はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位。
29人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2018.07.12

緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?

緩和(かんわ)ケアは死にゆく者の治療なのでしょうか?以前はある一定の時期がきたらがん病変の治療から緩和ケアへ移行するという考え方でしたが、現在では緩和ケアをがんの積極的治療と並行していくことが良いとされています。緩和ケアの考えかたと治療内容について考えていきましょう。

1. 緩和ケアとは

緩和ケアはどういったものなのでしょうか?まずはその考えかたを説明します。

緩和ケアの定義

WHO(世界保健機関)では、以下のように定義されています。

生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と家族の痛み、その他の身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早期に同定し適切に評価し対応することを通して、苦痛(suffering)を予防し緩和することにより、患者と家族のQuality of Lifeを改善する取り組みである

つまり、患者だけでなく家族などの周囲にいる人を全人的にサポートしていくという姿勢が根本になります。

緩和ケアの考え方

緩和ケアは抗がん治療(手術・抗がん剤放射線療法)と同時に行うことも多いのですが、どういった形で行うのが良いのでしょうか。

下に緩和ケアの考えかたの模式図を示します。

【緩和ケアと抗がん治療について】

緩和ケアと抗がん治療

上の図は、がん医療における抗がん治療と緩和ケアの役割を示したものです。緩和ケアは、抗がん治療ができなくなってから導入するものではありません。がんと診断されたときから必要であれば随時行っていきます。

抗がん治療に伴う副作用への対処や不安などの精神的問題にも積極的に対応することによって、患者さんの生活の質(QOL: Quality of life)を維持・向上させるために役立ちます。

緩和ケアってどんなことをするの?

緩和ケアの誤解

緩和ケアでは、身体的な苦痛や気持ちのつらさを少しでも和らげるためのサポートを行い、それぞれの患者さんが“その人らしく”過ごせるようにしていくことを重要視します。

緩和ケアは末期がんの治療という印象があるかもしれませんが、がんという病気の状態や時期に関係なく診断されたばかりの時期から療養の経過中を通じていつでも受けることができます。

がんの治療が始まると同時に、痛みの治療も行われるべきです。肺がんの場合は、手術の影響や腫瘍の増大、転移によって痛みが起こることもあります。また、抗がん剤や放射線療法における食欲不振や嘔気などの副作用が生じることもあり、それらの苦痛に対する治療も緩和ケアの重要な役割の一つです。

緩和ケアでは身体以外も治療します。例えば、がんと診断されたことは程度の差はあっても大きなショックとなり、ひどく落ち込んだり、落ち着かなかったり、不眠になったりすることもあります。このような心のつらさも支えるのが緩和ケアです。

こんなことがあったらいいなと思いませんか?

「痛みが和らいだことで同じ体勢でも痛みが強くならなくなり、放射線治療が可能になった。」

「夜眠れるようになったら、日中に笑顔が出るようになった。」

「終日ベッドでの生活だったが、苦痛が和らいで歩けるようになったことで、もう一度化学療法に通えるようになった。」

「レスキュー(痛いときに追加で飲む痛み止め)を自己管理することにより自己コントロール感を取り戻した。 」

「一日中ベッドの上から動けなかったのに、座位や端座位で過ごしたり、車いすで散歩、外出・外泊ができるようになり、退院につながった。」

緩和ケアを行うことによって、これまで諦めるしかなかった治療や療養の選択肢を増やすことができます。また、2010年の海外の文献では、早期からの緩和ケアを行うことによって、QOLがあがり生存期間が延びたという報告もあります。

2. 緩和ケアに対する考え方の道しるべ

がん患者さんご家族の特徴

現代の日本は、2人に1人ががんになる時代です。3人に1人はがんで亡くなっており、統計では死因の第1位の病気です。

がん患者さんは、痛み・だるさなどの様々な身体症状に加え、迫り来る死に対する恐怖や自分の人生に対する問い(生きる意味を考える、なにかがいけないからがんになったのか等)、大切な家族を失うかもしれない恐れなどを感じます。

また、がんと診断された患者さんの家族をはじめとする周囲の人たちも同じような気持ちを抱くことがあります。

QOLとその考え方

緩和ケアは、WHOの定義にもあるように、“QOLを支えるケア”と言えます。では、私たちの「QOL:生活の質・人生の質」は、どんなことで決まるでしょうか?

Aさんの考え方はこうです。

  1.  「子どもに迷惑はかけたくないわ(他者の負担にならないこと)」
  2.  「母として最期までしっかりしておきたい(役割を果たせること)」
  3.  「身の回りの整理をしておきたいわ(残された時間を知り、準備すること)」

上の3つを特に大切に考えていますので、これらを尊重することでAさんのQOLを保つことや向上させることができると考えられます。

一方、Bさんの考え方はどうでしょう。

  1.  「痛いのは絶対に嫌だ(苦痛がないこと)」
  2.  「自分の建てた家でずっと過ごしたい(望んだ場所で過ごすこと)」
  3.  「若者に子ども扱いされるなんて屈辱だ(自尊心を保つこと)」

上の3つをとても大切にしています。つまり、BさんのQOLを保つことや向上させることはAさんの場合とは意味が違うことがわかります。

このように、望ましい生き方をしてQOLを保つ方法は人それぞれで異なります。QOLは、多様で主観的な概念なのです。

日本人にとっての望ましいQOLはあるのか?

日本人の多くが共通して大切にしていること

この調査は、対象者が将来がんになったときを想像して「大切にしたいこと」を答えたものです。実際にがんになった場合には違う思いが出てくる可能性はあります。また、実際にがんになったときに「大切にしたいこと」を達成できているかどうかを調べたものではありません。

しかし、この視点に添った緩和ケアを行えば、患者のQOLが上昇する可能性は高いです。   

QOLのアセスメントの視点

QOLを考えるときは全人的な苦痛を和らげることを本筋として考え、以下の4つの視点で検討します。

  1. 身体面:痛み、その他の身体症状、日常生活動作の支障…
  2. 精神面:不安、いらだち、孤独感、恐れ、うつ状態、怒り…
  3. 社会面:経済的な問題、仕事上の問題、家庭内の問題、人間関係、遺産相続…
  4. 人生観の面:人生の意味への問い、価値体系の変化、苦しみの意味、罪の意識、死への恐怖、神の存在への追求、死生観に対する悩み…

これらをバランス良く考えて全人的な苦痛をとるようにします。

全人的苦痛=トータルペインの図

1人の人間として苦痛を抱えている患者さんを理解しようとするときには、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、人生観における苦痛という4側面からその苦痛を考えることが大切です。これらの苦痛は、相互に影響し合っており、全人的苦痛(トータルペイン)として患者の苦痛を捉え、緩和していく必要があると考えられています。

緩和ケアについて考える時のコツ

緩和ケアを受けるときや受けている間に肺がんの状況が悪化してきたときには、今のままで良いのか不安になることも多いです。ここでは緩和ケアを受けるときの考え方について述べていきます。

■考えたくないときは別に考えなくても良い

緩和ケアは強制的な治療ではありません。まだ状況を受け入れられていないときや自分にエネルギーがないときは、あれこれ考えることはできません。考えられないときに無理に考えなくても良いのです。

落ち着いてきて考える気力が湧いてきたら、緩和ケアをどうやって利用したいかを考えてみましょう。

■一人で考えない

一人で抱え込まずに、周囲の医療スタッフやご家族に相談することも大切です。人に相談することで気持ちも落ち着きますし、思いつきもしなかった答えが出てくるかもしれません。

■治療を受けることが納得できるように

納得できていない治療を受けることほどの苦痛はありません。本人の納得が最も大切です。考えてみたけれど緩和ケアを受けないとする決断も、一つの道として尊重されます。

療養生活のセルフケア

自宅で療養生活を送る場合、どういったふうにすると良いのか例を挙げます。簡単な工夫で、気分がやわらいだりすっきりしたりすることがあります。

  • リラックスを目的にときどき深呼吸、腹式呼吸をする
  • 音楽を聴く、テレビを観る、おしゃべりする、家事をする、趣味を楽しむ、ペットを飼う、植物を育てるなど、自分が好きな気晴らしをする
  • 散歩する、軽い体操をする、ヨガをするなど、無理のない範囲で軽い運動をする
  • 自分にとって快適な環境や寝具(ベッド、ふとん、まくらなど)で、ぐっすり眠る
  • 心身に疲れを感じたら、無理をしないで安静にして休息をとる
  • 凝りを感じるところを軽くマッサージしてもらったり、手を当ててもらう
  • カイロ、電気毛布、湯たんぽ、温めたタオルなどを使って、だるさや不快感のあるところを温めてみる
  • 笑ったりぼーっとしたりして気分転換し、ストレスを発散する

何をすると気持ちが楽になるかは人それぞれ変わってくるのですが、自分のやりたいことや人に認められるようなことをすることが最も良いかもしれません。

3. 家族や友人として患者さんを支える方々へ

家族や友人は患者さんにとって大切な「応援団」です。とくに心の緩和ケアの面では、家族や友人が大きな力になります。

一方で、家族や親しい友人ががんになったとき、どう接したらいいかわからなくて悩む人もいます。どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。

患者さんを支えるために気をつけること

気持ちの不安定な患者さんをどう支えたら良いか、肺がん患者と多く接している医師や看護師でもわからない場面もあります。苦しい状況に立たされたときに人間の気持ちがどう動くのかは千差万別だからです。

どういった形で患者と接するのが良いのか考えてみましょう。

■患者さんの思いを知る

がん患者さんの多くは、「病気になる前と変わらず普通に接してほしい」と思っています。一見そうでないように見えても、本当は普通に接してもらいたいのが急に受けたストレスによってかき消されていることも多いです。患者本人の思いを知ることを優先してください。

■何でも話せる人がいると、患者さんの心は軽くなる

話を聞いてくれる人が一人でもいると患者の気持ちは軽くなります。気兼ねなく話せる相手の存在はとても大切ですので、思いに耳を傾けましょう。

■言葉で伝えなくてもいい

患者の中には、たとえ相手が家族であっても、面と向かって話をするのが得意ではない人、口下手な人もいます。無理にコミュニケーションを取ろうとせず、見守ることも大切です。「私はあなたのことを大事に思っています」という思いの伝え方は、言葉だけではないのです。

■支え方は人それぞれ

家族であれ友人であれ、患者さんに手をさしのべる方法や支え方は人それぞれです。話を聞く、体をさする、足を洗う、テレビを一緒に見る、読みたい本を探す、食事まわりの世話をするといったことを通じて、家族や友人それぞれが「得意分野」で支えることが緩和ケアの根底にあるものです。

■支える側も無理をしない

周囲の人が張り切って支えていると、「家族に迷惑をかけている」「こんなにお金がかかってしまって」と申し訳ない気持ちになり、それがストレスになる人もいます。心の重荷は分け合うことが大切です。

■自宅療養がベストとは限らない

自宅療養がかえって負担になってしまい、病院で療養に集中したほうがよい場合もあります。生活の状況と本人の意志を踏まえて、主治医や看護師やソーシャルワーカーと相談してみてください。

■自分の考えを押しつけない

良かれと思って行う「お節介」が患者さんを困惑させて、療養に悪影響を及ぼすことがあります。患者さんが自分で考えて選んだことを優先してあげることが、緩和ケアの最も大切な要素です。

これらはすべてが正解というわけではありません。とはいえ、当てはまることも多いので、もし患者との関係がうまくいかなかったり、停滞した雰囲気を打開できないような場合は参考にしてみてください。

がんの告知について

かつての日本では、がんの告知は患者本人よりも先に家族のみに行われるのが主流でしたが、現在では本人に伝えるべきと考えられることが多くなっています。人間には「受け入れる力」があります。最近の調査でも、がん患者さんのほとんどが「自分のがんを知ってよかった」と回答しています。

がんという病名を伏せていても、患者さんの体調の変化を隠すことはできません。少しずつ「何か隠しているのでは?」と不安になり、患者さんはかえって孤独になってしまいます。

身近な人を信じられないことは、患者さんにとって大きなストレスとなります。また、病気を隠すことは家族にとっても大きな精神的負担となります。

「とても気弱な人だから、がんの告知を受け止められるでしょうか…」と悩む家族もおられます。心配のある方は、がん患者さんの精神状態をよく知る専門家に相談しましょう。

がん患者同士の「つながり」、患者会や患者サロンを活用

現代社会においては、世の中の大量にある情報の中から、本当に役立つ情報を集めることが極めて重要です。

がん治療に関する専門的な情報については、主治医をはじめとする医療の専門家の意見を仰ぐことが重要です。また、患者さん同士のネットワークを利用し、他のがん患者さんと交流することで、実感に基づく情報を得られることがあります。

■患者会や患者サロンの特徴

本人や家族同士ががんという病気にかかった実感を共有できるのが、最大のメリットです。自分と似た年齢や症状の人がいると、抱えていた悩みを分かち合うことができます。「自分だけじゃないんだ」と思えることは大きな精神的支えとなります。

また、療養の参考になる体験談を聞いたり、男性や女性ならではの悩みについても相談できます。

さらに、生活上のアイディアや情報を交換できることもあります(医療用かつら、リラックス法、食事の工夫など)。

家族にとっても有益な場所となる場合があり、家族が患者さん本人には聞きづらい情報も集めることができます

■患者会や患者サロンはどうやって見つけたらよいか?

患者会のなかには特定の治療やサプリメントの宣伝を目的としたものもあるので、インターネットなどで探す場合には注意が必要な場合もあります。迷ったら、医療機関の相談窓口に問い合わせてみましょう。

インターネット上の情報を利用する

インターネット上にも多くの医療情報が存在します。しかし、その多くが推測や憶測を超えないレベルの内容です。商業目的のものも多く、うっかり変なサイトを信じてしまうと、間違った知識が身についたりお金を無駄に費やすことになってしまいます。

それではインターネット上の情報をどうやって選別したら良いのでしょうか?

  • サイトを主治医に見せてみる
  • サイトの評価をネットで見てみる

この2つをやってみると答えが出てくるかもしれません。

サイトにある適当な情報を鵜呑みにして損をするのは患者です。サイトの情報主は、どんなにあなたが損を被っても補償はしてくれません。インターネット上の情報は慎重に選んで利用してください

4. 難しい局面ではがん患者の周囲の人はどう考えたら良い?

がん患者が葛藤を抱えることは言うまでもないですが、その家族や周囲の人にも複雑な思いが襲ってきます。

それをどういった形で対応するのが良いでしょうか?

治癒が目標にできなくなったとき

もはや抗がん治療の光が見られなくなったときには、本人の失望や不安の感情は誰もが感じる通常の感情です。医療スタッフやご家族は「大丈夫」「心配いらない」など安易に励まさず、その気持ちを受け止めて声をかけることが大切です。いつもの自然な会話から始めることでお互いのいつもの自然な関係が思い出されるかもしれません。

治療の望めない状況でなにをしようか患者を含めて話す時のコツは以下になります。

  • 考えられる選択肢のメリット・デメリットを挙げ、セカンドオピニオンなど「納得して決めた」と思えることを目標にして話し合う。
  • 患者さん本人の価値観や今までの生き方を大切にする。
  • 説明が足りないために誤解してしまう場合や、得も言われぬ不安に対する反応として、さも病気を理解していないかのような反応(否認)が生じる場合にも、無理に「納得をしよう(させよう)」とする必要はない。

人の感情は様々なのでやってみないと分かりませんが、これらを踏まえて接するようにすると良いかもしれません。

余命について

周囲の人々は、患者さん本人が余命について心配していることに対して理解するよう努め、声をかけることが大切です。

逆説的な話なのですが、患者さんが余命について質問したとき、余命そのものを知りたいわけではないこともあります。まず、余命に関する質問をした理由を探ることも必要です。

余命の長さそのものに関心がある場合、患者本人はどれくらいと予期しているのか、どの程度正確に知りたいのかを伝える(尋ねる)ことも必要です。はっきりした見込みを知りたいと希望している場合でも、余命はある程度幅をもった期間で提示されることが多く、正確な予測は不確実なものであることは知っておきたいです。

5. 緩和ケアについての誤解

緩和ケアは以前の日本では死の近い人が受ける治療と思われていました。今でもまだそういった風潮は一部に残っていますが、少しずつその本質が理解されつつあります。

よく出てくる誤解について説明します。

誤解1:「緩和ケアは終末期になって行うものですよね?」

緩和ケア=ターミナルケア(終末期医療)と思いこんでいる人がいます。現在では、治療の初期から痛みやつらさをやわらげるために緩和ケアが導入されています。痛みやつらさをとることは、抗がん治療をうまくサポートできます。

誤解2:「緩和ケアにはモルヒネなどの麻薬を使うと聞きました。麻薬を使うと人格が崩壊するのではないかと心配です。また、だんだん効かなくなる、意識がなくなるという話も聞いています」

「麻薬」という言葉に犯罪的なイメージがあるせいか、オピオイド(医療用麻薬)は怖いものだと思いこんでいる人がいますが、決してそんなことはありません。医療で使う麻薬は、犯罪で使われるものとはまったく別ものです。医療用麻薬は国の管理下でつくられた医療目的の薬です。また、利用する場合も、専門医師が適量をコントロールします。専門医師の管理の下で痛みの治療に使っている限り、効かなくなったり意識がなくなることもありません。安心して使ってください。

誤解3:「痛みはがんと体がたたかっている証拠。だからがまんすべきです、と言われたのですが」

こうしたまったく根拠のない主張をしている民間療法や代替療法があるようです。しかし、このような考え方に科学的な裏付けはまったくありません。痛みをがまんすることは、患者さんの苦しみを増すだけです。治療の助けにならないどころか、体調に悪影響を与えるばかりです。

誤解4「たくさんの薬を飲むことに抵抗があります。余分な薬は飲みたくありません」

緩和ケアの専門医師の指導があれば、体への負担を最小限にして適切に痛みを治療することができます。

実際にこの薬はどういった効果があって、どういうメリットがあるのか、副作用と天秤にかければ本当に飲むべきなのか、主治医や薬剤師に聞いてみるとより理解しやすくなります。

6. 緩和ケアを受けられる場所

緩和ケアを受けるには、大きく分けて3つの方法があります。

がんの治療中にうける:緩和ケアチーム

緩和ケアチームによる緩和ケアは、入院時も通院治療時も利用できます。全国のがん診療連携拠点病院には、必ず緩和ケアチームがあります。

痛みやつらさをやわらげるために、療養生活の初期から緩和ケアチームをぜひ利用してください。

痛みを専門に治療する医師はいますか?」「緩和ケアを受けられますか?」と主治医や看護師に、または相談支援センターに相談してください。もちろん家族の方が問い合わせてもかまいません。

緩和ケアチームの役割

がんはとても複雑です。その上、それぞれの患者さんを取り巻く状況に応じて、異なる対応をしていく必要のある病気です。

緩和ケアチームは、がんの苦痛に多面的に対処するために、次のようなメンバーで構成されています(病院によって少しずつ異なります)。

  • 体の症状を担当する医師:痛みや体の症状を緩和する治療を担当します。
  • 理学療法士など:患者さんの自立を助け、日常生活の維持のためのアドバイスや治療の補助をします(作業療法士や言語聴覚士などがチームに参加することもあります)。
  • 心の症状を担当する医師:気分の落ち込みや心のつらさを緩和する治療を担当します。
  • 管理栄養士:食生活にかかわる問題に対応したり、食事の内容や献立、味つけの工夫などについてもアドバイスします。
  • 看護師:患者さんや家族のケア全般についてのアドバイスをします。転院や退院後の療養についても相談にのります。
  • 臨床心理士:心のつらさを緩和するカウンセリングを行います。家族のケアも担当することがあります。
  • 薬剤師:患者さんや家族に薬のアドバイスや指導を行います。
  • ソーシャルワーカー:療養に関わる経済的問題、利用できる制度、仕事や家族の問題、社会生活や療養先などに関してアドバイスを行います。

緩和ケアチームの費用

緩和ケアチームがかかわる診療は、医療保険の対象となっています。どんな治療をするかによって請求額は異なりますが、多大な費用負担になることは少ないです。

入院して専門的な緩和ケアを集中的に受ける:緩和ケア病棟

苦しみや悩みを完全に解消することはできなくても、最大限やわらげることに重点を置いたケアができる場所が、緩和ケア病棟(ホスピス)です。緩和ケア病棟では、患者さん本人と家族のQOL(生活の質)の改善をめざして、さまざまな専門家とボランティアがチームとしてケアを提供します。

■緩和ケア病棟が提供するケア

緩和ケア病棟では、次のようなケアや支援が行われます。

  • 体の痛み、心の悩みやつらさをできるかぎり緩和するケアを提供します。
  • 趣味の活動:ボランティアなどの協力のもと、音楽を聴く、生け花、指編み、絵、折り紙など、趣味を楽しむための支援を行います。
  • イベントやレクリエーションの提供(お花見、七夕、クリスマスなど)により、季節を感じて過ごすことができます。
  • 入浴や散髪などの身だしなみの手入れ、日常生活の介助をします。
  • 食事や栄養の相談:管理栄養士のアドバイスをもとに、自分でキッチンで調理を行うこともできます。
  • 患者さんや家族がくつろいで日常的な時間を過ごすことができるデイルームがあります。また、面接時間の制限がゆるやかなので、家族や大切な人とゆっくり時間を過ごすことができます。家族が泊まるための家族室がある施設もあります。

■緩和ケア病棟・ホスピスの種類

病院内に緩和ケアのための病棟や施設を備えているところもあれば、施設全体が緩和ケアのみを行う完全独立型のホスピスもあります。自宅など、病院以外の場所でケアを行う「在宅ホスピス」という方法もあります。

緩和ケア病棟(ホスピス)については、相談支援センターに相談するほか、以下でも情報を手に入れることができますので参考にしてください。

日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団 http://www.hospat.org

日本ホスピス緩和ケア協会 http://www.hpcj.org

■緩和ケア病棟を上手に利用するために

欧米では緩和ケア病棟(ホスピス)という施設がよく知られているのにくらべて、日本ではまだ認知度が低いようです。

そのため、患者さんや家族が緩和ケア病棟やホスピスについて知る機会がなくて、知ったときにはベッドの空きがなくてすぐに入院できなかったり、自宅の近くの施設に入ることができなかったりすることもあります。また、患者さんの容態がかなり悪くなってしまっていると、緩和ケア病棟に入っても、思うように「人生の仕上げ」を行えないケースもあります。

がん治療の初期から、緩和ケア病棟(ホスピス)についての情報も集めておくことをおすすめします。

■緩和ケア病棟の費用

たいていの緩和ケア病棟は室料を除いて定額制です。施設によって費用は変わってくるので、一度尋ねてみると良いです。

差額ベッド代不要の個室がある場合も多く、全室個室の施設のほか、2人部屋や多床部屋がある施設もあります。

自宅で療養中に受ける:在宅ケア

自宅や現在住んでいる場所で、緩和ケアを受けながら療養を続けることもできます。

在宅ケアのメリットは、心の落ちつく環境で、自分のペースで日常生活を送ることができるという点です。住み慣れた家で療養することで、心理面のみならず身体面にもよい影響が現れることがあります。

たとえば、通院治療中や、治療と治療の間の療養期間に、かかりつけ医から緩和ケアを受けることもできます。手術や抗がん剤、放射線療法などの治療が一段落し、通院間隔が長くなった場合も、在宅で緩和ケアを受けるのに適した時期です。がんの治療終了後は、緩和ケアのかかりつけ医ががん治療の担当医と連絡を取りながら、患者さんが快適に自宅で療養できるように緩和ケアを担当します。

また最近では、放射線や抗がん剤の通院治療が多くなりました。こうした治療を受けた後に在宅ケアを利用する人も増えています。

■在宅ケアを利用するには?

利用できる在宅ケアの内容は、地域によって異なります。また、在宅ケアができるかどうかは病状や居住環境によっても左右されます。次に述べるチェックポイントを確認しながら、準備を進めましょう。

在宅で緩和ケアを利用する際のチェックポイントの中でも大きなポイントは2つあります。

  1. 患者さん本人が在宅ケアを希望しているのか?
  2. 家族も在宅ケアで支えたいと思っているのか?

この2つの条件が揃っていたら、以下のポイントを確認しましょう。

  • 在宅ケアができる居住環境なのか?
  • 患者さんを支える家族のサポート体制は整っているのか?
  • 問診療が可能な医院(在宅療養支援診療所)に連絡をしたか?
  • 訪問看護ステーションは決まっているか?
  • 体調が急変したときの連絡体制はどうなっているのか?
  • 必要時の入院先は、治療を受けた病院か、緩和ケア病棟か、あるいはそれ以外にするのかについてすでに検討しているか?

これらのポイントを踏まえて、どういった形の緩和ケアを受けるのが最も良いのか、在宅ケアを受けた方が良いのかを考えていきます。

また、在宅ケアを受けたくてもどうやって受けたらよいのかが分からない人もいると思います。その場合はどこに相談したらよいのでしょうか?

■在宅ケアの相談窓口は?

在宅ケアを利用したいと思ったら、相談支援センターや地域連携室、地域包括支援センターなどに相談して、在宅ケアスタッフの派遣を要請する拠点センターの紹介を受けてください。

■在宅ケアは柔軟に利用できる

在宅ケアと入院による緩和ケアは、患者さんや家族の状況にあわせて切り替えることができます。また、在宅ケアは独り住まいの人でも利用できます。

■費用について

一部に保険が使えないサービスもあり、追加の費用負担が発生することがあります。必要なサービスは患者さんによって異なります。ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談しましょう。

■家族の方へのメッセージ:「どういった状況であれ無理しないことが大切です」

在宅ケアには家族など、まわりの人の理解と協力がとても大事です。病院では受け身になりがちですが、自宅では自主的に治療に取り組めることもあります。

また、自宅にいることが精神的なケアにつながることもあります。見慣れているものに囲まれてリラックスすることは、患者さんの体調にもよい影響を与えます。

一方、在宅ケアを受けることで、患者さんのほうが「家族に迷惑や負担をかけているのではないか」と悩まれることもあります。そうしたときには遠慮をせずに、訪問看護師などに相談してみてください。また、介護保険を使った短期入院を利用できる場合もあります。

自宅では対応が難しい症状が出たり入院が必要になったりした場合には、無理をしないで在宅ケアの担当医師に伝えましょう。がんの療養期間中は、患者さんの病状も、家族の状況も変化していくのは当然のことです。

大切なのは在宅であれ入院であれ、療養の内容を充実させて自分らしく過ごす時間を確保することです。

7. がんと診断された患者さんとそのご家族に知ってほしいこと

がんと診断された場合には、患者やその家族に大きなストレスがかかります。そのため、冷静でいられないことがほとんどです。ここでは、そういった場面をどういった心持ちで臨むべきかについて説明していきます。

病気が分かったとき

がんと診断された時、こんな気持ちになりませんでしたか?

「頭が真っ白」

「何も考えられない」

「本当にがんなの?」

「どうしたらいいの?」

「どんな治療があるの?」

「……」

病気の診断や治療の選択のときに主治医と話し合える関係が一番ですが、 初対面のときにはそんな余裕もなかったのではないでしょうか?

節目の面談(治療を評価するためのCT検査の後など)には、家族など安心できる人と一緒に聞いたり、 自分の気持ちを伝える技を持っていたりすると、上手く立ち向かえるようになることがあります。

医師が診断や病状の話をするとき

医師もできれば“治る”“良くなる”と言いたいし、“治してあげたい”、“いい治療をしたい”、“自分の持てる技術を駆使して治療できないか”…といろいろ考えています。

しかし、がん治療にはいろいろなつらさが付きまとうため、医師も悪いニュースを伝えることに身構えているのです。

一方で、職業人として、「正確に伝えなくては」という気持ちも強く、お互いに緊張して上手く伝わらなくなることもあります。

それを克服するために、医師もコミュニケーションを取ろうと努めています。

8. 面談のとき気を付けること

コミュニケーションとは、一方的ではなく双方向でなされるものです。

円滑なコミュニケーションを図るには、お互いに思いを伝え合うことや信頼し合えることが大切です。医師との面談の場面では、こんなことに気を付けてください。

つらさは言わなきゃ分かってもらえない

肺がんの「痛い」「苦しい」「吐き気が辛い」…人によってつらい症状は千差万別です。また、病気や治療や耐えうる力も様々です。体がつらいと治療を続ける根気も奪われてしまいますので、主治医に、「つらい」ことを伝えてください

どこがどのくらいつらいのかを一番分かっているのは自分自身です。つらさにあった対処を考える為にも、できるだけ具体的に「伝える」ことが重要です。

困っていることを上手に伝えるには?

言葉使いや態度や関係性によって、同じことを言っても伝わりやすさが変わります。日頃からコミュニケーションをとっていて自分の癖や特徴を知っている人には伝わりやすいです。

日ごろからちょっとしたことでも主治医とよく話したり、友好的な言葉遣いや態度を見せるようにするとよいでしょう。

コミュニケーションでちょっと得する作戦

お互いに同じように分かる言葉で表現することで伝わりやすくなります。例えば、「いつもの痛みを10としたら今日は7くらいです。」のように数字で言うと伝わりやすいです。

また、症状を明確に表現することも大事です。例えば、「いつ、どこで、どこが、どんなふうに」や「痛い、苦しい、むかむかする」といった表現の仕方です。

困っているときは、自分の思っていることやお願いしたいことを明確に伝えた方が良いです。「痛みをとりたい。」や「吐き気をとりたい。」といったように希望を端的に伝えると分かってもらいやすいです。また、受診する前にメモに書いておくと忘れにくいです。

味方を見つけましょう

肺がんの症状は強く治療もしんどいですので、日頃から味方を作ることが大切です。味方はあなたのことを見ていますので、困ったときには助けてくれますし、いつもと違うことにもすぐに気づいてくれます。味方になってくれる人は、実はいろいろなところにいます。

  • 病院での味方
    • 主治医、病棟や化学療法室の看護師・薬剤師、がん相談支援センター、MSW(メディカルソーシャルワーカー) 、医療相談室
  • 自宅での味方
    • 家族、パートナー、友人、理解してくれる人
  • 職場での味方
    • 同僚、上司、産業医、産業保健師、社会労務士
  • 地域の味方
    • 地域包括支援センター、区役所(地域によっては、保健所などに相談窓口がある場合があります)

味方をうまく見つけることで、QOLは格段に上がります。

9. 緩和ケアで使う薬について

がん患者が抱える痛みは、単に体の疼痛だけではなく、精神的(心理的)苦痛、社会的苦痛、人生観における(魂の)苦痛を含めた全人的な痛みです。

薬による疼痛緩和において特に重要な役割を果たしているのがオピオイドという薬です。ここではオピオイドを中心に、がん疼痛緩和に関わる薬をみていきます。

モルヒネなど疼痛緩和で使われるオピオイドとは?

「オピオイド」とは、中枢神経(脳や脊髄)や末梢神経に存在し、痛みに深く関わるオピオイド受容体に作用する物質の総称です。以前はオピオイド=麻薬というイメージもありましたが、麻薬ではないオピオイドもありますし、何より「オピオイド」という言葉が分子生物学的用語であるのに対し「麻薬」は社会的用語であるという違いがあります。

疼痛の重症度が比較的軽度である場合、NSAIDs(エヌセイズ)やアセトアミノフェンといったオピオイドではない鎮痛薬が検討されることもありますが、これらの薬は鎮痛効果に限界があるとされ、中等度以上の強さの疼痛にはオピオイドの使用が推奨されています。

現在、がん疼痛の緩和ケアで使われている主なオピオイドはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどです。これらのオピオイド(主に強オピオイド)は一般的に有効限界がないと考えられています。耐性が生じた場合などを除けば増量することによりその効果が高まる傾向にあります。

オピオイドによる疼痛緩和では、毎日決まった時間に使う薬と突発的な痛みのときに使う薬があります。

毎日決まった時間に使う薬の多くは痛みをまんべんなく抑えるように鎮痛効果が比較的持続するように造られている薬(徐放性製剤)です。

仮に痛みを波で表現するとしたら、多くの痛みはこの徐放性製剤のオピオイドが防波堤の役目を果たしブロックしてくれます。しかし時としてこの防波堤を越えるような強い痛みがあらわれる場合があります。この突発的な強い痛み(突出痛)に対して防波堤を一時的に高くするために使われるのが、速放性のオピオイド製剤(オプソ®内服液、オキノーム®散、アブストラル®舌下錠、イーフェン®バッカル錠など)で、この突発的な強い痛みに対して薬を使うことをレスキュー・ドーズ(以下、レスキュー)といいます。

患者によっては痛みを我慢することに慣れてしまっている場合もありますが、レスキューへの理解を深め、適切に使用することで日常生活の質の維持などが期待できます。

もしもレスキューを使う回数が多くなるようなら、定期的に使っている徐放性製剤の増量を検討し普段の防波堤の高さを引き上げることも考慮します。オピオイドの使用中は痛みの有無や痛みの程度などのほか、レスキューをどのくらい使ったのかを医師や薬剤師とこまめに話すことも非常に大切です。

レスキューは突発的な痛みに使うほか、タイトレーションといって低用量から開始したオピオイドを鎮痛効果や副作用などを観察しつつ、痛みをとるために必要な量まで増量(副作用の度合いによっては減量)していくときに重要な役割を果たしています。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルについて

がん疼痛緩和ケアにおけるオピオイドで中心となっているのは、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルです。オピオイド鎮痛薬にはこの3種類のほかにも、メサドン(商品名:メサペイン®)、コデイン(コデインリン酸塩)、トラマドール(商品名:トラマール®など)などの薬がありますが、以下ではよく使われる3種類を中心に説明します。

■モルヒネ

モルヒネはケシを原料とするアヘンの主成分として初めて単離されたアルカロイド(アミノ酸や核酸など別のカテゴリーに入る生体分子を除く、窒素を含む有機化合物)です。

緩和ケアにおいては、オキシコドンやフェンタニルが登場し主流となってきてはいますが、内服薬(錠剤、散剤、液剤など)、坐剤、注射剤といった剤形があり、患者の状態に合わせて種々の投与経路(経口、静脈内、直腸内、皮下、硬膜外、くも膜下腔内)によって使用できるメリットなどがあります。

またオピオイドスイッチング(オピオイドローテーション)においてモルヒネはオキシコドンやフェンタニルの効力の目安にする換算比の指標にもなっています。例として、一般的に「モルヒネ内服1に対してオキシコドン内服2/3」などの換算がなされます。

副作用としては、オピオイド鎮痛薬に共通する吐き気、便秘、眠気、せん妄、幻覚、呼吸抑制、口渇、掻痒感、排尿障害のほか、肝機能障害などにも注意が必要です。中でも便秘は一般的にオキシコドンやフェンタニルと比べてモルヒネのほうがあらわれやすいとされ注意が必要です。また腎障害がある場合には活性代謝物の蓄積により眠気やミオクローヌスなどの副作用があらわれやすくなる可能性もあります。

モルヒネ製剤では内服の徐放性製剤(通常、毎日決まった時間に使う薬)であるMSコンチン®、カディアン®、ピーガード®、パシーフ®などやレスキュー(突出痛やタイトレーション)で使うオプソ®などの製剤があります。また内服(経口)以外の投与経路として坐剤(アンペック®)や注射剤もあります。

■オキシコドン

オキシコドンはモルヒネ製造過程で得られるテバインという物質から作られるオピオイドで、モルヒネに類似した化学構造を持っています。

オピオイドスイッチングで目安となるモルヒネとの換算比は飲み薬であれば「モルヒネ内服1に対してオキシコドン内服2/3」と考えられています。

オピオイド鎮痛薬に共通する吐き気、便秘、眠気、せん妄、幻覚、呼吸抑制、口渇、掻痒感、排尿障害のほか、肝機能障害やアナフィラキシーなどにも注意が必要とされています。

便秘は一般的に、モルヒネよりあらわれにくく、フェンタニルよりあらわれやすいと考えられています。

オキシコドン製剤では内服の徐放性製剤(通常、毎日決まった時間に使う薬)としてオキシコンチン®などがあり、レスキュー(突出痛やタイトレーション)で使うオキノーム®があります。また2012年には注射剤のオキファスト®が加わり、経口以外の投与も可能になっています。

■フェンタニル

フェンタニルは鎮痛効果としてはモルヒネに類似していますが、静脈内投与した場合の鎮痛効果はモルヒネの約50倍から100倍と考えられています。

フェンタニルは皮膚からの吸収が良好で、がん疼痛の緩和ケアでよく使われているのはパッチ剤(貼付剤)になります。

オピオイドスイッチングで目安となるモルヒネとの換算比は「モルヒネ内服1に対してフェンタニルパッチ100」などの指標があります。実際の製剤に置き換えると、モルヒネ内服20〜30mgに対してデュロテップ®MTパッチ(3日に1枚タイプ)の2.1mg、ワンデュロ®パッチ(1日1枚タイプ)の0.84mg、フェントス®テープ(1日1枚タイプ)の1mgがほぼ同等と考えられています。

フェンタニルに関してもオピオイド共通の吐き気、便秘、眠気、せん妄、幻覚、呼吸抑制、口渇、掻痒感、排尿障害などに注意が必要です。また不整脈期外収縮、興奮、筋硬直などはフェンタニルでは特に注意が必要とされています。

便秘は一般的にモルヒネ、オキシコドンよりもあらわれにくいとされ、眠気などの行動抑制や呼吸抑制は一般的にモルヒネやオキシコドンよりおこりやすいと考えられています。臨床においてはフェンタニルは眠気などがモルヒネやオキシコドンより少なかったという報告もあります。投与経路や個体差などによっても、副作用の発現頻度や強度に相違があらわれると考えられています。

フェンタニルは貼付剤の登場後しばらくは注射剤を除けばレスキュー・ドーズ用の製剤がありませんでした。代わりにオキシコドン製剤のオキノーム®などが使われていました。今はアブストラル®舌下錠やイーフェン®バッカル錠といったレスキュー(突出痛)用の速放性製剤が加わりフェンタニルに絞った緩和ケアも実施しやすくなりました。

オピオイドには「痛み」だけでなく「息苦しさ」にも効果あり?

オピオイドの副作用には少なからず呼吸抑制がありますが、これを逆に「がんによる息苦しさ」を緩和するために利用する場合もあります。

がんの治療中に息苦しさ(呼吸困難)があらわれることがあります。

肺がんや肺転移が大きくなったり、胸水が増えたり、気道が狭くなることで呼吸困難があらわれることがあります。また、放射線療法の後の放射線肺臓炎という炎症が原因となったり、体力や筋力の低下によるもの、不安などの心理・精神的なものが原因となる場合もあります。

これらが要因で「息苦しさ」があらわれ、それを我慢していると日常生活に影響を及ぼし生活の質(QOL)を下げてしまう可能性もあります。酸素の不足による息苦しさであれば酸素吸入によって改善する方法などもありますが、がんの息苦しさには酸素飽和度とは相関しないものも多くあります。

モルヒネなどのオピオイドには咳を抑える効果、呼吸回数を抑えて酸素の消費量を少なくする効果、呼吸をコントロールする感受性を鈍くして息苦しい感覚を和らげる効果が期待できるとされています。実際に、ステロイド抗不安薬などと並びオピオイドががんによる息苦しさを改善する選択肢となっています。

オピオイドによる副作用とその対処とは?

オピオイドは痛みに深く関わるオピオイド受容体に作用することで高い鎮痛効果をあらわします。その一方で中枢や末梢に存在するオピオイド受容体に関連する症状が副作用としてあらわれる場合があります。もちろん、がん疼痛へのケアは非常に大事ですが、オピオイド使用による副作用に対するケアもとても大切です。

便秘

便秘に対してはセンナ(センノシド など)、酸化マグネシウム、ビサコジル、ラクツロース、ピコスルファートナトリウムなどの薬(下剤)を使います。薬によっては錠剤、散剤、水剤、坐剤などの剤形があり、嚥下状態などに合わせた薬が選択されます。薬以外には水分や食物繊維の摂取、可能であれば適度な運動などにより便秘の改善を促します。

オピオイドによる便秘の主な要因の一つに、腸管のμオピオイド受容体への作用による腸の活動低下があります。近年ではμオピオイド受容体へ拮抗する作用をあらわす薬の開発が進んでいます。ナルデメジンという末梢性μオピオイド受容体拮抗薬などが今後承認を受け、便秘改善の選択肢になると期待されています。

■吐き気(悪心)

オピオイドによる吐き気(嘔気)には通常、制吐薬で対処します。プロクロルペラジン(商品名:ノバミン®)、メトクロプラミド(商品名:プリンペラン®など)といった薬が一般的に使われます。これらは神経伝達物質のドパミンに拮抗する作用する薬で抗がん剤の制吐管理としても使われることがある薬です。頓服としても使われ、吐き気に応じて使うように指示される場合もあります。継続して使っていく中で抗ドパミン作用による錐体外路症状などには注意が必要となります。

せん妄

せん妄に関してはハロペリドール(商品名:セレネース®など)などの抗精神病薬という種類の薬の使用が考慮されます。

抗精神病薬は神経伝達物質であるドパミンなどに作用することで、せん妄だけでなく幻覚、不安、焦燥などの症状を改善する効果が期待できる薬です。

ハロペリドールは抗ドパミン作用などをあらわす薬で吐き気の改善として使われることもあります。他にはオランザピン(商品名:ジプレキサ®など)、リスペリドン(商品名:リスパダール®など)などの薬の使用が考慮されます。

■眠気や鎮静

眠気に関してはオピオイド自体の影響のほか、それまで痛みによる不眠があったような場合では疼痛緩和によってもたらされる眠気なども考えられます。通常、オピオイドを継続していく中で解消されてくることが多いとされています。それでも病態や薬剤量などによっては眠気・鎮静といった症状があらわれる場合もあり、カフェインなど覚醒作用がある薬の使用、オピオイドの減量、頻回分割投与などが検討されます。

この他、呼吸抑制の症状が強く意識障害が生じる場合に使われるナロキソンなど、オピオイドの副作用に対してはそれぞれの症状に合わせて薬の使用を含めた対処が考慮されます。

オピオイドスイッチング(オピオイドローテーション)

オピオイドスイッチング(オピオイドローテーション)とは、オピオイドの副作用により鎮痛効果を得るだけのオピオイドを投与できないときや、鎮痛効果が不十分なときに、投与中のオピオイドから他のオピオイドに変更することです。

オピオイドでは、一般的な薬にみられる交差耐性という、ある一つの薬に対して耐性ができてしまった場合に類似した構造をもつ別の薬に対しても耐性を獲得してしまうという性質が不完全と考えられています。

そのため、あるオピオイドを使用していて耐性ができてしまい、鎮痛効果が低下した場合でもオピオイドの種類をかえることで、鎮痛効果の回復などが期待できると考えられています。

またオピオイドスイッチングでは変更後のオピオイドが変更前のオピオイドとの等力価の換算量よりも少量で有効なことも考えられます。等力価の換算量とは、例えば「モルヒネ内服1に対してオキシコドン内服が2/3」というように変更の目安となる換算比から同等の効果が得られると考えられる量です。

変更後のオピオイドが計算上の換算量よりも少なく抑えられる可能性もある一方で、効き過ぎてしまうことにより過量投与となったり、逆に十分な効果が得られなくなる可能性もあります。また、すでに耐性ができていったんは治まっていた眠気や吐き気などの副作用が再び出現することなども考えられるため注意が必要です。またモルヒネからフェンタニルへの変更では腸の蠕動(ぜんどう)運動の亢進が起こることが比較的多いなど、変更するオピオイドの種類によっても注意すべきことが異なる場合もあります。

このようにオピオイドスイッチングは鎮痛効果などへの多くのメリットが考えられますが、副作用の再出現などのデメリットも考えられます。オピオイドスイッチングを実施する際には患者の状態によって細心の注意を払いつつ調整が行われます。

多くの場合、緩和ケアスタッフなどの専門の医療スタッフが介入し、患者の負担をできるだけ軽減しつつ疼痛緩和が行えるような計画によって実施されています。

現在のオピオイドの投与量が比較的大量となっている場合は、一度に変更せずに数回にわけてオピオイドスイッチングを行ったり、比較的重い状態や高齢である患者には計算上の換算量よりも少量からの変更が考慮されるなど、それぞれの状態に合わせた配慮がされています。またオピオイド変更後に痛みが増強する可能性を考慮してレスキュー・ドーズの使い方への説明なども行われます。

オピオイド以外に使う痛み止めとは?

がんによる痛みの多くは痛いと感じる部分に原因がある侵害受容性疼痛です。体性痛(皮膚、骨、筋肉などに由来する痛み)と内臓痛に分かれます。

ほかにも、痛いと感じる部分ではなく神経の損傷や障害によって別の場所が痛む神経障害性疼痛というものがあります。神経障害性疼痛にはオピオイドが効きにくいとされています。

神経障害性疼痛に対しては抗うつ薬や抗けいれん薬などの鎮痛補助薬と呼ばれる薬が有効とされます。特にモルヒネなどオピオイドの効果が不十分な場合には鎮痛補助薬を併用することは有効であるとされています。

ただし、鎮痛補助薬は個人による効果の差が大きいという注意点があります。薬による副作用や患者の体質・病態・全身状態などを考慮して薬が選択されます。

三環系抗うつ薬(ノルトリプチリン、アミトリプチリンなど)などの抗うつ薬は神経障害性疼痛に以前から使われてきた薬です。神経障害性疼痛の改善効果が期待できます。タキサン系薬剤やプラチナ製剤などのがん化学療法後にみられることがある神経障害性疼痛に対しても、デュロキセチン(商品名:サインバルタ®)などの抗うつ薬によって改善効果があるとされています。

抗うつ薬では眠気などの副作用に注意が必要です。薬によっては抗コリン作用といって神経伝達物質のアセチルコリンの働きを抑える作用があるため、口の渇き、便秘、排尿障害などの副作用があらわれる場合もあり注意が必要となります。

抗けいれん薬に分類される薬も神経障害性疼痛に効果が期待できるとされています。ガバペンチン(商品名:ガバペン®)などがオピオイドと併用されることがあります。またガバペンチンに類似した作用をあらわすプレガバリン(商品名:リリカ®)は神経障害性疼痛の治療薬として承認を受けた薬です。プレガバリンはがん疼痛以外にも様々な神経の痛みに対する治療薬として使われています。抗けいれん薬では眠気やふらつきなどに注意が必要です。

この他、緊急性の高い激しい痛みや、骨や神経叢(しんけいそう)が障害されたことによる激しい痛みに対してコルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)が有用と考えられています。

鎮痛補助薬としては異常感覚や間欠的な突出痛に有効とされる抗不整脈薬(メキシレチン、リドカインなど)、安静時の痛みや動作時痛に対して有効とされるケタミン(ケタラール水内服)なども選択肢となっています。

ここで挙げた薬以外にもそれぞれの痛みに合わせた薬剤選択が考慮されています。

炎症を伴う痛みにはNSAIDsやコルチコステロイド、骨転移による痛みにはNSAIDs、放射線療法、神経ブロック、ビスホスホネート製剤などが選択肢とされます。特に肺がんの骨転移に対する緩和ケアでは放射線療法とビスホスホネート製剤の併用が推奨されています。鎮痛困難な場合には骨転移疼痛緩和剤のストロンチウム-89(商品名:メタストロン®)を用いた治療も考慮されます。

この他、神経圧迫に対するコルチコステロイドなどといったように病態に合わせた薬の選択が考慮されます。

薬による治療以外にも、理学療法、日常生活動作に対するサポート、マッサージ、皮膚刺激(温寒刺激)、鍼灸などの理学療法的サポートや、イメージ療法、リラクセーション、認知行動療法などの精神的サポートなどが行われています。

10. こんな症状が出たらどうしよう?

肺がんが進行すると症状が強くなります。呼吸困難感(息苦しさ)や痛みなどが強くなると精神的に不安になって、パニックを起こしてしまうこともあります。パニックになるとさらに症状がつらくなるといった悪循環に陥ってしまうことも多いため、その対処法に関して知っておくと有利です。

呼吸困難感について

Q1:息苦しさの原因にはどのようなものがありますか?

A:息苦しさ(=呼吸困難感)は、「呼吸がしづらい」「息が詰まる感じ」「空気を吸い込めない感じ」などといった自分自身が感じる呼吸に関する症状のことを指します。自覚症状であるため、その表現方法も人によって異なります。

例えば、呼吸困難症状を「動悸・息切れ」「胸が締めつけられるような感じ」「気だるい感じ」に感じる場合があります。

呼吸困難の原因には、以下の3種類があります。

  1. 肺や気管支そのものに原因があるもの
    1. がんが大きくなったり肺切除手術を受けたことによって、呼吸するスペースが少なくなる
    2. 薬物・放射線療法による肺炎
    3. 以前からある慢性気管支炎肺気腫気管支喘息などの悪化
  2. 肺・気管支以外に原因があるもの
    1. 胸水が溜まることで肺が動きにくくなる
    2. 大量の腹水便秘・腸内にガスが多量に貯まることによって横隔膜が圧迫される
    3. がんの影響でひどい貧血が起こる
    4. 心臓疾患が悪化する
  3. 気持ちやストレスに原因があるもの
    1. 現在の治療の効果への疑問、いつになったら治るんだろうといった将来への不安
    2. “また息苦しい状態になったら窒息してしまうんじゃないか”という不安
    3. 自分の置かれている状況に対するストレスが息苦しさとなって出てくる

これらのなにが起こっているかを理解することで、呼吸困難感は軽快することがありますので、状況を把握することは大切です。

Q2:最近、ちょっとしたことで息が切れたり、息苦しくなったりして、死んでしまうのではないかと怖いです。

A:息苦しいと感じたりうまく息が吸えないと感じると、必死になって息を吸おうとして余計に呼吸が苦しくなることがあります。必死になってしまうとますます苦しくなることは多いのです。息苦しさを感じたときには、とにかく落ち着いて、“吐くこと”に意識を向けることが大切です。

息苦しい時は、よりたくさん“吸う”ことで楽になると思いがちですが、呼吸の回数が増えると呼吸が浅くなっていますので、吐いたつもりでも肺にはまだまだ空気が残っています。その状態で必死に吸っても限度があります。逆に、深呼吸して息を吐いて肺を空っぽにすれば、あとは勝手に酸素が入ってきます。

息を吐くと身体はリラックスして筋肉の緊張がゆるみます。ゆっくり吐けば吐くほど体の緊張がほどけていくので、息苦しさが和らいでくることがあります。

大切なことは、息苦しさを感じる前からゆっくり吐く呼吸方法を身に付けておくことです。この呼吸方法に慣れておくことで、息苦しくなったときに焦らず、“いつもの呼吸をしよう”と思い出すことができるでしょう。また、家族などの支えてくれる方と一緒に、呼吸を合わせることで落ち着き、息苦しさが和らぐことがあります。

Q3:呼吸困難の治療にはどんなものがありますか?

A:呼吸困難の治療は、原因に対する治療と呼吸困難症状を和らげる治療の2種類にわけられます。

  1. 呼吸困難の原因に対する治療

    1. 肺炎に対する抗菌薬を投与する

    2. 胸水が貯まっている場合に針を刺して水を抜く

    3. 貧血に対して輸血する

    4. 心臓の機能が落ちているときに利尿薬を使う

  2. 呼吸困難の症状を和らげる治療

    1. 酸素吸入

    2. 薬物療法

原因に対する治療が難しい場合には、“息苦しい”症状をできるだけ和らげるための治療として、酸素吸入、薬物療法を行います。

■酸素吸入

医師の指示により、必要な酸素量を吸入することで、自覚症状が和らぐことがあります。この酸素吸入は、自宅での生活(食事や入浴・排泄)や外出先でも継続して行うことができます(在宅酸素療法)。

■薬物療法

呼吸困難を和らげる薬として、モルヒネやコデインが使われます。

モルヒネには、“息苦しい”と感じる中枢の感受性を低下させたり、息苦しいことによって呼吸の回数が増えている場合には、呼吸回数を正常に戻し、酸素消費量を減らしたり咳を鎮めたりする作用があるとされています。

気道狭窄や肺炎などの炎症がある場合やがん性リンパ管症と診断された場合には、副腎皮質ステロイド薬や気管支拡張薬を使用することで呼吸困難が和らぐことがあります。

不安などの精神的な影響で呼吸困難が起こっている場合は、抗不安薬が用いられることもあります。

     

Q4:家族が息苦しそうにしており、見ていてつらいです。何かできることはありませんか?

A:できることの例を挙げます。

■触れてあげる

呼吸困難があるときは、会話すること自体がつらさを悪化させる可能性があるため、無理に話をしない方がいいです。周囲の人は話しかけるのではなく、見守り、時には患者さんに触れることで患者さんは安心感を得られます。

誰かに触れてもらうことは、本能的に人間を落ち着かせます。呼吸困難は精神的な要素が大きく影響している症状です。人肌に触れることは非常に効果的になります。

■においに敏感な人に配慮する

酸素投与中の患者さんには、においなどによる不快感を与えないよう配慮してください。どんな香りが良いのかは人それぞれですが、柑橘系の香りは好まれやすいです。また、乾燥しやすいので、いつでも水分を取れるように手の届くところに準備をすると同時に、酸素チューブの長さが多少動いても外れないくらい十分にあるかどうかも確認してください。

■暑がりな人に配慮する

肺がん患者は、周りが思っているよりも暑く感じやすいことが多いです。空調を用いて室温を低めに設定したり空気を対流させたりしてください。うちわ・扇風機を用いることも良いでしょう。

■楽な姿勢にさせる

肺がんの症状が進めば進むほど、身体が思うようにいかなくなることで、この姿勢はしんどいというものが出てきます。

どんな姿勢が良いのかは個々人によって異なりますが、患者さん本人の楽な姿勢を探すのが一番です。(一般的には、寝た状態よりも座っている状態の方が呼吸がしやすいことが多いです。)また、クッションや枕を使うと楽になることもあります。

■口の中の不快感をなくす

口の中が汚れていると不快につながるため、歯ブラシやマウスウォッシュを使用して清潔に保つようにしてください。好きなフレグランスがある場合は、それに近いマウスウォッシュが効果的かもしれません。

痛みについて

Q1:痛みが出てきたら、どうしたらいいのでしょうか。

A:がんの痛みは、がんそのものによる痛みや治療に伴う痛みなど多くの種類があります。

過去のがん治療においては、“患者さんは痛みを我慢するのが当然”という考えが存在し、患者も「命が助かるためには、痛みは我慢するべき」、「痛みに耐えられないのは忍耐力がないからだ」と思っている人が多くいました。

しかし、痛みの治療が進んだ現代のがん治療においては、身体に感じる様々な苦痛を我慢する必要はなく、積極的に痛みの治療を行いながらがん治療を進めていくことが推奨されています。

まず行うべきことは、“痛みがある”ということを、信頼できる医療スタッフに伝えることになります。

Q2:痛みの治療はどのように行うのですか?

A:痛みの程度や性質は人によりさまざまです。様々な痛みに対する治療は、薬や手術、放射線療法などから適したものが選ばれます。

痛みを医療スタッフに伝えるときは、以下のポイントを参考にしてください。

(1)日常生活への影響

 「痛くて眠れない」

 「痛くて座っていられない」

 「仕事に行けないほど痛む」

(2)痛みのパターン

 「普段ほとんど痛みはないが、1日に何回か強い痛みがある」

 「普段から強い痛みがあり、1日の中で波がある」

 「強い痛みが一日中続く」

(3)痛みの強さ

 痛みの強さは、10段階で問われることがあります。

 「ぜんぜん痛くないときを0点、もうこれ以上考えられないくらいすごく痛いときを10点とすると、普段最も弱いときの痛みは何点くらいになりますか?」

 「では、痛みが最も強くなったときは何点くらいになりますか?」          

 「その強い痛みがくるのは何回ですか?」  

(4)痛みの部位

実際に痛い部位を手で示したり、どのくらいの範囲かを伝えてください。 

(5)痛みの経過

 「いつから痛みを感じるようになったか」

※突然生じた痛みは緊急に対応する必要がある場合(骨折、消化管穿孔感染症、出血の可能性など)があります。医療者は「いつから」と聞くことで危険信号を探知しています。

(6)痛みの性質

痛みには、その性質によって、おおよそ以下の3種類に分類されます。

どのように痛むかを、できるだけ具体的に表現することが大切です。

「うずくような」痛み⇒体性痛

「押されるような」痛み⇒内臓痛

「灼けるような」痛み、「ビーンと走るような」痛み⇒神経障害性疼痛

痛みの性質

(7)痛みを強くする要素と緩和する要素

痛みを強くする、あるいは緩和する要素があるかどうかを伝えてください。

  • 痛みを強くする要素の例
    • 夜間
    • 体動
    • 食事
    • 排泄
    • 不安
    • 抑うつ
  • 痛みを緩和する要素の例
    • 安静
    • 保温
    • 冷却
    • マッサージ

(8)現在行っている治療

 定期的に服用している鎮痛薬があるかどうか、そしてその効果はどうか。

(9)痛み以外の症状があるかどうか、その程度はどうか

  • 嘔気・嘔吐
  • 便秘、眠気
  • 心窩部不快感
  • 食欲低下

痛みの治療は、痛みの程度や性質に応じて以下のような目標を定めて行われます。

◎第1段階:「痛くて眠れない」「夜中に痛みで目が覚めてしまう」とき
目標:まずはぐっすり眠れるように、薬を飲んだりすることで痛みを和らげること

◎第2段階:「眠っているときは痛くないが、起きているときは、安静にしていても痛い」とき
目標:安静にしていれば痛みがないようにすること

◎第3段階:「安静にしていれば痛くはないが、歩いたり体を動かすと痛い」とき

目標:家事や炊事をしたり散歩したりしても痛くないようにすること

Q3:痛み止めの種類にはどんなものがありますか?

A:炎症がある痛みには、NSAIDsを使います。市販薬にもよく使われている痛み止め成分と同じ種類の薬です。商品名にロキソニン、ボルタレンなどがあります。

NSAIDsの副作用として腎臓の機能の低下や粘膜の潰瘍に注意が必要です。また、使える量には上限があります。限度を超えて使うと、痛みを止める効果はそのままで、副作用ばかりが強くなってしまうためです。痛みが強いときは、オピオイド鎮痛薬などほかの薬と一緒に使って痛みを取ることがあります。

オピオイド鎮痛薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなど)はがんの痛みの緩和にとても重要な薬です。痛みの程度に応じて、その人に合った量が処方されます。量に制限はありません。

Q4:薬以外に、痛みを緩和する方法はありませんか?

A:痛みを緩和する方法は、人それぞれで異なります。痛みにばかり頭が行くと痛みは改善しませんので、普段から“痛い”ことばかりに集中しないように注意を逸らすことも助けになります。どういったことをすればよいでしょうか?

  • 温める/冷やす
    • 温度で痛みの感じ方が変わります。どちらがいいかは人によるので、“心地いい”と感じられるほうを選んでください。
  • マッサージ
    • 医療スタッフに相談して、マッサージをしてはいけない部位があるかを確認したうえで行ってください。
  • 体位の工夫
    • 姿勢で痛みが強くなることがあります。痛みが増強しない、楽な体勢を調整してください。
  • コルセット、カラーなどの医療補助具の使用
    • 痛みを抑えられる装具もあります。医療スタッフと相談し、適切な装具の種類などを検討してください。
  • リラクセーション
    • アロマ、入浴などでリラックスすることにも意味があります。
  • 呼吸法の工夫
    • 深く長い呼吸をすることで体の緊張を和らげます。
  • 気分転換
    • 気分が落ち込んでいると痛みを感じやすくなります。温かい飲み物を飲む、映画を見る、話を聴いてもらうなど、気分を前向きにする工夫も大事です。

不安

Q1:最近は、なんだか気が滅入ってしまい、日課にしていた新聞も読みたくありません…。うつ病でしょうか?

A:がんは身体的な病気であると同時に、心理面にも大きなストレスを与えます。治療によっても心身両面へのつらさが重なり、心のバランスが乱れてしまうことも珍しくありません。

症状としては、気分が落ち込み、前向きな気持ちが持てなくなることがあります。また仕事や趣味に対する意欲、興味が失われ、何もやる気が起きなくなってしまいます。

また、そうした心の症状に伴い、「眠れない」「だるい」「食欲がない」などの身体的な症状がみられることも少なくありません。

うつ病ほどではないにせよ、日常生活に支障をきたしている場合、「適応障害」と診断を受ける場合もあります。

一度、臨床心理士や精神科医師の診察を受けてもいいでしょう。どこに行けばいいかわからないときは、緩和ケアチームのメンバーに相談すれば教えてくれます。

Q2:実は、がんのことを考えると、眠れません。

A:がんと診断を受けた患者さんは、大きな心理的ストレスを抱えながらも、自分の不安を誰かに話すこともなく、「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせながらどうにかやり過ごしていることがあります。このような場合、患者さん自身も気づかないうちに心の負担が大きくなり、心の状態が不安定になっている可能性があります。

がんの告知などで大きなストレスを受けたあと、数週間経ってもまだ仕事や家事に向かう気力が持てない場合や、だるさや不眠などの身体症状が続いている場合は、専門家へ相談する必要があります。専門家の協力を得て、しっかりと休息をとり生活のバランスを取り戻すことが大切です。時には、一時的に薬物治療(抗不安薬、睡眠導入薬など)を受けることもあります。

また、信頼のおける家族や友人、医療スタッフに、自分の気持ちを聴いてもらうことが効果的な場合があります。今後の病状進行に不安を抱いているような場合は、医療スタッフから予想される経過や苦痛症状が緩和できることなどの情報や医学的知識を得ることで、不安が軽くなることもあります。

Q3:このモヤモヤした状態に、どのように対処したらよいのでしょうか?

A:自分自身を支えてくれる人は誰かを考えてみましょう。家族や友人など信頼してなんでも話すことができる人を1人でも多く見つけ、一緒に話し合ってもらうことで気持ちが楽になることがあります。がんと診断されてから早いうちに患者会などに参加し、同じがん患者さんの先輩がどのように心の危機を乗り越えたのかや、これからの見通しなどについて話を聞くことも効果的です。

次に、過去に起こった危機的状況に、自分自身がどのように対処して乗り切ってきたか、を考えてみましょう。方法はそれぞれですが、そのときの対処方法をもう一度やってみてはいかがでしょうか。

それでも心や体がつらいときには、無理にどうにかしようとして焦らず、のんびりと休養することで自然と元気が出てくることもあります。