ひまん(ひまんしょう)
肥満(肥満症)
皮下脂肪、内臓脂肪が蓄積した状態で、BMIが25以上の場合を指す。さらに健康障害などの条件を満たすと「肥満症」に該当する
8人の医師がチェック 89回の改訂 最終更新: 2024.12.04

肥満(肥満症)の合併症について:糖尿病、高血圧症、脂質異常症、動脈硬化など

肥満(肥満症)は全身の臓器や精神状態に影響を及ぼし、さまざまな病気を引き起こします。また、肥満と生活習慣は切っても切れない関係であり、生活習慣が関連する他の病気を併発していることが少なくありません。ここでは肥満の人に知っておいてほしい病気について説明していきます。

1. 生活習慣と関わりのある病気:糖尿病、高血圧症、脂質異常症、脂肪肝など

肥満の原因の多くは、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣です。このような生活習慣は他の病気の原因にもなり、肥満の人では糖尿病脂質異常症脂肪肝高血圧症といった病気を持っていることが少なくありません。将来の健康のためには、生活を見直し、肥満とともにこれらの病気を改善することが重要です。

糖尿病

血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)を正常範囲にとどめておくことができなくなる病気です。糖尿病には、血糖値を下げるインスリンというホルモンが深く関わります。肥満の人では主にインスリンの効きが悪くなることで、血糖値が上がりやすくなります。

血糖値が上昇して糖尿病になっていても、初期の段階では症状がないことが多く自分で気づくのは困難です。このため、健康診断などで定期的に血液検査を受けることが早期発見に役立ちます。

減量は肥満の人の糖尿病を改善するために有効です。さらに、減量が糖尿病の予防に有効であるという報告もあります。たとえば、境界型糖尿病(いわゆる糖尿病予備軍)(*)の人たちが半年で平均5.6kg減量したところ、58%の糖尿病抑制効果があったという研究結果が報告されています[1]。

体重を減らすにはカロリー制限や運動習慣が重要ですが、それでも糖尿病の改善が難しいときには糖尿病薬を使います。肥満で糖尿病の人によく使われる薬として、ビグアナイドSGLT-2阻害薬GLP-1受容体作動薬などがあります。

*境界型糖尿病とは、血液検査で糖尿病の基準は満たさないものの食後血糖が高めの人たちのことです。

高血圧症

高血圧症とは血圧が高い状態が続いていることを指します。血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかり、心筋梗塞脳出血などの発症リスクが増加します。

肥満の人はそうでない人に比べて高血圧症を発症する確率が2-3倍高くなると言われています[2]。

高血圧となっているかどうかは医療機関での血圧測定でもわかりますが、家庭で日々の血圧を測定するとより正確に判断できます。家庭での血圧が135/85mmHgを超えていたら高血圧に当てはまります。

ただし、血圧は1日の間で変動することに注意が必要です。自宅で血圧測定する時には朝晩の2回、決まった時間に測定します。その際、できるだけ血圧が安定した状態で測定できるように、以下のタイミングで測ると良いです。

  • 朝の測定時:起床後1時間以内で排尿した後。朝の常用薬があれば服薬前。
  • 夜の測定時:就寝前で入浴を済ませた後。飲酒するならば飲酒の直後は避ける。

また、朝晩いずれの時でも、座った姿勢で1-2分程度安静にしてから測るとさらに良いです。肥満の人は高血圧になりやすいため、定期的に自宅での血圧を測ることをおすすめします。

なお、肥満で高血圧症がある人は、食事制限や運動による減量が効果的です。ある研究では、体重を平均4.0kg減らした人たちで、収縮期血圧が4.5mmHg下がったそうです[3]。生活習慣の見直しをしても血圧の改善が難しい人は、降圧薬を飲んで血圧を下げることで血管への負担を抑えることができます。

脂質異常症

脂質異常症は、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪トリグリセライド)が多い状態、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が少ない状態です。

肥満になると、中性脂肪が増加しHDLコレステロールが減少して脂質異常症になりやすくなります。脂質異常症になっても症状はほとんど出ないため、自分で気づくことは困難です。そのため、肥満の人は健康診断などで定期的に血液検査をするようにしてください。

脂質異常症糖尿病高血圧症と同様に、食事と運動習慣の改善が重要です。特に、ジョギング、水泳などのように息が上がる運動、つまり有酸素運動が有用です。

とはいえ、運動習慣がない人が突然激しい運動をすると、身体に過度の負担がかかってしまうことがあります。早歩きやサイクリングでも十分ですので、継続しやすく自分に合ったものを選ぶようにしてください。どれくらいの運動量が良いのか判断に迷う人は医療機関に相談してから運動するようにしてください。

生活習慣を改善しても十分に脂質異常が改善しない人は、治療薬を内服することでコレステロールや中性脂肪の値を正常に近づけ、動脈硬化性疾患を予防することができます。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)

肝臓に脂肪がついた脂肪肝のうち、アルコール以外の原因で起こるものをNAFLDと呼びます。自覚症状に乏しいため、健康診断や他の病気を調べるための検査で偶然見つかることが多いです。

NAFLDのうち約10%の人は、肝硬変肝臓がんになりやすい状態である「非アルコール性脂肪肝炎NASH:ナッシュ)」になっているといわれています。NAFLDNASHを見分けるのは難しいこともあるので、NAFLDと言われた人は肝硬変肝臓がんになるリスクが多少高いと考えておいたほうがよいでしょう。肝硬変肝臓がんは早期発見・早期治療が重要です。定期的に腹部エコーや血液検査で調べることをおすすめします。

なお、肥満の人のNAFLDにも減量が有効です。

高尿酸血症・痛風

高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度が高い状態のことです。過剰な尿酸が関節に沈着すると、関節に炎症が起きて痛風発作を起こします。

肥満の人では腎機能の低下によって尿酸の排泄が不十分になり、尿酸がたまりやすくなります。痛風発作を防ぐには、尿酸値を下げることが効果的です。肥満の人は体重を3%以上落とすことで尿酸値を下げる効果が期待できるという報告があることから[8]、まずは3%の減量を目標とするとよいでしょう。それでも尿酸値が下がらなければ、尿酸値を下げる治療薬を使用することがあります。

腎臓病

肥満は腎臓病の原因になると考えられています[9]。肥満の人は糖尿病や高血圧になりやすく、これらの病気が間接的に腎臓病を招くこともあります。腎臓が障害を受けると体の中の老廃物の除去する働きが不十分になり、この状態が進行すると生命を維持するために人工透析が必要になることがあります。

軽症のうちに発見し治療することが望ましいのですが、腎臓病の初期では自覚症状に乏しく気づきにくいことが多いです。健康診断などで定期的に血液検査や尿検査を受けることで早期発見につながります。

肥満による腎臓病を予防するには、食事療法や運動療法で適切な体重まで減量し、それを維持することが大切です。

2. 動脈硬化に関わる病気:心筋梗塞、脳梗塞など

肥満の人は全身に動脈硬化が起きやすいです。動脈硬化が心臓に起きれば狭心症心筋梗塞につながりますし、脳に起きれば脳卒中につながります。

心筋梗塞・狭心症

狭心症は、心臓に血液を送る冠状動脈が詰まりかけている状態です。一時的に血の流れが悪くなると胸痛などの症状が起こりますが、血流が再開することで症状は治ります。早期に血流が再開すれば心臓の筋肉はダメージを受けることなく元通りに動くようになります。

一方で、心筋梗塞狭心症よりも重症な状態です。血液の流れが悪い状態が長く続くと、心筋がダメージを受けて死んでしまい再生できなくなります。この状態を心筋梗塞と呼びます。心筋梗塞が広い範囲に起こると心臓の動きが悪くなり、体に血液を送り出すポンプの働きが低下してしまいます。

狭心症心筋梗塞の代表的な症状は、胸痛や肩の痛み、冷や汗などです。胸の痛みは「締め付けられるような痛み」と表現されることが多いです。このような症状を感じることがある、あるいは運動するたびに症状が出る場合には医療機関に相談してください。

脳梗塞・一過性脳虚血

脳梗塞は、脳に血液を送る動脈の流れが悪くなって脳がダメージを受けた状態です。症状は障害される脳の部位によってさまざまです。たとえば、手足が動かしづらくなる、ものが二重に見える、意識が悪くなる、しゃべりづらくなるといった症状があります。これらの症状がある人はすぐに医療機関を受診してください。

少し時間が経つと症状が消える場合もあり、これを一過性脳虚血と呼びます。これは脳の血管がつまりかけているために一時的に血流が悪くなることで起こる症状です。この場合、症状がなくなったとしてもすぐに受診をしてください。脳の血流が不安定であることから近い将来に脳梗塞となる可能性が高いのです。一過性脳虚血の状態であれば、完全に血管が詰まる前に治療を受けることで脳梗塞を予防することができます。

3. 消化器に関わる病気:胃食道逆流症、胆石症

肥満は消化管、肝臓、胆道といった消化器にも影響します。ここでは、肥満の人が知っておくと良い消化器疾患とその受診の目安、対処法を紹介します。

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

胃食道逆流症逆流性食道炎)は、胃酸や胆汁などが胃から食道に逆流することによって起こります。症状は胸焼け、みぞおちの痛み、むせこみ、のどの違和感などです。肥満でない人にもよく見られる病気ではありますが、肥満の人には特に起こりやすいです。内臓脂肪により胃が圧迫されたり、そもそも食べる量が多かったりするのが原因ではないかと考えられています。

下記のような生活習慣の見直しをすることで症状の軽減が期待できますので、試してみてください。

  • 食べすぎない
  • 食べてすぐに横にならない
  • 枕を高くして寝る(ベッドの頭側を起こして寝る)
  • 刺激物(お酒、炭酸飲料、香辛料、脂肪分の多いもの)をさける
  • 禁煙する
  • 体重を減らす

これらで症状が治らない時や強い症状がある時には、医療機関を受診してください。内服薬による薬物治療を受けたり、似たような症状を起こす他の病気が隠れていないかを検査で調べることができます。

胆石症

胆嚢や胆管に結石がある状態です。肥満の人では胆汁中のコレステロールが増加しやすく胆石ができやすいです。症状がない場合もありますが、胆石が胆嚢や胆管を閉塞したり、炎症を起こしたりすると、腹痛、発熱、黄疸(胆汁の流れが悪くなることで皮膚や白目が黄色くなること)といった症状が起きます。腹痛はお腹の右上に起きることが多いです。これらは胆石症に気づくための重要なサインですので、気づいた時は医療機関を受診してください。

なお胆石症は急な減量をしている人にも起こりやすいことがわかっています。1週間に1.5kg以上のペースで減量をすると胆石ができやすいという報告もありますので[5]、肥満の人は減量中にも胆石症の症状に注意するようにしてください。

4. 呼吸器に関わる病気:睡眠時無呼吸症候群、気管支喘息

肥満の人は睡眠中に気道が狭くなり睡眠時無呼吸症候群を起こしやすいです。また、肥満は気管支喘息の発症リスクを高めることもわかってきました。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。肥満の人はのど周りについた脂肪によって気道が狭くなるため、睡眠時に呼吸が止まりやすくなります。主な症状は、いびき、日中の眠気、疲労感です。

睡眠時無呼吸症候群かどうかは、睡眠中に機械を装着して検査をします。クリップのようなセンサーを指先につけて酸素が身体に行き渡っているかどうかを調べ、鼻につけるセンサーで無呼吸の回数や時間を測定します。呼吸が止まっている回数が多ければ、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

治療として、肥満が原因であれば減量をする、寝る時に持続陽圧呼吸マスク(CPAP)を装着する、などがあります。

気管支喘息

いろいろなきっかけで気道に炎症がおき、気管が狭くなって呼吸が苦しくなる病気です。きっかけは、ほこり、ペット、花粉、タバコの煙、冷たい空気、風邪など、さまざまです。発作の時には気道が狭くなるため、呼吸をした時に笛のように、ぜいぜい、ヒューヒューといった音がでます。気管支喘息は肥満の人で発症しやすく、体重が増えれば増えるほど発症率が高まると言われています。肥満の人では減量することが気管支喘息発作の予防になります。

5. 月経異常・不妊

肥満の女性は無月経稀発月経といった月経の異常がでやすいと言われています[10]。無月経とは月経が3ヶ月以上こないことであり、稀発月経は月経周期が39日以上となることです。これらの月経異常に伴い、不妊になることがあります。

肥満の人では減量することで月経異常の改善が期待でき、妊娠する確率が高まると言われています[11]。ただし、月経異常の原因となるのは肥満だけではないことに注意が必要です。たとえば子宮内膜症や子宮がんも月経異常の原因となり、その場合は治療が必要です。これらの病気の有無は婦人科で調べられますので、月経異常がある人は相談してみてください。

6. 関節や骨の病気:変形性関節症

変形性関節症とは関節の軟骨がすり減って、動きにくさ、痛み、腫れなどが生じる病気です。肥満の人は関節にかかる負担が大きいため、この病気になりやすいです。

したがって、治療では減量が重要になります。減量には運動が効果的であるものの、過度な運動をすると関節に負担がかかり、かえって変形性関節症が悪くなってしまうことがあります。どれくらいの運動ならばよいのか悩ましいですが、関節の痛みが出ない程度の運動を一つの目安にするとよいです。たとえば、プールでの歩行は関節への負担が少なく、痛みが起きづらい運動としておすすめです。

7. 精神的な病気:気分障害など

肥満の人は気分障害(うつ病躁うつ病など)、不安障害、摂食障害になりやすいと言われています[6]。特にうつ病は肥満の人に多いと言われており、肥満でない人と比べて発症リスクが55%高まるという報告があります[7]。不眠、不安、疲労感、焦燥感などがあり、これらの症状への対処が難しい時には精神科や心療内科への受診を考慮してください。

参考文献

  1. Knowler WC, et al; Diabetes Prevention Program Research Group. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002 Feb 7;346(6):393-403.
  2. 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022. ライフサイエンス出版. 2022
  3. Semlitsch T, et al. Long-term effects of weight-reducing diets in people with hypertension. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Mar 2;3(3):CD008274.
  4. Friedman GD, et al. The epidemiology of gallbladder disease: observations in the Framingham Study. J Chronic Dis. 1966 Mar;19(3):273-92.
  5. Erlinger S. Gallstones in obesity and weight loss. Eur J Gastroenterol Hepatol. 2000 Dec;12(12):1347-52.
  6. Kalarchian MA, et al. Psychiatric disorders among bariatric surgery candidates: relationship to obesity and functional health status. Am J Psychiatry. 2007 Feb;164(2):328-34; quiz 374.
  7. Luppino FS, et al. Overweight, obesity, and depression: a systematic review and meta-analysis of longitudinal studies. Arch Gen Psychiatry. 2010 Mar;67(3):220-9.
  8. Muramoto A, et al. Three percent weight reduction is the minimum requirement to improve health hazards in obese and overweight people in Japan. Obes Res Clin Pract. 2014 Sep-Oct;8(5):e466-75.
  9. Iseki K, et al. Body mass index and the risk of development of end-stage renal disease in a screened cohort. Kidney Int. 2004 May;65(5):1870-6.
  10. Rowland AS, et al. Influence of medical conditions and lifestyle factors on the menstrual cycle. Epidemiology. 2002 Nov;13(6):668-74.
  11. Hollmann M, et al. Effects of weight loss on the hormonal profile in obese, infertile women. Hum Reprod. 1996 Sep;11(9):1884-91.