かふんしょう
花粉症
植物の花粉に対するアレルギー反応。症状として、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状が起こる。
12人の医師がチェック 143回の改訂 最終更新: 2023.02.03

花粉の検査は何をする?花粉の種類を調べて、花粉症の時期を知ろう

外出時に、鼻水や鼻づまりが悪化したり、鼻や目がかゆいと、花粉症かもしれないと心配する方もいるかもしれません。どんな検査を何科ですれば良いのか悩みますね。実際に花粉症の診断はどのようにするのでしょうか。詳しくみていきましょう。

1. 花粉症の検査をしたい時は何科を受診すれば良い?

花粉症かもしれないと思った場合には、症状が強く出ている部位を専門にしている科に受診すると良いでしょう。具体的には次のリストを参考にして下さい。

  • 耳鼻咽喉科:鼻づまりや鼻汁、鼻のかゆみが強い場合
  • 眼科:目のかゆみや目やにがある場合
  • 皮膚科:皮膚のかゆみや赤みが強い場合
  • 内科:だるさ(倦怠感)や微熱などの全身の症状が強い場合
  • 小児科:子供に症状がある場合

症状が複雑でどこに行けばなかなか判断がつかない場合や、近くに診療科が限られている場合には、上のいずれかの診療科を受診すれば診察してくれるので心配はいりません。

花粉症の検査は大きな病院でなくとも、近くの医院などでも受けることができます。検査を受けたい人は、受診する前に検査を行っているか問い合わせてみてください。

2. 花粉症の診断に検査は要る?

花粉症の診断には検査は必須ではありません。しかし、検査を行うメリットとしては、花粉症かもしれないという気持ちの解消と、どのような花粉症があるかを知ることで、その時期に重点的に対処ができます。

花粉症の検査には2種類あります。花粉症であるという診断の検査と、何の花粉症なのかという診断の検査です。

アレルギー性鼻炎の診断基準

花粉症はアレルギー性鼻炎のうち、原因が花粉のものをさします。アレルギー性鼻炎は、鼻の過敏症状がある疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏(水のようなサラサラした鼻水)、鼻づまりがあります。日本の『鼻アレルギー診療ガイドライン』での、アレルギー性鼻炎の診断基準を示します。

<診断基準>

  • 鼻の過敏症状がある:くしゃみ、水様性鼻漏(水のようなサラサラした鼻水)、鼻づまり
  • 以下の条件のうち2つ以上が陽性
    1. 皮内反応または、スクラッチテストまたは、血清中抗原特異的IgEが陽性
    2. 鼻汁中好酸球が陽性
    3. 抗原誘発反応が陽性(ただし、誘発反応の抗原は現在はブタクサとハウスダストのみしかない)
  • ただし、上記1つのみが陽性の場合は、鼻の過敏症状の典型症状があり、アレルギー検査(鼻汁好酸球数、血中好酸球数、血中総IgE)が中等度以上なら診断しても良い

厳密に診断するためには、上記の診断基準に従って検査を行います。しかし、上記全ての検査を行うことはあまりなく、実際には問診で症状の確認を行い、鼻粘膜の観察をすることで、アレルギー性鼻炎か診断を行うことがほとんどです。更に、アレルギー性鼻炎の原因物質を調べる検査を追加で行うと、原因物質の回避などに役立ちます。

花粉症の検査:問診(季節性の有無と症状)

鼻や目のアレルギー症状が一年中見られるのか、一定の季節のみに見られるのかによって、通年性アレルギーなのか、花粉症(季節性アレルギー)なのかを判断することができます。

一般的には、ダニやハウスダストでは一年中症状があります。花粉症の場合は、アレルゲンとなる花粉が飛散する時期のみの症状です。しかし、アレルゲンとなる花粉が多数ある場合は、通年性のアレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎と区別がつかない場合もあります。

スギ花粉が飛散する時期は、ちょうどウイルス上気道炎かぜ症候群)を起こしやすい時期です。鼻水や鼻づまりがある時、かぜ症候群なのか花粉症なのか悩むと思います。

区別するポイントとしては、花粉症では、目のかゆみや目やになどの目の症状があることです。目のかゆみは、眼球そのものの場合もありますし、まぶたや、まぶたの縁の部分がかゆくなることもあります。

鼻水はいずれも水のようなサラサラした鼻水のことが多いです。かぜ症候群では、症状が悪化すると、粘っこい鼻水になることがあります。

花粉症の検査:鼻や目の粘膜の視診

花粉症の時期に、症状のある部位を診察することで、症状と一致した粘膜の変化を診て診断することが可能です。

鼻の症状がある場合は、耳鼻咽喉科で鼻の中を観察します。鼻鏡という道具を用いて、鼻の穴を広げて観察します。一般的に花粉症の場合は、鼻粘膜が赤く腫れているのが観察できます。

目の症状がある場合は、眼科で目の診察をします。眼球やまぶたの裏を観察して、炎症があるかを観察します。一般的に花粉症の場合は、眼球やまぶたの裏の赤みや、まぶたの裏の粘膜の隆起ができます。

花粉症の検査:鼻汁や結膜の好酸球検査

花粉症の症状のある鼻や目に、アレルギーに関与する好酸球がいるかどうかを調べる検査です。

花粉症の症状がある時期に、鼻水や目やにの中に好酸球がある場合は、アレルギーによる鼻や目の症状と診断ができます。注意点としては、花粉が飛散していない時期には好酸球は出ないこと(陰性)が多いことと、1回の検査で陰性でも再度の検査を必ず行うことです。

花粉症の検査:何のアレルギーか調べる検査

アレルギーであることがわかった場合は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を調べる検査を行います。花粉症の場合は、アレルゲンを調べることで、どの時期に注意すれば良いか判断できるので便利です。

アレルゲンを調べる方法としては、皮膚テスト(皮内テスト、スクラッチテスト)と、血清特異的IgE抗体検査があります。いずれもアレルギー症状がある場合は、保険で検査を行うことができます。

これらの検査の注意点は、検査で陽性でも、必ずしもアレルギーを発症しているとは限らないことです。例えば、検査でスギ花粉へ反応したとしても、その時点でスギ花粉症を発症していないことがある、ということです。もちろん、今後発症する可能性は、抗体がない場合よりも高くなります。

また、検査の感度の問題から、陰性でもそのアレルゲンで発症しないとは言い切れないことも注意点です。

皮膚テストの良いところは、費用が安く、短時間で結果を直接見られることです。悪い所は、検査に痛みがあることと、検査前に少なくとも1週間はアレルギーの薬の使用をやめる必要があることです。薬を中止している1週間は、鼻水や鼻づまりなどのアレルギー症状をがまんする必要があります。その他、検査による反応で皮膚にかゆみや、腫れが起こり、後まで残ることがあります。皮膚テストは前腕(肘より先)で行います。皮内注射でアレルゲンを注射する皮内テストと、アレルゲンをつけた部分に針先で傷をつけるスクラッチテスト(プリックテスト)があります。

血清特異的IgE抗体検査は血液検査で行います。アレルギー症状がある場合は保険で検査を行うことができます。3割負担で5,000円ほどの検査です。

検査するアレルゲンを自由に選ぶ方法では、一度に検査を行うことができるのは13項目までです。その他に、決まった33項目を調べることができるMASTⅢや、39項目を調べることができるViewアレルギーなどの検査方法もあります。いずれも検査結果がでるまでには数日間かかります。

最近では30分程度で検査結果がわかるアレルギー迅速検査もあります。指先から少量の血液を採取するのみで、検査を行うことができます。

医療機関によってできる検査が異なりますので、希望する場合は問い合わせてみましょう。

花粉症の重症度の基準は?:ひどい花粉症かどうか?

花粉症の症状に応じて、鼻アレルギー診療ガイドラインでは重症度分類を行います。花粉症で一番ひどい時期は、最重症に該当することが多いです。鼻づまり(鼻閉;びへい)と、鼻水やくしゃみのどちらの症状が強いかと、重症度に応じて、治療内容を検討します。

表 アレルギー性鼻炎症状の重症度分類

程度および重症度 くしゃみ発作または鼻漏*
++++ +++ ++ + -
鼻閉 ++++ 最重症 最重症 最重症 最重症 最重症
+++ 最重症 重症 重症 重症 重症
++ 最重症 重症 中等症 中等症 中等症
+ 最重症 重症 中等症 軽症 軽症
- 最重症 重症 中等症 軽症 無症状

凡例

くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型 充全型

*くしゃみか鼻漏の症状が強い方のランク分類を用いて、判定を行います。

くしゃみ、鼻漏、鼻閉(鼻づまり)のそれぞれで、症状にあわせて、どのランクに該当するかみます。従来の分類では、重、中、軽症の3段階ですが、スギ花粉飛散の多いときは重症より重い症状も起こるので、最重症を入れてあります。

(『鼻アレルギー診療ガイドライン』より)

表 アレルギー性鼻炎症状のランク分類

種類 程度
++++ +++ ++ + -
くしゃみ発作(1日の平均発作回数) 21回以上 20〜11回 10〜6回 5〜1回 +未満
鼻汁(1日の平均の鼻をかむ回数) 21回以上 20〜11回 10〜6回 5〜1回 +未満
鼻閉 1日中完全につまっている 鼻閉が非常に強く,口呼吸が1日のうち,かなりの時間あり 鼻閉が強く,口呼吸が1日のうち,ときどきあり 口呼吸はまったくないが鼻閉あり +未満
日常生活の支障度* 全くできない 手につかないほど苦しい (+++)と(+)の中間 あまり差し支えない +未満

*日常生活の支障度:仕事,勉学,家事,睡眠,外出などへの支障

(『鼻アレルギー診療ガイドライン』より)