2019.11.26 | コラム

医療費がかさむ人に朗報:医療費控除に関する注意点や申告方法

医療に関わる領収書は必ず保管しておいてください
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今年も残すところあと少し。一年を振り返ってみて医療費が積もってしまっている人に朗報があります。かさんだ医療費を控除申請することで節税できることがあります。医療費控除に馴染みがある人は多くはないと思うので、このコラムでは制度の概要や申告の方法について説明していきます。

医療費控除とは?

医療費控除とは、「本人や扶養する家族にかかった医療費の合計が1年間(1月1日から12月31日の間)に10万円を超えた場合、税制上の優遇が受けられる制度」です。

医療費控除額は次の計算式で求められます。

 

  • 医療費控除額(円)*=(医療費の合計金額) - (保険金などで補填される金額)** - 10万円***

 

*医療費控除額の上限は200万円です。

**「保険金などで補填されるもの」には、生命保険や損害保険などから給付される保険金、公的医療保険から給付される高額療養費・出産一時金などが含まれます。

***年間の所得金額が200万円未満の人は、10万円ではなく、総所得金額の5%の金額になります。

 

例えば、年間所得400万円のAさんが1年間に50万円の医療費を支払い、生命保険から5万円の保険金を受け取ったとします。Aさんのケースでは、「50万-5万-10万」で医療費控除額が求められ、35万円になります。

 

医療費控除の注意点について

一見簡単そうに見える医療費控除ですが、利用に際して注意して欲しいことが4つほどあります。

 

注意点①:医療費控除額がまるまる戻ってくるわけではない

上記の計算式で求められる医療費控除額は、そのまま戻ってくる額を示しているわけではありません。医療費控除額に応じて、所得税の一部が還付されたり、住民税が減額されますが、控除申請した額がそのままキャッシュバックされるといった仕組みにはなっていません(所得税のしくみと住民税のしくみについては国税庁のウェブサイトを参考にしてください)。

 

注意点②:保険金の内容によって控除額が変わる

計算式の「保険金などで補填される金額」には生命保険や損害保険からの給付金が含まれます。給付金の取り扱いはやや複雑で、保険の内容によって、「保険金などで補填されるもの」に該当するか否かが決まります。保険金を受け取ったら、契約している保険会社に医療費控除に関係するかどうかを問い合わせておくと確実です。

 

注意点③:医療費控除の対象が決まっている

医療に関わる費用の全てが医療費控除の対象になるわけではありません。対象になるものとならないものが定められています。

 

【主な医療費控除の対象の費用・対象外の費用】

医療費控除の対象 医療控除の対象外
  • 医療機関での診療費/治療費
  • 処方箋をもとにした薬代
  • 治療目的で購入した市販薬の購入費
  • 妊娠・出産にかかる費用
  • 歯の治療費(歯列矯正を含む)
  • 介護費用の一部
  • 入院費
  • 受診に必要な交通費(自家用車のガソリン代・駐車代は除く)
  • 予防注射の費用
  • 美容整形の治療費用
  • 健康診断・人間ドックの費用
  • サプリメントやビタミン剤の購入費
  • メガネ・コンタクトレンズの購入費
  • 自己都合による差額ベッド代

 

上に具体的な項目をあげましたが、例外もあります。例えば、医療費控除の対象外である「健康診断・人間ドックの費用」であっても、病気が見つかった場合は医療費控除の対象になります。また、「メガネ・コンタクトレンズの購入費」は近視や乱視の矯正目的では控除の対象外ですが、緑内障斜視弱視などの病気に対する治療目的であれば控除の対象になります。

ここでは全てを紹介しきれないので、詳しくは「国税庁のページ」も参考にしてください。また、口頭で相談したい人はお近くの国税局で電話相談することができるので、「税についての相談窓口」に問い合わせてみるのもよいです。

 

注意点④:医療費控除を受けるには確定申告が必要である

医療費控除を受けられる条件を満たしていても、自動的に税制上の優遇が受けられるわけではありません。医療費控除を受けるには確定申告を行う必要があります

確定申告とは所得にかかる税金の額を計算し税金を支う手続きのことで、納め過ぎた税金を取り戻すときにも必要になる手続きです(還付申告)。確定申告は原則として翌年の2月16日から3月15日の間に行います。

具体的には、医療費控除の申告に必要となる「医療費控除の明細書」を作成し、所轄税務署に確定申告書とともに提出するか、e-tax(電子申告)にて申告します(医療費控除の明細書は「こちらのページ」でダウンロードできます)。

職場で行われる「年末調整」では医療費控除の申告ができないので注意してください。

なお、医療費の領収書を提出する必要はありませんが、5年間保管しなければなりません。1年間でいくら医療費がかかったか把握するためにも、日頃から医療費に関わるレシートはとっておくようにしてください。

確定申告を行うには手間はかかりますが、医療費控除を利用することで、税金の負担を減らすことができます。今年、10万円を超える医療費を負担した人は来年2,3月の確定申告での利用を検討してみてください。

 

最後に、ここまで読んで「自分の医療費は10万円もかかっていないから関係ない」と考える人もいるかもしれませんが、いつ大病をして医療費負担が大きくなるかはわからないので他人事としないほうが良いかもしれません。
次回は、同じ医療に関わる税制である一方で、少し内容の異なる「セルフメディケーション税制」について説明します。こちらはより少額の医療費でも利用可能です。

 

*全日本病院協会によると、医療費とは「医療機関や調剤薬局などで診察・投薬・治療などを受けた際にかかる費用」とされていますが、このコラムでの「医療費」には医療機関や調剤薬局でかかる費用以外のものも一部含んでいます。

 

執筆者

斎木 寛

参考文献

・国税庁ホームページ「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(2019.11.26閲覧)

・公益財団法人 全日本病院協会「医療費の仕組み」(2019.11.26閲覧)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。