2021.03.10 | コラム

花粉症の時期到来:受診しますか?市販薬を使いますか?

花粉症の薬はセルフメディケーションでも対応できます
花粉症の時期到来:受診しますか?市販薬を使いますか?の写真
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古くから三寒四温といいますが、暖かい春の陽気に連れて花粉症もやってきます。なったことがある人は経験があると思いますが、目がしょぼしょぼしたり痒くなったり、鼻水が止まらなくなったりと、花粉症には軽いけれどもしつこい症状がつきものです。

筆者はかなり重度の花粉症があるため、今年も1月辺りから症状を感じ始め、早々に治療薬を飲み始めました。新型コロナ感染症(COVID-19)の影響もあって毎日マスク生活をしているため、今年は症状が軽くならないかと期待していましたが、やっぱりだめみたいです。

さて、そんな花粉症ですが、この時期は受診しても外来が混雑していてなかなか薬がもらえなかったりします。また、コロナが心配だから花粉症くらいだったら医療機関を受診したくないという人もいるのではないでしょうか。(新型コロナ感染症と花粉症の見分け方のコツについての説明もあります。)

このコラムでは、「そんな人たちに朗報」という形で、花粉症のセルフコントロールについてお伝えしたいと思います。

 

花粉症の薬にはどんなものがある?

花粉症は言わずと知れた花粉に対するアレルギーの病気です。この時期はスギの花粉が原因となることがほとんどですが、季節ごとに原因となる花粉は異なります。例えば、春過ぎごろからはヒノキの花粉が多く飛びますし、夏前後にはイネ科の花粉も増えてきます。これらに対してアレルギーを持っている人は、目や鼻を中心とした症状に悩まされます。時には集中力の低下や眠気も相まって、生活や仕事についても支障をきたすこともあり、症状に悩まされている人は早く対処したほうが断然オトクです。

 

花粉症の対処法の基本

花粉症の対処法の根本は薬を飲むことではなく花粉を避けることです。そのためにマスクの着用やゴーグルの装着、洗顔やうがい、空気清浄機の使用などは効果が期待できます。しかし、いろいろと対策を練っても症状に悩まされている人は少なくなく、そういった人には薬の使用がポイントになってきます。

 

処方薬

花粉症の患者さんが受診する場合には、内科か耳鼻科に行くことが多いと思います。アレルギーと考えると内科が専門ですし、鼻の病気と考えると耳鼻科が専門となりますが、医師目線でいうとどちらを受診しても問題ないと思います。

お医者さんにかかると症状にあった薬が処方されます。「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」によれば花粉症に対して使用される主な薬剤は次のようになります。

 

 

普段から薬に慣れ親しんでいない人にとって、文字を見ていても頭になかなか入ってこないと思いますので、これらの特徴をかいつまんで表にしてみます。

 

花粉症で処方される主な薬のポイント】

  使用方法 特徴
ヒスタミン薬(第2世代) 内服薬点眼薬 ・効くのに時間がかかるが効果は持続しやすい
・鼻詰まりにもまずまず効く
・連用すると効果が上昇
ケミカルメディエーター遊離抑制薬 点鼻薬、点眼薬 ・効果を実感しにくい
・連用すると効果が上昇
・副作用が少ない
ロイコトリエン拮抗薬 内服薬 ・鼻詰まりの効果は抗ヒスタミン薬より上
・鼻水やくしゃみにも効く
・飲んでから1週間以内で効いてくる
プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬 内服薬 ・鼻詰まりの効果は抗ヒスタミン薬より上
・鼻水やくしゃみにも効く
・飲んでから1週間以内で効いてくる
Th2サイトカイン阻害薬 内服薬 ・鼻詰まりに効きやすい
・他の薬との併用がより効果的
ステロイド 点鼻薬 ・強い効果が期待できる
・1-2日効果が持続する
・目の症状にも効果がある

(参考:鼻アレルギー診療ガイドライン2020)

 

また、重症な人にはステロイド薬などの内服や抗IgE抗体と呼ばれる注射やレーザー治療なども候補にあがってきます。

さらに、これら以外にも漢方薬を処方されることがあります。漢方薬では小青竜湯を筆頭に鼻炎に対して効果を発揮するものがありますが、西洋薬と少し異なった考え方をする必要がある点は注意しなければなりません。西洋医学は見られている症状を中心に考えていきますが、漢方医学は身体のバランスを整えることを重視した考え方をします。つまり、「気・血・水」と呼ばれる要素から身体がどういったバランス(これを漢方では「証」といいます)にあるのかを見極めます。そしてこの「証」に沿った治療がなされるというわけです。ここでは詳しいことは述べませんので、興味がある人は「漢方薬の選択は十人十色!?」を読んでみてください。

以上、花粉症で受診した際の治療について述べてきました。医療機関における花粉症の治療についてもっと詳しく知りたい人は「医療機関で受けられる花粉症の治療」も参考にしてください。

 

市販薬

ご存知の人もいると思いますが、実は市販薬で花粉症に対応することもできます。市販薬で対応することで受診しなくて済むため、時間の節約やお金の節約につながるかも知れません。また、コロナが怖いから医療機関を受診したくないという人にも向いています。

内服薬・点鼻薬・点眼薬のいずれも市販薬として手に入れることができます。

 

【市販薬として手に入る花粉症の薬の例】

  • 内服薬
    • 抗ヒスタミン薬成分のあるもの
    • 漢方薬
  • 点鼻薬
    • ステロイド成分のあるもの
  • 点眼薬
    • 抗ヒスタミン成分のあるもの

 

商品名など詳しいことは「花粉症に自分でできることは?」に譲りますが、各々に注意事項があるので、使用する前にはよく確認するようにしてください。

また、市販薬を用いて治療するときに忘れてはいけないのが「セルフメディケーション税制」という仕組みです。要は市販薬の中でもスイッチOTCと呼ばれる物を購入した世帯合計額が12,000円を超える場合に節税を行えるというものです。詳しい仕組みについては「セルフメディケーション税制について説明された厚生労働省のサイト」を参考にしてください。医療費控除の有無など縛りはありますが、覚えておきたい制度です。申請するためにはレシートを保存しておくことも忘れないようにしてください。

 

本当に受診しなくてよいかを考える上で市販薬を今一度考える

一方で、市販薬を使用する際の自己判断には少し懸念が残ります。つまり、「自分に適している薬を使用できているのかどうか」や「自分が花粉症だと思っている症状は本当に花粉症で良いのか」といった部分です。また、処方薬より治療選択肢が限られるので、症状が強いときに対応が難しい場合もあります。もし市販薬で済ませたいけれど不安を感じるようでしたら、遠慮なく薬局にいる薬剤師に相談してみるようにしてください。

最後に市販薬で対応するメリットとデメリットをまとめておきます。

 

【市販薬で花粉症を対応するメリットとデメリット】

メリット デメリット
・時間を節約できる
・出費を節約できる(特に初診の場合)
・節税できる(年間12,000円以上の場合)
・受診による感染罹患リスクを下げられる
・自分に適した薬を探すのが難しい
・実は花粉症ではなかったときに原因が見逃されやすい
・治療法が限られる

 

以上を踏まえて自分は市販薬を使ってみようかそれとも受診してみようかを判断すると良いと思います。

 

今回は花粉症の市販薬を使用した対策について説明しました。特に忙しい人や症状が軽い人はおすすめです。一方で、市販薬を使用しても改善が乏しい場合には受診して相談したほうが良いと思われます。

withコロナで医療への関心が高まる機運にありますが、是非この機会に「自分に合った選択肢を自分でチョイスする」という流れが定着することを願っています。

 

 

参考文献

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」, ライフ・サイエンス, 2020

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。