たこつぼがたしんきんしょう
たこつぼ型心筋症
心臓の一部が収縮しなくなり、急激に心臓の働きが悪くなってしまう病気
4人の医師がチェック 83回の改訂 最終更新: 2020.01.20

たこつぼ型心筋症の治療

たこつぼ型心筋症は、ほとんどが一時的で特別な治療をしなくても自然と治ります。しかし、心不全や流出路障害、心臓内血栓合併することもあり、この場合には治療が必要になります。また、多くの検査をしないと心筋梗塞と見分けがつきにくいことから、検査結果が出揃うのを待たずに、心筋梗塞の初期治療をすることがよくあります。

1. 心筋梗塞が否定されるまでの治療

たこつぼ型心筋症の症状は心筋梗塞と非常によく似ています。見分けるには多くの検査が必要になるため、診断まで時間がかかりがちです。しかし、心筋梗塞であれば命に関わるため一刻も早く治療を始めなくてはなりません。そのため、検査が出揃う前に心筋梗塞の初期治療を始めることがあります。

【心筋梗塞の代表的な初期治療】

これらは比較的副作用が少ないため、結果的にたこつぼ心筋症であったとしても治療による不利益を心配しすぎる必要はありません。

2. たこつぼ型心筋症と診断された後の治療

心筋梗塞でないことがわかり、たこつぼ型心筋症と診断された人は、合併症がなければ特別な治療をせずに様子を見ることになります。合併症がある人では合併症に応じた治療が必要です。

合併症がなければ様子見

たこつぼ型心筋症を改善する特別な治療はありません。強いていえば、原因となりうる薬剤や精神的ストレスの排除が治療になりますが、多くの人は治療しなくても自然と治ります。

合併症がある場合の治療

たこつぼ型心筋症では、まれに下記のような合併症を生じます。

心不全

たこつぼ型心筋症から心不全が引き起こされることがあります。心不全の人は、水分と塩分の摂取量を制限したり利尿剤を使用すると改善することがあります。

また、大動脈バルーンパンピングという装置が有用なこともあります。これは心臓の拍動に合わせて膨らんだり縮んだりする風船状の器具がついた装置で、大動脈に挿入して心臓のポンプ機能を助けます。

◎左室流出路狭窄

たこつぼ型心筋症の約15%の人に左室流出路狭窄が起こります。これは心臓の出口付近が狭くなって血液が全身に送り出しづらくなっている状態で、なかには、血圧が下がってショック状態となる人がいます。

治療では「β遮断薬」が使われます。ただし、β遮断薬は房室ブロックなどの不整脈を誘発する可能性があるので、慎重に投与されます。また、ショックになっている人は、点滴による水分や塩分の補充が行われます。一方で、一般的に低血圧の人に投与されるノルアドレナリンやドパミンといった昇圧剤の使用は好ましくありません。これらは、たこつぼ型心筋症を悪化させる可能性があります。このため、どうしても血圧が上がらないときは、フェニレフリンバソプレシンといった血圧を上げる薬剤の使用が考慮されます。

不整脈心房細動や心室性不整脈

たこつぼ型心筋症では、心房細動や心室性不整脈などの不整脈が生じることがあります。不整脈の予防と、実際に不整脈になってしまったときの治療に分けて説明をします。

不整脈の予防】

一部の抗生剤や抗精神病薬などには不整脈が出やすくなる副作用があります。そのため、たこつぼ型心筋症を発症したときには中止します。また、血中のカリウムが低いと心室性不整脈につながるため対処が必要です。

低カリウム血症の原因には、下痢、嘔吐、摂取不足、薬剤性(漢方薬、利尿薬など)、腎疾患など多彩であり、原因に即した治療とカリウムの補充が行われます。

不整脈の治療】

不整脈の治療には、抗不整脈薬の投与や除細動(いわゆる電気ショック)があります。また、心房細動では脳梗塞の原因となる血の塊が生じることがあるので、抗凝固薬という血液をサラサラにする薬が使用されます。

◎心臓内血栓

たこつぼ型心筋症の人の1-3%に心臓内血栓ができるといわれています。心臓内血栓があると、血流に乗って脳に到達し脳梗塞になることがあるので、予防のために血液をサラサラにする抗凝固薬が使用されます。抗凝固薬は点滴のこともあれば内服のこともあります。

3. 再発予防の治療

たこつぼ心筋症の再発予防にβ遮断薬が有効である可能性があります。この薬を使ってはいけないのは、高度の徐脈や未治療の褐色細胞腫がある人などです。β遮断薬は心臓を保護する効果なども見込まれるため、患者さんの病状によっては処方されることがあります。

参考文献

・坂本信雄ら. たこつぼ心筋障害の病態に基づいた治療と再発防止.日本心臓核医学雑誌.2013 15(3)14-15.
・Ken K, et al : Takotsubo Recurrence: Morphological Types and Triggers and Identification of Risk Factors. J Am Coll Cardiol. 2019 73(8):982-984.