たこつぼがたしんきんしょう
たこつぼ型心筋症
心臓の一部が収縮しなくなり、急激に心臓の働きが悪くなってしまう病気
4人の医師がチェック 83回の改訂 最終更新: 2020.01.20

たこつぼ型心筋症の検査

たこつぼ型心筋症では主に心尖部(心臓の先端の円錐形の部分)の収縮機能が一時的に低下して動かなくなります。この時の心臓の様子を画像検査で見ると「たこつぼ」に似ていることから、たこつぼ型心筋症と名付けられました。ここではたこつぼ型心筋症の検査について詳しく説明します。

1. 問診

問診とは、お医者さんが病状を把握するために、症状や生活状況について詳しく聞くことです。たこつぼ型心筋症が疑われる人には下記のような質問が想定されます。

  • どのような症状があるか
  • いつからその症状があるか
  • 最近辛かった出来事などがあったか
  • 糖尿病脂質異常症高血圧症などの持病はあるか
  • 喫煙をするか
  • 家族に心臓の病気の人がいるか

お医者さんからはさまざまなことを聞かれますが、その意図を知っておくと答えやすくなるかもしれません。以下で詳しく説明します。

症状について:特に胸痛の特徴

症状の中でお医者さんに特に詳しくに伝えたいのが、胸の痛みについてです。具体的に伝えるとよいのは「持続時間」、「頻度」、「何をしたら悪くなるのか、あるいは良くなるのか」などです。

たこつぼ型心筋症の胸痛の特徴は、残念ながらはっきりとはわかっていません。しかし、他の多くの病気で胸痛の特徴がよくわかっていて、たこつぼ型心筋症と見分ける鍵となります。

胸痛を起こしやすいたこつぼ型心筋症以外の病気と、それによって生じる胸痛の主要な特徴について説明します。

【胸痛が起こる主な病気と痛みの特徴】 

胸痛が起こる主な病気 痛みの代表的な特徴
急性心筋梗塞 しめつけられるように痛む
狭心症 運動すると痛む、1回あたり30分以下の痛みを繰り返す
冠れん縮性狭心症 夜間や早朝に痛む
急性大動脈解離 突然激しく痛む
塞栓 呼吸が苦しくなった後に痛む
胸膜炎 息をすると痛みが増す
自然気胸 突然痛む
食道破裂 吐いた後に痛む
食道炎 食事で痛みが増す
大動脈狭窄症 運動すると痛む
骨や筋肉、皮膚などの損傷 事故などの受傷した後から痛む
神経痛、帯状疱疹 チクチク痛む、神経の通り道に沿って帯状に痛む
悪性腫瘍 部位によってさまざま

必ずしも上記の特徴に当てはまる訳ではないことに十分な注意が必要ですが、胸痛の詳しい特徴を知ることで、より的確に診断のあたりがつけられます。

精神的ストレスについて:死別や災害など

たこつぼ型心筋症が疑われる人は、精神的な負担があったかどうか聞かれます。たこつぼ心筋症は欧米では「ストレス心筋症」とも呼ばれているほど、ストレスと密接な関係があるからです。たとえば、死別や災害などの精神的な負担がきっかけで、たこつぼ型心筋症になってしまう人がいます。無理なく答えられる範囲で構いませんので、最近大きな出来事や変化があったかどうかお医者さんに伝えておくとよいです。

その他、持病の有無や家族の病歴、心筋梗塞のなりやすさに関わることなども問診で詳しく聞かれます。

2. 身体診察

身体診察とは、お医者さんが見て聴いて触って、身体の様子を調べることです。たこつぼ型心筋症の身体診察について説明をします。

多くの人は身体診察で異常は見当たらない

たこつぼ型心筋症の多くは身体診察では異常がみつかりません。しかし、たこつぼ型心筋症に、心不全や左室流出路狭窄、心臓内血栓などの合併症が生じると、下記のような異常が見られます。

心不全を合併した人にみられる特徴:むくみ、心雑音など 

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して血液の循環が悪くなる状態です。たこつぼ型心筋症に心不全合併すると、さまざまな異常が身体診察で見つかります(心不全の詳細についてはこちらのページを参照してください)。

むくみ

心不全では身体がむくみやすくなります。顔を見ただけで「むくみ」がみつかることもありますし、脚を触って確認されることもあります。また、寝たきりの人では、お尻にむくみができやすいといわれています。

◎頚静脈怒張 

首の左右を走る静脈(頚静脈)は通常、横になっているときには膨らんで見えますが、身体を起こすと見えなくなります。しかし、心臓の血液を送りだす機能が悪くなると、身体を起こしていても頚静脈がしっかり見えるようになります。この状態を「頚静脈怒張」といって、心不全だけでなく肺塞栓やCOPDなどの病気でも見られることがあります。

胸水貯留 

心不全では胸に水が溜まることがあります。胸水がたくさんあれば打診で見つけることができます。打診とは、身体を軽く叩いて、その音で体内の変化を捉える診察法です。

◎呼吸音:水泡音と笛音

心不全の人の胸に聴診器を当てて呼吸の音を聞くと、水泡音(coarse crackle、コースクラックル)、笛音(wheeze、ウィーズ)という異常音が聞こえることがあります。

◎心音:ギャロップ

心臓の鼓動を聴診器で確認すると、心不全の人ではギャロップという心音が聞こえることがあります。心不全であれば必ず聞こえるというわけでありませんが、聞こえれば心不全である可能性が極めて高くなります。

左室流出路狭窄を合併した人にみられる特徴:収縮期雑音

左室流出路狭窄とは、心臓から大動脈へ向かう左室の出口が狭くなる状態で、たこつぼ心筋症の約15%に生じるといわれています。左室流出路狭窄が起きた人の心音を聴診器で確認すると、血液が狭窄部位を通過するときに、収縮期雑音が聴こえます。

3. 血液検査

血液検査から心臓の状態を知ることができます。また、治療をするにあたって必要な全身の状態についても調べます。

心筋の障害を調べる検査:CK、CK-MB、トロポニン、AST、LDH

心臓の筋肉がダメージを受けると、CK、CK-MB、トロポニン、AST、LDHが上昇します。たこつぼ型心筋症や心筋梗塞で値が高くなり、狭心症では上昇しません。狭心症とは、心臓に栄養や酸素を送る冠動脈という血管の流れが悪くなる病気で、心筋のダメージはない状態です。

心不全の有無を調べる検査:BNP、NT-proBNP

心不全になるとBNPやNT-proBNPの値が上昇します。ただし、心不全の診断は他の検査結果と合わせて総合的に行う必要があります。

心筋梗塞のなりやすさに関する検査:HbA1c、Glu、TG、T-Chol、HDL-Chol

血糖や脂質に関する検査をすると、心筋梗塞になりやすい状態かどうかが判断できます。心筋梗塞は心臓を流れる冠動脈が損傷することで起こり、糖尿病脂質異常症、高血圧、喫煙などの要因があると発症しやすくなります。

糖尿病脂質異常症は、血液検査をすると診断できます。具体的には、糖尿病はHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)やGlu(血糖)の値から、脂質異常症はTG(中性脂肪)やT-Chol(総コレステロール)、HDL-Chol(善玉コレステロール)、LDL-Chol(悪玉コレステロール)の値からわかります。

血糖や中性脂肪の値は食事の影響を強く受けるため、採血の何時間前に食事したのかお医者さんに伝えてください。

腎機能検査:BUN、クレアチニン

BUNやクレアチニンの値から脱水の有無や腎機能がわかります。これらは、治療で点滴をする際に水分やミネラルの量を決める時の参考にされます。

たとえば、クレアチニンの上昇に比べてBUNの上昇が顕著である人は脱水が疑われるので、水分やナトリウムを多めに投与されます。また、BUNとクレアチニンの両方が高い人は、腎機能の低下が予測されるので点滴中のナトリウムやカリウムの量を制限されることがあります。

また、腎機能が低下している人は、心臓カテーテル検査や冠動脈CT検査を受ける際に、造影剤による副作用が起こりやすいため注意が必要です。造影剤の投与を最小限にする工夫や、副作用を緩和する治療が併せて行われます。腎機能への影響を緩和させる方法には、例えば点滴による水分や塩分の投与、人工透析があります。

電解質検査:ナトリウム、クロール、カリウム、マグネシウムなど

たこつぼ型心筋症の治療に用いる点滴の成分を決めるために、ミネラルの測定が重要です。ナトリウムやクロールの値に応じて点滴中の塩分や水分の量が変更されることがあります。

また、カリウムやマグネシウムの値が異常だと不整脈が起こりやすくなります。カリウムやマグネシウムが異常値ならば、原因となる常用薬や病気がないかどうか調べたうえで、点滴や内服薬、食事によってカリウムとマグネシウムの量を調整します。

4. 心電図検査

たこつぼ型心筋症の人では、心電図で「ST上昇」や「陰性T波」といった異常が見られます。ここでは、12誘導心電図の説明をしたうえで、たこつぼ型心筋症に起こる心電図変化について述べます。

12誘導心電図とは

心臓の動きは電気信号によって制御されています。心電図検査とは、この電気信号の大きさや方向を調べる検査です。心電図検査は痛みがなく、副作用の心配がありません。

心電図検査の中で最も一般的なのが、12誘導心電図検査です。これは手足と胸に電極板をつけて行う検査で、12種類の脈波が記録されます。それぞれの脈波が、I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6と名付けられています。

たこつぼ型心筋症で生じる心電図変化:ST上昇や陰性T波について

たこつぼ型心筋症では、aVR、V2、V3、V4、V5、V6の脈波にてST上昇や陰性T波という変化が生じます。ST上昇とは、通常よりもST部分が基線よりも上がっている状態で下図のような波形です。また、T波と名付けられた波形は本来は上向きですが、下向きになっている形を陰性T波と言います(下図)。これらの変化は、前壁中隔という部分が傷害された心筋梗塞と酷似しています。

正常波形とST上昇、陰性T波

心電図だけではたこつぼ型心筋症と心筋梗塞を見分けるのは容易でないので、他の検査と合わせて判断されます。

5. 画像検査

代表的な画像検査である胸部レントゲン写真と心臓エコー検査冠動脈CTについて説明をします。

胸部X線写真

胸にX線を照射して、肺や心臓、大動脈などに病気がないかを調べる検査です。たこつぼ型心筋症を発症しただけでは胸部X線写真で異常はみつかりません。しかし、心不全を起こしていると下記のような変化が見つかります。

心不全でみられる主な胸部X線画像の変化】

  • 心臓拡大
  • 気管支壁の肥厚
  • 肺静脈のうっ血
  • 葉間胸水

詳細は心不全の検査のページを参照してください。

ただし、心不全の有無は他の検査と合わせて慎重に検討されます。

心臓超音波(心臓エコー)検査

人には聞こえない高い音(超音波)を身体に当てて臓器の断面図を観察する検査です。超音波検査では重大な副作用の報告はなく、安心して受けられます。超音波検査で心臓を検査すると、心臓の動きや血流を調べることができます。

たこつぼ型心筋症の人では、主に心尖部(心臓の先端の円錐形の部分)の動きが悪くなるのが観察されます。また、「心不全」や「左室流出路狭窄」「心臓内血栓」がみつかることもあります。

心不全

超音波検査のさまざまな計測値によって、心不全の有無が判断されます。代表的な指標としてEF(左室駆出率)があります。EFとは、心臓の左室が1回ごとに拍出する血液量を、左室が拡張したときの容量で割った比率(%)です。EFが低下していると収縮力が悪くなっていることを示し、心不全が疑われます。

◎左室流出路狭窄

超音波検査をすると、心臓の出口付近にある左室流出路が、狭くなっていないかどうかを調べることができます。

左室流出路狭窄とは、たこつぼ型心筋症の約15%に生じて、全身に十分な血液が送れなくなってしまう状態です。この左室流出路狭窄を見つけるのに、超音波検査が役立ちます。

◎心臓内血栓

たこつぼ型心筋症の人には、ごくまれに、超音波検査で心臓内血栓がみつかります。心臓内血栓がある頻度は、海外の報告によると、たこつぼ型心筋症の人の1.3%でした。心臓内血栓が血流内に飛び出して脳に到達すると、脳梗塞を起こしてしまうため、たこつぼ型心筋症の人にとって超音波検査は重要な検査です。

冠動脈CT検査

冠動脈CT検査とは、心臓にある冠動脈が詰まっていないか調べる検査です。CT検査は放射線を用いて身体の断面を映し出す検査で、造影剤という薬剤を注射して撮影すると血管が明瞭に観察できます。これにより冠動脈や大動脈などのさまざまな血管に損傷がないかどうか調べることができます。たこつぼ型心筋症によって冠動脈CT検査で異常がみつかることはありません。

6. 心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査とは、医療用の細長い管(カテーテル)を、足の付け根や腕の血管から刺し込んで、心臓まで進めて行う検査です。心臓のカテーテル検査を行うと、冠動脈や心臓の形状がモニターに映し出されます。

この検査で使用される造影剤で合併症を起こしやすいのは、気管支喘息、ヨードアレルギー体質、褐色細胞腫、腎機能障害の人などです。このような病気や体質がある人は、必ずお医者さんに伝えてください。造影剤の種類の変更や副作用を予防する治療が検討されます。

冠動脈造影

冠動脈造影は、心臓にある冠動脈の流れを調べる検査です。たこつぼ型心筋症かどうか見分けるのに重要です。

冠動脈造影検査の手順

お医者さんがレントゲン写真を確認しながら、足の付根や腕の血管からカテーテルを挿入します。次に、カテーテルの先端を冠動脈にはめ込み、造影剤を注入します。冠動脈に造影剤が流れる様子がレントゲン写真に映し出され、冠動脈に詰まりがないかどうかがわかります。

◎主な検査の目的:心筋梗塞と見分ける

冠動脈造影によって、たこつぼ型心筋症と心筋梗塞を見分けることができます。冠動脈の血流が悪くなっている像が映し出されれば心筋梗塞と考えられ、正常であればたこつぼ型心筋症などの病気が考えられます。

◎もう一つの目的:冠れん縮性狭心症と区別する

たこつぼ型心筋症と見分けづらい病気には、心筋梗塞の他に、冠れん縮性狭心症があります。冠れん縮性狭心症とは、冠動脈が一時的に収縮して生じる病気です。この病気の人は、冠動脈造影のときにアセチルコリンという薬剤を注入すると、冠動脈が収縮します。

左室造影

左室造影は心臓の左室(左心室)の形を見る検査です。カテーテルの先端を左室まで進めて造影剤を注入し、レントゲン写真を撮影すると左室が映し出されます。

たこつぼ型心筋症の80-90%の人で、心尖部(心臓の先端の円錐形の部分)の動きが悪くなって「たこつぼ」の形になった左室が映し出されます。

参考文献

・Fefer Pet al:Takotsubo cardiomyopathy and left ventricular outflow tract obstruction. J Interv Cardiol 2009 ;22: 444-452.
・Gianni M et al:Apical ballooning syndrome or takotsubo cardiomyopathy:a systematic review.Eur Heart J. 2006;27(13):1523-1529.
・坂本信雄ら. たこつぼ心筋障害の病態に基づいた治療と再発防止.日本心臓核医学雑誌.2013 15(3)14-15.