しょくどうがん
食道がん
食道の表面の粘膜にできたがん。たばこ、飲酒などが一因であると言われている
15人の医師がチェック 237回の改訂 最終更新: 2026.02.16

食道がんの抗がん剤治療②:薬の効果や副作用の詳細解説

食道がんの手術の前後、放射線治療との併用、転移している場合などに抗がん剤を使います。よく使われる薬の特徴・副作用などを説明します。 

食道がんの抗がん剤治療で使う薬の例を挙げます。

  • フルオロウラシル

  • シスプラチン

  • ネダプラチン

  • ドセタキセル

  • パクリタキセル

  • イリノテカン

それぞれ順に説明します。

フルオロウラシルは、がん細胞の代謝を阻害し、がん細胞を死滅させる代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)という種類に分類されます。

フルオロウラシルは細胞増殖に必要なDNAの合成を障害する作用やRNAの機能障害を引き起こすことでがん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導させます。

現在ではフルオロウラシルを単剤(抗がん剤として単独)で使うことは少なく、他の抗がん剤もしくは5-FUの効果を増強する薬剤(主に活性型葉酸製剤)との併用により使われます。

食道がんの治療においてはシスプラチンと5-FUを使う治療法(FP療法)などが使われています。

食道がん以外にも大腸がん(FOLFOX療法、FOLFIRI療法など)、乳がん(CEF療法など)、胃がんでのシスプラチン及びトラスツズマブとの併用療法など、多くのがん化学療法のレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)で5-FUが使われています。

5-FUで注意するべき副作用は吐き気や下痢、食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、うっ血性心不全、口腔粘膜障害、手足症候群などです。他の抗がん剤との併用療法ではこれら5-FU自体の副作用に加え、併用する抗がん剤の副作用が加わることが考えられます。また5-FUは亜鉛の吸収を悪くするため味覚障害があらわれる場合があります。味覚障害は食欲不振と合わせて注意したい副作用です。

シスプラチンは、化学構造中にプラチナ(白金:Pt)を含むことからプラチナ製剤という種類に分類される抗がん剤です。細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の分裂を止め、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導することで抗腫瘍効果をあらわします。

食道がんの治療ではフルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンを使う方法(FP療法)などが使われています。

シスプラチンは多くのがん化学療法のレジメンで使われる薬剤です。食道がん以外にも肺がん、食道がん、子宮頸がん乳がん胃がん膀胱がんなど色々ながん治療に対して承認されています。

注意すべき副作用に腎障害(急性腎障害など)、過敏症、骨髄抑制、末梢神経障害、消化器障害、血栓塞栓症、低マグネシウム血症などがあります。その他、難聴・耳鳴り、しゃっくりなどがあらわれることもあります。

また治療中に水分を摂る量が減ると腎障害の悪化などがおこる可能性があります。医師から治療中の具体的な水分摂取量が指示された場合はしっかりと守ることも大切です。

ネダプラチンは、シスプラチンなどと同様に化学構造の中にプラチナ(白金:Pt)を含むプラチナ製剤という種類の抗がん剤です。ネダプラチンは国内で初めて開発されたプラチナ製剤です。

細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導することで抗腫瘍効果をあらわします。

食道がん以外にも頭頸部がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、膀胱がん精巣腫瘍卵巣がん子宮頸がんといったように様々ながんに対して保険適用を持つ抗がん剤です。多くの場合、がん化学療法における標準治療の抗がん剤にはなってはいませんが、標準治療でよく使われるシスプラチンに比べ一般的に腎毒性が少ないメリットなどが考えられます。食道がんではフルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンの併用療法(FP療法)が標準治療となっています。病態などによっては5-FUとネダプラチンの併用療法などが治療の選択肢となることも考えられます。

シスプラチンに比べて一般的に腎毒性の懸念が少ないとはいえ、腎障害(急性腎障害など)には注意が必要です。また過敏症、血小板減少などの骨髄抑制、吐き気や食欲不振などの消化器障害、耳鳴りなどの聴力障害、末梢神経障害、脱毛、肝機能障害、循環器症状などにも注意が必要です。

腎障害を予防するため、一般的に輸液などによる水分補給が考慮されますが、日々の尿量を確認するなど、日常生活の中での注意を事前に医師からしっかりと聞いておくことも大切です。

ドセタキセルは、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えやがて細胞死へ誘導させることで抗腫瘍効果をあらわす微小管阻害薬の一つです。

ドセタキセルはイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯により、微小管阻害薬の中でも、学名を由来としたタキサン系という種類に分類されます。

切除不能進行・再発の食道がんにおいては例えば、一次治療で使われることが多いウルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンの併用療法(FP療法)が効かなくなった場合に二次療法としてドセタキセル単剤投与などが行われています。

ドセタキセルは、食道がん以外にも非小細胞肺がん乳がん胃がん卵巣がん子宮体がん前立腺がんなど多くのがん治療に使われることがある抗がん剤です。

ドセタキセルで注意すべき副作用に過敏症、骨髄抑制、関節や筋肉の痛み、しびれなどの末梢神経障害、脱毛などがあります。病態などにもよりますが脱毛は抗がん剤の中でも高頻度であらわれる薬の一つで、眉毛などが抜ける場合も考えられます。必要に応じて帽子やウイッグなどを用意するなどの事前準備も大切です。

またドセタキセル製剤は添加物や添付溶解液にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合には注意が必要です。

パクリタキセルは、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えやがて細胞死へ誘導させることで抗腫瘍効果をあらわす微小管阻害薬の一つです。

ドセタキセルと同じくイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯により、微小管阻害薬の中でも、学名を由来としたタキサン系という種類に分類されます。

切除不能進行・再発の食道がんにおいてはフルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンなどの一次療法で不応となった場合、二次療法で同じタキサン系薬剤のドセタキセルが治療の選択肢となっていますが、パクリタキセルが使われることもあります。この場合のパクリタキセルは主に「7週を1サイクル」とする化学療法(ウィークリー・パクリタキセル療法:weekly PTX療法)です。すなわち7週間(49日)の中で「第1、8、15、22、29、36日目」にパクリタキセルを投与する治療法が行われています。

パクリタキセルは食道がんの他、肺がん乳がん胃がん卵巣がん子宮体がん膀胱がんなどの多くのがん治療に使われることがある抗がん剤です。

注意すべき副作用に過敏症、骨髄抑制、関節や筋肉の痛み、しびれなどの末梢神経障害、脱毛などがあります。病態などにもよりますが脱毛は抗がん剤の中でも特に高頻度であらわれる薬で、眉毛などが抜ける場合も考えられます。必要に応じて帽子やウイッグなどを用意するなどの事前準備も大切です。

またパクリタキセル製剤は添加物にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合には注意が必要です。

イリノテカンは植物(喜樹:Camptotheca acuminata)由来の抗がん剤で、細胞分裂が進まないようにする作用により、がん細胞の増殖を阻止することで抗腫瘍効果をあらわすトポイソメラーゼ阻害薬という種類に分類される薬です。

がんを含めた細胞の増殖は細胞分裂によっておこります。細胞分裂に必要な酵素にトポイソメラーゼがあります。イリノテカンは主に「トポイソメラーゼI」のタイプを阻害する作用をあらわします。

イリノテカン自体は大腸がん膵臓がん(FOLFIRINOX療法)、胃がん乳がん肺がん子宮頸がんなどの多くのがん治療で使われる薬剤です。

現時点(2017年5月)で「食道がん」への保険適用が未承認ではありますが、神経内分泌細胞がんに対してシスプラチンとの併用療法が有効である可能性が考えられるなど、今後の臨床試験の結果などによっては食道がん治療に対する有用な選択肢になることも考えられます。

イリノテカンは骨髄抑制、間質性肺炎などの他、特に下痢に対しての注意が必要です。イリノテカンの下痢は薬剤の投与中から直後にあらわれる早発性の下痢と投与から数日経ってあらわれる遅発性の下痢の2種類があります。それぞれ下痢に合わせた対処が必要となります。例として遅発性の下痢に対するロペラミド(商品名:ロペミン®など)などの対処がありますが、最近では漢方薬による対処も選択肢になっています。特に半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)は速効性と持続性の両面の作用により、早発性と遅発性のどちらの下痢にも有用であるとされています。