2015.07.16 | コラム

漢方薬の選択は十人十色!?

体の「証」と漢方薬の選択について
漢方薬の選択は十人十色!?の写真
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以前のコラムで、漢方薬は使う人の体質や症状などに合わせて選択することが基本となることをご紹介しました。具体的には体質や状態などを示す「証(しょう)」というものに合わせて薬を選択するのですが、ヒトの個性が十人十色というように、この「証」も様々な要素で分けられます。

◆「証」といっても色々ある?

漢方薬を選択する上で基本となる「」が「虚実」です。

体力がある・抵抗力が強い・胃腸が丈夫などでは「実証」。反対に、体力がない・抵抗力が弱い・胃腸が弱いなどでは「虚証」、そのどちらともいえないような中間くらいの場合は「中間証」というように分かれます。また「証」はその時の状態や症状によっても分けられます。以下は“初期の風邪”の症状と「証」を例として挙げてみたものです。

  • 実証:発熱、体の節々が痛む、咳が出る、首の後ろがこわばる
  • 中間証:くしゃみ、水っぽい鼻水や痰
  • 虚証:寒気や冷え、胃が重い、顔色が青白い

上記の中でも熱のある場合では「陽証(又は熱証)」、微熱程度で寒気などがある場合は「陰証(又は寒証)」というようにさらに「証」を分けて考えることもあります。

 

◆ ヒトの体は3つの要素で維持されている!?

」考える上でもう一つ大事な要素が「気血水(きけつすい)」とよばれるものです。

「気」は文字通り、気力をあらわす生命エネルギーであり脳や神経の活動、免疫系などの機能に関係します。「血」は血液とその機能をさし、「水」は血液以外の体液(リンパ液、汗、尿など)とその機能を示すものです。

「気」が不足している状態を「気虚」といい、症状としては意欲の低下や食欲不振などがおこります。「血」が不足している状態は「血虚」といい血の中の栄養成分が不足している状態で、症状としては肌あれや目のかすみ、不眠などがおこります。何かの要素が不足する以外にも例えば「水」が体内で停滞している状態では「水滞」といい、むくみや痺れ感、めまい、吐き気などの症状があらわれたりします。(飲酒による二日酔いなどは「水滞」の代表例です。)

こうして「気血水」で「証」を分けてから、要素が不足している場合はそれを補う漢方薬(補剤)を用い、過剰になっている要素が有る場合はその流れや排泄を促す漢方薬(瀉剤など)を用いるのも漢方薬の選択方法のひとつです。

 

このように漢方医学では「」を「虚実」や「陰陽寒熱)」、「気血水」などで見極め、その時の体調・体質・症状などによって適する漢方薬を選択します。また風邪ひとつとっても、風邪のひき始めと発症から時間が経過した状態では使用する薬が異なってくる場合もあります。「証」に合った漢方薬を上手に使うと、西洋薬では効果が不十分であった症状を改善してくれる場合もあり、臨床の現場でも近年様々な漢方薬が色々な病気や症状の治療で活躍してきており、今後ますます目が離せない存在になってくるといわれています。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。