たいしつせいおうだん(びりるびんたいしゃいじょうしょう)
体質性黄疸(ビリルビン代謝異常症)
生まれつきビリルビンという物質を上手に分解・排泄できないため黄疸が起こる病気
10人の医師がチェック 134回の改訂 最終更新: 2025.01.20

体質性黄疸の原因と種類について:ビリルビンの処理、血液検査の値など

体質性黄疸とは、先天性の原因によって血液中のビリルビン濃度が上昇する病気のことです。ビリルビンは古くなった赤血球が壊れる時にできる物質で、主に肝臓で処理され、最終的には便と共に体外へと排泄されます。体質性黄疸では生まれつき肝臓でのビリルビン処理の過程に異常があり、ビリルビンがうまく体外へ排泄されず体内に溜まります。

1. ビリルビンとは

ビリルビンは黄色の色素で、赤血球中にある「ヘム」という物質を分解したときに生成されます。ビリルビンは正常範囲の量では細胞保護効果をもつ有益な物質ですが、量が増えすぎると様々な臓器に悪影響を及ぼします。身体にはビリルビンを体外に排出する仕組みが備わっており、血液中のビリルビン濃度が一定に保たれるようになっています。

ビリルビンの原料であるヘムは、赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質に多く含まれています。赤血球は老朽化すると脾臓という臓器で分解され、この時にヘムが作られます。1日に作られるビリルビンは250-400mgと言われており、その80%は赤血球由来のヘムが原料になっています。

2. ビリルビンは肝臓でどのように処理されるか

ヘムから作られるビリルビンは「間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)」という種類のビリルビンです。間接ビリルビンは水に溶けづらい物質で、血液の中に存在する水に溶けるタンパク質であるアルブミンと結合して肝臓へと運ばれます。

ビリルビン処理の第一段階

肝細胞に取り込まれた間接ビリルビンは、UDPグルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase-1-A1, UGT1A1)という酵素によって処理され、直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変換されます。この処理のことを「グルクロン酸抱合」と呼び、グルクロン酸抱合を受けた直接ビリルビンは水に溶けやすい物質に変化します。

ビリルビン処理の第二段階

直接ビリルビンは次に、肝臓で作られる消化液である胆汁の中に運ばれます。胆汁を流す管を胆管と呼び、直接ビリルビンは肝細胞の中から胆管の中へと運搬されます。この運搬に関わるタンパク質を多剤耐性関連蛋白2(multi drug resistance-associated protein 2, MRP2)と呼びます。MRP2はビリルビンを胆管へと汲み出すポンプのように働きます。胆汁中に排出されたビリルビンは胆汁と共に十二指腸に流れ出し、小腸から大腸を通って便となって体外に排泄されます。ちなみに、便の色の元となっているのはビリルビンの色素です。

ビリルビンの処理に関わるUGT1A1やMRP2に異常が生じると高ビリルビン血症や黄疸を引き起こします。

成人での血液中のビリルビン濃度(血清ビリルビン値)の基準値の一例は下記の通りです。

【基準値の一例】

  • 総ビリルビン:0.3-1.2mg/dL
  • 直接ビリルビン:0.4mg/dL以下
  • 間接ビリルビン:0.8mg/dL以下

基準値は検査方法によって多少前後しますので、実際は検査を受けた施設で確認してください。

3. 体質性黄疸の原因と種類

体質性黄疸の原因は、ビリルビンの処理に関わるタンパク質であるUGT1A1やMRP2の異常です。ビリルビン代謝の第一段階に関わるUGT1A1に異常があると、間接ビリルビンを直接ビリルビンに変換することができず血液中の間接ビリルビン濃度が高まります。第二段階で働くMRP2に異常がある場合などでは、直接ビリルビンを胆汁に排出することができず血液中の直接ビリルビン濃度が上昇します。

前者を高間接ビリルビン血症、後者を高直接ビリルビン血症といい、それぞれ下記のような種類があります。

【体質性黄疸の種類】

高間接ビリルビン血症 (間接ビリルビンを直接ビリルビンに変換する処理に異常がある)
高直接ビリルビン血症 (直接ビリルビンを胆汁に排出する処理に異常がある)
  • ローター症候群
    • 直接ビリルビンの輸送に関わるリガンディンというタンパク質に異常がある

高間接ビリルビン血症

UGT1A1の機能が低下して間接ビリルビンが増加する病気には次の2つがあります。

1. クリグラー・ナジャール(Crigler-Najjar)症候群
2. ジルベール(Gilbert)症候群

それぞれについて解説します。

1.クリグラー・ナジャール(Crigler-Najjar)症候群

クリグラー・ナジャール症候群ではUGT1A1が欠如しているか、機能が大きく低下しています。UGT1A1がまったく働かないものをクリグラー・ナジャール症候群I型、UGT1A1の働きが健常人の10%以下に低下しているものをクリグラー・ナジャール症候群II型と言います。

クリグラー・ナジャール症候群I型

クリグラー・ナジャール症候群I型では間接ビリルビンがまったく処理されないので、生後1-3日目から高度の高間接ビリルビン血症が起こります。新生児では通常でも血清ビリルビン値が最大13mg/dLくらいの高値になりますが、この病気では20-30mg/dLにもなります(新生児黄疸についてはこちらで詳しく説明しています)。ビリルビン以外の一般的な肝機能検査は正常です。放置すると脳にビリルビンが沈着する「核黄疸」を起こして乳児期ごろまでに死亡しますが、光線療法、血漿交換、ビリルビン吸着などの治療で思春期ごろまで成長することができます。完治を目指すには肝移植を行う必要があります。両親から受けついだ遺伝子2つ共に異常がある場合に病気になる、常染色体劣性遺伝という遺伝形式の病気です。とても珍しい病気で、日本では数家系の報告があるのみです。

クリグラー・ナジャール症候群II型

クリグラー・ナジャール症候群II型ではUGT1A1が健常人の10%以下しか機能していません。生後10日ごろから高間接ビリルビン血症・黄疸が目立つようになります。血清ビリルビン値は6-20mg/dLまで上昇します。ビリルビン以外の一般的な肝機能検査は正常です。新生児から乳児のころは核黄疸の危険があるため、光線療法やビリルビン吸着で予防を行います。また、UGT1A1を誘導する働きがあるフェノバルビタールなどの酵素誘導薬を内服することでビリルビンの値を下げることができます。多くの人は特に治療を必要とせず、通常どおりの生活を送ることができます。I型と同じく常染色体劣性遺伝の病気で、頻度は30万人に1人程度とまれな病気です。

2. ジルベール(Gilbert)症候群

ジルベール症候群では、UGT1A1の働きが健常人の約30%に低下しており、軽度の高間接ビリルビン血症を引き起こします。体質性黄疸の中でもっとも頻度の高い病気で、全人口の2-7%の人がジルベール症候群であると言われています。成人の血清ビリルビン値の基準値は0.2-1.2 mg/dLですが、ジルベール症候群では1.0-6.0mg/dL程度に上昇し、多くの場合は成人してから血液検査などで偶然気づかれます。ビリルビン以外の一般的な肝機能検査は正常です。ほとんどの人は無症状ですが、身体のだるさ(倦怠感)や軽度の腹痛を感じる場合もあります。ストレスや絶食、感染症、飲酒、薬の内服などの影響で黄疸が悪化することがありますが、原因が取り除かれると黄疸は自然に改善します。特別な治療は必要なく、通常どおりの生活を送ることができます。常染色体劣性遺伝する場合もあれば、常染色体優性遺伝(両親から受けついだ遺伝子2つのうち1つでも異常があれば病気になる)する場合もあり人によって異なります。

高直接ビリルビン血症

肝細胞で間接ビリルビンのグルクロン酸抱合が行われた以降のビリルビン処理に問題があると、直接ビリルビンが増加します。このような病気には次の2つがあります。

1.デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群
2.ローター(Rotor)症候群

それぞれについて解説します。

1. デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群

デュビン・ジョンソン症候群では、直接ビリルビンの輸送に関わるMRP2タンパク質の異常が起こり、直接ビリルビンを胆汁中へ排出できなくなります。血清ビリルビン値は1-7mg/dL程度に上昇し、その大部分は直接ビリルビンです。ビリルビン以外の一般的な肝機能検査は正常です。自覚症状はほとんどなく、ビリルビン値が高いときには皮膚や白目が黄色くなる黄疸症状が見られます。過半数は12歳までの小児期に発症します。女性の患者さんで妊娠したときやエストロゲン製剤を使用したときに黄疸が強く出ることがあります。デュビン・ジョンソン症候群が生命に関わることはなく、治療は必要ありません。常染色体劣性遺伝する病気で、約30万人に1人ほどに見られるまれな病気です。

2. ローター(Rotor)症候群

ローター症候群では、直接ビリルビンの輸送に関わるリガンディンと呼ばれるタンパク質の異常が起こります。デュビン・ジョンソン症候群と同じく直接ビリルビンを胆汁中へ排出できなくなり、血清ビリルビン値は3-10mg/dLほどに上昇します。ビリルビン以外の一般的な肝機能検査は正常です。自覚症状はほとんどなく、ビリルビン値が高いときには皮膚や白目が黄色くなる黄疸症状が見られます。ローター症候群が生命に関わることはなく、治療は必要ありません。常染色体劣性遺伝する病気で、かなりまれな病気です。

4. 黄疸を引き起こすその他の病気

体質性黄疸以外にも黄疸をきたす病気があります。黄疸の治療法は原因疾患によって異なりますので、体質性黄疸なのか、それ以外の病気による黄疸なのかを見分けることは重要です。

ここでは、ビリルビンと一緒に血液検査で調べることが多い肝機能検査値の異常があるかどうかで病気を分類します。

【ビリルビンは高値だが、それ以外の肝機能検査値に異常がない病気】

【ビリルビンが高値で、それ以外の肝機能検査値にも異常が見られる病気】

参考文献

  • 福井次矢・黒川清/監修, 「ハリソン内科学 第2版」, メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2006
  • 杉本恒明・矢崎義雄/総編集, 「内科学 第9版」, 朝倉書店, 2007
  • 小俣政男・千葉勉/監修, 「専門医のための消化器病学 第2版」, 医学書院, 2013年