はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位。
29人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2018.07.12

Beta 肺がん(原発性肺がん)のQ&A

    肺がんの原因、メカニズムについて教えて下さい。

    肺癌はいまだ経過が不良の治りづらい癌の代表であり、増加しているのが現状です。肺の組織にできる悪性腫瘍を肺癌と総称しますが、主に「肺癌」と呼ぶのは肺自体にできた癌のことです。その他の臓器の癌が転移した転移性肺腫瘍や、血液の癌である悪性リンパ腫は区別します。

    癌の発生原因は完全に明らかにはなっていませんが、癌遺伝子・癌抑制遺伝子などの影響・喫煙などの環境の影響と様々な因子が絡み合って発症するため、完全に予防することは困難です。

    肺癌は顕微鏡で観察した組織の形で大きく2種類(小細胞癌・非小細胞癌)に分けられます。さらに非小細胞癌を3種類(腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌)に区別します。これら計4種類のいずれに該当するかで原因や経過、治療法が変わっていきます。内訳としては、小細胞癌は約15%で少なく、非小細胞癌が約85%と多くなっています。非小細胞癌の中では腺癌が最も多く、扁平上皮癌、大細胞癌と続きます。喫煙が肺癌の原因と言われますが,腺癌は喫煙との関連はなく、非喫煙者にも多く発症します。

    この中で喫煙と大きく関係しているのは、小細胞癌・扁平上皮癌で、喫煙との関連性が証明されていないのが腺癌・大細胞癌です。

    肺がんは、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    癌は日本人の死因第一位で、その中でも肺がんは増加の一途をたどっています。2010年厚生労働省人口動態調査によると年間死亡数は合計69,813人ですべての癌の中で最も多い状態です。肺がんの罹患率、死亡率を年齢別にみてみると、ともに40歳代後半から増加し始め、高齢になるほど高くなります。男女別では男性のほうが罹患率、死亡率ともに3倍以上多く、発生部位別死亡数は男性で第1位、女性で第2位となっています。

    肺がんと肺異常陰影の違いについて教えて下さい。

    肺がんは無症状で経過することが多く、発見契機はおもに定期検診や人間ドック、偶然行った胸部レントゲンなどです。「肺に影がある」と指摘された場合に「肺異常陰影」と診断されますが、これらがすべて癌ではありません。もちろん肺異常陰影の中には肺がんであることもありますが、あくまでも影絵なので「癌」であるかはわかりません。肺炎などの炎症や、その傷跡(炎症瘢痕)など肺の良性疾患の場合もあります。それらをより詳しく検査するために胸部CTを行いますが、それも詳細な影絵にすぎませんので確定は困難です。肺がんは必ず組織をとって検査して確定に至るものであり、肺がん検診で異常がでたら必ず医療機関を受診し、詳しく調べましょう。

    肺がんが発症しやすくなる病気はありますか?

    肺がんの中でも空気の通り道を塞いでしまう形態をとる場合、痰などがたまり肺炎になることがあり、これを閉塞性肺炎とよびます。肺炎の治療中に癌がみつかることもあります。

    また肺がんの原因の一つに喫煙が挙げられますが、長期間喫煙をつづけることで発症する肺気腫・慢性気管支炎を患っているケースも多くみられます。特に、肺気腫と間質性肺炎を合併する気腫合併肺線維症(CPFE:Combined pulmonary fibrosis and emphysema)では肺がんの合併頻度が高いと考えられています。

    肺がんは遺伝する病気ですか?

    一部の肺がんでは、発症に遺伝子が関与していることが明らかになっており、それを利用した治療も盛んに行われています。しかし、これらは直接的な遺伝性は証明されておらず、癌の性質の一部と考えて頂ければ良いと思います。

    一方、国立がん研究センターが行った研究(JPHC研究)では、家族に肺がん患者がいないグループと比べ、肺がん患者がいるグループでは、肺がんにかかる確率が2倍ほど高くなっており、家族内の肺がん患者の有無は重要な因子であることが示されました。ただし、上記の肺がんのタイプ毎にみると喫煙と関連の強い扁平上皮癌でその傾向が顕著であり、喫煙との関連性が否定できない結果でした。家族であれば喫煙を含めた生活習慣が似たり、受動喫煙の可能性も高くなることから一概に遺伝性があるとは言い難いと考えられます。

    つまり、肺がんは様々な要因で発症するため明らかな遺伝性はないと考えられますが、家族内肺がん患者の有無や家族内の喫煙歴がある場合は注意したほうが良いと言えます。

     

    肺がんは、どんな症状で発症するのですか?

    ほとんどの場合は無症状で経過します。太い気管支が癌で埋め尽くされれば呼吸困難や痰、咳、血痰などが出現することもありますが頻度は多くありません。「症状がないので検査をうけない」という方がよくいらっしゃいますが、症状が出る場合は進行しているケースが多いため、かならず検診などを活用し定期的に検査をしましょう。

    肺がんが重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    肺がんが重症化すると、気管支を閉塞し呼吸が苦しくなったり、低酸素血症を引き起こします。また肺を覆っている胸膜に転移すると癌性胸膜炎を起こし、大量の胸水が出現し、肺を押しつぶします。肺のリンパ管に癌細胞が詰まるとリンパの流れが滞おってしまい、癌性リンパ管症を起こし強い息苦しさが出てきます。

    また他の臓器(特に脳・骨)に転移することが多く、転移性脳腫瘍が大きくなれば麻痺や呂律の障害、歩行が難しくなったり、意識障害が出現します。脳や脊髄周囲の液体である髄液に転移すると癌性髄膜炎といい、頭痛や嘔吐、神経障害を引き起こします。転移性骨腫瘍では骨自体が脆くなるため骨折したり、骨を溶かすことで血中のカルシウムが上昇するため、嘔吐や意識障害が出現することもあります。

    肺がんは、どのように診断するのですか?

    ほとんどの場合は、無症状の時期に検診などで発見されます。つまり定期的に検診を受けていれば早期に発見できる可能性がありますが、受けておられない場合は症状が出現するほど進行した状態でみつかる場合が多いのが現状です。まずは胸部レントゲンや胸部CTで、異常な影があればさらに詳しい検査を行います。

    確定診断は異常陰影部分の組織検査で行います。肺の組織を取るには、気管支鏡とよばれる肺の内視鏡で採取するのが一般的です。近年は気管支超音波を用いて、レントゲンに映らないような小さな影でも組織を採取できるようになりました。極めて小さな影の場合や、できる場所に内視鏡が届かない場合は、全身麻酔下に手術で切り取って診断することもあります。

    また、癌の場合に上昇しやすい採血項目である腫瘍マーカー(CEA、CYFRA、Pro-GRPなど)を検査しますが、これらは高度に上昇していない限り参考程度と考えてください。

    肺がんの、その他の検査について教えて下さい。

    病変から癌の細胞が採取された場合には、全身の組織に転移していないか検査します。多くの場合は造影CTで胸部や腹部の臓器に転移していないか検査します。またガリウムシンチグラフィーを追加することで骨転移の有無も調べることができます。PET-CTという特殊な検査が行える施設では、多臓器や骨への転移を一度に調べることが可能です。これらの検査では診断できないのが脳転移であり、頭部MRIも追加で行うのが一般的です。

    肺がんの治療法について教えて下さい。

    肺がんの治療は、小細胞癌と非小細胞癌で大きく異なります。治療法は化学療法(抗癌剤)・放射線療法・手術を組み合わせて行います。詳細は非常に複雑であり、主治医と相談して決定しましょう。

    治療法の決定において重要なのは、患者さんの体力・日常生活を第一に考えます。治療に耐える体力が総合的にあれば、その上で癌の進行具合によって治療法の組み合わせを決定します。進行具合はステージ(Stage)で表し、最も初期をステージⅠ、多臓器への転移がある最も進行した状態をステージⅣと表します。進行具合に応じて、手術単独・手術+術後化学療法・化学療法単独を選択し、放射線療法の適応があればそれぞれに組み合わせます。

    残念ながら、手術適応のない肺がんは完治しません。治療は病変が進行しなければ効果があるとみなします。進行していく場合には違う薬に変えて治療を継続していきます。

    肺がんのその他の治療法について教えて下さい。

    治療継続ができないほど体力が低下している場合や高度に進行している場合は、症状の緩和のみをおこなうこともあります。呼吸の苦しさや全身のだるさなどを改善するために最も多く使用されるのは麻薬です。麻薬に対する世間のイメージが悪く、使用を躊躇される方にお会いすることもあります。しかし症状が緩和されることで食欲が回復し、体力維持が可能になることで今後の経過が改善するという報告もあり、痛みや呼吸の苦しさなどのつらい症状があれば、可能な限り早く使用することをおすすめします。

    肺がんでは入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    診断時の気管支鏡検査や画像検査自体は1泊2日-2泊3日程度の入院、もしくは外来でも可能です。

    手術を行う場合は、術後1-2週間程度は入院が必要になります。肺機能が低下している方や、その他の疾患を合併されている場合は、呼吸機能リハビリテーションのため手術前に数週間入院していただくこともあります。

    放射線治療・抗癌剤治療は外来でも継続可能ですが、重い副作用がでることもあります。抗癌剤は種類によってことなりますが、4-6週間程度を1つの治療期間(コース)として繰り返します。1コース目が問題なく行えるかどうか観察するため1ヶ月程度入院が必要になります。

    肺がんを含めた癌全体の治療方法は進化し続けていますが、治療関連死(治療自体が原因で起こる副作用などによる死亡)は1-3%程度存在します。安全に行うため、治療開始は入院で行う方がよいでしょう。

    肺がんに関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    • 肺がん診断前

    肺がんには喫煙が関係しないものも多く存在します。しかし、喫煙をしなければほぼ発症しない種類もあり、禁煙することが大切です。

    • 肺がん診断後

    治療には様々な副作用があります。使用する薬剤で起こりうる副作用の説明をうけ、気になることがあれば相談しましょう。肺がんの治療は癌細胞を少なくするために行いますが、少なからず正常の細胞にもダメージを与えます。免疫力も低下させてしまうため感染に気をつけて生活しましょう。治療中に発熱した場合は程度に関わらず、医療機関を受診しましょう。

    肺がんは完治する病気ですか?

    肺がんは手術で取りきれない限り、残念ながら完治する病気ではありません。非常に厳しい言い方をすれば治療目標は「延命」です。治療を行わなければ数ヶ月で亡くなる状態の方の、1-2年またはそれ以上の延命が期待できます。治療中には副作用や通院など様々な負担がありますが、その延命が患者本人にとって意味があるものであれば治療をすすめます。そうでなければ治療をしないというのも1つの選択肢です。

    近年、治療の進歩はめまぐるしく、その時点で最良の治療を行っていれば新薬が開発されるまで生存できる可能性があります。

    肺がんの治療が難しいと言われたが、どうしても治療してほしい。

    治療が困難と判断する場合は、次のような理由があります。1つ目は、本人の体力が低下しており治療に耐えれず、治療を行うことで死期を早めてしまう場合です。2つ目は治療を続けてきたが、もう効果が期待できる薬がない場合です。最後に、本人がこれ以上の治療を望まない場合も該当します。

    判断基準に用いるものは、過去に行われた膨大な臨床試験から、効果があるかないかを総合的に判断して決定します。その上で主治医の判断が関わってきます。もしも主治医の説明をうけても納得できない場合にはセカンドオピニオン(他院の医師にも説明をうけること)を行ってもよいでしょう。セカンドオピニオンをとることは患者の権利であり、それによって現在の主治医が不愉快になったり、治療が疎かになることはないはずです。患者本人とご家族が納得のいく治療法をみつけてください。

    肺がんの治療には、免疫療法などの保険適応外治療を行ってもよいか?

    免疫療法やビタミンC大量療法、温熱療法など様々な治療が、進行癌患者に効果があったとメディアなどで報道されており、それらの使用をご相談されることがあります。医師によって判断は様々ですが、一般的には効果が認められていないため、保険収載されていない治療法であり、こちらからすすめることはありません。しかし副作用が少ない治療であり、治療を行うことが満足感につながることもあるため行っても問題ありません。保険適応外治療を行う際は、必ず主治医に伝えて相談することが大切です。