かふんしょう
花粉症
植物の花粉に対するアレルギー反応。症状として、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状が起こる。
12人の医師がチェック 257回の改訂 最終更新: 2025.07.10

花粉症の原因①:花粉に対してアレルギー反応が起こる仕組みとアトピー・喘息との関連

花粉症はアレルギー性鼻炎の一つです。このページでは、花粉でアレルギー反応が起こるしくみについて見ていきます。さらに、同じくアレルギーである気管支喘息アトピー性皮膚炎との関係についても説明します。

1. 花粉症はアレルギーの一種

花粉症は花粉に対するアレルギー反応です。花粉を異物と認識して反応した細胞が、種々の症状を引き起こします。アレルギー反応はそのしくみによって1型から4型の4種類に分けられ、花粉症は1型アレルギーに分類されます。

アレルギー反応が起こる部位は主に鼻や目です。鼻や目から体内に入った花粉を身体が異物と認識し、その異物と戦うための物質(IgE抗体)をつくります。作り出されたIgE抗体と花粉が反応した影響で、鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみなどの症状があらわれます。

少し難しくなりますが、花粉症が起きるメカニズムについて次に詳しく説明します。

花粉症のアレルギーの機序

やや難しい内容になりますので「花粉と食べ物のアレルギーの関係」まで飛ばして構いません。

花粉症というのは、身体が花粉を敵と認識して外に出そうとする防御反応です。身体の防御反応(免疫反応)は、血液の中にある白血球が担当しています。白血球にはマクロファージやリンパ球といったいろいろな種類があります。

敵と認識された花粉は身体にとって、抗原(アレルゲン)と呼ばれます。花粉(抗原)に対する防御反応は以下のようになります。

  1. 花粉が体内に侵入する
    • 花粉が鼻に入ると、表面の薄い粘液の鼻水の層に花粉が吸着されます。吸着された花粉は、鼻の粘膜の細胞によって、鼻の外に運び出されます。運び出されなかった花粉は鼻の粘膜に付着したままなので、花粉の成分が鼻粘膜に染みこんでいきます。
  2. マクロファージ(身体の中の警察官)が、花粉を異物と認識して食べる
    • 体にとって異物である花粉が体内に入ると、まず、異物を認識するマクロファージという細胞に会い、食べられます(貪食する)。
  3. マクロファージがT細胞、その次にB細胞へと花粉の情報を次々に渡す
    • マクロファージが花粉を貪食すると、花粉の情報を得ることができ、その情報をリンパ球の1つであるT細胞に送ります。T細胞は、花粉の情報を同じリンパ球のB細胞にも送ります。
  4. B細胞が花粉に対するIgE抗体を作る
    • 花粉が次に身体入ってきたときに撃退するために、B細胞がIgEという特殊な爆弾(抗体)を作りだし、肥満細胞(マスト細胞:体の中の爆弾保管庫)の表面に抗体を保管しておきます。
  5. 花粉が体内に再度入ると、肥満細胞のIgE抗体と花粉が反応する
    • 花粉が再び鼻などから体内侵入すると、肥満細胞の表面にあるIgE抗体が、体内に入った花粉にくっつきます。
  6. 花粉と反応した肥満細胞から、さまざまな症状をおこす物質が放出され、身体の症状がでる
    • IgE抗体が放出されたことをきっかけに、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が肥満細胞から放出されます。それらの化学伝達物質が体に作用することで、身体に種々な症状がでます。
    • 例えば、ヒスタミンなどは、鼻粘膜表面の神経を刺激して、くしゃみを起こします。くしゃみが起きると、反射的に鼻汁が出るようになります。ヒスタミンやロイコトリエンは血管を刺激して鼻づまりを引き起こします。

ここまで鼻での症状を説明しましたが、目でも同様な反応が起こります。目の結膜でも、肥満細胞上のIgE抗体と、結膜の表面で溶け出した抗原成分が結合してヒスタミンが放出されます。ヒスタミンはかゆみを生じさせ、反射的に涙の分泌が増えます。

花粉症で最もよく使われる抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが身体を刺激する段階に効果があります。一方でステロイド薬は、これらの流れと関係なくほぼ全ての免疫メカニズムを抑制します。上のとおり花粉症の症状は免疫反応によって引き起こされるので、免疫メカニズムを抑制することで症状を抑えることができます。

アレルギーとは何か

アレルギーとは、多くの人にとって、本来は無害な物質に対して、身体の細胞が過敏に反応して、全身または体の一部に障害がでる状態です。身体には「免疫」という機能があります。免疫は体の外から入る病原体などの異物(抗原)を認識して戦い排除しようとする働きです。免疫が過剰に働いてしまうのがアレルギーです。アレルギー反応は主に4種類に分けることができます。このうち花粉症は1型アレルギーです。

以下に詳しく説明します。

専門的な難しい話になりますので、知りたい方は読み進めてください。

  • I型アレルギー:主にIgEによるアレルギーです。IgEがアレルギーを起こす物質(抗原)にくっついて、セロトニンやヒスタミンを放出して症状を起こします。
  • II型アレルギー:IgGを主体にしたアレルギーです。IgGがアレルギーを起こす物質(抗原)にくっついて、白血球が直接その細胞を破壊します。
  • III型アレルギー:アレルギーを起こす物質(抗原)を排除しようとした結果、うまく排除されずに免疫複合体という物質が形成されます。免疫複合体が各々の臓器にダメージを与えるアレルギーです。
  • IV型アレルギー:アレルギーを起こす物質(抗原)を排除しようとした白血球自体がおかしくなってしまうアレルギーです。おかしくなった細胞を感作T細胞とよびます。感作T細胞が周辺組織を損傷します。

2. 花粉症と食べ物のアレルギーの関係

花粉症の人は食べ物のアレルギーになりやすいことが知られています。花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome : PFAS、別名 pollen-food syndrome : PFS)と呼ばれます。食べ物のアレルギーの症状が口の中や、喉のかゆみであったため、以前は口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)と呼ばれていました。現在はPFAS という名称での統一が試みられています。

花粉症で食べ物のアレルギーになる理由

果物のアレルゲンと、花粉のアレルゲンの構造が似ている部分が多いためだと考えられています。アレルゲンとはアレルギー症状を起こす物質のことです。花粉に感作された状態で生の果物や野菜を食べると、接触部位である口やのどにアレルギー症状を起こします。アレルゲンは胃で消化されるため、全身性の症状が出ることは少なく、加工品の摂取でも誘発されにくいとされます。

花粉・食物アレルギー症候群の症状

原因となる果物や野菜を食べてから1時間以内に、唇、舌、口や喉の粘膜のかゆみや、ピリピリした感じ、喉のつまり感です。唇や口の中の粘膜のむくみや、水疱(水ぶくれ)や血豆のようなものが出ることもありますが、ほとんどがそれに至らず、自覚症状のみで終わります。

時に引き続いて、以下のような鼻、目、耳、皮膚、腹部や、呼吸の症状などが出ることがあります。

  • 鼻:鼻の穴のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり
  • 目:涙、目の充血、まぶたの腫れ
  • 耳:耳の穴のかゆみ
  • 皮膚:まぶたや顔の浮腫、全身の蕁麻疹じんましん
  • 腹部症状:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
  • 呼吸の症状:呼吸が苦しい、喘息発作(ゼーゼーする)、喉のむくみ(詰まった感じ)

ほとんどの場合は口や喉の症状のみの軽症ですが、まれに重症化します。

重症化しやすいのは、カバノキ科花粉にアレルギーがある人が豆乳を飲んだ場合、ヨモギ花粉にアレルギーがある人がスパイス(セリ科のセロリや人参、スパイス)を食べた場合です。アナフィラキシーという重症のアレルギーになることがあります。

食べ物に対する反応は花粉症になってから数年遅れて発症します。

どんな花粉でどんな食べ物のアレルギーになるのか

花粉・食物アレルギー症候群を起こす組み合わせの代表的な例を表にまとめます。

表 春に飛ぶ花粉と交差反応しうる植物性食品の例

花粉 交差反応しうる植物性食品

ブナ目カバノキ科

カバノキ属/ハンノキ属

  • シラカンバ
  • ハンノキ
  • オオバヤシャブシ
バラ科
  • リンゴ
  • モモ
  • サクランボ
  • イチゴ
  • ナシ
  • ウメ
  • ビワ
  • アーモンド
マタタビ科 キウイ
セリ科
  • ニンジン
  • セロリ
  • フェンネル
  • クミン
  • コリアンダー
ナス科
  • トマト
  • ジャガイモ
クルミ科 クルミ
その他
  • マメ科:大豆(豆乳)・もやし・ピーナッツ
  • ヘーゼルナッツ
  • ブラジルナッツ
  • ココナッツ
裸子植物
  • スギ
  • ヒノキ
ナス科 トマト

表 夏に飛ぶ花粉と交差反応しうる植物性食品の例

花粉 交差反応しうる植物性食品
イネ科
  • カモガヤ
  • オオアワガエリ
  • マグサ
ウリ科
  • メロン
  • スイカ
ナス科
  • トマト
  • ジャガイモ
その他
  • バナナ
  • オレンジ
  • セロリ

表 秋に飛ぶ花粉と交差反応しうる植物性食品の例

花粉 交差反応しうる植物性食品
キク科ブタクサ属 ブタクサ ウリ科
  • メロン
  • スイカ
  • ズッキー二
  • キュウリ
バショウ科 バナナ
キク科ヨモギ属 ヨモギ セリ科
  • ニンジン
  • セロリ
  • クミン・フェンネル・コリアンダーなどのスパイス
その他
  • キウイ
  • ピーナッツ

表 ラテックスと交差反応しうる植物性食品の例

アレルゲン 交差反応しうる植物性食品
パラゴムノキ属 ラテックス
  • バナナ
  • クリ
  • アボカド
  • キウイ

3. 花粉症とアトピー性皮膚炎の関係

アトピー性皮膚炎がある人は花粉症を発症する割合が高くなります。アトピー性皮膚炎の発症年齢は花粉症の発症年齢に比べて若いです。乳児期にアトピー性皮膚炎がある場合、7歳におけるアレルギー性鼻炎の発症に関与するという報告もあります。

花粉症による皮膚炎に関しては、もともとアトピー性皮膚炎がある人は、花粉症の時期にアトピー性皮膚炎の症状が悪化したり、通常ではアトピー性皮膚炎はないものの、花粉の時期のみに皮膚炎をおこすこともあります。

花粉は皮膚にくっつくことで接触性皮膚炎を起こします。原因の花粉は、スギ、シラカバ、カモガヤ、ブタクサなどがあります。症状は花粉が付着する部分に起こり、目の周囲、顔、くびなどの露出部分におこります。

参照:J Allergy Clin Immunol. 2012 Nov;130(5):1117-1122.e1

4. 花粉症と喘息の関係

スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギといった花粉により喘息を発症することがありますが、この際に目のかゆみやくしゃみ、鼻水といった典型的な花粉症の症状を伴わないで喘息を発症することもあります。また、逆に喘息の患者さんはアレルギー体質が強い傾向にあることが分かっており、花粉症にかかりやすいと考えられます。

気管支喘息はアレルギーによって、気道(口から肺までの空気の通り道)が狭くなる病気です。気道感染やホコリなどの刺激が加わると、さらに気道が狭くなり、息苦しさを生じます(喘息発作)。喘息患者は何らかのアレルギーをもつことが多く、花粉に対するアレルギーをもつ場合もあります。

スギ花粉のアレルギーだけが原因で気管支喘息になるかどうかについては、なるという意見と、ならないという意見があり見解が一定していません。しかし、大量に花粉が飛ぶ時期には喘息症状が悪化する患者も多いです。

小さなスギ花粉の粒子が肺へ吸入されて、喘息症状を誘発します。スギ花粉の大きさは20-30μmです。肺の微小な構造に比べると大きいため、スギ花粉が肺の末端まで吸入されることは少ないのですが、自然環境の中では、スギ花粉は、さらに小さい粒子を飛散させていることがわかっています。その小さな粒子が喘息症状を起こします。

気管支喘息の症状として、咳がありますが、咳のみでは喉頭アレルギーと区別することが難しく、確定診断にはアレルギー専門医の受診が必要です。

参照:N Engl J Med. 1989 ; 320-271-7