めまい・耳鳴り
最終更新: 2018.03.19

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の治療:エプリー法と薬

頭を動かしたとき、朝起き上がろうとしたときにめまいがしたら、良性発作性頭位めまい症BPPV)かもしれません。BPPVとは水平を感じる耳石の異常によるめまいです。自然に治ることが多いですが、「エプリー法」で早く治せる場合もあり、吐き気などの症状を軽くする薬が使われることもあります。

1. 良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは?

良性発作性頭位めまい症(りょうせいほっさせいとういめまいしょう)は、英語のBenign Paroxysmal Positional Vertigoを略してBPPVとも言います。

BPPVの症状には以下のような特徴があります。

  • グルグルしためまいが突然始まる
  • 朝起き上がろうとしたときにめまいが起きる
  • 頭や身体を動かすとグルグルしためまいが起きるため、動けない
  • 振り向いたときにめまいが起きる
  • 下を向いたときにめまいが起きる
  • めまいは数十秒~数分間続いて治まる

典型的には、頭を動かして特定の向きにすると、数秒後に目の前がグルグル回る「回転性めまい」が起きて、数分後には収まります。吐き気や嘔吐を起こすこともあります。

BPPVは男性にも女性にも起こります。年齢も子供から高齢者までさまざまです。2012年にサッカーの澤穂希選手がBPPVと診断されたことをご存知の方もいるでしょう。

BPPVは多くの場合で自然に治り、後遺症はありません。症状がなくなれば完治です。ただし再発することもあります。数ヶ月から数年経って再発する人もいます。

回転性めまいとは?

「めまい」という言葉が指す症状は人によって違うことがあります。くらくら、ふわふわする感じの「浮動性めまい」(dizziness)よりも、目の前がグルグル回って見える感じの「回転性めまい」(vertigo)がBPPVでは一般的です。

「立ちくらみ」とも言われる、気を失いそうになる感じ(前失神、失神)も「めまい」と表現されることがあります。BPPVでは、立ち上がろうとしたときにめまいが出ることもありますが、気を失いそうな感じよりも回転性めまいのほうがBPPVらしい症状です。

回転性めまいが出ているときに周りの人に見てもらうと、目が規則的に動く症状(眼振)が観察されることがあります。眼振はBPPVの診断にも使われるポイントです。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)とほかのめまいの違いは?

BPPVと似た症状があるほかの病気を見分けるには、聴覚の症状や脳の症状がヒントになることがあります。難聴・耳鳴りといった聴覚の症状、手足を動かしづらい・しゃべりにくいといった脳の症状はBPPVでは起こりません。BPPVは「良性」という名前のとおり、自然に治ることが多く、命に関わることや重い症状を残すこともありません。

2. 良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因は?

BPPVの原因は、耳石が間違った位置に入ってしまうことです。

耳の奥にある前庭(ぜんてい)と三半規管(さんはんきかん)という部分は、協調して頭の回転(傾き)を感じとっています。前庭には耳石(じせき)という砂粒のようなものが入っています。身体の動きによって耳石が微妙に動くことで、身体の傾きを正しく感じ、平衡をとることができます。

BPPVでは、何らかの理由で耳石が正常な位置から離れて、三半規管に入りこみます。すると頭が動く度に耳石が転がって三半規管を刺激するので、傾きの感覚がおかしくなってしまいます。このことにより目の前がグルグル回る「回転性めまい」が起きます。

耳石が正常な位置から離れてしまう原因は不明です。治療として行われることがある「エプリー法」は耳石を元の位置に戻す方法です。

3. 頭を動かして良性発作性頭位めまい症(BPPV)を治療する「エプリー法」

BPPVは自然に治ることが多いですが、頭を動かす治療で早く治ることもあります。よく使われる動かし方はエプリー(Epley)法というものです。かなりの割合でめまいが解消することを期待できるとされますが、失敗して悪化を引き起こす危険もあります。誰でも確実にできるものではありません。成功すればその日のうちに治ります。

ほかの方法にセモン(Semont)法などがあります。ここではより広く行われているエプリー法について説明します。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因が左右どちらの耳にあるのか調べる方法

BPPVをエプリー法で治すために、まず原因の耳が左右のどちらかを調べます。

ベッドに足を伸ばして座った状態で、頭を45°右側(あるいは左側)に向けます。その位置で首を固定したまま上体を後ろに倒し、頭がベッドから少し出た状態で仰向けに寝ます。

この動作でめまいが起きたら、下になっている右側の耳(最初に左側を向いていれば左側の耳)に異常があると推定できます。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)を治すエプリー法の実際

エプリー法では頭の向きを順番に変えていくことによって、異常がある側の耳石をもとの位置に戻して治します。ここでは右側の耳に異常があってBPPVを起こしている場合を説明します。左側の耳に異常がある時には左右反対の動作をします。

  1. ベッドに足を伸ばして座った状態で、頭を45°右側に向けます。
  2. 頭は身体に対して45°右側を向いたまま、上体を後ろに倒し、頭がベッドから少し出た状態で仰向けに寝ます。ここまでは左右を見分ける方法と同じです。このときめまいが起きますが、途中で頭の位置を変えてはいけません。めまいがなくなるまで、この頭の位置を保ちます。
  3. めまいがなくなったら、今度は頭を45°逆側に向けます。再びめまいがあらわれた場合はなくなるまで、めまいがあらわれなければ2分ほど、この頭の位置を保ちます。
  4. 頭は身体に対して45°左側を向いたまま、左側を下にして身体全体を横向きにします。めまいがあらわれた場合はなくなるまで、めまいがあらわれなければ2分ほど、この頭の位置を保ちます。
  5. 首は固定したまま、足をベッドの左側に下ろし、左手をついて身体を起こします。身体を右に回して、ベッドに足を伸ばして座った状態に戻ります。次に頭を身体に対してまっすぐ前に向けます。その状態で15°頭を前屈して、うつむいた状態にします。その状態を2分間保ちます。
  6. ここまでが治療です。治療成功していれば治っているはずです。1.から2.を繰り返して、治っているか調べます。まだめまいが出るようなら、もう一回試します。

エプリー法は、理学療法士などの専門家にやってもらったほうがうまくできる見込みがありますが、肩にまくらを敷いて自分ひとりでもできます。上の手順に沿って頭と身体全体を動かします。

エプリー法が効かない良性発作性頭位めまい症(BPPV)もある

BPPVにエプリー法が無効の場合があります。エプリー法で治療できるのは、耳石が三半規管のうちでも後半規管という部分に入っている場合だけです。三半規管は「三」という字がついているように3つの部分に分かれていて、そのうち後半規管に耳石が入る場合が最も多いのですが、ほかの部分に入っていることもあり、その場合はエプリー法は効果がありません。

4. 良性発作性頭位めまい症(BPPV)に処方される薬

BPPVの治療にはエプリー法のほか、自然に治るのを待つ間、めまいの症状を楽にするための一般的な薬も使えます。薬を使う期間は通常数か月以内です。

抗めまい薬(商品名:メリスロン®、セファドール®など)

ベタヒスチンメシル酸塩(商品名:メリスロン®など)、ジフェニドール塩酸塩(商品名:セファドール®など)は抗めまい薬とも呼ばれる薬です。めまいに対して効果をあらわします。

ATP製剤(商品名:アデホス、トリノシン®など)

ATP製剤は、耳鳴りやめまいの予防薬として長期的に飲むことも多い薬です。

吐き気・嘔吐を抑える薬(商品名:プリンペラン®など)

メトクロプラミド(商品名:プリンペラン®など)など、吐き気止めとしてよく処方されている薬は、めまいに伴う吐き気や嘔吐を抑えることもできます。

5. 良性発作性頭位めまい症(BPPV)に困ったら病院へ

エプリー法などの治療が行われなくても、BPPVは2週間から1か月程度で自然に治ります

数日間めまいの症状が続くと不安になるかもしれませんが、特に耳鳴りや聞こえにくさがないめまいの原因で一番多いのは、自然に治るBPPVです。落ち着いて耳鼻咽喉科の病院・クリニックに行き、診察を受けてください。