サルコペニアの症状:歩くのが遅くなる、ふらつく、握力が低下する、痩せるなど
サルコペニアでは歩くのが遅くなったり、ふらついたりといった
目次
1. サルコペニア(sarcopenia)でよくみられる症状
サルコペニアでは筋肉量の減少によってさまざまな身体機能の低下がみられます。具体的には、日常生活で下記のような症状を自覚することが多いです。
- 歩くのが遅くなる
- ふらつく、転びやすい
- 階段の上り下りが遅い
- 握力が落ちる
- 痩せる
- 姿勢を保てない
- 食事が飲み込みにくい・むせる
これらは年齢を重ねると誰にでも起こりうる症状ですが、早めに気づいて予防をすることで、できるだけ長く身体機能を維持することができます。
歩くのが遅くなる・ふらつく・転びやすい
主に足の筋肉量が減ることで歩くのが遅くなります。歩行速度はサルコペニアの診断基準にも含まれる検査項目で、具体的には秒速1m以下の場合にはサルコペニアが疑われます。
日常的には、横断歩道で信号が青いうちに渡れるかどうかが目安になります。横断歩道は秒速1mで渡り切れるように設計されているため、青信号のうちに渡りきれない場合にはサルコペニアが疑われます。
また、歩行時にふらついたり、転びやすくなったりもします。転倒した拍子に怪我や骨折をして安静を余儀なくされると、筋肉量がさらに低下して寝たきりや要介護状態になってしまうことがあるため注意が必要です。
階段の上り下りが遅い
サルコペニアでは階段の上り下りも以前より時間がかかるようになります。また、手すりがないと上り下りが難しくなったりします。歩行速度の低下よりも早い時期に自覚することが多い症状です。
握力が落ちる:ペットボトルのフタやドアノブが回せない
サルコペニアの診断基準のひとつに握力の低下があります。握力は全身の筋力の状態を把握する目安になります。ペットボトルのフタが開けられない、ドアノブをうまく回せないなどは握力低下のサインです。
痩せる
筋肉量が低下すると、以前より痩せて見えることがあります。筋肉が痩せているかどうかは「指輪っかテスト」で簡単にチェックできます。両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの1番太い部分を囲んでみてください。ふくらはぎと指輪っかの間に隙間ができるようなら、サルコペニアが疑われます。
姿勢を保てない:猫背になる・立っていられない
サルコペニアが進行すると、全身の筋力の低下から姿勢を保つのが辛くなります。猫背になったり、立っているのが辛くなったり、疲れやすくなったりします。
食事が飲み込みにくい・むせる
口や喉の筋力が低下して、食事の咀嚼や飲み込みがしにくくなり、むせやすくなることがあります。
サルコペニアが原因で誤嚥性肺炎が起こることもあります。誤嚥性肺炎とは食べ物や唾液が食道ではなく気管や肺に間違って入ってしまうことで起こる肺炎のことです。詳しくは「むせると危ない?誤嚥性肺炎とはどんな病気か」を参考にしてください。
2. サルコペニアに似た病気:筋肉が痩せる・落ちる・衰える
サルコペニア以外にも筋肉が痩せたり筋力が衰える病気があります。
サルコペニアの原因は加齢の他にも、長期間の入院での安静、極端な栄養不足などがありますが、そのような思い当たる原因がないにも関わらず、筋肉が痩せた、落ちた、衰えたなどと感じる人は、医療機関を受診してください。
筋肉が痩せる病気には、大きく分けて筋肉自体に原因があるもの(筋原性筋
筋原性筋萎縮を起こす病気
筋肉自体に原因があって筋肉が痩せる(筋原性筋萎縮)病気です。肩から二の腕にかけてや、腰から太ももにかけてなど、胴体に近い筋肉から痩せる傾向にあります。
筋原性筋萎縮が起こる病気は次のようなものがあります。
筋ジストロフィーは遺伝子異常によって筋肉が萎縮し、筋力低下を起こす病気です。多発筋炎や皮膚筋炎は
神経原性筋萎縮を起こす病気
筋肉は神経からの運動の指示によって動きます。この指示を伝える神経が病気でうまく働かなくなると、筋肉に刺激が入らなくなって筋肉が痩せます。神経原性筋萎縮では体幹よりも手足の指の筋肉が落ちやすいという特徴があります。
具体的には次のような病気があります。
- 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis:ALS)
- ギランバレー症候群
- 頚椎
ヘルニア - 糖尿病性ニューロパチー など
筋萎縮性側索硬化症の原因はまだわかっていませんが、運動を司る神経細胞が侵されて全身の筋萎縮を起こす病気です。ギランバレー症候群は
3. サルコペニアに似た状態:ロコモティブシンドローム・フレイルとは何か
人の身体は加齢に伴ってさまざまな変化を起こします。特別な病気がなくとも年齢に伴う変化で現れる状態はサルコペニアの他にロコモティブシンドローム、フレイルがあります。
ロコモティブシンドローム(ロコモ):筋肉や関節、骨の機能や質の低下
サルコペニアに似た概念としてロコモティブシンドロームがあります。サルコペニアが筋肉量の減少を原因とする状態を指すのに対し、ロコモティブシンドロームでは骨や関節、
手足などの運動器が衰えて移動動作が難しくなり、介護が必要となりそうな状態を「ロコモティブシンドローム」と呼びます。略して「ロコモ」とも呼ばれています。
ロコモティブシンドロームの成因は次の通りです。
- 筋力や神経活動の低下
脊椎 や関節の変性 - 骨密度の低下
サルコペニアはこの中の筋力の低下に関係しています。脊椎や関節の変性は変形性関節症などが関連し、骨密度の低下は骨粗鬆症などと関連します。さらにロコモティブシンドロームは次に説明するフレイルの中の身体的な機能低下の1つに含まれます。このように、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、フレイルは密接に絡み合っています。
フレイル:身体的、社会的、精神的な活動性の低下
フレイルは健常な状態と、日常生活でサポートが必要な要介護状態の間の状態をさしています。フレイルはサルコペニアやロコモティブシンドロームより大きな概念です。
WHOの健康の定義には「健康とは、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」とあります。サルコペニアやロコモティブシンドロームはこれらのうち、身体的な面に注目した概念です。一方、フレイルは身体的な問題だけではなく、加齢に伴う意欲の低下やうつなどの精神的な問題、閉じこもりなどの社会的な問題も含めた概念です。
多くの人では、サルコペニアやロコモティブシンドロームの状態を経てフレイルになります。フレイルは介護が必要となる一歩手前の状態ですが、適切な治療や支援で健康な状態に戻ることができます。しかし、健康な人よりも怪我や病気になりやすく、また治りにくい状態なので、ちょっとしたきっかけで急激に日常生活が困難になって介護が必要になる可能性があります。そのため、フレイルの時期に健常に戻れるように介入することが、要介護の予防に重要です。
次の5つの項目のうち、3つ以上に当てはまる場合にフレイルと診断されます。
- 体重の減少
- 握力低下
- 易疲労感
- 歩行速度の低下
- 日常生活活動度の減少
上記のうち1-2項目に該当した場合にはプレフレイルと呼ばれます。また、「握力低下」と「歩行速度の低下」の2項目はサルコペニアの診断基準と共通しています。