[医師監修・作成]肝硬変の原因:B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・アルコール・NAFLD/NASHなど | MEDLEY(メドレー)
かんこうへん
肝硬変
肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで、肝臓が線維化(肝細胞に炎症が繰り返される影響で組織が硬くなって機能を失うこと)した状態
12人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2022.06.20

肝硬変の原因:B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・アルコール・NAFLD/NASHなど

肝硬変の主な原因は肝炎ウイルスの持続感染や大量飲酒などです。また近年、アルコール非摂取者に見られる脂肪肝炎(NASH)が肝硬変の原因となっていることが分かってきています。このように、肝硬変は様々な原因によって起こります。

1. 肝硬変の原因となりやすい病気

肝硬変を起こす原因は多くありますが、B型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスが長期的に感染することによって起こる場合が多いです。肝炎ウイルスが持続的な感染を起こすと肝臓にダメージが加わり続けます。慢性的に肝臓に影響が加わり続けると肝硬変に至ることがあるので注意が必要です。肝硬変の原因はウイルス感染以外にも考えられます。

以下が肝硬変を起こす主な例です。

次の段落からこれらの原因について詳しく説明します。

慢性B型肝炎(B型肝炎ウイルス感染症)

慢性B型肝炎はB型肝炎ウイルスに長期間にわたって感染することが原因で起こります。慢性B型肝炎は時間の経過とともに肝硬変になることがあり、肝臓がんになる危険性も高くなります。しかし、慢性B型肝炎は進行しないと症状が見られないことが多く、検査をしないと判明しないことが多いです。

B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の一般的な経過

B型肝炎ウイルスは主に血液を通して感染します。B型肝炎は感染する年齢によってその後の経過が変わってきます。

◎子どもの慢性B型肝炎

まだ免疫システムが未発達な幼少期に感染すると、ウイルスを身体から排除することが出来ずに、慢性的な感染になることが多いです。

幼少期の主な感染経路は母親から子供に感染する母子感染垂直感染)です。このため子供にはB型肝炎ウイルスに対する予防接種(定期接種)が勧められています。

◎大人の慢性B型肝炎

幼少期以降の感染では慢性化することは少ないです。しかし一方で、急性肝炎や劇症肝炎になることがあるため注意が必要です。特に劇症肝炎は生命に影響を及ぼすことがある危険な病気です。

大人のB型肝炎ウイルスの感染経路は子どものそれとは少し異なります。具体的には、性行為や注射器の回し打ち、輸血などです。

◎慢性B型肝炎の検査

慢性B型肝炎は初期には症状がないことがほとんどなので感染しているかどうかを調べるには血液検査を用いなければなりません。血液検査でB型肝炎ウイルスに感染していることが確認された場合は、肝臓への影響の程度を確認するために腹部超音波検査などの画像検査や肝臓に針を刺して一部を取り出す肝生検などを行います。

◎慢性B型肝炎の治療

慢性B型肝炎の治療は、インターフェロン療法や核酸アナログといった薬剤を組み合わせて行い肝硬変にならないようにします。肝炎が進行して肝硬変になっても、核酸アナログで治療することで病気の進行を遅らせる効果が期待できます。

◎慢性B型肝炎が心配な人はどうすればいいのか

慢性B型肝炎はほとんど症状がないので、感染しているかどうかは検査結果で判断することになります。B型肝炎ウイルスに感染している可能性を考えた方が良い人は、家族(特に夫婦や自分の母親)やパートナーがB型肝炎にかかっている人や不特定多数と性交渉をする人などです。B型肝炎にかかっていることが心配な場合は、医療機関を受診して調べてもらって下さい。

B型肝炎についてさらに詳しく知りたい人は「B型肝炎の基礎情報ページ」も参考にして下さい。

慢性C型肝炎(C型肝炎ウイルス感染症)

C型肝炎ウイルスが長い期間にわたって感染することで慢性C型肝炎が起こります。慢性C型肝炎は時間の経過とともに肝硬変になることがあり、肝臓がんになりやすくなります。

B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の一般的な経過

◎C型肝炎ウイルスの感染経路

C型肝炎ウイルスは主に血液を通して感染します。血液を通して感染することはB型肝炎と同じですが、慢性B型肝炎は母子感染が原因のことが多く、C型肝炎ウイルスは注射器の使いまわしや刺青(いれずみ)を彫る際の針などによって感染します。

◎慢性C型肝炎の検査

慢性C型肝炎の初期にはほとんど自覚症状が現れないので血液検査を用いて感染しているかどうかを調べます。そして、感染が明らかになった場合には腹部超音波検査などの画像検査で肝臓への影響の程度を確認します。

◎慢性C型肝炎の治療

慢性C型肝炎の治療にはインターフェロン療法やDAA(直接作用型抗ウイルス薬)を用います。近年登場したDAAによる治療では90%を超えるウイルス除去率が報告されており、インターフェロン療法に比べて飛躍的に治療成績が向上しています。

◎慢性C型肝炎が心配な人はどうすればいいのか

慢性C型肝炎はほとんど症状がないので、感染しているかどうかは検査結果で判断することになります。C型肝炎ウイルスに感染している可能性を考えた方が良い人は、薬物常用者や不特定多数と性交渉をする人、刺青をしている人などです。C型肝炎にかかっていることが心配な場合は、医療機関を受診して調べてもらって下さい。

◎慢性C型肝炎と慢性B型肝炎との比較

B型肝炎に比べるとC型肝炎のほうが感染が慢性化しやすいことが知られています。大人の場合ではB型肝炎ウイルスに感染しても慢性化することはまれですが、C型肝炎ウイルスの場合は約70%の人が慢性化すると考えられています。

現在、肝硬変や肝臓がんの原因としてはC型肝炎ウイルスのほうが多くを占めています。

C型肝炎についてさらに詳しく知りたい人は「C型肝炎の基礎情報ページ」も参考にして下さい。

アルコール性肝炎

アルコール性肝炎は肝硬変の原因の1つです。アルコールを摂取すると、胃や小腸で吸収されたのちに肝臓に運ばれて分解されます。肝臓の働きをもう少し具体的に言うと、アルコールはアセトアルデヒドに分解されて、その後アセテート(酢酸)という物質になります。アセテートはさらに水と二酸化炭素に分解されて、尿や汗、息として身体の外に排出されます。

アルコールが肝臓で分解される上で、何が肝硬変の原因になっているのでしょうか。

アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドは有害な物質で、肝臓の細胞に対して直接障害を与えます。肝臓には再生能力があるので、多少の障害が起きても再生して大きな問題にはなりません。しかし、持続的に攻撃を受けて肝臓の細胞が壊されると肝臓の再生能力が追いつかずに障害を受けた場所が線維に置き換えられてしまいます。

どのくらいの量のアルコールを飲むと肝硬変になるかが気になるかもしれませんが、アルコールを分解する力にはかなり個人差があるので、一概にこの程度の量までは大丈夫だとはいい難いです。少なくとも誰がみても限度を超えているという量のアルコールを摂取したり、検査で肝臓がダメージを受けていることが指摘されているのに量を変えずにアルコールの摂取を続けることは避けるべきです。

アルコールの摂取量が多くなりすぎると肝硬変だけではなく、喉のがん咽頭がん喉頭がん)や食道がんなどの危険な病気になる危険性が高まることも懸念されます。アルコールは生活の中に楽しみを与えてくれる存在ですが、適量を守ってたしなむことが大切です。

NAFLD(NASH・NAFL)

NAFLD(ナッフルディー、nonalcoholic fatty liver disease)は非アルコール性脂肪性肝疾患のことを指します。NAFLDは2つの状態があります。

NAFLDという言葉はあまり馴染みがない人も多いと思いますが、最新の日本での調査によると、29.7%の人がNAFLDを抱えているとされる身近な病気です。NAFLDはほとんど症状はないため、健康診断や他の病気で受けた検査などで偶然指摘されることが多いです。そのため、自覚症状のないまま、気づかずに病気が進行していることもあるので注意が必要です。

NASHとNAFLはアルコールをあまり飲まない人に起こる脂肪肝という点は共通しますが、炎症が起きているどうかかで異なります。NASHのように炎症が長期に渡って続くと肝硬変になる危険性が高くなります。ただし、今の状態がNAFLだから安心かというとそうではありません。今はNAFLでも将来的にNASHになることがあるため、脂肪肝と言われた場合には肝硬変にならないように気をつけなければなりません。

NAFLDは栄養の摂りすぎや運動不足が主な原因です。このため食生活の見直しや運動療法などが主な治療になります。またNAFLDの人は、高血圧症脂質異常症糖尿病などの生活習慣病を抱えていることも多いのでそれらの病気の治療も重要だと考えられています。

NAFLDNASHについてさらに詳しく知りたい人は「NASH/NAFLDの基礎情報ページ」も参考にして下さい。

参考文献

・日本消化器学会, NAFLD/NASH診療ガイドライン2020

原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変)

原発性胆汁性胆管炎原発性胆汁性肝硬変)は、脂肪の吸収のための役割をもつ胆汁という物質が流れる胆管が細くなることが原因で起こります。以前は原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていましたが現在は、原発性胆汁性胆管炎と呼ばれます。似たような病気に原発性硬化性胆管というものもありますが、原発性胆汁性胆管炎は肝臓の中の胆管が狭くなり、原発性硬化性胆管炎は肝臓の外の胆管も細くなる点が異なります。

原発性胆汁性胆管炎は肝臓の中のとても細い胆管が潰れていく病気で、胆汁の流れが悪くなって肝臓全体にダメージを起こし、時間の経過とともに肝硬変に進行していきます。胆管が潰れてしまう原因はまだ完全には解明されてはいないのですが、体内で作られた自己抗体(自分の身体を攻撃する物質)が関与していると考えられています。

初期には症状はないことも多いのですが、進行すると胆汁が流れなくなった影響で身体や白目が黄色くなったりかゆみを感じたりします。

原発性胆汁性胆管炎に対する有効な治療はまだ確立されてはいません。症状を和らげるためにウルソデオキシコール酸などを内服します。また肝臓の機能がかなり低下した時には肝臓移植が検討されます。

原発性胆汁性肝硬変についてさらに詳しく知りたい人は「原発性胆汁性胆管炎の基礎情報ページ」も参考にして下さい。

原発性硬化性胆管炎

原発性硬化性胆管炎は肝臓の内外の胆管に炎症・狭窄(狭くなること)が起きて胆汁の流れが悪くなります。原発性硬化性胆管炎は、皮膚や白目が黄色くなることや身体のだるさ、発熱などの症状が現れます。原発性硬化性胆管炎は、1つ前に説明した原発性胆汁性肝硬変と似ているのですが、病気が起きる場所が違います。

少し難しい内容なので、ここからの説明は飛ばしても問題はありません。

まず胆管について説明します。胆管は肝臓で作られた胆汁が流れる管で、肝臓全体に張り巡らされています。胆管は細いものから太いものまであり、細い胆管が合流して太い胆管になります。合流を繰り返していくにしたがって以下のように胆管の名前が変わります。

  • 毛細胆管→細胆管→小葉間胆管→隔壁胆管→肝内胆管→肝管→総肝管→総胆管

原発性硬化性胆管炎は、主に肝内胆管以降の胆管に炎症が起きてその後狭窄をします。一方で原発性胆汁性胆管炎は、小葉間胆管や隔壁胆管を中心とした肝臓内の細い胆管に炎症を起こします。

原発性硬化性胆管炎では胆管が狭くなることにより胆汁のうっ滞が起きます。胆汁のうっ滞は肝臓にとって負担になるので、時間の経過とともに炎症による肝臓の線維化が起きて肝硬変に至ります。

原発性硬化性胆管炎の効果的な治療は確立されていません。ウルソデオキシコール酸などを用いて肝臓の機能が低下するのを遅らせたり手術で胆管の流れをよくしたりするなどの治療が検討されます。また肝臓の機能低下が深刻なときには肝臓の移植が検討されることもあります。

原発性硬化性胆管についてさらに詳しく知りたい人は「原発性硬化性胆管炎の基礎情報ページ」も参考もしてください。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、免疫の異常が原因で本来はないはずの自己抗体(自分の身体を攻撃する物質)が体内で作られることによって肝臓が壊されていく病気です。自分の免疫が関連した病気なので自己免疫性疾患と呼ばれるものの1つです。SLE関節リウマチ橋本病シェーグレン症候群などの自己免疫が関与している病気と合併することがあります。

初期は症状を現わさないことが多いのですが、進行すると身体のだるさや皮膚や白目の黄ばみ(黄疸)などが現れることがあります。

自己免疫性肝炎の治療にはステロイド薬が用いられます。ステロイド薬の代表的な製剤というとプレドニゾロン(商品名:プレドニン®など)がよく用いられ、その他にもメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®など)、ベタメタゾン(商品名:リンデロン®など)などがあります。

自己免疫性肝炎についてさらに詳しく知りたい人は「自己免疫性肝炎の基礎情報ページ」も参考にして下さい。

2. 肝硬変を起こすまれな病気

上で述べた病気以外に、まれな病気が肝硬変を起こすことがあります。肝硬変を起こすまれな病気としては以下のものが知られています。

これらは発症する確率が高くない病気であるため、必要以上に心配することはありません。

また、今から説明する3つの病気は、生まれもった病気(遺伝性の病気)なので、指摘がない場合に新たに発症することはほとんどありません。

以下の段落で3つの病気について説明します。

ヘモクロマトーシス

ヘモクロマトーシスは、鉄が身体に過剰に蓄積する病気です。ヘモクロマトーシスによって肝臓に鉄が溜まると肝硬変に進行して機能が低下します。肝臓以外の臓器にも鉄が溜まる可能性があり、その場合には溜まった臓器の症状が出現します。例えば心臓に鉄が過剰に沈着した場合には、脈のリズムが不規則になります。

ヘモクロマトーシスが疑われると、血液検査や画像検査(CT検査、MRI検査など)、肝生検などが行われます。特に肝生検は診断を確定するのに重要です。

治療には身体の中から血液を抜くこと(瀉血)や鉄を身体の外に出す薬を用います。肝臓の機能が低下している場合には肝移植も検討されます。

ヘモクロマトーシスについてさらに詳しく知りたい人は「ヘモクロマトーシスの基礎情報ページ」も参考にして下さい。

ウィルソン病(Wilson病)

ウィルソン病は、銅をうまく胆汁に排泄ができないために、銅が臓器に蓄積するまれな病気です。肝臓に銅が蓄積すると、肝臓の機能が低下します。肝臓以外では脳神経や角膜、腎臓などに蓄積することがあります。角膜に銅が沈着すると特徴的な輪っか(カイザー・フライシャー輪)を作ることがあり、これはウィルソン病の診断に用いられます。

  • 肝臓の機能が低下することによる主な症状
    • 身体のだるさ
    • 気持ち悪さ
    • 皮膚や身体の黄ばみ
  • 中枢神経への影響による主な症状
    • しゃべりづらさ
    • 飲み込みづらさ
    • 手の震え

診断には血液中のセルロプラスミンという値の測定や尿中の銅の量、肝生検などが行われます。

ウィルソン病の治療では、銅の多い食事を控えることや銅を身体の外に出す薬(D-ペニシラミン、塩酸トリエンチン)などが行われます。肝硬変が進んで肝機能が低下した場合には肝移植も検討されます。

ウィルソン病についてさらに詳しく知りたい人は「ウィルソン病の基礎情報ページ」も参考にして下さい。

糖原病

「糖原」とはグリコーゲンというブドウ糖がたくさん集まってできた物質のことです。グリコーゲンは肝臓や筋肉、腎臓、心臓に多く存在しており、身体がエネルギーを必要とするときにグリコーゲンが分解されてエネルギーとして用いられます。

グリコーゲンを作ったり分解したりする力が障害されているのが糖原病です。糖原病は使用できないグリコーゲンが肝臓に蓄積するために肝硬変になることが知られています。

糖原病になると、グリコーゲンを利用できないために低血糖の状態になったり、肝臓が大きくなるのを自覚したりします。糖原病に対する根本的な治療は確立されてはいないのですが、糖分を制限した食事療法を行います。また、場合によっては肝移植が検討されることもあります。

糖原病についてさらに詳しく知りたい人は「糖原病の基礎情報ページ」も参考にして下さい。

参考文献

・福井次矢 , 黒川 清/日本語監修, 「ハリソン内科学 第5版」, MEDSi, 2017
・矢﨑義雄/総編集, 「内科学 第11版」, 朝倉書店, 2017