潰瘍性大腸炎の診断方法は?検査はどんなものがあるのか?
潰瘍性大腸炎の診断のためには、
1. 潰瘍性大腸炎に診断基準はあるのか?
近年、診断を正確に行うためにさまざまな病気に対して診断基準が設けられています。潰瘍性大腸炎も例外ではなく、診断基準は以下の通りです。(表記は簡単なものにするため改変しています)
- 症状:
血便 が続いたり、繰り返したりする。あるいはそのような経験がある。 - 内視鏡検査:腸の粘膜は全体に破壊され、もろくて簡単に出血する。腸には血の混じった
膿 のような分泌物が付着している。潰瘍 が多発しポリープが多発しているように見える(偽ポリポーシス)。病変 は直腸から連続する。 - 注腸X線検査:腸全体の粘膜の変化が見られる。潰瘍が多発しポリープが多発しているように見える(偽ポリポーシス)。腸のヒダがなくなる。 腸は狭くなり、短くなっているように見える。
生検 :病気の活動期には粘膜全体に炎症 細胞が浸潤する。炎症細胞浸潤は腺管内にも認め(陰窩膿瘍 )、粘液分泌細胞が減少している。症状が治っている時にも腺管の配列の異常(蛇行や分岐)や萎縮 が残る。これらの変化は直腸から連続して見られる。
以下のいずれかを満たす時、確定診断とする(※)
- 2または3、ならびに1と4を満たす時
- 2または3、ならびに4を複数回満たす時
- 手術
検体 または剖検検体で肉眼的・組織学的に潰瘍性大腸炎に特徴的な所見 を認める時
※ 以下の症状の似た病気を除外すること
参考文献
・潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和2年度 改訂版)
2. 潰瘍性大腸炎ではどんな検査が行われるか?
潰瘍性大腸炎の人では診断や治療方針の決定のため、以下の検査が行われます。
- 内視鏡検査
- 注腸X線検査
CT 検査- 血液検査
- 便検査
これらの検査について説明していきます。
3. 内視鏡検査
潰瘍性大腸炎の診断や治療方針決定において、内視鏡検査は大事な検査です。とくに重要な検査は大腸の観察ができる
- 潰瘍性大腸炎の診断のため
- 病気の広がりを確認するため
- 治療の方針を決めるため
がん を早期に見つけるため
それぞれ以下で説明します。
潰瘍性大腸炎の診断のため
潰瘍性大腸炎は腹痛、血便などの症状があらわれます。しかし、これらの症状は他の病気でも起こることがあるため、症状だけで潰瘍性大腸炎と診断することはできません。潰瘍性大腸炎の診断のためには、内視鏡検査で実際に大腸で何が起こっているかを観察することが必要です。潰瘍性大腸炎では、粘膜の
さらに生検といって、腸の粘膜の一部をとってきて顕微鏡で何が起こっているのかを観察することも有用です。潰瘍性大腸炎では粘膜が炎症細胞で攻撃されているのが確認されます。
病気の広がりを確認するため
潰瘍性大腸炎は直腸から連続して口側に病変が広がっていきます。ただし、口側といってもどこまで広がっているかは、患者さんごとに異なります。大腸の一部だけの方もいれば、大腸全域にわたって病変が広がっている方もいます。どこまで病気が広がっているかは、症状だけから予想することは難しく、実際に内視鏡で観察してみなければわかりません。
治療の方針を決めるため
内視鏡検査の結果は治療方針を決める上でも重要です。例えば、内視鏡検査の結果、病変が直腸だけに限られていた場合には、
がんを早期に見つけるため
「潰瘍性大腸炎の人はがんになりやすいのか?」でも説明しますが、潰瘍性大腸炎の人は一般の人より大腸がんになりやすいと考えられています。早期のがんは症状もあらわれにくいため、症状がない場合にも内視鏡検査で大腸がんのチェックを行うことがあります。
4. 注腸X線検査
注腸X線検査とは
ただし、内視鏡検査の方がより詳細に腸を観察できることから、注腸X線検査が行われることは以前より減ってきています。
5. CT検査
CT検査が腸管の評価に用いられることがあります。CT検査は内視鏡検査に比べると患者さんに負担が少ないのが特徴です。CT検査は潰瘍性大腸炎を診断する上で必須の検査ではありませんが、以下のような状況で行われることがあります。
- 腹痛や血便をきたす他の病気の可能性がある場合
- 腸に穴が空いている可能性がある場合
それぞれ以下で説明します。
腹痛や血便をきたす他の病気の可能性がある場合
腹痛や血便が起こす病気は潰瘍性大腸炎以外にも多数あります。経過から腹痛や血便の原因が潰瘍性大腸炎より他の病気が疑わしい場合には、内視鏡検査よりCT検査を優先して行うことがあります。
腸に穴が空いている可能性がある場合
潰瘍性大腸炎は炎症が持続すると、まれに腸に穴が空く(腸管
6. 血液検査
潰瘍性大腸炎において、血液検査は以下の目的で行われることがあります。
- 潰瘍性大腸炎の炎症の程度を予測するため
- 貧血が起こっていないかを確認するため
- 薬の副作用のチェックのため
それぞれ以下で説明します。
潰瘍性大腸炎の炎症の程度を予測するため
潰瘍性大腸炎は腸に炎症が起こる病気です。実際に腸に炎症が起こっているかを確認するためには、内視鏡検査で観察する必要があります。しかし、内視鏡検査の体への負担を考えると、気軽に何度もできるものでありません。そのため、血液検査の「炎症マーカー」と呼ばれる項目を確認することがあります。例えば、潰瘍性大腸炎の治療が始まって薬の効果があるかをチェックする時に、患者さんの症状の改善と合わせて炎症マーカーの数値が参考にされます。
炎症マーカーに該当するものとしては「
貧血が起こっていないかを確認するため
潰瘍性大腸炎では腸からの出血や炎症の持続により貧血が起こることがあります。貧血は進行すると、「ふらつき」、「
薬の副作用のチェックのため
血液検査は潰瘍性大腸炎の治療に伴う副作用のチェックのためにも行われます。具体的には潰瘍性大腸炎の治療薬が肝臓や腎臓の負担になることがあります。治療薬の中には血液の細胞の産生をおさえてしまう(
- 肝臓の検査
- AST
- ALT
LDH - ALP
- γ-GTP(ガンマジーティーピー)
- 腎臓の検査
- Cr(クレアチニン)
- BUN
- 血液細胞の検査
- 白血球数
- 赤血球数
- Hb(ヘモグロビン)
血小板 数
7. 便検査
便検査は潰瘍性大腸炎と診断された場合や疑われている場合に行われる検査のひとつです。便検査には具体的には以下のものがあります。
- 便潜血検査
- 便
培養検査
以下ではこれらの検査について説明していきます。
便潜血検査
便に血液が混じっているかを確認する検査です。潰瘍性大腸炎では腸に炎症が起こると、出血をきたし、便に血が混ざることがあります。この時、大量の出血が起これば、見た目でも便に血液が付着しているのが分かります。しかし少量の場合には見た目では分からない場合もあり、このような少量の出血を検出するために便潜血検査が行われます。
便潜血検査は潰瘍性大腸炎で腸からの出血を早期に見つけるための検査といえます。便潜血検査の結果をもとに内視鏡検査をするタイミングを決めることもあります。
便培養検査
便培養検査は便の中に血便を起こす菌がいるかを確認する検査です。血便は潰瘍性大腸炎の代表的な症状ですが、血便を起こす病気は他にもたくさんあります。中でも感染性腸炎による血便は頻度が多いもののひとつです。そのため、潰瘍性大腸炎が疑われる場合、感染性腸炎との見極めが必要になります。感染性腸炎との見極めでは、便の中に血便を起こすような菌がいないかを確認することで行うことがあります。