2018.07.30 | ニュース

潰瘍性大腸炎の治療薬ほか、新薬5製品はどんな薬?

添付文書に記載の臨床試験を中心に

潰瘍性大腸炎の治療薬ほか、新薬5製品はどんな薬?の写真

7月2日に厚生労働省が新薬10製品を承認しました。そのうち、エンタイビオ、イラリス、ダフクリア、ジェミーナ、スピラマイシンの特徴などを紹介します。

エンタイビオとは?

ベドリズマブ(商品名エンタイビオ®)は、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果として承認されました。

潰瘍性大腸炎は、大腸で炎症が持続することにより、長引く下痢・血便などの症状を表します。治療としてステロイド薬や免疫抑制薬などが使われていますが、薬を使っても症状が続く人もいます。ベドリズマブは、潰瘍性大腸炎に対してほかの薬による適切な治療を行ったあとの人で、明らかな症状が残る場合に使用を検討できます。

国内の臨床試験では、ベドリズマブと偽薬を比較して、治療開始から10週時点で症状が一定基準以上に改善した人の割合を調べたところ、ベドリズマブの効果と言える差は確認できませんでした。しかし、ベドリズマブを使用したあとに症状が改善した人を対象として、ベドリズマブを続けた場合と偽薬を使用した場合を比較したところ、ベドリズマブを続けた人では60週時点で寛解(症状が治まった状態)になっている割合が56.1%でしたが、偽薬を使った人では31.0%となり、偽薬よりもベドリズマブを続けたほうが寛解が多い結果となりました

臨床試験でベドリズマブを使用した293人のデータを集計したところ、うち71人(24.2%)に何らかの副作用が現れていました。主な副作用は潰瘍性大腸炎、関節痛、鼻咽頭炎などでした。

 

イラリスとは?

カナキヌマブ(商品名イラリス®)は、炎症症状を抑える作用のある薬です。以前からクリオピリン関連周期性症候群などに対して使用可能となっていますが、新たに既存治療で効果不十分な全身型若年性特発性関節炎に対する効能・効果が追加されました。

全身型若年性特発性関節炎は、1歳から5歳の子供に多く、関節炎や発熱などの症状を特徴とします。治療としてステロイド薬などがありますが、ステロイド薬を使った適切な治療を行っても効果不十分だった場合にカナキヌマブの使用を検討できます。

臨床試験では、19人の患者がカナキヌマブを使用したところ、開始後8週時点で症状改善の目標とした基準を全員が達成し、また28週時点でステロイド薬を減量できていた人は19人中14人(73.7%)でした

19人のうち13人(68.4%)に何らかの副作用が現れました。副作用として注射部位反応、肝機能異常などがありました。

 

ダフクリアとは?

フィダキソマイシン(商品名ダフクリア®)は、クロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎の治療薬です。

クロストリジウム・ディフィシルという細菌は多くの人の腸に住み着いていて、ふだんは病気を起こしませんが、抗菌薬使用などをきっかけに異常に増殖し、下痢などを引き起こすことがあります。クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療にはほかにバンコマイシンやメトロニダゾールといった薬もあり、フィダキソマイシンはそれに加わる選択肢となります。

国内の臨床試験では、フィダキソマイシンとバンコマイシンを比較して、クロストリジウム・ディフィシル感染症の治癒維持率を評価したところ、結果は目標を下回り、フィダキソマイシンがバンコマイシンに劣らないことは検証できませんでした。

しかし、欧米のガイドラインではフィダキソマイシンがバンコマイシンと同様の位置付けとして記載されていることなどから、「本剤の有効性は期待できる」と判断されました。

この試験でフィダキソマイシンを使用した104人のうち9人に何らかの副作用が現れました。副作用として、心室細動、妄想、口腔カンジダ症などがありました。

 

スピラマイシンとは?

スピラマイシンはトキソプラズマ原虫に対する作用を持つ薬です。「スピラマイシン錠」の商品名で、「先天性トキソプラズマ症の発症抑制」を効能・効果として承認されました。

トキソプラズマは、妊娠中の女性に感染すると、胎盤を通じて胎児にも感染することがあります。先天性トキソプラズマ症は、胎児にトキソプラズマが感染したことにより、死産や水頭症、視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害などを現す病気です。

妊娠中でトキソプラズマに感染した人を対象とした臨床試験はきわめて困難と考えられたため行われず、海外では1980年代ごろから「妊婦のトキソプラズマ症」に対して使われ、効果についての研究報告もあることなどから「先天性トキソプラズマ症の発症抑制効果が期待できる」と判断されました。

副作用については、海外で数十年使用されている中でも重大な懸念は見つかっていないことなどから、許容可能な範囲と判断されました。

 

ジェミーナとは?

ジェミーナ®配合錠は、女性の性機能などに関わる卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤です。黄体ホルモンとしてレボノルゲストレル、卵胞ホルモンとしてエチニルエストラジオールを配合しています。

レボノルゲストレルとエチニルエストラジオールの配合剤は、「避妊」を効能・効果とする薬剤として以前から使われていますが、ジェミーナ®配合錠は配合割合などが違い、「月経困難症」を効能・効果として承認されました。

臨床試験では、ジェミーナ®配合錠と偽薬を比較して、使用前後での症状のスコアの変化を見たところ、ジェミーナ®配合錠を使用した人のほうが症状の改善幅が大きくなりました

臨床試験でジェミーナ®配合錠を使用した241人のうち88.8%(214人)に何らかの副作用が現れました。主な副作用は不正性器出血、稀発月経、月経過多、無月経、下腹部痛、頭痛、吐き気などでした。

 

まとめ

7月2日に承認された新薬10製品のうち5製品を紹介しました。ほかの製品については別の記事で紹介する予定です。 

新しく作られた薬剤や、以前と違った用途にも使えるようになった薬剤により、治療の選択肢が広がります。臨床試験のデータを参考に、ほかの治療とメリットやデメリットを比べることで、自分に合った治療になるかどうかを考えることができます。

執筆者

MEDLEY編集部

参考文献

エンタイビオ点滴静注用300mg 添付文書、イラリス皮下注用150mg/イラリス皮下注射液150mg インタビューフォーム、ダフクリア錠200mg インタビューフォーム・審査報告書、スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」 インタビューフォーム・審査報告書、ジェミーナ配合錠 インタビューフォーム・添付文書

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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