咳中枢に効く成分:急にでた咳の発作をとめる
  • 痰を切れやすくする成分:気道粘膜に張り付いた痰を除去して、咳をおさえる
  • 気管支をひろげる成分:気管支をひろげて呼吸を楽にする

慢性副鼻腔炎が疑われる咳では、後鼻漏や痰の絡みが問題になることが多いため、「咳を止める成分」だけに頼るよりも、去痰成分(例:カルボシステインなど)の有無を確認する方が実用的です。成分が分からない場合は薬剤師さんに確認してください。

慢性副鼻腔炎と咳喘息は、どちらも慢性咳嗽(まんせいがいそう)の原因疾患ですが、この2つは異なる病気です。慢性咳嗽は、8週間以上持続する咳のことです。慢性咳嗽の原因となる病気はほかにもあります。

咳喘息の診断基準は、ゼーゼーしない咳が8週間以上持続し、気管支拡張薬(β遮断薬、テオフィリン製剤)で症状が緩和することです。慢性副鼻腔炎も同様に咳がありますが、痰を伴う咳になることが多く、気管支拡張薬は無効であることが、見分けられる点です。咳喘息については「咳喘息の詳細ページ」も参考にして下さい。

慢性副鼻腔炎そのものが、咳で他人にうつる病気ではありません。ただし、治療中にかぜなどの感染症合併している場合は、その感染症は周囲にうつることがあります。

咳が治らない場合は、咳の原因疾患を調べる必要があります。咳の持続期間や、痰があるかどうかなどを参考に診断をつけます。

咳は持続期間により下記のように分類されます。

  • 3週間未満:急性咳嗽(きゅうせいがいそう)
  • 3週間以上8週間未満:遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)
  • 8週間以上:慢性咳嗽(まんせいがいそう)

慢性咳嗽の原因疾患としては下記のものがあります。

何科に受診していいかわからない場合は、まず大人であれば内科、子供であれば小児科に行けば適切な診療を受けることができますし、必要に応じて専門的な診療科に紹介してもらえます。画像検査や血液検査などの検査で慢性副鼻腔炎と診断された場合は耳鼻咽喉科で治療を行います。

慢性副鼻腔炎そのものでは、発熱は典型的ではありません。鼻水・鼻づまり・咳などの症状に「熱」が加わった場合は、慢性副鼻腔炎とは別の感染症(かぜなど)が重なっているか、慢性副鼻腔炎が急に悪化している可能性を考えます。

慢性副鼻腔炎の経過中に発熱がみられる状況として多いのは次の2つです。

この2つは症状が似ることもありますが、痛みの出方や鼻汁の変化などが手がかりになります。

■慢性副鼻腔炎と急性上気道炎かぜ)が重なる

慢性副鼻腔炎がある人が、別の急性上気道炎かぜ)にかかると、発熱を伴うことがあります。鼻水や鼻づまりが悪化し、後鼻漏が増えると咳が目立つこともあります。

■慢性副鼻腔炎の急性増悪

慢性副鼻腔炎の急性増悪とは、もともとある副鼻腔の炎症が急に悪化して、症状が強くなる状態です。鼻汁の増加、色の濃い鼻汁、後鼻漏の増加に加えて、頬・歯・額などの痛みや腫れが目立つことがあります。

急性増悪が疑われる場合は、治療内容(薬や処置)を調整する必要が出ることがあるため、慢性副鼻腔炎で通院中の人は耳鼻咽喉科で相談するのが安全です。

幼児に発熱・鼻水・鼻づまりが同時に存在している場合は、慢性副鼻腔炎より上気道炎かぜ)の可能性が高いです。鼻水が多くなると、後鼻漏(こうびろう)から咳が出やすく、寝るつきの悪さの原因にもなります。また、幼児は急性中耳炎を合併しやすいため、耳の痛みや機嫌の悪さ、眠れないなどが強い場合は医療機関で相談します。

慢性副鼻腔炎そのものが周囲にうつる病気ではありません。発熱を伴う場合、多くは「かぜなどの感染症」または「急性増悪」であり、うつる可能性があるのは主にかぜなどの感染症です。

急性増悪や、かぜを合併した場合の発熱は、数日で落ち着くことが多いです。一方で、発熱が長引く場合や症状が強い場合は、細菌感染の関与も含めて評価が必要になります。必要に応じて検査や治療(抗菌薬を含む)が検討されます。

9. 副鼻腔気管支症候群とは?

副鼻腔気管支症候群は、長期間に渡って、気道の炎症を繰り返す状態です。気道とは肺までつながる空気の通り道で、上気道と下気道に分類されます。上気道は鼻からのど(喉頭)までで、下気道は気管から肺へ至る細い気管支までです。副鼻腔気管支症候群は上気道と下気道どちらにも炎症を起こした状態です。上気道の慢性副鼻腔炎に、下気道の慢性気管支炎気管支拡張症びまん性汎細気管支炎を合併した状態です。

診断基準は下記です。

  1. 8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽
  2. 次の所見のうち1つ以上を認める
    1. 後鼻漏、鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎様症状
    2. 敷石状所見を含む口腔鼻咽頭における粘液性あるいは粘膿性の分泌液
    3. 副鼻腔炎を示唆する画像所見
  3. 14・15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬による治療が有効

治療は「鼻」と「下気道」の両方を意識して行います。

  • 鼻・副鼻腔炎の治療(鼻洗浄、点鼻治療、必要に応じた内服など) 
  • 痰を出しやすくする治療(去痰薬など)
  • 病態によっては、14・15員環マクロライド系抗菌薬を用いた治療が選択されることがある

マクロライドが話題に上がると「細菌感染だから抗菌薬」と誤解されがちですが、この領域では、状況によっては抗菌作用以外の目的で用いられることがあります。適応や期間は病気の状態により変わるため、自己判断での内服は避け、かかりつけのお医者さんと方針を共有することが重要です。

参考文献:日本呼吸器学会咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019作成委員会/編, 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019. メディ
カルレビュー社,2019.