はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位
29人の医師がチェック 358回の改訂 最終更新: 2025.01.19

肺がんの原因:タバコ、大気汚染、肺疾患など

肺がんは色々な原因で起こります。タバコは非常に有名ですが、それ以外にも肺がんを起こしやすいものが多数言われています。実際どういったものがどのくらいのリスクなのか説明していきます。

1. 肺がんの現状

がんの早期発見および早期治療を目指して、多くの施設でがん検診が行われています。その効果や治療技術の進歩のおかげか、胃がん肝がんなどではがん死亡者数の低下が見られています。

その一方で肺がんの死亡者数は残念ながら上昇しています。

ただし、これにはがんによる影響だけでは語れない要素があります。例えば高齢化が進んでいることも1つの原因と考えられています。年齢の要素を省いた年齢調整死亡率では膵臓がん以外のがんで死亡率が下がっており、肺がんでも進歩が見えています。(がん情報サービスのデータによる)

とは言え、肺がんはがんの中でも死亡率が高いのが現状です。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療方法の進歩が見られていますので、今後のさらなる治療効果の向上が期待されています。

2. 肺がんと喫煙

タバコで肺がんになりやすくなることは非常に有名です。国際がん研究機関(IARC)でもタバコの煙は発がん物質と認定されています。また、タバコは吸っている自分だけでなく周囲の人にも悪影響を与えます。副流煙によって周囲の人の肺がんの発症率を増やすというデータが出ています。

タバコを吸うとどのくらい肺がんになりやすくなるか

タバコを吸うと何倍肺がんになりやすくなるのでしょう。なんとなく肺がんが増えることが分かっていても、正確に答えられる人は少ないでしょう。

実際に何倍肺がんになりやすいかをまとめたデータがありますので男女別に下の表で示します。なお、ここで用いているデータは肺腺がんや肺扁平上皮がんなどの全ての種類を足した数字になります。

【喫煙と全肺がんの関係(男性)】

  肺がんのリスク
非喫煙者 1.0倍(基準)
喫煙者 4.5倍
禁煙者 2.2倍

【喫煙と全肺がんの関係(女性)】

  肺がんのリスク
非喫煙者 1.0倍(基準)
喫煙者 4.2倍
禁煙者 3.7倍

特に喫煙は肺扁平上皮がんと関連する

肺扁平上皮がんは喫煙の影響を強く受けます。喫煙しない人に比べると、喫煙する人は10倍以上肺扁平上皮がんになりやすいことが分かっています。肺腺がんでは喫煙により2倍程度にしか増えないことに比べても、扁平上皮がんは特に喫煙との関係が強いと言えます。

【喫煙と肺がんの関係(男性)】

  扁平上皮がん+小細胞がんのリスク 肺腺がんのリスク
非喫煙者 1.0倍(基準) 1.0倍(基準)
喫煙者 12.7倍 2.8倍
禁煙者 5.1倍 1.3倍

【喫煙と肺がんの関係(女性)】

  扁平上皮がん+小細胞がんのリスク 肺腺がんのリスク
非喫煙者 1.0倍(基準) 1.0倍(基準)
喫煙者 17.5倍 2.0倍
禁煙者 10.9倍 4.3倍

タバコの本数よりもタバコを吸った年数のほうがより強く肺扁平上皮がんに影響すると考えられています。タバコの本数と吸った年数によって肺がんのリスクに及ぼす影響を表にします。表にあるデータはタバコの影響の強い扁平上皮がんと小細胞がんを合わせたものです。

【喫煙年数と肺がん(扁平上皮がん+小細胞がん)の関係】

喫煙期間 肺がんのリスク
24年以下 1.0倍(基準)
25年以上34年以下 7.9倍
35年以上44年以下 9.1倍
45年以上 13.9倍

【喫煙本数と肺がん(扁平上皮がん+小細胞がん)の関係】

喫煙本数 肺がんのリスク
1日に19本以下 1.0倍(基準)
1日に20本以上29本以下 1.5倍
1日に30本以上39本以下 1.3倍
1日に40本以上 2.0倍

受動喫煙によっても肺がんの発症率が1.3倍に上がることも分かっています。喫煙者は環境への配慮が必要です。

タールが少ないタバコでも肺がんになるか

タール1mgのタバコを吸っている人でも肺がんになります。しかし、タールの量と肺がんになりやすさに関しては、正確なデータがないというのが現状です。また、近年電子タバコを吸う人が増えています。電子タバコは通常のタバコより有害物質である一酸化炭素を減らすことがわかっていますが、実際肺がんをどのくらい減らすのかはまだ正確には分かっていません。

今分かっている範囲では、喫煙の本数と喫煙の年数が肺がんと関係していることです。タバコと肺がんの関係性について以下の表にまとめます。下の表では、肺腺がんや肺扁平上皮がんなどの全ての種類を足した数字を算出しています。

【喫煙年数と肺がんの関係】

喫煙期間 肺がんのリスク
24年以下 1.0倍(基準)
25年以上34年以下 1.9倍
35年以上44年以下 2.8倍
45年以上 4.0倍

【喫煙本数と肺がんの関係】

喫煙本数 肺がんのリスク
1日に19本以下 1.0倍(基準)
1日に20本以上29本以下 1.2倍
1日に30本以上39本以下 1.4倍
1日に40本以上 1.6倍

この表を見れば、タバコを吸う年数が長ければ長いほど、タバコを吸う本数が多ければ多いほど、肺がんになりやすくなる傾向が見えてきます。

禁煙で肺がんのリスクは下がる

禁煙で肺がんは予防できます。喫煙していても禁煙すれば肺がんのリスクが下がります。しかし、その一方で、禁煙してからすぐに肺がんのリスクが元通りになるわけではありません。以下にその表を示します。

【禁煙期間と全肺がんのリスク】

禁煙期間 肺がんのリスク
非喫煙者 1.0倍(基準)
9年以下 3.0倍
10年以上19年以下 1.8倍
20年以上 1.0倍

喫煙によって肺がんになりやすい扁平上皮がんと小細胞がんのみについて見ても、禁煙の効果は顕著に見えます。

【禁煙期間と肺がん(扁平上皮がん+小細胞がん)のリスク】

禁煙期間 肺がんのリスク
非喫煙者 1.0倍(基準)
9年以下 8.0倍
10年以上19年以下 4.0倍
20年以上 1.0倍

禁煙が肺がんを予防する上で良いことは分かっていても、禁煙するには非常に心身の労力を要します。そこで、現在は禁煙補助薬(ニコチン製剤、バレニクリンなど)が充実してきています。ぜひ、こういった薬を使って禁煙を達成しましょう。

タバコを吸わない女性が肺がんになるのはなぜか

確かにタバコを吸うと肺がんになる確率を高めますが、タバコを吸わない人も肺がんになります。また、タバコを吸わない女性の肺がんのほとんどは肺腺がんです。

肺腺がんは以下の特徴があります。

  • タバコによる影響が比較的小さい
  • 女性ホルモンの影響を受けてがんになりやすい

そのためタバコを吸わない女性でも肺腺がんは生じやすいのです。

タバコを吸わないのに肺がんになってしまうと、やりきれない気持ちになります。しかしタバコを吸わない人は治療で少し有利になる場合があります。肺がんの治療にはEGFR-TKIやALK-TKIと呼ばれる分子標的薬が存在します。この薬はがん細胞に特殊な遺伝子があるときにしか使えないのですが、タバコを吸っていない人のほうがこれらの薬を使える確率が高いということが分かっています。

3. タバコ以外に肺がんの原因はあるか

タバコは肺がんの大きな原因ですが、タバコ以外にも肺がんの原因はあります。以下に説明していきます。

ただし、これらの原因のどれがどの程度の割合で肺がんを起こしているのかは、正確には分かっていないものも多いです。

大気汚染物質

ディーゼルエンジンの排気ガスが問題となることがありましたが、最近では特にPM2.5が話題となっています。

PM2.5は非常に小さい粒子で、大気中に浮遊している2.5μm(マイクロメートル、1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことを指します。大気を浮遊して人体への悪影響を与えうる微物質として、以前は10μm以下の粒子である浮遊粒子状物質が注目されていましたが、それよりも4分の1の小ささの物質になります。

PM2.5のどこが問題なのかと言うと、物質の大きさが非常に小さいことです。

  • 小さいため肺の奥深くまで入りやすい
  • 小さいためマスクなどで遮断しにくい

つまり有害物質が肺の奥まで入り込んでくるため、身体への悪影響が出やすくなります。

アスベスト

主に断熱材として壁などにアスベストが用いられていましたが、1975年に吹付けアスベストが国内で禁止となった経緯があります。ただ、それまでアスベストのある環境で生活していた人では、肺がんや悪性中皮腫などの発症が多くなっています。

アスベストは国際がん研究機関(IARC)の発がん性物質分類でグループ1(発がん性物質である)に位置づけられており、できるだけ環境に置かないようにするべき物質です。しかし、1975年より前には禁止されていませんでした。1975年より前に建てられた建築物が近くで改装あるいは解体されている際には、マスクをしてできるだけ空気を直接吸わないように気をつけてください。

女性ホルモン

女性ホルモンによって肺腺がんが起こりやすくなります。近年、肺腺がんの発症に女性ホルモンが関与していると考えられています。

閉経の遅かった人や女性ホルモンのピルを飲んでいる人に肺腺がんが多いことが分かっています。閉経が遅いということは、体に女性ホルモンが多い期間が長いということです。ピルを飲んでいても女性ホルモンが多くなります。そこで、女性ホルモンと肺腺がんの関係が疑われています。

現在では少しずつ状況が解明されてきつつあり、特に女性ホルモンのエストロゲンが体内で作られるのに必要な遺伝子が関与しているのではないかと考えられています。

慢性肺疾患

慢性的な肺の病気を持っている人に肺がんは起こりやすいです。特に、慢性閉塞性肺疾患COPD)と呼ばれる病気は要注意です。

COPDはタバコやその他の有害物質を含んだ空気を吸うことで肺に慢性的な炎症が起こる病気です。肺の細胞が有害物質によって直接ダメージを受けるだけでなく、慢性的な炎症を抑えるときに生じる活性酸素も、正常な肺の細胞を傷つけてしまいます。傷ついた肺の細胞は修復されますが、何回も修復しているうちにいつしか化してしまうと考えられています。

間質性肺炎

間質性肺炎は肺を支える組織である間質に炎症が起こった状態です。炎症が進むにつれて間質が厚く、硬くなり肺の動きが悪くなってしまいます。

間質性肺炎がある患者さんは肺がんを発症しやすいことが知られています。また、間質性肺炎の患者さんが肺がんの治療(手術、放射線療法、薬物療法)を受けるとき、もともとの間質性肺炎が悪化することがあります。そのため、慎重に治療法を選択する必要があります。

肺結核

あまり知られていませんが、肺結核になると実は肺がんにもなりやすくなります。

肺結核になると肺の細胞に大きなダメージが与えられてしまいます。肺結核は自然に完治することは少なく、治療しても最低6ヶ月はかかるような治りにくい感染症です。つまり、持続的に肺の中で感染による炎症が起こるため、慢性的に肺の細胞が傷ついてしまいます。

肺結核と診断されてから2年以内では、肺がんになるリスクはおよそ5倍になると言われています。また、2年以上経って結核の影響が治まってからも、肺がんのリスクはおよそ1.5-3.3倍になっていると言われています。

食生活は肺がんの原因になるか

明らかに肺がんを起こすと考えられている食事はありません。ただし、国際がん研究機関 (IARC)が認めている発がん性物質は食べ物の中にも存在します。

基本的にカロテン類はがん予防に効果的ですが、フィンランドや米国の調査によると喫煙者にβ-カロテンを投与すると逆に肺がんのリスクが大きくなる、と報告されています。

しかし、その要因として「βカロテンの投与量が多すぎた(一般的な食事で摂取する量の10倍)ため、かえって有害になった」「喫煙という酸化ストレスのかかった状況では、βカロテンは酸化を抑制するのではなく、かえって促進する作用が生じた」等があげられ、現在でも議論が続けられています。

β-カロテンはがん予防に良いとされる野菜に含まれる成分であるため、摂取を控えることは難しいです。食事を過敏に警戒するよりも、サプリメントを大量に飲むなどして必要以上に摂取することに気をつければ良いのではないかと考えます。

食事でがんを予防できるか

がんの原因の35%は食事によるものかもしれないと言われています。普段より規則正しい食習慣を心がけることが大切です。35%というのは肺がん以外のがんも含めた数字です。規則正しい食習慣を維持することで、発がんリスクを減らすことが期待されます。

【がんの発症予防が期待されている食事や飲酒】

  • 食事
    • 塩蔵食品、食塩の摂りすぎに注意をする
      • 日本人の1日塩分の摂取基準:男性 7.5g未満/女性 6.5g未満、1日の必要量は2.0g
    • 加工肉、赤肉(牛肉、豚肉、羊肉等)の摂りすぎは控える
    • 飲食物を熱すぎる状態で摂らない
    • 野菜や果物をきちんと摂る
      • 野菜の摂取量は1日350g以上を目標とする
  • 飲酒
    • 節度を持って飲酒をする
      • 1日の飲酒量は日本酒1合相当(ビール500mL/焼酎0.6合/ワイン180mL/ウイスキー60mL)が目安

【がんを予防することが期待されている栄養素や食品】

がんを発症させてしまう一因として、活性酸素が挙げられます。活性酸素は、ストレスや喫煙、排気ガスにより発生してしまうため、体内から完全に排除してしまうことはできません。しかし、体内に過剰に発生してしまうと遺伝子を傷つけて細胞をがん化させてしまいます。抗酸化作用のある栄養素を摂ることで活性酸素の害を抑えることが期待できます。

  • 抗酸化作用が期待されている栄養素
    • ビタミンE:モロヘイヤ、赤ピーマン、かぼちゃ、アーモンド等に多い
    • ビタミンC:菜の花、ブロッコリー、レモン、キウイフルーツ等に多い
    • カロテン類:にんじん、かぼちゃ、ほうれん草等の緑黄色野菜に多い
    • 含硫化合物(植物に含まれる香り成分):ニンニク、玉ねぎ、ねぎ、ニラ、キャベツに多い
    • ポリフェノール:ぶどう、緑茶、ごま、ココア、大豆等に多い
  • がん予防に効果が期待されている食品
    • ニンニク、キャベツ、大豆、しょうが、にんじん、セロリ等

これらの食品は抗酸化作用のある栄養素や食物繊維が豊富な食品です。摂取することによりがんのリスクを低下させる効果が期待されています。

もちろん、がんの原因はわかっていない部分が大きいので、どんなに食事に気を付けてもがんになることはあります。しかし、がんになる確率を少し下げる効果はあるかもしれません。

参考文献 Sobue T, et al. Cigarette smoking and subsequent risk of lung cancer by histologic type in middle-aged Japanese men and women: the JPHC study. Int J Cancer. 2002 May 10;99(2):245-51. doi: 10.1002/ijc.10308.

エアコンは肺がんの原因になるか

エアコンをつけたほうが肺がんになりやすいという確かなデータはありません。むしろ部屋の中が暑いのを我慢していたら熱中症の危険があります。肺がんを予防するためにエアコンを使わないようにする必要はありません。

エアコンが肺がんに影響を与えるとしたら、エアコンの中がカビやほこりなどで汚くなっているときです。エアコンの中が汚いと、その汚い物質が空気中に飛び出してきます。すると、呼吸するたびに肺に取り込まれてしまい、肺にアレルギーが起こることがあります。過敏性肺臓炎好酸球性肺炎といった病気が肺のアレルギーによって引き起こされて、エアコンが汚いままだとそのまま症状が持続します。

すると慢性的な肺の病気になってしまうため、上で述べていたように肺がんになりやすくなってしまう可能性があります。これは推論ですので実際に肺がんが増えているかは不明ですが、エアコンが汚いままだと肺の病気になりやすいのは事実です。エアコン内をこまめに掃除したり内部乾燥モードを使ってきれいにしておくことはおすすめできます。

ストレスは肺がんの原因になるか

ストレスの多い人が肺がんになりやすいといった明確なデータはありません。ストレスはがんになりやすいとか免疫機能を低下させるという話はありますし、なんとなく納得してしまいそうな話の流れなのですが、ストレスの感じ方は人それぞれですし、ストレスの全くない人はいないので厳密に比べようがありません。現段階で分かっていることから、ストレスが起こるとどういったことが起こるのか考えてみましょう。

ストレスがかかると交感神経が刺激されます。交感神経が高まると血圧が上がったり脈が早くなったりしますが、体内に活性酸素が多くなることも分かっています。この活性酸素は周囲にある細胞を攻撃してしまうため、体内の細胞がダメージを負ってしまいます。ダメージを負った細胞は修復されますが、何度も何度もダメージを負って修復される過程を繰り返していくうちに、がん細胞が生まれてしまう可能性があります。

ただ、上の説明はあくまで想像なので、このようにして本当にがん細胞が生まれるかどうかはわかりません。

ストレスは身体に悪いものです。肺がんと関係あるかどうかは不明としても、できるだけストレスのない生活を送りたいものです。

喫煙率が下がっているのに肺がんは増えている不思議に対する答え

喫煙率が下がっているのにもかかわらず、肺がんによる死亡者数は増えてきています。治療の技術が向上しているのであればなおさら不思議な現象に見えてきます。どうしてこんなことが起こるのでしょうか。

その答えは主に3つあります。

■1. 社会が高齢化しているから

紛れもない事実として、高齢者は肺がんになりやすく肺がんで亡くなりやすいです。そのため、高齢化が進むと肺がんによる死亡者数は増えていきます。これは肺がんの影響というよりは加齢の影響です。肺がんの影響を知りたければ、加齢の影響を除いた死亡者数(年齢調整死亡者数)を見る必要があります。肺がんの年齢調整死亡者数は近年減少傾向が見られています。

参考のため、がんの統計情報を国立がん研究センターが解説していますので、詳しく知りたい方はご覧ください。

■2. 禁煙してもすぐには肺がんリスクは下がらないから

禁煙した年数が長くなればなるほど肺がんの発症リスクが下がっていきます。しかし、禁煙してからすぐに肺がんのリスクが元通りになるわけではありません。

肺がんのリスクは禁煙の年数が長くなればなるほど下がってきますし、20年禁煙して初めて元通りになることがわかります。つまり喫煙率が減少してから数十年経ってからタバコが原因の肺がんが減ってくることになります。

我が国の喫煙率は年々下がっていますが、禁煙するには非常に心身の労力を要します。現在は禁煙補助薬(ニコチン製剤、バレニクリンなど)が充実してきています。ぜひ、こういった薬も頼って禁煙を達成してください。

また、肺腺がんには女性ホルモンが関与していることも、もしかしたら女性の肺がんが増えていることの一因かもしれません。食生活の欧米化や性生活などの環境変化によって女性ホルモンが刺激されている可能性はあります。

とは言え、肺がんの全体数はそこまで増えているわけではないので、このまま禁煙傾向が続けば、肺がんの死亡数はもちろん患者数も減ってくると予想されています。社会全体を考えて、喫煙者は分煙に協力してくださるようお願いします。

■3. タバコと関係の弱い肺がんが多いから

肺がんの全体の6割を占める肺腺がんは、肺扁平上皮がんほどタバコとの関係が強くありません。喫煙の有無で扁平上皮がんや小細胞がんのリスクは10倍以上違いますが、より人数が多い肺腺がんのリスクは2倍ほどです。

以上のことが主な原因となって、喫煙者が減っても肺がんの死亡数が減らない現象が起こっています。とはいえ、少なくとも年齢を調整して肺がん死亡数を見れば減少傾向にあります。禁煙の効果がないという論理はかなり無理があります。

参考文献

Sobue T, et al : Cigarette smoking and subsequent risk of lung cancer by histologic type in middle-aged Japanese men and women: the JPHC study. Int J Cancer. 2002 May 10;99(2):245-51. doi: 10.1002/ijc.10308.