にょうどうえん
尿道炎
原因微生物が尿道に感染し、炎症を起こした状態。主に淋菌やクラミジアが原因となる。
5人の医師がチェック 98回の改訂 最終更新: 2018.02.09

尿道炎の原因:淋菌・クラミジアなど

尿道炎の多くは性病です。性行為で感染する淋菌やクラミジアが尿道炎の原因となります。しかし尿道炎には他にも原因があります。たとえば結石や尿道がんによって起こることもあります。ここでは尿道炎の原因について解説します。

1. 尿道炎を起こすもの

尿道炎は尿道に炎症が起こることです。尿道に炎症を起こすものには以下のものがあります。

【尿道炎を起こす主なもの】

  • 感染症
    • 淋菌
    • クラミジア
    • マイコプラズマ・ゲニタリウム
    • ヘルペスウイルス
    • トリコモナス
  • 結石
    • 尿道結石
  • 悪性腫瘍
    • 尿道がん
  • 免疫が関係した病気
  • 異物
    • 尿道カテーテルの使用

炎症は身体の組織が破壊されたり刺激されたりすると起こる生体反応です。尿道炎は尿道に炎症が起きる病気です。尿道に炎症を起こすものは尿道炎の原因になりえます。多くの原因が並んでいますが、尿道炎は、ほとんどが性行為によって感染するいわゆる性病により起こります。淋菌やクラミジアが尿道炎の主な原因です。

性病の尿道炎と診断を受けて治療をしてもなかなか治らない場合は他に原因が隠れていることもあり得る話です。感染症以外の原因も見逃せないものです。これ以降では尿道炎の原因について感染症はもちろんのことそれ以外の稀なものも含めて網羅的に解説します。

参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科

感染症

尿道に細菌などの病原体が感染すると炎症が起こり尿道炎の症状が現れます。

尿道炎を起こす病原体はほとんどが性行為を介して感染します。いわゆる性病(性感染症)です。人数が多いのは淋菌やクラミジアで、他にもマイコプラズマ・ゲニタリウムやヘルペスウイルス、トリコモナスなどがあります。

いくつかの検査を用いて原因となっている病原体を特定します。原因の特定は治療薬を選ぶ上で非常に大切です。

尿道炎の原因となる病原体はほとんどが性行為によって感染しますが、腸内細菌や肺炎球菌など、性感染症ではない病原体が尿道炎の原因になることもまれにあります。

結石

尿路(尿の流れ道)には結石ができることがあります。結石は「いし」と呼ばれることもある尿の成分が固形化したものです。尿路結石は、ひどい腰v痛や背中の痛みを起こす原因として耳にしたことがあるかもしれません。腰背部痛を起こす結石は尿管という場所にできるものです。尿管は腎臓と膀胱をつなぐ細い管です。結石は膀胱から先の尿道にもできることがあります。尿道に結石があると慢性的な刺激を尿道に起こして尿道炎の原因になります。

図:尿管と尿道の位置関係。

悪性腫瘍

悪性腫瘍はいわゆるがんのことです。がんは正常組織に入り込んでいく特性があります。尿道にもがんができることはあります。がんが尿道の組織を破壊すると炎症を伴い、尿道炎の症状が現れることがあります。

尿道がんはまれな病気なので、尿道炎の原因の中では少ないです。しかし、治療をしても症状がよくならない尿道炎は、尿道がんができていないかを調べることがあります。尿道がんが見つかった場合には手術や抗がん剤などで治療します。

免疫が関係した病気

ライター症候群は、細菌に感染した後に関節などに腫れや痛みが現れる病気です。感染症にかかった後の異常な免疫反応が原因と考えられています。ライター症候群が起こると関節痛以外にも症状が現れることがあります。ライター症候群の症状の一つが尿道炎です。ライター症候群は感染が直接の原因ではないので、細菌をなくすことがライター症候群の治療にはなりません。そのためライター症候群の治療には抗菌薬などを用いることはありません。ライター症候群に対しては、痛み止めなど症状を和らげる治療を行います。

異物

尿道カテーテルは、尿を膀胱から身体の外に出すための管です。尿道カテーテルは自分で排尿ができないときに使います。

尿道カテーテルを使うには、尿道を介して膀胱に挿入します。尿道カテーテルは異物なので尿道に慢性的な刺激を与え、炎症を起こすので尿道炎の原因になります。

感染症以外の原因をいつ考える?

尿道炎を起こす原因について解説しました。

ここには結石やがんなどの比較的まれな原因についても解説しましたが、最初に述べたように尿道炎の原因の多くは淋菌やクラミジアなどによる性感染症です。医師から特別な説明がない限りは他の原因については心配しすぎないようにして治療に専念しましょう。

ただし、治療を開始してしばらくたっても症状が改善しない場合には性感染症以外の原因について考える必要があるかもしれません。そのときには治らない理由を探すために検査などが行われます。

2. 尿道炎の原因となる病原体

尿道炎の原因は主に性行為によってうつる性病(性感染症)です。性病を起こすものには何があるのでしょうか。以下が性行為で感染し尿道炎を起こす病原体の一覧です。

  • 細菌
    • 淋菌(Neisseria gonorrhoeae
    • クラミジア(Chlamydia trachomatis
    • マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium
  • ウイルス
  • 原虫
    • 膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis

尿道炎と一口にいっても原因になる病原体はさまざまです。病原体によって潜伏期間(感染から発症までの期間)や症状の強さに特徴があります。例えば淋菌とクラミジアを比較すると淋菌の方が潜伏期間が短く症状が強いなどの差があります。

尿道炎を起こす病原体は尿道以外の他の場所にも感染することがあり、そこでもまた病気の原因になりえます。これ以降は淋菌とクラミジアを中心に各病原体の特徴や尿道炎以外の病気について説明していきます。

参考:Clin Infect Dis. 2011;52(2):163-170、レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科

淋菌(Neisseria gonorrhoeae

淋菌は尿道炎の原因となる代表的な細菌です。淋菌は性行為でうつる病気でいわゆる性病を起こします。淋菌は尿道炎だけではなく他の場所でも病気を引き起こします。淋菌が原因となって起こる病気の総称を淋病といいます。淋病という呼び名の方が見慣れているかもしれません。淋菌が原因で起こる病気には尿道炎以外にもいくつかあります。

【淋菌が原因で起こる尿道炎以外の病気】

淋菌は尿道以外にも喉(咽頭)や目の結膜、性器に感染を起こします。淋菌の性器への感染は男女ともに不妊症の原因になることがあります。性病が心配な場合には速やかに検査を受けることが大切です。

淋菌感染については「性病」の詳細ページでも解説しているので参考にしてください。

クラミジア(Chlamydia trachomatis

クラミジアは尿道炎を起こす代表的な細菌です。クラミジアは淋菌と同じく性行為で感染する、いわゆる性病の原因です。クラミジア尿道炎淋菌性尿道炎と比べて潜伏期間が長く症状が軽いことが多いです。クラミジアは淋菌と同様に尿道以外の場所にも感染して病気を引き起こします。

【クラミジアが原因で起こる尿道炎以外の病気】

クラミジアも淋菌と同様に喉や結膜、性器に感染を起こします。クラミジアの性器への感染は男女ともに不妊症の原因になることがあります。性病が心配なときは速やかに検査を受けることが大切です。

クラミジア感染症については「性病」の詳細ページで解説しているので参考にしてください。

マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium

マイコプラズマ・ゲニタリウムは性行為によって感染して尿道炎を起こす細菌です。マイコプラズマ肺炎などの原因として耳にしたことがあるかもしれません。尿道炎の原因となるマイコプラズマは、肺炎を起こすマイコプラズマとは違う細菌です。肺炎などを起こすマイコプラズマは正式にはマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)といいます。

マイコプラズマ・ゲニタリウムが原因と考えられる尿道炎はクラミジア尿道炎と同じ抗菌薬を用いて治療することが多いです。

単純ヘルペスウイルス

単純ヘルペスウイルスは性器ヘルペスの原因となるウイルスですが、尿道炎を起こすこともあります。単純ヘルペスウイルスは性行為によってうつります。単純ヘルペスウイルスが性器に感染すると皮膚の表面がえぐれたようになる潰瘍(かいよう)や水ぶくれができます。性器へルペスという状態です。

単純ヘルペスが原因で尿道炎が起きているときには性器ヘルペスも同時に起こしていることがあるので診察で性器の状態を確かめる必要があります。

膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis

膣トリコモナスは文字通り膣炎を起こす微生物で、細菌ではなく原虫に分類されます。膣トリコモナスは名前からも推測できるように膣に感染しやすい特徴があります。膣トリコモナスが膣に感染すると、おりものの臭いや色が変わったり膣にかゆみが出たりします。

膣トリコモナスは尿道炎を起こすこともあります。また男性にも感染します。膣トリコモナスによって起こる男性の尿道炎は無症状のことがあります。性行為をするパートナーに知らず知らずのうちに膣トリコモナスを感染させてしまうこともあるので、以前と違う相手と性行為をした後などでは症状の有無にかかわらず注意が必要です。