2018.01.24 | ニュース

非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬ほか、新薬4製品

添付文書記載の臨床試験を中心に

非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬ほか、新薬4製品の写真

1月19日に厚生労働省が新薬13製品を承認しました。そのうちテセントリク、リムパーザ、ベスポンサ、ナルベインの効能・効果などを紹介します。

テセントリクとは?

テセントリク®(一般名アテゾリズマブ)はがん治療薬です。「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として承認されました。非小細胞肺癌とは、肺がんの中で小細胞癌に分類されるもの以外を指します。
アテゾリズマブは作用のしくみから免疫チェックポイント阻害薬に分類されます。

臨床試験ではアテゾリズマブと抗がん剤のドセタキセルが比較されました。ステージIIIBまたはステージIVの非小細胞肺がんの患者で、以前にプラチナ製剤を含む抗がん剤治療を受けている人が対象となりました。

対象者をアテゾリズマブを使用するグループとドセタキセルを使用するグループに分けて治療したところ、ドセタキセルを使ったグループでは半数の人が9.6か月以上生存したのに対して、アテゾリズマブを使ったグループでは半数の人が13.8か月以上生存し、アテゾリズマブを使うほうが統計的に生存期間が長いと見られました。

何らかの副作用が64.0%の人に現れ、副作用には疲労・吐き気・食欲減退・無力症・発熱・下痢・発疹・かゆみなどがありました。

 

関連記事:免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブは非小細胞肺がんに効く?

 

リムパーザとは?

リムパーザ®(一般名オラパリブ)はがん治療薬です。「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」を効能・効果として承認されました。

卵巣がんに対する治療の選択肢のひとつが、プラチナ製剤(白金系抗悪性腫瘍剤)に分類される抗がん剤を使った治療です。オラパリブの効果が期待できるのは、卵巣がんに対して以前に治療を受けたあと再発があり、再発に対してプラチナ製剤を含む治療を行ったところ効果が現れている人です。

臨床試験では、対象者を2グループに分け、オラパリブを飲むグループ、有効成分のない偽薬を飲むグループとして、がんの進行がないまま生存した期間が比較されました。

偽薬のグループでは、半数の人が5.5か月以上、がんの進行がないまま生存しました。対してオラパリブのグループでは、半数の人が19.1か月以上、がんの進行がないまま生存し、オラパリブを飲んだグループのほうが進行または死亡の率が少ないと見られました。

何らかの副作用が92.3%の人に現れ、副作用として吐き気・貧血・疲労・嘔吐・無力症・味覚異常などがありました。

関連記事:再発卵巣がんの抗がん剤治療後、オラパリブで進行・死亡を防げるか

 

ベスポンサとは?

ベスポンサ®(一般名イノツズマブオゾガマイシン)はがん治療薬です。「再発又は難治性のCD22陽性の急性リンパ性白血病」を効能・効果として承認されました。急性リンパ性白血病は血液の細胞に由来するがん(悪性腫瘍)の一種です。CD22陽性とは、がん細胞の表面にCD22抗原という物質があることを指し、イノツズマブオゾガマイシンはCD22抗原と結合することでがん細胞に対して効果を現します。

臨床試験では、以前に抗がん剤治療を受けたことのある患者が対象とされました。対象者は2グループに分けられ、イノツズマブオゾガマイシンを使用するグループ、担当医の判断で既存の3種類の治療法から選ぶグループとされました。

治療の効果は、検査でがん細胞が基準値未満に少なくなることなどを基準とした「寛解」に至った人の数で比較されました。

既存治療のグループでは29.4%、イノツズマブオゾガマイシンのグループでは80.7%の人が寛解に到達し、イノツズマブオゾガマイシンを使ったほうが寛解が多いと見られました。

何らかの副作用が85.4%の人に現れ、好中球減少、血小板減少、白血球減少、貧血、インフュージョンリアクション、吐き気、疲労などがありました。

 

ナルベインとは?

ナルベイン®(一般名ヒドロモルフォン塩酸塩)は、がんの痛みを和らげる薬です。オピオイド受容体作動薬に分類されます。「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」を効能・効果として承認されました。同じヒドロモルフォン塩酸塩を有効成分とする錠剤(商品名ナルラピド®、ナルサス®)がすでに使用可能ですが、ナルベインは注射剤です。

臨床試験では、各種オピオイド鎮痛薬から切り替えるなどしてヒドロモルフォン塩酸塩の持続静脈内投与を使用した人のうち73.9%、持続皮下投与を使用した人のうち85.7%が、痛みを目標範囲内に抑えることができました。

何らかの副作用は38.5%の人に現れ、傾眠、吐き気、嘔吐、便秘などがありました。

 

まとめ

新薬13製品のうち4製品を紹介しました。同日に承認されたほかの9製品についても別に紹介する予定です。

新薬が加わることにより、保険診療として新しい治療法が使えるようになります。効能・効果や副作用に対応して報告されているデータを参考に、従来の治療法と比較することで、治療選択の幅を広げることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

リムパーザ錠100mg/リムパーザ錠150mg 添付文書、テセントリク点滴静注1200mg 添付文書、ベスポンサ点滴静注用1mg 添付文書、ナルベイン注2mg/ナルベイン注20mg 添付文書

 

 

 

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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