耳鳴りの原因について:体内の雑音、外耳・中耳・内耳・神経・脳の異常など
耳鳴りが聞こえると病気ではないか心配になるかもしれません。耳鳴りの中には誰にでも聞こえるものもありますが、病気が隠れているものもあります。このページでは耳鳴りの原因について説明します。
1. 耳鳴りの原因にはどんなものがあるか
突然「キーン」「ピー」と高音の耳鳴りが聞こえはじめると、驚き、何か身体に異常が起きているのではないかと心配になるかもしれません。深夜などに静かな場所で耳鳴りが聞こえることもあります。このような耳鳴りは、耳や神経にどこも異常がなくてもよく経験するものです。実際、特に持病のない人にときどき耳鳴りが聞こえても、ほとんどは問題がないことが多いです。
しかし、病気が原因で耳鳴りが起こる場合もあります。病気によっては、中学生から高校生ぐらいの年齢やそれ以下で起こるものもあります。
耳鳴りの原因は以下のように分類できます。
【耳鳴りの原因】
- 体内の雑音
- 外耳の異常
中耳 の異常内耳 の異常- 神経・脳の異常
耳鳴りが続いて気になる場合や、めまい・聞こえにくさなど耳鳴り以外の症状もある場合には、耳鼻咽喉科などで診察を受けてください。医療機関では、
次にそれぞれの原因について詳しく説明します。
2. 体内の雑音
体内で実際に鳴っている音を、耳鳴りとして感じ取ることがあります。
たとえば
3. 外耳の異常
外耳とは身体の外から見える「耳」の部分を指します。外耳(外耳道)が塞がっていると、聞こえにくいだけでなく、耳鳴りが出ることもあります。この場合は塞がっている側の片耳に耳鳴りがあらわれます。
外耳を塞いでしまう主な原因は耳垢(みみあか)です。子どもが耳にものを入れてしまうといった場合もあります。詰まったものを耳鼻咽喉科で取り除いてもらうと元通りになります。
まれですが、外耳に腫瘍(しゅよう)ができて塞がってしまうことがあります。この場合は、できているものが何か、特に
4. 中耳の異常
外耳と鼓膜を隔てて隣り合う場所に中耳があります。
中耳は外耳から伝わってきた音を鼓膜の振動として受け取り、振動を内耳に伝えています。中耳に異常があり鼓膜の振動をうまく伝えることができないと、耳鳴りの原因になることがあります。次のものが原因になります。
中耳が原因の症状は異常があるほうの片側にあらわれます。
次にそれぞれの病気について説明します。
急性中耳炎
急性中耳炎は中耳に
【急性中耳炎の主な症状】
- 発熱
- 耳の痛み
- 難聴
- 耳鳴り
- 耳だれ
急性中耳炎は自然に治ることが多いです。治療には
耳硬化症
耳硬化症(じこうかしょう)は、中耳の骨の動きが悪くなることで難聴や耳鳴りの症状があらわれる病気です。
鼓膜と内耳の間にある中耳では、ツチ骨(つちこつ)・キヌタ骨(きぬたこつ)・アブミ骨(あぶみこつ)という骨がつながっています。鼓膜が振動するとツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨に順に振動が伝わって、さらに奥の内耳に振動を伝えます。
耳硬化症はなんらかの原因でアブミ骨の動きが悪くなった状態です。難聴・耳鳴りに対する治療には、補聴器の使用や、動きが悪くなったアブミ骨を人工物に取り替える手術があります。
鼓膜穿孔
鼓膜穿孔(こまくせんこう)とは鼓膜が破れてしまった状態です。耳を叩かれるなどの外傷や急性中耳炎が原因で鼓膜が破れることがあります。鼓膜は破れてもほとんどは自然に治って穴が閉じますが、治りが悪い場合は手術で閉じることもあります。
5. 内耳の異常
内耳の異常で耳鳴りが起きる病気には次のものがあります。
それぞれの原因や症状を説明します。
音響外傷(急性音響性難聴)
音響外傷とは、ライブや工事現場などで大音量が入ってきたことにより、一時的に次のような症状が感じられる状態です。
【音響外傷の主な症状】
- 耳が詰まる感じ(耳閉感)
- 難聴
- 耳鳴り
症状は一時的なので、自然と治ることが多いですが、治らない場合には、
メニエール病
メニエール病は次の症状を特徴とする内耳の病気です。
【メニエール病の主な症状】
- 目の前がグルグル回るような激しいめまい(回転性めまい)
- 吐き気、嘔吐
- 難聴
- 耳鳴り
- 症状の
発作 が10分から数時間続く - 発作は何回も繰り返す
メニエール病による耳鳴りは「ジー」「ザー」という低音の耳鳴りと表現されることが多いです。内耳にリンパ液がたまることで症状が引き起こされるのですが、リンパ液がたまってしまう原因はわかっていません。ストレスや疲労、睡眠不足などが関係するとも言われています。メニエール病の治療としては、症状が軽くなることを狙って利尿薬やめまい止めの薬が使われます。
詳しくは「メニエール病の詳細情報」で説明します。
老人性難聴
老人性難聴は自然な老化によって耳が聞こえにくくなった状態です。聴力が低下するとともに耳鳴りがれます。年をとるにつれて、内耳の細胞や神経の働きが悪くなっていくことが原因です。高い音から聞こえにくくなってくるのが典型的です。
老人性難聴は自然な老化のひとつで、根本的に治す方法は今のところありません。聞こえをよくする目的で補聴器を使うなどして症状を和らげます。補聴器が必要性や、適した補聴器については、耳鼻咽喉科で相談してください。
6. 脳・神経の異常
脳や神経の異常で耳鳴りが起きる病気の例として次のものがあります。
- 突発性難聴
- ラムゼイ・ハント症候群
- 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
- 自律神経失調症
- 顎関節症・頚椎の異常
- 薬による神経障害
それぞれの症状や治療を説明します。
突発性難聴
突発性難聴は、あるとき突然片方の耳が聞こえなくなる病気です。主な症状は次のものです。
【突発性難聴の主な症状】
- 片方の耳が聞こえにくい(難聴)
- めまい
- 耳鳴り
- 耳が詰まった感覚(耳閉感)
突発性難聴のはっきりとした原因は分かっていませんが、治療として
詳しくは「突発性難聴の詳細情報」を参考にしてください。
ラムゼイ・ハント症候群
ラムゼイ・ハント症候群は、耳に出る帯状疱疹です。
【ラムゼイ・ハント症候群の主な症状】
ラムゼイ・ハント症候群は治療が遅れると後遺症を残すことがあるので、急いで受診する必要があります。治療には抗ウイルス薬とステロイド薬が使われるほか、痛みを和らげる薬も使われます。
詳しくは「耳の水ぶくれは帯状疱疹?痛み・顔の麻痺などラムゼイハント症候群の症状について」で説明しています。
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
音の信号を脳に伝える聴神経に腫瘍ができると耳鳴りの原因になります。上の絵にある蝸牛神経は脳に近い位置で聴神経という名前に変わります。聴神経腫瘍の多くは
【聴神経腫瘍の主な症状】
- 難聴
- 耳鳴り
- めまい
- ふらつき
聴神経腫瘍の治療法は手術や放射線治療ですが、小さくて症状がないときは、すぐに治療しない場合もあります。
自律神経失調症
自律神経失調症では、身体の機能を調節している
【自律神経失調症の主な症状】
- 身体の症状
- 頭痛
- 首の痛み、首こり、肩こり
- 背中の痛み、背中のこり、腰痛
- 食欲不振
- 便秘/下痢
- 手足の冷え
- 生理不順
- 生理痛
- めまい
- だるさ
- 精神の症状
- うつ、気分の落ち込み、意欲の低下
- 不眠
自律神経失調症にはストレスの関与も考えられています。環境や生活習慣、ほかの病気やけがなどです。
具体的には、生活の中のストレスや対処の例について「4種類のストレスとその対処法」で説明しています。自律神経失調症の治療では薬や
顎関節症・頚椎の異常
しくみは明確になっていないのですが、顎関節症(がくかんせつしょう)や頚椎(けいつい)の異常が関係して耳鳴りが起こるとも考えられています。
薬による神経障害
薬の副作用で難聴、耳鳴りが起きることがあります。その中でも結核の治療で使われていたストレプトマイシンやカナマイシンという抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は、副作用として難聴、耳鳴りを起こすことが知られています。
ほかにもまれに難聴や耳鳴りを起こす薬があるため、薬を飲んでいる人が耳鳴りを感じる際には、処方したお医者さんに相談してください。