2021.03.02 | コラム

新型コロナ流行下に到来したスギ花粉シーズン:知っておきたい4つのポイント

花粉症なのか新型コロナなのかわからなくて不安な人が押さえておくべき見分け方のコツとは

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花粉症の季節がいよいよやってきました。筆者の外来を見渡しても今年は花粉症の症状を訴えてくる人がいつもより多い気がします。もしいま自分が花粉症になったら、つらい症状の中で一抹の不安がよぎりませんか。そう「もしかしてこの症状って新型コロナじゃないよね……」という不安です。

花粉症では鼻水や微熱、場合によっては咳も出るため、風邪の症状は見分けがつきにくいのも仕方がありません。もちろん新型コロナウイルス感染症の症状と見分けるのも簡単ではないわけです。去年の春ごろに筆者も外来で患者さんから「花粉症と新型コロナの見分け方」について質問されて、なんとなくしか答えられなかった苦い経験があります。本当に恥ずかしい限りでしたが、当時の情報では明確には答えることができなかったのも確かだと思います。ただ、今はその頃と比べて知見の集積があるわけで、症状についても見えてきたものがあります。

このコラムでは、花粉症の人が覚える「もしかして自分はコロナなのでは?」という不安について少しでも解消できればという思いを込めて書いていきます。

 

新型コロナの症状と花粉症の症状の違いについて

花粉症の症状といえばどういったものがあるでしょう。目や鼻に限局した症状が主になりますが、場合によっては眠気や微熱などの全身の症状も見られます。

 

【花粉症でみられやすい症状】

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 目のかゆみ
  • 目やに
  • 発熱
  • 眠気
  • だるさ
  • 頭痛

 

これらの中で、どの症状がどの程度みられるのかは人それぞれですが、リストをよく見てみると風邪の症状に似ていることがわかりますね。鼻風邪であればくしゃみや鼻水が出てきますし、咳や微熱が見られる風邪も多いわけで、症状だけで花粉症と風邪を見分けるのは状況から判断する熟練の業が必要になります。そのため、外来では医師は周囲の感染流行状況や症状の出現のタイミングなどを追加情報としていくことで、原因の病気を推理します。逆に言うと、この問診がとっても大事であるというわけです。

 

新型コロナの症状について

新型コロナの症状は風邪の症状と似ています。というよりも、医学的には風邪は急性上気道炎という病名で、新型コロナもここに含まれると言えます。コロナの代表的な症状は次の通りです。

 

【新型コロナでみられやすい症状】

  • 発熱
  • だるさ
  • 喉の痛み
  • 関節の痛み
  • 頭痛
  • 下痢
  • 嗅覚の異常
  • 味覚の異常
  • 息切れ
  • 脱毛

 

またこれらの症状以外にも、病状の進行につれて息切れや息苦しさ、意識朦朧などが見られることもあります。

2つのリストを見比べると「発熱」「咳」「だるさ」「頭痛」などは共通しているのがわかります。つまり、共通の症状からは病気を見分けるのが難しいということです。

ここで新型コロナの症状をもう少し紐解いてみましょう。新型コロナ患者の中でも最も一般的に見られる症状は発熱であり、咳は案外ずっとは続かないという報告があります[1]。また、順番に注目すると、最初に見られる症状は発熱で、その後咳がつづていくことが多いという報告もあります[2]。一方で、この報告によると風邪の代表格であるインフルエンザはコロナとは逆に咳から発熱が続くことが多いとしています。

このように、見られた症状を単純に見つめてもわからなかったものが、時系列で並べてみると見えてくることがあるわけです。翻って、診察室で医師から質問される、あの問診がいかに重要なのかがわかりますね。

 

花粉症なのかコロナなのかわからなくて不安な人に

コロナが流行している時期に花粉症の症状が出ると不安になる人も少なくないと思います。このコラムを読んでいる人も例外ではないでしょう。原因となっている病気を完璧に見分けることは困難ですが、2つの病気の特徴を踏まえて、筆者の考える見分けるためのコツを紹介していきます。

まずは下の4つを見てください。

 

【症状から花粉症よりも新型コロナを疑うポイント】

 1. 高熱が見られたら要注意
 2. 最初に出た症状が発熱の場合は要注意
 3. 嗅覚や味覚に異常が見られたら要注意
 4. 症状がとても強い場合は要注意

 

これらに当てはまる場合には花粉症というよりは新型コロナを念頭に置いて行動するほうが良いと思います。もう少し詳しく見ていきましょう。

 

1. 高熱が見られたら要注意

新型コロナでは熱が出やすいです。その熱の高さは人それぞれで、インフルエンザよりもしんどい熱が出たという人もいれば、軽い風邪による微熱だと思って受診してみたら新型コロナの検査が陽性になってしまったという人もいます。しかし、新型コロナでは高熱が問題となることが少なくなく、特にコロナ流行期に高熱が見られたら注意が必要です。

一方で、花粉症でも熱が出ることがあります。熱は出ないにしてもなんだか顔が熱っぽく感じたりした経験に思い当たる節がある人もいることでしょう。しかし、高熱が出ることはほとんどありません。むしろ高熱は花粉症以外の病気が関連していると考えるほうが自然です。

これらの点から、「高熱が見られたら花粉症より新型コロナ感染症が疑わしい」と考えたほうが良いです。

 

2. 最初に出た症状が発熱の場合は要注意

先ほど紹介した論文にあったように、新型コロナではまず熱が最初の症状として見られることが多いようです。熱が出てから、咳を中心とした症状が重なってくるパターンが多く見られる点には注意すべきです。

一方で、花粉症は最初に熱だけ見られることもありますが、目や鼻の症状がない状態で熱だけ見られることはあまり多くないと思います。

これらの点から、「最初に出た症状が発熱の場合は花粉症より新型コロナ感染症が疑わしい」と考えたほうが良いです。

 

3. 嗅覚や味覚を感じなくなったら要注意

新型コロナの症状で嗅覚や味覚が麻痺してしまうことは度々報告されています。その頻度は報告によってまちまちであったりしますが、メタアナリシスという多くの報告をまとめたとある論文では、嗅覚異常は41.0%で味覚異常は38.2%で出現すると指摘しています[3]。論文の結果を鵜呑みにしてはいけませんが、傾向として新型コロナになると4割程度の人が嗅覚障害や味覚障害を起こしうると考えて良いかもしれません。この数字は結構なレベルだと思いますし、個人的に診察したコロナ患者さんや罹患した友人の話を聞いても、嗅覚や味覚に異常をきたした人は少なくない印象です。

一方で、花粉症でも鼻詰まりによって嗅覚に異常が起こることがあります。しかし、嗅覚異常の程度に注目すると、鼻詰まりや鼻粘膜の腫れによって嗅覚が弱まることは十分に考えられますが、よほど重症の花粉症でない限り嗅覚が完全に失われるということは少ないと思います。また、花粉症で味覚に異常をきたすことは絶対ないとは言えませんが、頻度としてはかなり珍しいです。

これらの点から、「嗅覚や味覚を感じなくなったら花粉症より新型コロナ感染症が疑わしい」と考えたほうが良いです。

 

4. 症状がとても強い場合は要注意

「新型コロナはインフルエンザよりもしんどい」といった趣旨の体験談が報道されているのを見たことがある人も多いかもしれません。症状が見られた場合にはそのしんどさはかなり強くなるのは新型コロナの特徴なのですが、中には軽症なので気づかないくらいの症状しか見られないことがあるのも事実です。

しかし、強い症状が見られたら、その原因は新型コロナなど一部の病気に絞られてきます。ここで言う強い症状とは、高熱や強い息切れ、嗅覚や味覚の消失などが当たります。また、新型コロナに限らず、急に現れた息切れは重症化しているサインの可能性が高いので、「気のせいかな」とか「我慢してれば回復するかな」といった具合に様子見してしまうのは危険です。医療機関にかかるようにしてください。

一方で、花粉症で強い症状はあまり見られません。もちろん「強い目のかゆみ」や「止まらない鼻水」などは起こりえますが、日常生活がままならなくなるようなほどの強い症状は新型コロナのほうが起こりやすいと言えます。

これらの点から、「症状がとても強い場合は花粉症より新型コロナ感染症が疑わしい」と考えたほうが良いです。

 

困ったら一人で悩みを抱えずかかりつけ医に相談するのが一番のコツ

ここまで「スギ花粉のシーズンに花粉症と新型コロナを症状から見分けるコツ」についてお話してきました。上で述べた4つのポイントを覚えておくと不安の解消につながると思います。しかし、どんなに知識を身につけても自分で診断をつけることは簡単ではありません。最後になんだか根も葉もないことも言ってしまっていますが、自分で診断したとしても、その判断について不安が消えないのであれば他にも手段を探ってみてください。

自分の出した答えに不安を覚えて過ごすくらいなら、受診して相談するほうがオススメです。やはり餅は餅屋ですので、医師はここ1年間で蓄積されたコロナの知識を踏まえて診察してくれると思います。そして不安に思っていることや疑問は何でも聞いてみちゃってください。

外来では多くの患者さんを診るための時間が限られています。ですので、すごい数の質問をしてもお医者さんは答える余裕がないかも知れませんが、本当に困っていることは遠慮なく質問してください。困っている患者さんのためになれたらとても嬉しい気持ちになるのが医療者のサガだと僕は思っています。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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