にょうどうえん
尿道炎
尿道に原因微生物が感染し、炎症を起こした状態。淋菌やクラミジアが主な原因となる。
5人の医師がチェック 110回の改訂 最終更新: 2022.02.07

尿道炎の治療を受ける時の注意点

尿道炎の多くは抗菌薬抗生物質、抗生剤)を用いて治療をします。尿道炎の治療を受けるにあたってはいくつか注意点があります。ここでは尿道炎の治療中だけではなく治療前後を含めた注意点について解説します。

1. 尿道炎が自然に治ることはある?

尿道炎が自然に治ることはまずありません。尿道炎の多くは淋菌クラミジアを原因としています。淋菌クラミジアに対しては抗菌薬の投与をしなければ治療ができません。

尿道炎になると羞恥心などから受診をためらい「ひょっとしたら自然に治るんではないのだろうか?」と考える人がいます。

気持ちはわかるのですが、尿道炎は自然治癒は望めないので、尿道炎と思ったら速やかに医療機関を受診することが大切です。

2. 尿道炎かなと思ったら何科にいけばいい?

尿道炎かなと思ったら何科を受診すればいいのでしょうか。尿道炎の診療を受けられる主な診療科は以下の4つになります。

  • 泌尿器科
  • 婦人科
  • 性病科
  • 感染症

以下でそれぞれの診療科の特徴について解説します。

泌尿器科

泌尿器科は腎臓や膀胱(ぼうこう)、尿道など尿に関する臓器と、前立腺や精巣など男性性器の専門家です。尿道炎の多くは淋菌クラミジアなどによる性感染症(性病)ですが、まれにがんや結石などが原因で起こることもあります。がんや結石などが原因で尿道炎が起きていると考えられる場合には泌尿器科で詳しく調べます。

婦人科

婦人科は女性に特有の病気を担当する診療科です。具体的には膣や子宮、卵巣などの病気です。

尿道炎は文字通り尿道の炎症なので本来は泌尿器科の方が扱いには慣れています。しかし、女性の中には男性患者さんが多い泌尿器科を受診することに敷居の高さを感じることもあるようです。婦人科は尿道炎の診療ができることも多いので泌尿器科の代わりとしての役割が期待できます。

性病科

性病科は性病を専門的に扱っている診療科です。尿道炎の原因のほとんどは淋菌クラミジアによる性感染症(性病)です。性病科では性病的な視点に重きをおいて尿道炎の診断や治療をすることができます。

感染症科

感染症科は感染症を専門とする診療科です。感染症科は感染を起こす病原体や治療に用いる抗菌薬について幅広い知識を持っています。

尿道炎は淋菌クラミジアによって起こることが多いのですが、通常の抗菌薬が効きにくくなっている耐性菌淋菌クラミジア)やまれな病原体が原因になっていることもあります。感染症科には複雑なケースにも対応した治療が期待できます。

受診をする診療科に迷ったときには?

尿道炎を診断・治療できる診療科について紹介しましたが、結局どこにいけばいいのか迷う人もいると思います。結局のところ何科を受診すればいいのでしょうか。

診療科を決めるアドバイスとしては、最初にこの診療科を受診しなければならないとはあまり深く考えない方がよいと思います。

説明したとおりそれぞれの診療科には特徴があり、得意とする分野が違います。治療を開始して他の診療科の助けが必要な場合には診療科同士で連携をとるので心配はいりません。

尿道炎かなと思ったら診療科の選択も大切ですが、すみやかに受診することも同じく大切です。〇〇科ならすぐにいけるけれど△△科に行きたいから明日受診しようと思うならば、早目に受診をするメリットを一度考えてみてください。なるべく早く治療した方が症状に悩む期間が短くて済むかもしれません。迷うならば行動を起こして早期に治療を始めてください。

3. 尿道炎が治らない場合には?

尿道炎は排尿時痛や尿道からでるなどの症状が特徴的です。

尿道炎は、淋菌クラミジアなどを原因とする感染症です。細菌の感染は抗菌薬によって治療が可能です。したがって尿道炎は本来は適切な治療でよくなるはずですが、適切な治療をしたのになかなか治らない場合もあります。

治らない場合にはどうしたらよいのでしょうか。尿道炎が治らない場合について考えてみます。

耐性菌

耐性菌という言葉をご存知でしょうか?耐性菌は、特定の抗菌薬が効かないまたは効きにくい細菌のことです。耐性菌を治療するには効果のない抗菌薬を避け、効果のある抗菌薬を選んで使うことが大切です。このため治療前に尿の培養検査を行います。培養検査の中には薬剤感受性検査というものがあります。薬剤感受性検査は、一人ひとりに感染している原因菌が耐性化していないかを調べる検査です。薬剤感受性検査をすることで、効果のある抗菌薬を選ぶことができます。

薬剤感受性検査をした上で適切な抗菌薬を使っても症状の改善が乏しいときには、治療中に原因菌が耐性化している可能性も有り得ます。薬をきちんと飲んだのに症状の改善が乏しい場合には医師に相談してください。

薬はしっかりと飲んでいますか?

尿道炎の抗菌薬治療を始めると、たいていは短期間に効果が出て症状が軽くなります。

症状が軽くなったことを治療が完了したことと勘違いして、自己判断で抗菌薬の内服を終了してしまう人がいます。

しかし、症状が軽くなってもそれは原因となっている細菌が少なくなっただけに過ぎないかもしれません。細菌が残った状態で治療を終了すると、細菌が再び増殖して症状が再発し、治らないと感じるかもしれません。

抗菌薬の投与期間を守って内服することで、細菌を十分に排除して、本当の意味で治ることができます。

他の病気の可能性

尿道炎の原因はの多くは淋菌クラミジアなどの細菌による感染です。ほかに稀ですが尿道結石や尿道がんなどが原因で尿道炎が起こることがあります。稀な原因が見逃されることは、絶対にないとは言えません。

本当は尿道結石や尿道がんが原因にも関わらず感染が原因と判断してしまい、淋菌クラミジアの治療をしていても症状はよくはなりません。結石やがんは抗菌薬では治療できないからです。

症状がよくならない場合には遠慮なく医師に症状がよくならないことを伝えて、追加で検査が必要かどうかを相談することが大切です。

4. 尿道炎にもうならないために

尿道炎になったことがある人はもうなりたくはないと思うでしょう。尿道炎にもうならないためには何に気をつければいいのでしょうか。いくつかポイントをあげてみたいと思います。

パートナーは治療していますか?

尿道炎の治療をするにあたって性行為を行うパートナーの治療も大切です、なぜでしょうか。

尿道炎の多くは淋菌クラミジアが原因となります。淋菌クラミジアは性行為によって感染します。性行為が感染の原因になる病気の場合、性行為をする相手(パートナー)もすでに病気にかかっていると考えたほうがよいでしょう。

パートナーが感染していると自分は治療してもパートナーから再び病気をもらってしまい感染が繰り返されることになります。打ち明けにくいですが尿道炎になったらパートナーに事実を打ち明けることです。パートナーとともに治療をすることが尿道炎を治すために大切なことです。

性行為時の注意

尿道炎の多くは性行為を原因とする性感染症です。性感染症を予防するには性行為のときにコンドームを使用することが大切です。尿道炎の予防のためにコンドームの使用を徹底してください。

見過ごされがちなのはオーラルセックスです。尿道炎の原因となる淋菌クラミジアはのどにも感染していることがあります。オーラルセックスのときにも感染の危険性があるわけです。オーラルセックスでもコンドームを着用することをお勧めします。