かいようせいだいちょうえん
潰瘍性大腸炎
免疫の異常により大腸の粘膜に炎症が起こり下痢や血便を起こす原因不明の病気。10代から30代で発病し長年続くことが多く、大腸がんなどの原因となることがある
9人の医師がチェック 169回の改訂 最終更新: 2022.11.07

潰瘍性大腸炎の治療法には何があるか

潰瘍性大腸炎は5-ASA製剤、ステロイド免疫抑制薬、生物学的製剤などが使われます。ベドリズマブやトファシチニブなど新しい薬も登場しています。重症な場合や薬の効果が乏しい場合は白血球除去療法や手術を行うことがあります。

1. 潰瘍性大腸炎はどんな病気か

潰瘍性大腸炎の治療を考える上で、どんな病気であるのかを理解することは非常に重要です。実は、潰瘍性大腸炎は免疫の異常により起こる病気であることがわかっています。免疫とはウイルス細菌などの外敵が体の中に入ると駆除する体の中のシステムのことです。免疫は通常、外敵だけを攻撃し、自分の体は攻撃しないように制御されています。しかしながら、潰瘍性大腸炎ではこの免疫の制御が上手く働かなくなり、自分の体を攻撃するようになってしまいます。そのため、潰瘍性大腸炎の治療では免疫を制御(抑制)する薬を使い、おかしくなった免疫を正常化することを目指します。

2. 寛解導入療法、寛解維持療法とは?

潰瘍性大腸炎の治療は薬を継続することで症状がない状態を維持することが目標です。薬を使うことで症状が抑えられている状態を医学用語で「寛解(かんかい)」と呼びます。寛解に至れば、病気を患っていない方々と同じように生活を送ることができます。

潰瘍性大腸炎の治療は、症状がある状態から寛解を目指す寛解導入療法と、一度寛解になった人が寛解の状態を維持することを目的とした寛解維持療法に大きく分けられます。寛解導入療法は強い治療を必要とする分、副作用が出やすい側面があります。それに対し寛解維持療法では副作用がなるべく出ないよう最低限の治療を行うことを目標とします。

3. 潰瘍性大腸炎の治療はどんな薬を使うのか?

潰瘍性大腸炎の薬物治療では主に免疫を抑えたり、調節する薬を用います。これは潰瘍性大腸炎が免疫の異常により起こる病気であると考えると理解しやすいかと思います。潰瘍性大腸炎で用いられる治療薬には以下があります。

  • 5-ASA製剤
    • サラゾスルファピリジン
    • メサラジン
  • ステロイド薬
  • 免疫抑制薬
    • アザチオプリン
    • メルカプトプリン
    • シクロスポリン
    • タクロリムス
  • 生物学的製剤
    • インフリキシマブ
    • アダリムマブ
    • ゴリムマブ
    • ベドリズマブ
    • ウステキヌマブ
  • JAK阻害薬
    • トファシチニブ
    • フィルゴチニブ
    • ウパダシチニブ
  • α4インテグリン阻害薬
    • カロテグラスト

5-ASA製剤

5-ASA製剤(5-アミノサリチル酸)は、潰瘍性大腸炎のうち軽症から中等症例を中心に用いられる薬です。5-ASA製剤は、製剤ごとで特徴が異なったり、成分によっては内服薬(飲み薬)以外に注腸の製剤があります。これらは個々の症状などに合わせて選択されています。5-ASA製剤は以下のものがあります。

  • サラゾスルファピリジン(主な商品名:サラゾピリン®)
  • メサラジン(主な商品名:ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®)

■サラゾスルファピリジン(主な商品名:サラゾピリン®)

サラゾスルファピリジンは大腸の腸内細菌によって5-ASAとスルファピリジンに分解され、主に5-ASAによって抗炎症作用などをあらわすとされています。

サラゾスルファピリジンには内服薬の他に坐剤(サラゾピリン®坐剤)もあります。坐剤は炎症が直腸などの肛門に近い部分にある場合などの選択肢として有用です。

■メサラジン(主な商品名:ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®)

抗炎症作用をあらわす主な成分となる5-ASAのみを主成分として造られた製剤です。

サラゾスルファピリジンは体内で分解されて5-ASAとスルファピリジンがつくられますが、こちらは5-ASAのみを主な成分とした薬であるため、スルファピリジンによって引き起こされる副作用の懸念が少ないといえます。メサラジンの製剤にはそれぞれ特徴があり、症状や用途などに合わせて適した製剤が選択されます。

メサラジンが小腸から大腸で放出されるように造られているのがペンタサ®などの時間依存型メサラジン放出調節製剤です。内服薬として錠剤の他に顆粒剤があり、飲み込みが悪くなっている場合などへのメリットが考えられます。また内服薬以外に坐剤(ペンタサ®坐剤)や注腸製剤(主な商品名:ペンタサ®注腸)があり、炎症が直腸などの肛門に近い部分にある場合などの選択肢として有用です。

アサコール®などのpH依存的メサラジン放出調節製剤はメサラジンが大腸で放出されやすいように設計されています。

リアルダ®はメサラジンのフィルムコーティング錠です。リアルダ®はメサラジンを標的となる大腸に送達するとともに大腸全域に持続的に放出することが可能な放出制御製剤になっています。リアルダ®の服用方法は「1日1回投与」になっています。他のメサラジン製剤では1日3回などの複数回投与で使用することも多く、それに対しリダルダ®は服用の回数が少なくて済むので、飲み忘れを防ぐことができると期待されています。

■5-ASA製剤の注意すべき副作用とは

注意すべき副作用としては発疹などの皮膚症状、頭痛、下痢や腹痛などの消化器症状、肝機能障害などがあります。また頻度は稀とされていますが、骨髄抑制があらわれる可能性もあり赤血球や白血球、血小板などの減少、間質性肺炎などにも注意が必要です。他にも5-ASA製剤は薬の成分の色により皮膚や爪、尿や汗などが黄〜赤に近い色に着色することがあります。薬を飲み始めて気になる症状が現れた場合には、医師や薬剤師に相談するようにしてください。

ステロイド薬

ステロイド薬は炎症を抑える作用のある薬です。中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法に用いられます。ステロイドには様々なタイプの薬がありますが、潰瘍性大腸炎には飲み薬、点滴薬、坐薬、注腸薬がよく使われます。ステロイドの代表的な製剤としてはプレドニゾロン(商品名:プレドニン®など)があります。ほかにもメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®など)、ベタメタゾン(商品名:リンデロン®など)などのステロイド剤も使われます。ここでは潰瘍性大腸炎でのステロイドの使用方法と副作用につき見ていきます。

■飲み薬(内服薬)

潰瘍性大腸炎でステロイドを使って治療する場合、病気の重症度に応じて投与量が調整されます。例えば、プレドニゾロンというステロイド剤を飲み薬として使用する場合、1日30-40mgを投与されることが多いです。そのあと、病気の勢いが抑えられた後には徐々にステロイドの減量を進めていきます。ただし、減量の過程で症状がぶり返してくる場合には再度増量することもあります。

■点滴薬

潰瘍性大腸炎ではしばしば点滴薬を使います。点滴を使うケースとしては大きく2つの場合が考えられます。

1つ目は重症の潰瘍性大腸炎の時です。この場合、食事を中止とし、腸を休ませながら薬物治療が行われます。薬の内服もできなくなってしまうため、ステロイドも点滴から投与されます。ステロイド薬の中でプレドニゾロンの点滴薬を使用する場合は40-80mg程度で使用することが多いです。更に病気の進行が早く一刻を争う場合、ステロイドパルス療法といって大量のステロイドを点滴で投与します。ステロイドパルス療法には、内服療法で用いられるプレドニゾロンではなくメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®)を使うことが多く、たとえばメチルプレドニゾロンを1日500-1000mg点滴静注、3日間といった形で使用されます。

2つ目はすでにステロイドでの治療中に体調が悪く薬が飲めなくなってしまった場合などで、ステロイドの内服ができない時の補充です。ステロイドはもともと体内の副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンを元にして作られたものです。コルチゾールは糖の代謝、タンパク質の代謝、脂質代謝など生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。ステロイドをある程度の期間継続している状態では投与されるステロイドの薬剤に体が頼ることで、通常であれば副腎で作られるはずのコルチゾールの産生が抑えられます。その状態で突然、ステロイドの薬剤を中止してしまうと、体内で必要とされるホルモンまで不足し、最悪の場合ホルモン欠乏により命に関わる場合もあります。そのため、ステロイドの内服ができなくなってしまった場合には、点滴によりステロイドを継続しなければなりません。

■坐薬・注腸薬

ステロイド薬には内服薬や注射剤以外にも色々な剤形(剤型)がありますが、潰瘍性大腸炎の治療では坐薬(坐剤)や注腸といって肛門から挿入(注入)する薬剤が使われる場合もあります。

これらは主に直腸などの局所に限定した作用を目的として造られている製剤で、内服薬や点滴薬のように全身性の副作用への懸念が少ないとされます。

坐剤としては主にリンデロン®坐剤、注腸製剤としては主にプレドネマ®注腸やステロネマ®注腸などの製剤があり、5-ASA製剤のメサラジン注腸製剤(主な商品名:ペンタサ®注腸)と一緒に使われる場合もあります。

2017年9月にはステロイド薬のひとつであるブデソニドの注腸製剤(商品名:レクタブル®注腸フォーム14回)が製造販売承認されました。この製剤は投与後に肛門から薬液が漏れにくく、立位の状態での注入も可能になっています。また肝臓で速やかに分解されるので全身性の副作用の心配が少ないとされています。

■ステロイドの副作用は?

ステロイドを使用する場合、その副作用に注意が必要となります。ここでは飲み薬と点滴薬のステロイドの副作用に関して説明します。

ステロイドの副作用としては、免疫が抑えられたことによる易感染性(感染症にかかりやすくなること)、血糖上昇、血圧上昇、肥満コレステロール上昇、眠れない、気分の落ち込み・高ぶり、骨がもろくなる、などが挙げられます。またステロイドを大量に点滴静注するステロイドパルス療法では、副作用が強く出ることがあります。例えば、ステロイドパルス療法では骨がもろくなる副作用が強く出る結果、大腿骨頭壊死という股関節の骨が壊れてしまう副作用がまれに報告されています。

ステロイドを使用する場合には、種々の副作用を防ぐために、予防的に薬を飲むことがあります。例えば、感染症にかかりやすくなることへの対策としてはST合剤(エスティーごうざい)などの抗生物質を、骨がもろくなる対策としてビタミンD製剤ビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療薬を予防的に使うことがあります。その他、顔などのむくみや体重増加があらわれたり、血圧や血糖値が上がったりした場合など体の状態になんらかの変化が生じた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡するなど適切に対処することが必要です。

避けたいのは副作用が心配だと思うあまり、自己判断でステロイドを中止したり減量(あるいは増量)したりすることです。ステロイドはもともと体内の副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンを元にして作られたものです。コルチゾールは生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。ステロイドをある程度の期間継続している状態では投与されるステロイドの薬剤に体が頼ることで、通常であれば副腎で作られるはずのコルチゾールの産生が抑えられます。その状態で突然、自己判断でステロイドの薬剤を中止してしまうと、体内で必要とするホルモンまで不足し、最悪の場合ホルモン欠乏により命に関わる場合もあります。

事前に医師や薬剤師などからステロイド使用時の注意事項や服用量・服用期間などをしっかりと聞いておき、仮になんらかの体調変化があった場合でも自己判断せずにまずは医師や薬剤師などに連絡・相談することが大切です。ステロイド(内服薬)の副作用に関してはコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています。

免疫抑制薬

■アザチオプリン(商品名:イムラン®など)・メルカプトプリン(商品名:ロイケリン®など)

アザチオプリンやメルカプトプリンはプリン拮抗薬に分類される薬です。アザチオプリンやメルカプトプリンはステロイドを減量する過程で症状が悪くなる方に用いられます。ステロイドを長い期間飲み続けると副作用が問題になります。ステロイドの副作用を減らしたい場合では、より副作用の少ないアザチオプリンやメルカプトプリンへの切り替えを図っていきます。

ただ、アザチオプリンやメルカプトプリンも副作用がないわけではありません。具体的には易感染性、骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板の数が減ること)、肝障害、皮疹などが問題になることがあります。そのため、アザチオプリンやメルカプトプリン使用中は血液検査で白血球、赤血球、血小板や肝機能などに問題がないか定期的にチェックを行います。

■シクロスポリン(商品名:ネオーラル®など)

シクロスポリンは免疫抑制薬の一つで、カルシニューリン阻害薬に分類される薬です。T細胞と呼ばれる免疫細胞の活性を阻害することで免疫抑制効果を発揮します。ステロイドで改善しない症例などの治療が難しい潰瘍性大腸炎に用いられます。

副作用として易感染性、多毛、歯肉増殖、腎障害、高血圧、高血糖、肝機能障害などがあります。

潰瘍性大腸炎に対してシクロスポリンを使う時は点滴薬を中心に使います。症状が安定してきた場合は、飲み薬に切り替えることもあります。シクロスポリンは同じ量を使用していても患者ごとに血中濃度のばらつきが大きいため、血中濃度のモニタリングを行いながら用量調整することが推奨されています。

■タクロリムス(商品名:プログラフ®など)

タクロリムスはカルシニューリン阻害薬に分類される免疫抑制薬です。T細胞と呼ばれる免疫細胞の活性を阻害することで免疫抑制効果を発揮します。シクロスポリン同様、ステロイドで改善しない人に用いられます。作用のしくみはシクロスポリンと似ていますが、タクロリムスは腸からの吸収に優れた薬剤です。そのため、タクロリムスは飲み薬と点滴薬がありますが、潰瘍性大腸炎の治療には飲み薬のものが用いられることが多いです。

副作用として易感染性、腎障害、血圧上昇などの循環器症状、ふるえやしびれ、不眠などの精神神経系症状、高血糖(耐糖能異常)、肝機能障害などに注意が必要です。シクロスポリン同様、血中濃度のモニタリングを行いながら用量調整することが推奨されています。

生物学的製剤

近年医学の進歩に伴い、症状の原因となっている物質の解析や原因物質を阻害する薬の開発が進んでいます。このような薬を生物学的製剤と呼びます。潰瘍性大腸炎に対して有効性が認められている生物学的製剤として炎症に関わる物質であるTNF(TNFα)を阻害する薬(TNF阻害薬)とインテグリンに対する抗体薬(抗α4β7インテグリンモノクローナル抗体)があります。これらの薬は中等症から重症の潰瘍性大腸炎の方に使われます。具体的には以下の薬が用いられます。

  • TNF阻害薬
    • インフリキシマブ(商品名:レミケード®)
    • アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)
    • ゴリムマブ(商品名:シンポニー®)
  • 抗α4β7インテグリンモノクローナル抗体
    • ベドリズマブ(商品名:エンタイビオ®)
  • ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体
    • ウステキヌマブ

■インフリキシマブ(商品名:レミケード®)

インフリキシマブは国内では最初に発売されたTNF阻害薬です。

インフリキシマブは病院などの医療機関で点滴投与する薬です。1-3時間程度をかけて点滴投与されることが多いです。投与時期は通常、初回・2週後・その4週後(初回投与から6週後)に投与し、その後は8週ごとの投与を行っていきます。ただし、症状が重症で8週間隔の投与で十分に良くならない場合には、投与間隔を8週より縮めて投与されることがあります。

■アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)

アダリムマブは、2013年に潰瘍性大腸炎に対して保険適応となったTNF阻害薬です。アダリムマブはインフリキシマブと違い皮下注射の製剤です。点滴はしません。投与の間隔は2週間に1回です。ただし、血中濃度を高めるため、初回は4本、2回目は2本打ちます。3回目以降は1本になります。また医師によって妥当であると判断された場合には、ご自身による自宅での投与(自己注射)も可能です。そのため、病院にたびたび行けない方や、病院で点滴投与を受ける時間がない人には向いている薬剤と言えます。

■ゴリムマブ(商品名:シンポニー®)

ゴリムマブは、2017年に潰瘍性大腸炎に対して保険適応となったTNF阻害薬です。ゴリムマブもアダリムマブ同様、皮下注射の製剤です。点滴はしません。投与の間隔は4週間に1回です。ただし、血中濃度を高めるため、初回は4本、2回目は初回投与から2週後に2本打ちます。3回目以降は4週間隔で1回2本ずつ打ちます。

■TNF阻害薬の注意すべき副作用とは?

TNF阻害薬で特に注意したい副作用は免疫抑制作用による感染症です。中でも肺炎ニューモシスチス肺炎細菌性肺炎など)や結核といった肺の病気にはより注意が必要となります。重症化することはかなりまれとされていますが、最初は軽度な症状に感じても急に悪化するケースも少なからず考えられます。咳、息苦しさ、発熱などの症状がみられた場合は医師や薬剤師などに連絡し、受診や検査の必要の有無などを相談することが重要です。

その他、アレルギー反応などにも注意が必要です。そのため、抗アレルギー作用のある薬を事前に使用したうえでTNF阻害薬の投与を行うこともあります。またインフリキシマブの場合は投与速度を遅くすることでアレルギー反応は起こりにくくなると考えられています。稀ではありますが、アナフィラキシーと呼ばれる重症のアレルギー反応が起こることもあるため、投与後に何らかの体調の変化があらわれた場合には医師や薬剤師などに連絡し、適切に対処することが大切です。

▪️ベドリズマブ(商品名:エンタイビオ®)

ベドリズマブは2018年に承認された新しいタイプの潰瘍性大腸炎の治療薬です。これまで潰瘍性大腸炎に使用可能な生物的製剤はTNFαという炎症物質を標的にしていましたが、ベドリズマブはインテグリンという物質を標的にしています。インテグリンは免疫細胞が炎症部位に集まるために必要な物質です。インテグリンの作用を阻害することで大腸に免疫細胞が集まるのを抑えることができます。

ベドリズマブは病院などの医療機関で点滴投与する薬です。投与時期は通常、初回・2週後・その4週後(初回投与から6週後)に投与し、その後は8週ごとの投与を行っていきます。副作用としては関節痛、咽頭炎などが報告されています。

▪️ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)

ウステキヌマブは2020年に承認された新しいタイプの潰瘍性大腸炎の治療薬です。潰瘍性大腸炎のような炎症性疾患に深く関わるIL−12およびIL-23を阻害することで効果を発揮する薬です。既存薬の効果が不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法または維持療法に使われます。
一般的な使い方として、最初は点滴によって薬を投与し、その8週間後からは12週おきに皮下注射で薬を投与します。

JAK阻害薬

潰瘍性大腸炎は炎症物質が身体の中の細胞に作用することで、免疫細胞の腸への攻撃が引き起こされます。これは炎症物質には免疫細胞を活性化し、周りを攻撃するようにシグナル(信号)を送る働きがあるためです。この免疫細胞のシグナル伝達に関わっているの大事な物質にJAK(ヤヌスキナーゼ)と呼ばれるものがあります。JAK阻害薬はJAKを阻害することで、免疫細胞の過剰な活性化を抑えることができる薬です。

▪️トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ®)

トファシチニブ(ゼルヤンツ®)はもともとは関節リウマチに対して開発されたJAK阻害薬ですが、潰瘍性大腸炎に対する効果も認められ、2018年に国内で承認されました。トファシチニブは生物学的製剤と同様に炎症物質による免疫の活性化を抑えることができます。そのため、生物学的製剤と同程度の効果が期待されています。生物学的製剤が点滴や注射薬であるのに対し、トファシチニブは飲み薬です。飲み薬であるにも関わらず、生物学的製剤に近い効果が期待されているのが、トファシチニブの強みであると言えます。

副作用としては帯状疱疹を代表とする感染症、貧血などの血液障害、下痢や吐き気などの消化器症状などに注意が必要です。気になる症状がある場合には、担当の医師・薬剤師に相談するようにしてください。

▪️フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ®)

フィルゴチニブ(ジセレカ®)はトファシチニブと同じく、もともとは関節リウマチに対して開発されたJAK阻害薬です。潰瘍性大腸炎に対しては2022年に新しく適応承認されました。フィルゴチニブもトファシチニブと同様に飲み薬であることが特徴です。

▪️ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック®)

ウパダシチニブ(リンヴォック®)はもともと関節リウマチに対して開発されたJAK阻害薬で、2022年に潰瘍性大腸炎に対して適応追加承認を受けました。トファシチニブ、フィルゴチニブと同様に飲み薬の治療薬です。

α4インテグリン阻害薬

▪️カロテグラスト(商品名:カログラ®)

カロテグラストはα4インテグリン阻害薬と呼ばれ、上記のベドリズマブ(商品名:エンタイビオ®)と似た作用を発揮する潰瘍性大腸炎の治療薬です。2022年に国内で適応承認されました。大腸に炎症を起こす免疫細胞が腸管の細胞に集まるために必要な物質が「インテグリン」ですが、カロテグラストはこのインテグリンの働きを阻害することで大腸の炎症を抑えます。ベドリスマブが点滴薬であるのに対し、カロテグラストは飲み薬であることが特徴です。

副作用として上咽頭炎、頭痛、吐き気などに注意が必要です。また、長期投与すると進行性多巣性白質脳症PML)という重大な副作用が起こることがありますので、カロテグラストの投与期間は最大で6ヶ月に制限されています。

4. 輸液はどんな目的で行う?

重症の潰瘍性大腸炎では、食事を中止して輸液による栄養投与が行われることがあります。これは、食事によって腸を刺激するのを避け、腸を休めるために行われます。ただし、一生涯輸液による栄養投与になることはほとんどなく、腸の状態が良くなれば、食事を再開することができます。

5. 白血球除去療法とは?

潰瘍性大腸炎は免疫の異常が関係した病気です。中でも白血球という血液細胞との関連が知られています。そのため、潰瘍性大腸炎では白血球除去療法が行われることがあります。白血球除去療法とは、献血などで用いられる針を使って血液を取り出し、白血球を取りのぞいた後に、血液を体内に戻す治療法です。中等症や重症の潰瘍性大腸炎の方で行われます。1回につき1-2時間程度で週に1-2回程度行います。ただし、この治療は一生涯続けることはできないため、薬物療法でなかなか良くならない時に、症状を良くするために一時的に行うことがほとんどです。

6. 潰瘍性大腸炎で手術をすることはあるの?

潰瘍性大腸炎の治療は薬物治療が中心的な役割を果たします。しかし中には手術が必要になる人もいます。手術はどんな人に必要でどのような目的があるのでしょうか?手術の方法とともに解説します。

参考文献
・森谷 宜皓/編, 新 の外科 -手術手技シリーズ 大腸癌, メジカルビュー, 2002
・Phillip R Fleshner, Up To Date: Surgical management of ulcerative colitis

手術適応:どんな場合に手術をするのか?

潰瘍性大腸炎は薬物による治療が主体ですが手術をすることもあります。手術は生命の危機に関わる緊急的な状況と、それほど急がない(待機的な)状況の2つの場面で用いられます。以下が緊急手術が必要な場合と待機的な手術を検討する場合の例です。

  • 緊急手術が必要な場合
    • 中毒性巨大結腸症
    • 腸管穿孔
    • 大量出血
  • 待機的な手術を検討する場合
    • 薬物治療での効果が小さい
    • 薬物療法による副作用が強い
    • 大腸粘膜にがんが発見された、またはがんが発生する危険性が高い

手術にはどんな目的があるのか?:緊急手術と待機的手術の目的

手術の目的は緊急手術と待機的手術で少し異なります。

緊急で手術を検討する場合は中毒性巨大結腸症や腸管穿孔、大腸からの大量出血など生命の維持に危機をもたらす状況です。緊急手術の目的は生命を救うことです。

待機手術を検討する理由は様々です。薬物療法の効果が小さかったり副作用が大きいと、薬物治療による治療は限界に近いという見方もできます。薬物治療をやめる代わりに手術で大腸を切除するのは理にかなった選択と言えます。

潰瘍性大腸炎の人は大腸がんを発生しやすいことがあります。すでに大腸がんになった人や大腸がん発生の危険性が高い人は大腸がんを予防する目的で手術を行います。

では次に手術の内容を詳しくみていきましょう。

潰瘍性大腸炎の手術(1):大腸全摘-回腸のう肛門吻合術(だいちょうぜんてき-かいちょうのうこうもんふんごうじゅつ)

潰瘍性大腸炎の手術は、炎症が起きている大腸を全て取り除いて、残った小腸と肛門を利用して便の流れを作り直します。小腸と肛門がしっかりとつながるまで人工肛門が必要になります。

以下手術の詳細です。少し難しい話になるので読み飛ばしてもこれ以降の理解に問題はありません。

手術の説明をする前に腸という臓器の説明をします。腸には大腸と小腸の2つの種類があります。ともに消化された食べ物や水分を吸収する働きをしています。食べ物は口→食道→胃→小腸→大腸→肛門という流れで消化吸収されて便になり体外に排出されます。

潰瘍性大腸炎の手術では大腸の全てを切除します。大腸全摘といいます。

大腸を切除した後には回腸と肛門をつなぎ合わせる手術を行います。回腸というのは小腸の一部で、大腸に近い部分を指します。なくなる大腸の代わりとして回腸を使います。そのまま回腸と肛門をつなぐわけではなく筒状の回腸の先の一部を折り返して、便がたまるように袋状の形にして用います。回腸を袋状にしたものを回腸嚢(かいちょうのう)といいます。回腸のうをパウチと呼ぶこともあります。回腸のうと肛門をしっかりと縫い合わせて便の通り道を作り直します。

小腸と肛門はしっかりとくっつくまでに時間がかかります。しっかりとくっつくまでの間に便が縫合(ほうごう)した部分を通過すると傷口に負担がかかり、縫合した部分から便がもれ出たりすることがあります。縫合不全という合併症です。縫合不全を防ぐためには縫合部を便が通過しないようにすることが有効です。このために人工肛門を作成します。

人工肛門は回腸のうと肛門がしっかりとくっついたと判断された後に閉鎖します。人工肛門を閉鎖すると排便は肛門から行うことになります。

潰瘍性大腸炎の手術は大腸を切除して人工肛門をつくる手術と人工肛門を閉鎖する手術の合計2回に分けて行われます。

潰瘍性大腸炎の手術(2):大腸全摘-回腸ろう造設術(だいちょうぜんてき-かいちょうろうぞうせつじゅつ)

大腸全摘回腸ろう造設術は大腸を全て切除する大腸全摘を行い、回腸(かいちょうろう)という人工肛門を造る手術です。回腸のうの人工肛門とは異なり、回腸ろうは永久的に使います。回腸とは小腸の一部で大腸に近い部分を指します。ろうとは穴のことで、お腹に穴を開けて腸の一部が体の外につながるようにします。

永久的に人工肛門を使って生活をするのは生活の不便につながるので、回腸ろうを作るのは潰瘍性大腸炎とともに直腸がんが見つかり肛門が温存できないなど、限られたケースで選ばれることが多いです。

手術にはどんな合併症があるのか?

手術にはある一定の確率で合併症が伴います。合併症とは治療などにともなう望ましくない結果のことです。合併症は手術が失敗したということではなく、うまくいった手術でも避けられない合併症もあります。潰瘍性大腸炎の手術後には主に以下の合併症があります。

  • 腸閉塞(ちょうへいそく)・イレウス
  • 創部の感染
  • 骨盤死腔炎
  • 腸管の縫合不全
  • 肛門管の狭窄
  • パウチの縫合不全
  • 便失禁
  • 性機能不全
  • 排尿障害

以下でそれぞれについて解説します。

腸閉塞イレウス

腸閉塞は腸の中を食べ物がうまく通過できなくなること、イレウスは腸が麻痺することです。腸閉塞イレウスは手術の影響が腸に及ぶことが原因で起こります。腸閉塞イレウスになった場合は腸に負担をかけないようにします。具体的にはしばらくの間食事をやめたり、必要に応じて鼻から管を通したりして腸の液体を体の外に出すことが治療になります。

■創部の感染

創部(そうぶ)とは手術で切った傷のことです。手術部位である大腸にはたくさんの細菌がいます。手術中から抗菌薬を使用して感染の予防に努めていますが、それでも創部についた細菌が増殖して感染を起こすことがあります。また潰瘍性大腸炎の治療ではステロイドや免疫抑制剤を使うことがありますが、これらの薬の影響で傷の治りが遅くなったり創部感染が起こりやすくなったりする可能性もあります。

創部感染が起こると、傷を開放したりしてを体の外に出す必要があるので、早めに抜糸をすることがあります。創部感染があっても、手術後の経過で体調が回復して栄養状態が改善されれば傷口に肉芽が盛り上がってきて傷が閉じます。創部感染は、患者さんから見やすい場所で起きる合併症なので心配になることもあると思いますが、一日一日、少しずつよくなっていきます。

■骨盤死腔炎(こつばんしくうえん)

骨盤死腔炎は大腸があったスペースに細菌感染が起こる病気のことです。死腔(デッドスペース)とは、「入るもののない空間」という程度の意味です。骨盤死腔炎が起こると細菌が血液に入り込む菌血症という深刻な状態になることがあります。骨盤死腔炎が起こった場合には、抗菌薬による治療と、感染が起きている場所に膿を出すための管を挿入するドレナージという治療が必要になります。

骨盤死腔炎は大腸全摘後の合併症としては最も注意が必要なものの一つです。

■回腸のうの縫合不全

潰瘍性大腸炎では大腸の代わりに回腸を用います。回腸を折り返して袋状にしたものを回腸のう(かいちょうのう)といいます。回腸のうは手術用のホッチキスもしくは糸で縫合されています。回腸のうは時間とともに縫った部分がくっつきます。くっつくことを生着といいます。縫合不全は生着が不十分なことです。縫合不全が起こると縫った部分から便が漏れ出たりすることがあります。縫合不全を起こしている部位が小さな時には様子をみることもありますが、もう一度手術をして縫合不全を起こしている場所を再縫合することもあります。

肛門狭窄(こうもんきょうさく)

回腸のうと肛門を繋いだ部分が時間の経過とともに狭くなることがあります。狭くなることを狭窄と言います。回腸のうと肛門のつなぎ目が狭くなると排便が上手くできなくなって重い便秘などになることがあります。肛門狭窄によって生活に支障をきたすときには内側から狭くなった部分を広げたりする処置を行います。

■便失禁

肛門には便がもれないように締める肛門括約筋(こうもんかつやくきん)という筋肉があります。肛門括約筋が手術の影響を受けて締める力が弱くなることがあります。肛門括約筋の力が弱くなると便が漏れる便失禁が現れます。便失禁がある人にパッド(おむつの一種)などをして対策をとります。また下痢が続くときには下痢止めなどを使います。便失禁は時間とともに良くなることもあります。

■勃起不全

勃起不全は、男性に起こる合併症です。

大腸の中でも肛門に近い部分のことを直腸といいます。直腸は大腸全摘で切除します。直腸の両脇には勃起をつかさどる神経が存在します。直腸を切除する際に神経に影響すると手術の後には勃起が不十分になり性行為が行えなくなることがあります。

勃起不全に対しては陰茎リハビリテーションといって勃起を促す薬物などを用いることがあります。勃起機能を十分に回復できるかは個人差があると考えられています。

■排尿障害

大腸の中でも肛門に近い部分のことを直腸といいます。直腸は大腸全摘で切除します。直腸の両脇には排尿をつかさどる神経が存在します。この神経に手術の影響が及ぶと手術後に尿が出にくくなる排尿障害が現れることがあります。膀胱にたまった尿を体の外に出せないのは膀胱や腎臓にも負担がかかります。排尿後に膀胱の中に尿の残りが多いときは自分で管を通して尿を出す自己導尿をしなければなりません。自己導尿の詳しい方法や注意点については「大腸がんの手術後に尿が出しづらくなる?」でも解説しているので参考にしてください。

手術後にはどんなことに気を配るべきか?

潰瘍性大腸炎の手術による治療は手術後の生活に影響を残すことが多いです。どんなことに気をつけて手術後を過ごせばいいのでしょうか。

潰瘍性大腸炎の手術は大腸を全て摘出します。多くの場合は回腸のう(かいちょうのう)といって回腸を大腸の代わりにして肛門につなげる手術をします。回腸のうが機能するようになると手術の前と同じように肛門から排便が可能になります。しかし回腸のうが体にしっかり馴染むようになるには時間がかかります。その間は人工肛門で生活をする必要があります。手術が終わって人工肛門を目にすると事前に説明されていたとはいえ少し気分が落ち込むかもしれません。しかし、しばらくは人工肛門と上手く付き合っていかなければなりません。人工肛門は特殊なケアを自分で行わなければなりませんし、注意しなければいけない点もいくつかあります。生活で注意することの例をいくつかあげてみます。

  • 食事
    • 海藻類やこんにゃく、きのこなど消化の悪いものは一度に大量に食べない
    • 脱水に気をつけて水分の摂取はこまめに行う 
  • 服装 
    • なるべく締め付けないような服装を心がける
    • 人工肛門にかかるようなベルトは避けてサスペンダーを利用する
  • 入浴
    • 入浴は食前か食後しばらく経ってからの排泄が少ない時間帯を選ぶ
    • 人工肛門からの排泄物をしっかり留めるようなキャップなどを用いる 

人工肛門を使った生活は不自由に感じるかもしれません。しかし人工肛門に慣れるとともに少しずつ以前と変わらないような生活ができるようになります。

誰しも体の変化には戸惑うものです。それが排泄という人間の生命維持に欠かせないものであるならばなおさらです。大腸全摘後の人工肛門は回腸のうの縫合した部分に負担をかけないためのものであり治療としても重要です。もし人工肛門の存在が気分の重みになっているのであれば治療の目標について考えてみると気分が前向きになるかもしれません。

人工肛門の生活の注意点については日本オストミー協会のウェブサイトも参考にしてください。