高ナトリウム血症の基礎知識
POINT 高ナトリウム血症とは
ナトリウム(Na)は人間にとって重要なミネラルであり、血液中のNa濃度は概ね140mEq/L前後に維持されています。これが何らかの理由で150mEq/Lを超えているような状態を高Na血症と呼びます。脱水症が原因であることが多く、水分補給が適切に出来ない高齢者や子供で見られやすい病気です。症状としては、意識がぼんやりとする、錯乱する、興奮する、痙攣する、などの脳に関連したものが出やすいです。脳出血なども起こしやすくなると言われており注意が必要です。診断は血液検査により容易に行うことができます。高Na血症になった原因がはっきりしない人には、尿検査や画像検査などが追加で行われることもあります。治療は高Na血症になった原因によって異なりますが、不足している水分を補充することが基本です。高Na血症が心配な人や治療したい人は一般内科、内分泌内科、腎臓内科、小児科などを受診してください。
高ナトリウム血症について
- 血液中のナトリウム濃度が上昇した状態
- 喉の渇きや興奮状態、痙攣が起こる
- 様々な病気が高ナトリウム血症を起こす
- 血中ナトリウム濃度は135mEq/lから145mEq/l程度が正常
- 主として以下の原因が考えられる
- 飲水不足による脱水
- 腎臓以外からの水分喪失による脱水
- 腎臓での水
代謝 異常による水分喪失 - 細胞内への水分の移動
- 大量の
輸液 やナトリウムを含む薬剤によるナトリウム過剰 - 腎臓でのナトリウム代謝異常によるナトリウム過剰(尿崩症、鉱質コルチコイド過剰など)
- 飲水不足の原因
- 高齢者
- 乳幼児
- ほかの原因による
意識障害 で水を飲めない - ほかの原因により動き回れず水を飲めない
- 腎臓以外からの水分喪失の原因
- 細胞内への水分の移動の原因
- けいれん、
横紋筋 融解による細胞崩壊
- けいれん、
- 腎臓での水代謝異常による高ナトリウム血症の原因
- 血漿浸透圧が上がると水分が尿として失われる(浸透圧利尿)
- 糖尿病
- 高カロリー輸液
- 高タンパク経腸栄養
- 浸透圧利尿薬(マンニトール、グリセロール)
- 利尿薬の作用で水分が尿として失われる
- 血漿浸透圧が上がると水分が尿として失われる(浸透圧利尿)
- ナトリウム過剰を起こす輸液や薬剤の例
- ナトリウム濃度が高い輸液
- 重炭酸ナトリウム
- 溺れて大量の海水を飲んだ
- 腎臓でのナトリウム代謝異常によるナトリウム過剰の原因
- 尿の量は抗利尿
ホルモン (ADH、バソプレシン)がコントロールしている - ADHは腎臓に作用して尿量を減らすとともに、血中のナトリウムを尿に排出させる
- ADHの作用が不足すると尿量増加、喉の渇き、高ナトリウム血症などが起こる(尿崩症)
- 間脳の
視床下部 や下垂体 後葉の障害によりADH分泌量が減少する(中枢性尿崩症) - 腎臓の障害によりADHの作用を受けられないと尿崩症になる(腎性尿崩症)
副腎皮質ホルモン の一種の鉱質コルチコイドは腎臓に作用してナトリウムの再吸収を促す- 鉱質コルチコイド作用過剰により高ナトリウム血症になる
- 原発性アルドステロン症
- 偽性アルドステロン症(甘草、グリチルリチン酸製剤による)
ステロイド薬 - 先天性副腎皮質過形成(11β-水酸化
酵素 欠損症)
- 腎不全でナトリウムの排泄能力が下がる
- 本態性高ナトリウム血症(原因不明)
- 尿の量は抗利尿
- 通常、血液中のナトリウム濃度が上昇しても喉が渇いて水分を摂取するためナトリウム濃度は正常に戻る
- そのため、低ナトリウム血症に比べると高ナトリウム血症の頻度は低い
高ナトリウム血症の症状
高ナトリウム血症の検査・診断
高ナトリウム血症の治療法
- 軽度で無症状であれば、飲水のみで改善する
- 重症であれば点滴で水分を補充して、ゆっくりと血液中のナトリウム濃度を下げる
- 5%
ブドウ糖 液とループ利尿薬(フロセミド、商品名ラシックス)を使う - 急にナトリウム濃度を下げると脳浮腫を引き起こす恐れがある
- 1時間あたり1mEq/lから2mEq/l、1日で12mEq/lまでの補正にとどめる
- 5%
- 診断に基づいて、原因となっているものを治療していく
- 中枢性尿崩症に対してはADH(バソプレシン)を与えることが重要
- バソプレシンを元に作られたデスモプレシン製剤の
点鼻薬 (鼻から吸収させる)を使うことが多い - 2013年に飲み薬のデスモプレシン製剤であるミニリンメルト(商品名)が発売された
- バソプレシン自体の注射製剤(商品名:ピトレシン®)を使うこともある
- バソプレシンを元に作られたデスモプレシン製剤の
高ナトリウム血症の経過と病院探しのポイント
高ナトリウム血症が心配な方
高ナトリウム血症では、意識がもうろうとしたり、吐き気が出現したりします。通常高ナトリウム血症になる前に、感染症や熱中症など原因となる何らかの別の病気がありますので、高ナトリウム血症だけが突然起きるという心配はありません。
高ナトリウム血症の診断そのものは、内科全般で行えます。血液検査が行える医療機関であればどこでも対応が可能です。
高ナトリウム血症は、血液検査の結果で診断します。ナトリウムの濃度は通常135-145mEq/l程度ですが、145mEq/lや150mEq/lを上回って、意識がもうろうとしたり、けいれんなどの症状がある場合に高ナトリウム血症と診断します。症状が伴わず数値が高いというだけでは、病気としての高ナトリウム血症とは呼びません。
高ナトリウム血症でお困りの方
高ナトリウム血症の治療では、体内に溜まりすぎたナトリウムを薄めるために、水分を多めに摂取することになります。基本的には入院の上で、点滴で必要な量の水分をとるようにします。
それと同時に、高ナトリウム血症の原因となった何らかの病気(発熱の原因となるような肺炎や尿路感染症、熱中症など)が隠れていることも多いですので、そちらの病気の治療も同時に行う必要があります。
入院が可能な総合病院であれば、ほとんどの病院で対応が可能です。また、基本的には大学病院などの高度医療機関である必要はなく、どこで入院をしてもあまり治療方針に差がつきにくい病気の一つです。