2019.12.03 | コラム

市販薬で対応した人には税金の一部が戻ってくる?:セルフメディケーション税制について

市販薬をよく購入する人は押さえておきたい制度

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特定の市販薬を購入した際に使える「セルフメディケーション税制」が2017年に開始されました。少しずつ認知度が上がってきているので、耳にしたことがある人や使ってみたいと思っている人がいるかもしれません。このコラムではセルフメディケーション税制の概要や申告時の注意点を説明していきます。

セルフメディケーション税制とは?

セルフメディケーション税制とは、特定の市販薬の購入費用が1年間で12,000円を超えた場合に、所得控除を受けられる制度のことです。わかりやすく言うと、薬の購入費に応じて、税金が安くなります。

セルフメディケーション税制による控除額は次の計算式で求められます。

 

  • セルフメディケーション税制の控除額(円)*=医薬品の購入費** - 12,000円

*控除額の上限は88,000円
**薬の代金には、本人分だけではなく扶養家族分も含む

 

例えば、Bさんが本人用に20,000円分、扶養している家族用に10,000円分の医薬品を購入したとします。この場合、セルフメディケーション税制による控除額は「(20,000円+10,000円)- 12,000円」で求められ、18,000円になります。

 

セルフメディケーション税制の注意点について

市販薬を多く購入する人に耳よりなセルフメディケーション税制ですが、注意してほしいことがいくつかあります。

 

注意点①:12,000円を超えた分がそのまま戻ってくるわけではない

計算で求めた控除額がそのまま戻ってくるわけではありません。これは「医療費がかさむ人に朗報:医療費控除に関する注意点や申告方法」でお伝えした医療費と同じ仕組みですが、控除額に応じて、所得税の一部が戻ってきたり、翌年の住民税が減額されるものであって、キャッシュバックが行われるわけではありません(所得税と住民税の計算については国税庁のウェブサイトに詳しく掲載されているので参考にしてください)。

 

注意点②:利用できる人に条件がある

セルフメディケーション税制は、健康の保持増進および病気の予防として、一定の取り組みを行っている人のみが使える制度です。一定の取組とは主に次のものを指します。

 

【セルフメディケーション税制を適用できる取り組み】

  • 健康診断
  • メタボ健診
  • がん検診
  • 予防接種

 

もちろん、全ての取り組みが必要ではなく、上記の中で1つを行っていればよいです。取り組みの証明として、領収書や結果通知表、証明依頼書の原本またはコピーの提出が必要になるので、書類の保管を忘れないようにしてください。

 

注意点③:対象となる医薬品が決まっている

全ての医薬品がセルフメディケーション税制の対象になるわけではありません。適用される医薬品は、スイッチOTC医薬品と呼ばれるものに限られます。

スイッチOTC医薬品とは医療用医薬品(お医者さんの処方箋がないと買えない薬)としての有効性、安全性が確認され、薬局やドラッグストアで購入できるように転用された薬のことです。発熱や打撲で重宝する解熱鎮痛剤や、花粉症などのアレルギー症状に効果がある抗ヒスタミン薬などが代表的です(詳しくは「こちらのコラム」を参考にしてください)。

セルフメディケーション税制の対象となる薬の多くには、パッケージに次のマークがついているので確認してみてください。また、レシートに対象商品である旨が記載されるので、こちらも目安になります。

 

 

対象となる薬剤の一覧が厚生労働省から発表されているので、よく使う薬が該当するかを調べてみたい人はこちらも利用してみてください。

 

注意点④:医療費控除と同時に使うことができない

医療費控除とセルフメディケーション税制を同時に使うことはできないので、節税効果が高いほうを選ぶようにしてください。

例えば、入院をともなうような治療を受けた人は医療費控除のほうが向いている場合が多く、市販薬だけで対処した人はセルフメディケーション税制のほうが向いている場合が多いです。とはいえ、医療費や市販薬の購入費には個人差があるので、両方を計算して、有利なほうを選ぶとよいです。

 

注意点⑤:適用には確定申告が必要となる

セルフメディケーション税制を利用するには確定申告を行う必要があります。確定申告とは所得にかかる税金の金額を計算して税金を支払う手続きのことです。まず次の書類を準備してください。

 

【セルフメディケーション税制の申告に必要な書類】

  • 確定申告書
  • セルフメディケーション税制の明細書
  • 一定の取組を行ったことを明らかにする書類

 

確定申告書やセルフメディケーション税制の明細書は「国税庁のHP」でダウンロードできます。なお、薬を購入した際のレシートや領収書の提出義務はありませんが、申告後5年間の保管義務があります。 また、「一定の取組を行ったことを明らかにする書類」とは、注意点②で説明した健康診断などの結果通知書や領収書、署名依頼書の原本またはコピーのことです。

 

前回の「医療費がかさむ人に朗報:医療費控除に関する注意点や申告方法」に続き、医療費の負担を節税によってカバーする制度を紹介しました。医療費控除に比べると、セルフメディケーション税制は利用のハードルが低いので、市販薬をよく購入する人はぜひ活用を検討してみてください。

 

 

 

参考文献

・厚生労働省ホームページ「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について」(2019.11.22閲覧)

・国税庁ホームページ「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき」(2019.11.22閲覧)

・日本一般用医薬品連合会ホームページ「知ってトクするセルフメディケーション税制」(2019.11.22閲覧)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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