かふんしょう
花粉症
植物の花粉に対するアレルギー反応。症状として、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状が起こる。
12人の医師がチェック 277回の改訂 最終更新: 2026.03.05

花粉症の原因①:花粉に対してアレルギー反応が起こる仕組みとアトピー・喘息との関連

花粉症はアレルギー性鼻炎の一つです。このページでは、花粉でアレルギー反応が起こるしくみについて見ていきます。さらに、同じくアレルギーである気管支喘息アトピー性皮膚炎との関係についても説明します。

1. 花粉症はアレルギーの一種

花粉症は、花粉に対して起こるアレルギー反応です。体が花粉を「異物(アレルゲン)」として認識し、免疫が反応することで、鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみなどの症状が出ます。アレルギー反応は仕組みによって1〜4型に分けられ、花粉症は主に**Ⅰ型アレルギー(IgEが関与する即時型反応)**に分類されます。

アレルギー反応が起こりやすい部位は主に鼻や目です。鼻や目から入った花粉に対して体が反応し、IgE抗体が関与する反応が進むことで、鼻や目の症状が現れます。

ここから先は少し難しい内容になります。必要な方だけ読んでください。

花粉症のアレルギーの機序

花粉症は、体が花粉を「敵」とみなして排除しようとする免疫反応の一部です。免疫反応には白血球が関わり、マクロファージやリンパ球など複数の細胞が協力して働きます。

  1. 花粉が鼻や目に入る
    • 花粉が鼻に入ると、鼻の表面の粘液に捕まります。多くは粘膜の働きで体の外へ運び出されますが、一部は粘膜に残り、花粉の成分が粘膜に触れて免疫反応が起こります。
  2. 免疫細胞が花粉を「抗原(アレルゲン)」として認識する
    • 花粉が体内に入ると、まずマクロファージなどが花粉を取り込み(貪食)、その情報がT細胞へ伝えられます。T細胞の働きを介して、B細胞が反応できる状態になります。
  3. B細胞がIgE抗体を作り、肥満細胞(マスト細胞)に結合する
    • B細胞は花粉に対するIgE抗体を作ります。このIgE抗体は、皮膚や粘膜にいる肥満細胞(マスト細胞)の表面に結合し、「次に花粉が入ってきたときにすぐ反応できる状態」が作られます(感作)。
  4. 再び花粉が入ると、肥満細胞から化学伝達物質が放出される
    • 花粉が再度入ってくると、IgE抗体と花粉が結合し、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されます。これが症状の直接の引き金になります。
    • ヒスタミンなどは鼻粘膜の神経を刺激してくしゃみを起こし、反射的に鼻水が増えます。
    • ヒスタミンやロイコトリエンは血管にも作用し、粘膜が腫れて鼻づまりを起こします。

ここまで鼻での症状を説明しましたが、目でも同様な反応が起こり、ヒスタミンがかゆみを生じさせ、涙の分泌が増えます。

花粉症で最もよく使われる抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが身体を刺激する段階に効果があります。一方でステロイド薬は、これらの流れと関係なく免疫反応全体を広く抑制します。上のとおり花粉症の症状は免疫反応によって引き起こされるので、免疫メカニズムを抑制することで症状を抑えることができます。

アレルギーとは何か

アレルギーとは、多くの人にとって本来は無害な物質に対して、体の免疫反応が過剰に働き、全身または体の一部に症状や障害が起こる状態です。

私たちの体には「免疫」という仕組みがあり、体の外から入ってくる病原体などの異物(抗原)を認識して排除しようとします。免疫は本来、体を守るための仕組みですが、無害な物質に対しても強く反応してしまうとアレルギーとして症状が現れます。

アレルギー反応(免疫反応)は、仕組みの違いによって大きくI〜IV型に分類されます。花粉症はそのうちのI型アレルギー(IgEが関与する即時型反応)に含まれます。

以下は少し専門的な内容になります。知りたい方は読み進めてください。

  • I型アレルギー(即時型)
  • II型アレルギー
    • 主に**IgG(またはIgM)**が関与し、抗体が細胞表面の抗原に結合することで補体や免疫細胞が働き、細胞が障害されます。
    • 代表的な疾患:自己免疫性溶血性貧血免疫性血小板減少症、(一部の)自己免疫疾患 など
  • III型アレルギー
    • 抗原と抗体が結合した免疫複合体が体内に沈着し、炎症を起こして組織が障害されます。
    • 代表的な疾患:血管炎の一部、糸球体腎炎の一部、(病態として免疫複合体が関与する疾患)など
  • IV型アレルギー
    • 抗体ではなく、主にT細胞が関与します。抗原に反応したT細胞が炎症を起こし、時間をかけて組織障害が起こります。
    • 代表的な疾患:接触性皮膚炎かぶれ)、移植拒絶反応 など

2. 花粉症と食べ物のアレルギーの関係

花粉症の人は食べ物のアレルギーになりやすいことが知られています。花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome : PFAS、別名 pollen-food syndrome : PFS)と呼ばれます。食べ物のアレルギーの症状が口の中や、喉のかゆみであったため、以前は口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)と呼ばれていました。現在はPFAS という名称での統一が試みられています。

花粉症で食べ物に反応が出る理由

PFASは、花粉のアレルゲンと、果物・野菜などに含まれる植物由来タンパクの一部が似ているために起こる「交差反応」が原因と考えられています。花粉に感作されている人が、関連する食べ物(特に生)を摂取すると、接触部位である口やのどに症状が出やすくなります。

多くの場合、原因となるタンパクは熱や消化で壊れやすく、加熱調理したものでは症状が出にくいことがあります(個人差あり)。一方で、タンパクの種類によっては加熱に強く、口の症状だけでなく全身症状につながることもあります。

花粉・食物アレルギー症候群の症状

原因となる食べ物を食べてから、通常は数分〜1時間以内に症状が出ます。

  • よく起こる症状
    • 唇・舌・口の中・のどのかゆみ、ピリピリ感
    • のどの違和感、軽く詰まった感じ 
    • 口腔内の腫れ(軽いむくみ
  • まれに起こる症状
    • 皮膚:蕁麻疹、顔やまぶたの腫れ
    • 消化器:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
    • 呼吸器:息苦しさ、ぜーぜー、のどの腫れ感

PFASの多くは口腔内の軽い症状で止まりますが、まれにアナフィラキシーなど重い症状に進むことがあります。

重症化しやすい組み合わせ

重症化が報告されやすいパターンとして、たとえば次のような組み合わせがあります。カバノキ科花粉にアレルギーがある人が豆乳を飲んだ場合、ヨモギ花粉にアレルギーがある人がスパイス(セリ科のセロリや人参、スパイス)を食べた場合です。アナフィラキシーという重症のアレルギーになることがあります。花粉アレルギーがある人は主治医に食べ物に対する注意点も聞いておくと良いです。

いつ起こり始める?

食べ物に対する反応は花粉症になってから数年遅れて発症します。

どんな花粉でどんな食べ物のアレルギーになるのか?

花粉・食物アレルギー症候群を起こす組み合わせの代表的な例を表にまとめます。

表 春に飛ぶ花粉と交差反応しうる植物性食品の例

花粉 交差反応しうる植物性食品

ブナ目カバノキ科

カバノキ属/ハンノキ属

  • シラカンバ
  • ハンノキ
  • オオバヤシャブシ
バラ科
  • リンゴ
  • モモ
  • サクランボ
  • イチゴ
  • ナシ
  • ウメ
  • ビワ
  • アーモンド
マタタビ科 キウイ
セリ科
  • ニンジン
  • セロリ
  • フェンネル
  • クミン
  • コリアンダー
ナス科
  • トマト
  • ジャガイモ
クルミ科 クルミ
その他
  • マメ科:大豆(豆乳)・もやし・ピーナッツ
  • ヘーゼルナッツ
  • ブラジルナッツ
  • ココナッツ
裸子植物
  • スギ
  • ヒノキ
ナス科 トマト

表 夏に飛ぶ花粉と交差反応しうる植物性食品の例

花粉 交差反応しうる植物性食品
イネ科
  • カモガヤ
  • オオアワガエリ
  • マグサ
ウリ科
  • メロン
  • スイカ
ナス科
  • トマト
  • ジャガイモ
その他
  • バナナ
  • オレンジ
  • セロリ

表 秋に飛ぶ花粉と交差反応しうる植物性食品の例

花粉 交差反応しうる植物性食品
キク科ブタクサ属 ブタクサ ウリ科
  • メロン
  • スイカ
  • ズッキー二
  • キュウリ
バショウ科 バナナ
キク科ヨモギ属 ヨモギ セリ科
  • ニンジン
  • セロリ
  • クミン・フェンネル・コリアンダーなどのスパイス
その他
  • キウイ
  • ピーナッツ

表 ラテックスと交差反応しうる植物性食品の例

アレルゲン 交差反応しうる植物性食品
パラゴムノキ属 ラテックス
  • バナナ
  • クリ
  • アボカド
  • キウイ

3. 花粉症とアトピー性皮膚炎の関係

アトピー性皮膚炎のある人は、成長の過程でアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)を発症しやすいことが知られています。アトピー性皮膚炎は乳幼児期に始まることが多く、花粉症の発症はそれより後の年齢でみられることが一般的です。乳児期のアトピー性皮膚炎が、その後のアレルギー性鼻炎の発症に関連するという報告もあります。
また、花粉の時期には皮膚症状が目立つことがあります。具体的には、次のようなパターンがみられます。

花粉による皮膚炎は、花粉が皮膚に付着して刺激になることなどが関係すると考えられています。原因としてはスギ、シラカバ、カモガヤ、ブタクサなどが挙げられます。症状は花粉が付着しやすい露出部に出やすく、目の周囲、顔、首などにみられることが多いです。

参考:J Allergy Clin Immunol. 2012 Nov;130(5):1117-1122.e1

4. 花粉症と喘息の関係

花粉(例:スギ、ヒノキ、イネ科〔カモガヤなど〕、ブタクサ、ヨモギなど)が飛ぶ時期に、咳や息苦しさ、ぜーぜーといった喘息症状が出たり、悪化したりすることがあります。花粉の時期に、典型的な花粉症症状(目のかゆみ、くしゃみ、鼻水など)が目立たないまま、呼吸器症状が前面に出る人もいます。

一方で、喘息のある人はアレルギー体質を背景に持つことが多く、花粉症を含むアレルギー性鼻炎合併しやすい傾向があります。

気管支喘息とは

気管支喘息は、気道(口から肺までの空気の通り道)に慢性的な炎症が起こり、刺激に対して気道が過敏になって狭くなりやすい病気です。花粉だけでなく、風邪(気道感染)、ほこり、運動、冷気などの刺激で症状が悪化し、咳・息苦しさ・ぜーぜー(喘鳴)などが出ることがあります(喘息発作)。

花粉と喘息の関係

花粉が喘息に関係するかどうかは、人によって状況が異なります。

  • 花粉の飛散時期に喘息が悪化する人がいる
  • 花粉症(アレルギー性鼻炎)を合併している喘息では、鼻症状の悪化が喘息のコントロールにも影響することがある

「スギ花粉だけで喘息を発症するか」については一概に言い切れませんが、少なくとも花粉が多い時期に症状が悪化する人がいるのは臨床的に経験されます。

なお、スギ花粉そのものは粒子が比較的大きく、通常は下気道の奥まで到達しにくいと考えられます。一方で、環境中では花粉が破裂して微小な粒子(より小さいアレルゲン粒子)となり、これが呼吸器症状に関与する可能性が指摘されています。

咳が続くときの注意点

喘息の症状として咳が出ることがありますが、咳だけが続く場合は、花粉症による咳(後鼻漏など)や、咳喘息などとの区別が必要です。
息苦しさ、ぜーぜー、夜間・早朝に悪化する咳、運動で悪化する咳がある場合は喘息を疑い、呼吸機能検査なども含めて医療機関で評価を受けることをおすすめします。

参考:N Engl J Med. 1989 ; 320-271-7