肥満の人は食事療法で死亡率が下がるのか?2万人のデータを統合した結果
肥満は多くの病気に結び付きます。食事や運動で体重を減らすことも治療の一環とされます。では減量で死亡率に改善はあるのでしょうか。これまでの研究結果の調査が行われました。
肥満とは?
日本では普通、
しかしアメリカなど多くの国ではBMI30以上が肥満(obesity)の基準とされます。BMIが25以上のことを指す過体重(overweight)という言葉もあります。BMI30を基準とすれば、身長160cmなら体重76.8kg以上が肥満となります。
平均BMI30以上の人に対する食事療法で死亡率は下がるか
スコットランドのアバディーン大学などの研究班が、減量による死亡率改善の効果を調べ、結果を医学誌『BMJ』に報告しました。
この研究は、文献の調査により、以前に行われた研究データを吟味して統合したものです。以下の基準に合う研究を調査対象としました。
- 成人を対象とする
- 参加時の平均BMIが30以上
- 明確に減量を目的とした食事療法を行っている
- ランダム化比較試験(参加者をランダムに食事療法かそれ以外かに分ける方法の研究)
- 参加者を1年以上追跡している
- 運動のアドバイスや運動プログラムへの参加はあってもなくてもよい
- 妊婦・産後の女性に対する研究は除く
大まかに言うと、平均BMIが30以上の集団に対して、食事療法(内容は問わない)を医療者が指示するかしないかで、死亡率に差があるかを調べています。
効果については同時に、
1,000人あたり6人の死亡を防ぐ
体重の変化について44件の研究から得られたデータを統合すると、1年後の平均で3.42kg減っていました。
死亡率について、34件の研究から得られたデータを統合し、次の結果が得られました。
一次アウトカムについて、高い質の証拠から、減量介入は全死亡率を減らし(34件の試験、685人の死亡、リスク比0.82、95%信頼区間0.71-0.95)、参加者1,000人あたり6人(95%信頼区間2-10)の死亡を減らすことが示された。
食事療法の有無で死亡率を比較すると、食事療法があったほうが対象者1,000人あたり6人程度の割合で死亡が減ると見られました。
心血管疾患による死亡率、がんによる死亡率には統計的に差を確認できませんでした。
新たに心血管イベントが
アジア人に対しての研究で、参加者の平均BMIが30以上だったものは1件だけでした。その1件で死亡した人は食事療法のグループで85人中0、食事療法をしないグループで86人中1人でした。
ほかアジア人の研究で参加者の平均BMIが25から30のものが4件ありました。計5件を解析すると、食事療法をしたグループの死亡率が1.34倍と計算されましたが、統計的には偶然としても説明のつく範囲でした。
日本人の健康にダイエットは必要か?
肥満に対する食事療法で死亡率が下がるとした報告を紹介しました。
ただし対象はBMIが30以上の人とされています。BMIが30未満の人にも当てはまるかどうかはこの報告だけではわかりません。特に平均BMIが25から30のアジア人に対しては効果が確認できないという結果もありました。
ではBMIが30未満のアジア人は減量しても利益がないのでしょうか?
一般に、肥満は心血管疾患とがんだけでなく、ほかにもさまざまな病気と関係します。肥満(obesity)だけでなく過体重(overweight)と病気の関連も多くの面から報告されています。BMIが25を超えている人では、減量が死亡を防ぐ効果は不明としてもやはり、何らかの効果は期待できるでしょう。具体的にはほかの研究を参照する必要があります。
減量しようと考えるとき、目的を明確にしたうえで実際のデータを見ることで、判断の助けとすることができるかもしれません。
執筆者
Effects of weight loss interventions for adults who are obese on mortality, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and meta-analysis.
BMJ. 2017 Nov 14.
[PMID: 29138133] http://www.bmj.com/content/359/bmj.j4849※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。