はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位。
29人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2019.07.09

肺がんは検査で見つけられる?

肺がんが進行すると治療の選択肢が減り、治療の成功率も下がってしまいます。そのため、できるだけ早く肺がんを診断し、できるだけ早く治療を開始したいとみな思うことでしょう。

ここでは検査の方法と仕組みについて説明していきます。

1. 肺がんを見つける検査方法は?

肺がんの検査には大きくわけて2種類あります。1つは肺がんを見つける検査で、もう1つは肺がんを疑ったときに行う検査になります。

肺がんの主な検査を表にしてこの2つに大別してみます。

【検査ごとの性質】

胸部レントゲン(X線)検査

肺がんを見つける検査

胸部CT検査

肺がんを疑ったときに行う検査

(見つける目的の場合もある)

腫瘍マーカー

肺がんを疑ったときに行う検査

細胞診断・組織診

肺がんを疑ったときに行う検査

それでは各々の検査の性質を踏まえて説明していきましょう。

肺がんの初期はレントゲンに写る?

肺のレントゲン

肺がん検診では胸部レントゲン検査を行います。しかし、胸部レントゲン検査は万能ではありませんので、検査をしても肺がんの存在がわからないという事態はどうしても生じてしまいます。

レントゲン検査では、X線を胸部にあててその吸収率を測定することで肺の中身をみています。胸部レントゲン検査をすると、検出感度がんがあった場合に正しくがんと指摘できる確率)は60-80%と報告されています。

レントゲン検査をしても肺がんを見逃すことがあります。特に肺がんが以下のような場合は胸部レントゲン検査でわかりにくいです。

  • 心臓や横隔膜などの正常組織の前後に隠れる場合

  • 大きさが3cm以下の場合(特に1cm以下の場合)

  • レントゲンに写った影が非常に淡い場合

  • 肺がんが肺の頭の方(肺尖部)に存在する場合

現在の医療技術では、どうしてもある程度の確率でこれらの見逃しが生じますが、見逃される確率を下げるために工夫がなされています。医者が読影熟練度のレベルを上げるように日頃から努めることはもちろん重要です。また、疑いがあるときにはレントゲン以外の検査も使う方法があります。特に肺がんが起こりやすい背景のある人に少しでも疑わしいものが感じられた場合は、胸部CT検査を行うことが望ましいです。 詳しくは、肺腺がんとは?肺扁平上皮がんとは?肺小細胞がんは?のページを参考にしてください。

肺がんはCTで診断できる?

胸部CT検査は肺のレントゲン検査(X線写真)よりも得られる情報量の多い検査です。より詳細に肺がんの大きさや形を調べることができます。

胸部CT検査の検出感度(がんがあった場合に正しくがんと指摘できる確率)は93.3-94.4%と言われており、肺がんを見つける検査としては非常に優れたものになります。しかし、それでも小さながんを診断することは容易ではなく、6mm未満の結節に限ると検出感度は70%程度になってしまいます。

CT検査がレントゲン検査よりも精度が優れているのは事実ですが、1つ問題があります。レントゲン写真で体に当たる放射線は微量ですが、胸部CT検査による医療被曝量はレントゲン検査よりも明らかに多いことです。

放射線の人体への影響力を表す単位としてシーベルト(Sv)というものがあります。数字が高ければ高いほど人体への影響が強いことになります。胸部レントゲン検査と胸部CT検査の被曝量に関する報告にばらつきはありますが、大体の値は以下になります。

【胸部レントゲン検査と胸部CT検査における被曝量の比較】

検査内容

被曝量

胸部レントゲン検査

0.2mSv

胸部CT検査

7.0mSv

参考:東京⇔ニューヨークの往復

0.19mSv

胸部レントゲン検査を1回行うと、飛行機で東京とニューヨークを往復したときと同じ被曝量になります。単純計算で言うと、胸部CT検査をの被曝量は胸部レントゲン検査を35枚撮影したときと同じくらいになり、何度も撮影すると人体への影響が一層危ぶまれます。

CT検査が原因で人体に障害が出たというはっきりとした証拠は今のところ見つかっていません。とはいえ放射線に被曝する量は最低限にするべきですので、胸部CT検査はレントゲン写真で肺がんの可能性を疑われた場合にのみ行うことが最も理にかなっています。通常よりも放射線量を抑えた低線量CTを用いて肺がん検診を行っている施設もあります。まだ日本人に対する有用性は証明されていませんが、海外では55-74歳の喫煙者を対象とした研究で肺がん死亡率を約20%減少させた、との報告があります。喫煙者や喫煙していた方は検査を受けることを検討しても良いと思います。

肺がんは腫瘍マーカーで診断できる?

肺がんかどうかを腫瘍マーカーで判断してはいけません。これは全てのがんに言えることですが、腫瘍マーカーはがんの診断に使うものではありません。

がんの検査で腫瘍マーカーがしばしば用いられています。腫瘍マーカーというのは血液に微量に含まれている物質のことです。

肺がんに対しては、以下の腫瘍マーカーが用いられます。

  • CEA

  • CA19-9

  • SLX

  • CYFRA

  • SCC

  • NSE

  • ProGRP

これらが度々用いられるのですが、腫瘍マーカーは決して精度の高い検査ではないということは忘れてはいけません。

腫瘍マーカーの中で検出感度が良いと考えられているCYFRAでも感度(がんがあった場合に正しくがんと指摘できる確率)は56.1%です。肺がんがあっても40%以上はCYFRAに変化が見られないことになります。この程度の精度の検査では、肺がんが隠れている人を腫瘍マーカーだけで見抜くことは非常に難しいと言えます。

腫瘍マーカーを使って良い場面は実は限られています。

  • 腫瘍マーカーを使うのに適している場面

    • 肺がん治療の効果判定の補助

    • 肺がんが再発していないかを診断する際の補助

    • 肺がんの種類がどうしても判断できない際の補助

  • 腫瘍マーカーを使うのに適していない場面

    • 検診でがんの有無を判断する

腫瘍マーカーは使うのに適した場面で使えば有用です。しかし、その価値が低い場面で使うと、どんな結果であろうと結論が出ないといった状態になります。現段階の検査精度であれば、検診で腫瘍マーカーを使ってもほとんど意味がないということになります。

がん細胞を探す検査ってなに?

がん細胞を探す検査は病理検査と呼ばれます。この検査には、細胞診断と組織診断の2つがあります。詳しく説明していきましょう。

細胞診断

細胞診断という検査は、がんかもしれないと疑われる物に針を刺して細胞を採り、顕微鏡で調べる検査です。細胞を染色したりして特徴を出すことで、細胞診断の診断力は非常に高いものになっています。

たとえば、肺には肺がんと似ている良性腫瘍ができることもあります。画像だけでは良性腫瘍か悪性腫瘍か、つまり、がんなのかがんではないのかを区別しにくいことがあります。そんなときには細胞診断が役に立ちます。

とはいえ、がんの中にも正常な細胞が含まれていることがあるので、針を刺して採ってきた細胞の中にがん細胞がない場合は、がんではないと決めることができません。特に肺がんでは喀痰細胞診といって、痰の中にがん細胞がいるかを調べることがあるのですが、喀痰細胞診の検出感度は40%程度と言われており、がん細胞が見られなかったからといって肺がんを否定することは難しいです。結局のところは全身状態や画像検査と併せて総合的に判断することが多いのです。

世の中には肺がんの検査キットというものがあります。これは各々の痰を郵送して細胞診断を行っています。要は細胞診を単独で行っているようなものです。この検査キットで陽性であった場合は肺がんの治療のために医療機関にかかることになりますし、陰性であっても肺がんを否定できないので詳しく調べるには医療機関にかかることになります。結論として、肺がんの検査キットは、気休め程度にはなるが本質的にはほとんど意味が無いということになります。肺がんが気になるのであれば医療機関にかかって検査をしてください。

組織診断

組織診断では、肺がんを疑う組織の一部を検査するために(たいていの場合は、気管支内視鏡検査による肺生検やCTやエコー検査を用いて体の外から針を刺して行う肺生検、VATSと呼ばれる内視鏡手術を行います)切り取ってきて顕微鏡で調べます。組織診断では細胞診断よりも大きな組織を取ってくることになるので、がん細胞の見逃しが少なくなります。

しかし、手術を行うため身体へのダメージがあり、いつでも気軽に行える検査ではありません。細胞診断を行ったけれども結果がはっきりとしない場合に行われることがほとんどです。

また、診断が確定していなくてもまず手術をして腫瘍を取ってしまい、取り出した腫瘍の中にがん細胞があるかどうかを調べ、もしがんだったときには相応の治療を続けるという方法もあります。この方法は、がんが見つかった場合に適切な治療をする準備ができている場合にだけ使えます。

肺がんの検査にかかる料金は?

肺がんの検査には、外来でレントゲンを撮影すると最低でも2,000円程度、詳しい検査をすると内容によっては10万円以上の自己負担額がかかります。

保険証を出して受けられる保険診療の範囲内なら、病院で支払うお金は、診療報酬として全国一律で決められています。

検査や診察をするごとに、行われた項目に対して決められた値段が加えられます。

例として、病院の外来でレントゲン(X線写真)を撮影したときを考えます。診療報酬では次のような項目が当てはまります。

  • 初診料 282点

  • 撮影 単純撮影 デジタル撮影 68点

    • 一度に2枚以上撮影する場合、2枚目以降は50/100で計算

  • 写真診断 単純撮影 頭部、胸部、腹部又は脊椎 85点

  • 画像診断管理加算1 70点

  • 電子画像管理加算 57点

1点が10円と換算されます。小学校入学以後70歳未満の人はそのうち3割が自己負担になります。残りの7割は保険で支払われることになります。

上の項目でレントゲン写真を2枚撮影すると合計596点となり、対応する自己負担額(窓口で支払う金額)は1点あたり10円の3割、つまり1点あたり3円として1,788円です。

実際には病院ごとに加減される要素があります。レントゲン写真でもデジタル撮影とアナログ撮影で違うなど、細かい違いで支払額も変わります。ほかの検査が同時に行われたり薬も処方されたりした場合は別途計算されます。

最終的に会計の時点で支払額は10円単位に四捨五入されます。

さらに詳しい検査をした例も挙げます。外来のレントゲンで肺に影が見つかり、検査のため4日間入院したとします。

入院にかかる費用は病院ごとに加減される要素がいろいろあるのですが、一例として次の項目に当てはまったとします。

  • 再診料 72点

  • 一般病棟入院基本料(1日につき) 1,591点(4日)

    • 加算 14日以内の期間1日あたり 450点(4日)

  • 臨床研修病院入院診療加算 協力型 20点

  • 診療録管理体制加算 30点

  • 医師事務作業補助体制加算 138点

  • 急性期看護補助体制加算 80点

  • 食事療養費標準負担額 1食当たり 360円(9食)

  • 食堂加算 1日当たり 50円(4日)

上の合計が8,504点と3,440円です。食事の費用だけは、ほかの診療報酬と計算方法が違い、単位は円です。

診療報酬のうち3割が自己負担として、食事の費用と合わせると28,952円です。これが入院期間に病院にいるだけでかかった金額です。

肺がんの診断のために血液検査、喀痰細胞診、CTが行われたとすると、次の項目に当てはまります。

  • 血液検査に対して:1,569点(4,707円)

    • 血液採取(1日につき) 静脈 25点

    • 免疫血液学的検査 ABO血液型、Rh(D)血液型 21点

    • 末梢血液一般検査 21点

    • 血液化学検査 10項目以上 115点

    • 胎児性抗原(CEA) 108点

    • 扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原) 110点

    • サイトケラチン19フラグメント(CYFRA:シフラ) 172点

    • 悪性腫瘍特異物質治療管理料 2項目以上の場合 400点

    • 血液学的検査判断料 125点

    • 生化学的検査(Ⅰ)判断料 144点

    • 生化学的検査(Ⅱ)判断料 144点

    • 免疫学的検査判断料 144点

    • 検体検査管理加算 40点

  • 喀痰細胞診に対して:450点(1,350円)

    • 細胞診(1部位につき) 穿刺吸引細胞診、体腔洗浄等によるもの 190点

    • 細胞診断料 200点

    • 病理診断管理加算 細胞診断を行った場合 60点

  • 胸部CTに対して:1,470点(4,410円)

    • コンピューター断層撮影(CT撮影)(一連につき) 64列以上のマルチスライス型の機器による場合 共同利用施設において行われる場合 1,020点

    • コンピューター断層撮影診断 450点

検査の結果、肺がんの疑いが強くなり、さらに進んだ検査も行われたとします。

  • 気管支鏡に対して:2,500点(7,500円)

    • 気管支ファイバースコピー 2,500点

  • CTガイド下生検に対して:6,430点(19,290円)

    • 経気管肺生検法 4,000点

    • CT透視下気管支鏡検査加算 1,000点

    • 病理組織標本作製(1臓器につき) 860点

    • 組織診断料 450点

    • 病理診断管理加算 組織診断を行った場合 120点

  • 胸腔鏡検査に対して:6,000点(18,000円)

    • 胸腔鏡検査 6,000点

  • 胸水穿刺細胞診に対して:370点(1,110円)

    • その他の検体採取 胸水・腹水採取(簡単な液検査を含む。) 180点

    • 細胞診(1部位につき) 穿刺吸引細胞診、体腔洗浄等によるもの 190点

  • 胸膜生検に対して:1,620点(4,860円)

    • 内視鏡下生検法(1臓器につき) 310点

    • 病理組織標本作製(1臓器につき) 860点

    • 組織診断料 450点

生検などで肺がんの診断が確定し、治療を選ぶための遺伝子検査や、転移を探すための画像検査も行われたとします。

  • 遺伝子検査に対して:2,500点(7,500円)

    • EGFR遺伝子検査(リアルタイムPCR法) 2,500点

  • MRIに対して:1,620点(4,860円)

    • 磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)(一連につき) 3テスラ以上の機器による場合 共同利用施設において行われる場合 1,620点

  • 腹部CTに対して:1,020点(3,060円)

    • コンピューター断層撮影(CT撮影)(一連につき) 64列以上のマルチスライス型の機器による場合 共同利用施設において行われる場合 1,020点

  • 骨シンチグラフィーに対して:2,200点(6,600円)

    • 核医学診断 シンチグラム(画像を伴うもの) 全身(一連につき) 2,200点

  • FDG-PETに対して:7,950点(23,850円)

    • 核医学診断 ポジトロン断層撮影 18FDGを用いた場合(一連の検査につき) 7,500点

    • 核医学診断 区分番号E101-2に掲げるポジトロン断層撮影、E101-3に掲げるポジ トロン断層・コンピューター断層複合撮影(一連の検査につき)、E101-4に 掲げるポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター断層複合撮影(一連の検査につき) 及びE101-5に掲げる乳房用ポジトロン断層撮影の場合 450点

治療前に行われた以上の検査に対して、診療報酬点数が合計35,699点、自己負担額が3割として107,097円です。

入院だけの費用28,952円と足して、136,049円を窓口で支払う計算になります。

実際に以上の検査すべてが行われる場合は、すぐに肺がんの治療が始まると思われますので、治療にかかる費用も加わります。

とても重い負担のようですが、負担を軽くする制度があります。高額療養費制度が代表的です。高額療養費制度は、医療費の自己負担額が所得に応じてある基準を超えたとき、基準を上回る分があとで払い戻される制度です。払い戻しを受け取れるまでに数か月かかります。

たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費 - 267,000円)×1%と決められています(2016年11月時点)。

総医療費の3割が自己負担額なので、自己負担額が80,100円を超えると(すなわち、総医療費が267,000円を超えると)払い戻しの対象になります。

自己負担限度額は所得によって35,400円(実際にかかった費用によらず一定)から252,600円+(総医療費 - 842,000円)×1%まで幅があります。

ほかにも自治体などが助成制度を持っている場合があります。

どのような制度の対象になるか、医療機関の相談窓口などで相談してください。

肺がんの検査をするにはどうすれば良い?何科に行くのが良い?

基本的に肺がんの検査はたいていの医療機関で可能です。肺がんかどうかを調べるために大がかりな検査を行うわけではありません。

肺がんを調べるために行う検査は以下のものが主になります。

  • 胸部レントゲン検査(X線写真)

  • 胸部CT検査

  • 腫瘍マーカー

  • 病理診断

特に胸部レントゲン検査が可能な施設かどうかが重要です。その他の検査は外注といって他の医療機関にお願いできますので、肺がんの検査をどこで行うかを考えるときに必要条件は胸部レントゲン検査ができることと考えて良いでしょう。たいていの医療機関で胸部レントゲン検査ができます。胸部レントゲン検査ができない医療機関は、肺がんの検査を受けに行くにはあまり向いていません。

検査の精度は医療機関でほとんど差はありません。CTの機械の性能が320列と32列という10倍ぐらいの違いであれば検査の早さや画像の解像度は違いますが、それよりも診断力に大きな違いが出るのは診断する医師の目かもしれません。つまり、肺がんを見慣れている目であればあるほど診断の正確性は高まります。

そこで、日頃から肺がんを見慣れている科がある病院のほうが有利になります。具体的には、以下の科が日頃から肺がんを見慣れています。

  • 呼吸器内科

  • 呼吸器外科

  • 放射線科

  • 腫瘍内科(化学療法科)

とはいえ、これらの科以外にも診断力の高いスーパードクターはいますので、ここにある内容は1つの参考材料として考えるくらいが良いかもしれません。

肺がんのPET検診は受けるべき?

肺がんを検査するのにPET検査を行った方が良いと思われる方も多いと思います。確かにPET検査は体内のがんの所在を見つけるのに有用であることも多いです。しかし、良いことばかりではないこともわかっています。

FDG-PET(ペット)検査は、ブドウ糖に似た物質(FDG)を体内に点滴して、どこに集まるかを調べる検査です。検査に使うFDGは放射線を放出するので、放射線を測定するとFDGが集まっている場所がわかります。この検査では、がん細胞は自分に栄養をたっぷりもらえるようにブドウ糖を集める作用があることを利用します。がん細胞がブドウ糖を集めるので、ブドウ糖に似ているFDGもがんに集まるのです。

つまり、以下のことが検査中に体内で起こります。

  1. 放射線を放出するFDGが体内に入る

  2. がん細胞がブドウ糖とFDGをたくさん集める

  3. がん細胞の周囲から放射線が多く検出される

こうして、がん細胞が身体のどこにあるかが調べられます。しかし、PET検査の検出感度は100%ではなく、およそ83-96%と報告されています。つまり、PET検査でがんを見逃すこともないとは言い切れません。

FDG-PET検査にはどういった欠点があるかを下にまとめます。

  • 特に初期のがんではFDGが集まらないことがある

  • がんでなくても感染などの炎症が起こるとFDGが集まってしまう

  • 放射線に被曝する

  • 高血糖があると検査精度が落ちてしまう

最後の被曝に関して補足します。シーベルト(Sv)という単位で表すと、PET検査を1回行うことでおよそ2.2mSvの被曝量になります。参考までにその他の放射線検査の被曝量は、胸部レントゲン検査では0.2mSv、胸部CT検査では7.0mSvです。

PET検査は肺がんが進行していないと正確性があまり高くないため、検診で用いることは推奨されていません。しかし、肺がんの転移の検索では非常に有用です。全身に転移するくらいがんが進行している場合はFDGが集まる場合が多いので、肺がんの全身の転移の状態を把握するためによく使われています。

2. 肺がんの検査入院では何を調べている?

肺がんを疑われると精密検査を行う事になります。この精密検査は外来で行える検査がほとんどですが、一部入院して行うべき検査があります。

肺がんの検査は何をするのか?

上でも述べたように肺がんの検査は以下のことを行います。

  • 胸部レントゲン検査(X線写真)

  • 胸部CT検査

  • 腫瘍マーカー

  • 病理診断(細胞診断・組織診断)

この中でも診断する意味でもっとも重要なのは病理診断になります。その他の検査で異常があると肺がんを疑う材料にはなりますが、がんを診断するにはがん細胞があることを示さなければなりません。体内にがん細胞があることを証明するのが病理診断です。

病理診断には、細胞診断と組織診断があります。2つの特徴を簡単に説明します。

細胞診断

細胞診断という検査は、がんかもしれないと疑われる物に針を刺したりして細胞を採り、顕微鏡で調べる検査です。細胞を染色したりして特徴を出すことで、細胞診断の診断力は非常に高いものになっています。

肺がんの場合は、痰の中にがん細胞が混じることがあります。そのため、痰を対象に細胞診断を行うことがあります。これは全く身体に負担がありませんし、外来でも検査することができます。

痰の中にがん細胞は混じらないが、画像検査(レントゲン検査、CT検査)で肺がんが疑わしい時に行うのが気管支内視鏡検査です。胃カメラのような細い管(内視鏡)を喉や鼻から肺に到達させるのがこの検査になります。この検査ではがんの存在しそうな部位を細いたわしのようなブラシでこすって細胞を採ってきます。この検査を行うとより効率的にがんの疑われている部位の細胞を採ってくることができますが、出血が起こることがあります。

組織診断

組織診断では、肺がんを疑う組織の一部を簡単な手術で切り取ってきて顕微鏡で調べます。組織診断では細胞診断よりも大きな組織を取ってくることになるので、がん細胞の見逃しが少なくなります。

組織を採ってくる方法は主に3種類あります。1つはVATSと呼ばれる胸腔鏡手術を行って肺の一部を切り取ってくる方法で、もう1つは気管支内視鏡検査で肺生検を行って肺の一部を切り取ってくる方法です。3つ目は、超音波(エコー)やCT検査を用いて体の外から針を刺して肺を生検する方法になります。

VATSは手術室で行う手術ですので、入院して行う必要があります。気管支内視鏡検査に関しても、出血や気胸(肺に穴が空いて空気が抜けてしまう状態)の起こる可能性がありますので、安全面の観点から入院して検査を行う場合があります。

肺がんの検査にかかる入院期間は?

組織診断を行う場合は入院して検査を行う場合が多いです。ブラシでこすって細胞を採る細胞診断の一部も入院して行います。検査に必要な入院期間は、検査を行う内容や医療機関の方針によって異なりますが、およその目安は以下の表になります。

【検査の方法と入院期間】

検査の方法

およその入院期間

気管支内視鏡による肺生検

2日

気管支内視鏡による擦過(細いブラシで擦る検査)

出血の多い場合2日

胸腔鏡手術(VATS)

7日

もちろん入院期間はいろいろな要素で変わります。重症の気胸が起こった場合は1-2週間の入院が必要になりますし、場合によっては手術によって治療することもあります。検査入院する前に、何日ぐらいの入院になりそうかを含め、主治医から入院に際しての注意事項を聞くようにしてください。

入院してから結果が出るまでの日数は?

病理診断では、顕微鏡検査を行って細胞の形や集まりを見てがんが疑わしいかを判断します。しかし、検査で採取した細胞や組織をそのまま顕微鏡で見てもよく分かりません。詳しく調べるためにいろいろな工夫がなされています。

その1つが染色という方法です。これは試薬と呼ばれる染色剤を用いて細胞の種類や性質に応じた色調のコントラストを作ることが目的になります。染色をすることで、より詳細に細胞の形や中身の変化が見えてきます。

また、免疫染色という方法もあります。これは細胞の持っているサイトケラチンなどのタンパク質を特殊な方法で染色して調べる検査です。免疫染色を用いることで、どういった細胞が元となっているがんなのかを調べることができます。

通常の細胞診であれば数日で細胞の形が悪性なのか良性なのかを評価することができます。しかし、免疫染色法を用いた場合は1週間ほどは必要となってきます。また、がんなのかどうかや、どういった細胞が元となったがんなのかが非常にわかりづらい場合は、順次必要な染色を追加して検査しますので、さらに時間がかかってしまいます。

肺がんの検査のために手術をする?

肺がんの検査のために手術をすることはあります。

肺がんを疑う組織の一部を採取して組織診断するためにVATSと呼ばれる胸腔鏡による手術などを行います。この検査では細胞診断よりも大きな組織を取ってくるので、がん細胞の見逃しが少なくなる利点があります。しかし、手術による身体へのダメージが大きいため、気軽に行える検査ではありません。

また、診断が確定していなくてもまず手術で腫瘍を取ってしまい、取り出した腫瘍の中にがん細胞があるかどうかを調べるという方法もあります。

「見つかりませんでした」と言われたら検査失敗なのか?

検査をしたけれど悪性細胞が見つからなかったからといって、必ずしも検査が失敗したというわけではありません。

実はがんを否定することは非常に難しいのです。病理診断で悪性細胞(がん細胞)が見えてくれば100%がんと診断できますが、悪性細胞が見えてこなかった場合は必ずしもがんではないと言いきれません。これはどういうことでしょうか?

がんの中は全て悪性細胞で埋まっているわけではありません。正常な細胞と悪性細胞が混在していることがほとんどです。そのため、がんの一部を検査で採ってきても、その中に悪性細胞が含まれていなければ一見がんではないように見えてしまうのです。

また、どんなに努力しても検査の精度は100%ではありません。検査の精度はがんの位置や大きさにもより、がんが肺の中心側にあったり大きかったりすると検査の精度が高いことが分かっています。

【がんの位置と気管支鏡検査の感度】

がんの位置

感度

中枢側

88%

末梢側

78%

( 2013 May)

【末梢側にあるがんの大きさと気管支鏡検査の感度】

がんの大きさ

感度

2cm以上

63%

2cm未満

34%

( 2013 May)

【VATSと局所麻酔下胸腔鏡検査の感度】

検査方法

感度

VATS(胸腔鏡手術)

100%

局所麻酔下胸腔鏡検査

94-95%

( 2013 May)

*感度:病気がある人が検査で異常を指摘される確率

本当はがんなのに検査で悪性細胞が見つからなかったことを偽陰性と言います。偽陰性ができるだけ起こらないように工夫が必要です。検査を複数回行うことで、偽陰性の起こる確率を下げることができます。

また、全身状態や画像検査、血液検査と併せてがんなのかどうかを総合的に判断することも重要になります。総合的な判断は非常に重要ですから、全身の状態や体調の変化をなるべく詳しく主治医に伝えるようにしてください。診断を詰めていく上で貴重な情報となります。

3. 肺がんの血液検査の値の意味は?

肺がんになると血液検査をしばしば行います。肝機能や腎機能のチェックといった通常の血液検査に加えて腫瘍マーカーも検査することになります。

肺がんは血液検査データだけで診断できる?

肺がんを血液データだけで診断することはできません。血液データのうち腫瘍マーカーなどをチェックすることで、全身の状態やガンの勢いを推測することはできます。しかし、がんを診断するには病理診断で悪性細胞を見つけることが必要です。病理診断を行わずに血液検査だけでがんは診断できません。

腫瘍マーカーの値が上がったら何が起きている?

腫瘍マーカーはがんになったときに血液中に増えやすい物質のことを指します。過去のデータからがんの種類ごとに腫瘍マーカーは分類されており、がん種類に対応した種類の腫瘍マーカーが上昇しやすいことが分かっています。

しかし、腫瘍マーカーを使った検査の精度は決して高いものではありません。がんであっても腫瘍マーカーは正常であることがあります。反対に、がんがないのに腫瘍マーカーが異常高値であることも度々起こります。そのため、腫瘍マーカーの値が上がっていたらがんの可能性があるかもしれないが、確定的ではないくらいに考えておくことが重要です。

腫瘍マーカーが活躍する場面は実は限られています。

  • 腫瘍マーカーを使うのに適している場面

    • 肺がん治療の効果判定の補助

    • 肺がんが再発していないかを診断する際の補助

    • 肺がんの種類がどうしても判断できない際の補助

  • 腫瘍マーカーを使うのに適していない場面

    • 検診でがんの有無を判断する

腫瘍マーカーは使うのに適した場面で使うべきですが、その価値が低い場面で使ってしまうと、どんな結果であろうと答えが出ないといった状態になります。残念ながら現段階の検査精度では、検診で腫瘍マーカーを使ってもほとんど意味がないということになります。

4. 検査で見つかりにくいパンコースト腫瘍とは?

肺尖部という肺の鎖骨よりも頭側にある部位にできた肺がんは、胸部レントゲン検査ではなかなか見つけることが難しいです。肺尖部にできた肺がんを特にパンコースト腫瘍(Pancoast腫瘍)ということがあります。パンコースト腫瘍は進行してからでないとなかなか見つけにくいので注意が必要です。

パンコースト腫瘍

パンコースト腫瘍が進行すると、周囲の血管や神経を巻き込んでダメージを与えていきます。そうして多彩な症状が出ることが知られています。以下がその代表になります。

  • 胸の痛み

  • 腕の痛み(特に内側)

  • 腕のしびれ

  • 腕の感覚が麻痺する

  • 肩の痛み

  • 片側のまぶたが落ちて目が細くなる(眼瞼下垂)

  • 片側の顔面の汗が出にくくなる

上の症状の中でもまぶたが落ちる症状と顔面の汗が出にくくなることをホルネル症候群(Horner症候群)と言います。これは交感神経がダメージを受けて麻痺してしまうことが原因で起こるのですが、肺がんでホルネル症候群が起こる場合は、背骨の横にある交感神経幹という神経にがんが影響を及ぼしています。特に肺尖部のパンコースト腫瘍ではホルネル症候群が起こりやすいことが分かっています。

パンコースト腫瘍の症状が出てきたときの治療

パンコースト腫瘍がもたらす症状を総じてパンコースト症候群といいます。また、症状が出るようになったパンコースト腫瘍のことを特に肺尖部胸壁浸潤癌(superior sulcus tumor)とも言います。

肺尖部胸壁浸潤癌は治療が難しいことが分かっています。手術が可能な場合は手術で治療するのですが、手術の前に腫瘍に対して化学療法と放射線療法を行うと治療成績が良いことが分かっています。特にリンパ節転移が腫瘍の近くにしかない場合(N0あるいはN1)は、手術の前に化学療法と放射線療法を行うことになります。