にょうどうえん
尿道炎
原因微生物が尿道に感染し、炎症を起こした状態。主に淋菌やクラミジアが原因となる。
5人の医師がチェック 98回の改訂 最終更新: 2018.02.10

尿道炎の症状:淋菌性尿道炎とクラミジア尿道炎の症状の違いなど

尿道炎の症状は排尿時の痛みや尿道からがでるなどです。尿道炎の原因は淋菌とクラミジアが多いですが、それぞれで症状の特徴が異なります。ここでは淋菌性尿道炎クラミジア尿道炎の症状の違いなどを解説します。

1. 尿道炎の症状:排尿時の痛み、分泌物など

尿道炎の症状は排尿に関する症状が多いです。主に以下のものになります。

  • 排尿時痛
  • 尿道から分泌物がでる
  • 尿道口の違和感や痛み

特に重要なのが排尿時痛(尿を出す時の痛み)と尿道からの分泌物です。分泌物は膿のようなもののことも、透明で「汁が出た」と表現されるようなこともあります。

図:尿道と周りの臓器の位置関係。

排尿時痛と尿道分泌物があると、医師はまず尿道炎の原因として性感染症を強く疑います。とはいえ尿道炎で現れる症状は他の病気が原因でも現れることがあるので、症状だけでは尿道炎と決めることはできません。では尿道炎で現れる症状はどんな病気で現れることがあるのでしょうか。

参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科

排尿時の痛み

尿道炎では尿道が傷ついています。傷ついている場所は痛みの原因になり、刺激に対しても敏感になります。身体の表面が傷ついたことは誰しもあると思います。傷ができると触れただけでも痛みが走りますね。これと同じことが尿道にも起こっていると思ってください。尿道が傷ついていると排尿の刺激によって痛みます。

排尿時の痛みは淋菌やクラミジアを原因とする尿道炎で特徴的な症状です。ただし排尿時に痛みがでる病気は尿道炎だけではなく他にもいくつかあります。

【排尿時の痛みの主な原因】

図:前立腺の位置。

前立腺は膀胱(ぼうこう)の出口の所にあり、尿道の周りを囲んでいる臓器です。見ようによっては尿道が前立腺を貫いているようにみることもできます。前立腺の大きさはくるみと同じくらいです。前立腺で炎症が起こると尿道にも炎症が広がることがあり、その場合には排尿時に痛みが出ます。

尿道にもがんや結石ができることがあります。がんや結石は尿道に炎症を起こすので排尿時の痛みの原因になります。

ほかにも、はっきりとした原因は不明ですが、アルコールやカフェインの過剰摂取も排尿時に痛みを感じる原因になります。

排尿時の痛みはドキッとする症状の一つだと思います。排尿時痛だけでは尿道炎と決まる訳ではありませんが、排尿時痛が毎回ある場合や、性病に感染しそうな行為に思い当たるふしがある場合には医療機関を受診して調べてもらうようにしてください。

尿道口から膿や液体(分泌物)がでる

尿道炎の症状の一つに尿道口から膿や液体が出ることがあります。この膿や液体のことを医学用語で分泌物といいます。

淋菌性尿道炎では膿のような分泌物が、クラミジア尿道炎では透明なサラサラとした分泌物が現れます。では分泌物が現れたら必ず淋菌やクラミジアに感染しているのでしょうか?そうとはいいきれません。

陰茎の包皮に炎症が起こる亀頭包皮炎細菌感染の後の免疫異常で起こるライター症候群などでも尿道から分泌物がでることがあります。他では前立腺肥大症などによる排尿後の尿漏れを分泌物だと思って心配する人もいます。

尿道から分泌物が出ることは通常はあまりないことです。分泌物が出たら淋菌もしくはクラミジアによる尿道炎は考えなければいけないですし、何らかの異常が起こっていると考えた方がいいと思います。

ですから、尿道口から分泌物がでる場合には泌尿器科などを受診して相談してみてください。仮に分泌物が尿漏れだったとしても前立腺肥大症がみつかって治療によって不快な症状がなくなるかもしれません。

尿道口の違和感や痛み

尿道炎になると尿道口に違和感や痛みが出ることがあります。痛みの原因は、尿の出口である尿道口の近くの部分に炎症が起きることです。尿道口の痛みは淋菌やクラミジアによる尿道炎で起こる症状の一つです。尿道口の痛みがあっても必ずしも尿道炎とは限りません。他では尿道結石や亀頭包皮炎などでも似たような症状が現れることがありますし、ただ尿道の先が服で擦れただけでも痛みが出ることがあります。

尿道口の違和感や痛みの原因を調べるには尿道口の観察などが重要です。尿道口の異常の有無は医師による診察によって判断されるのがよいです。尿道口の違和感や痛みがある場合には医療機関を受診して調べてもらってください。

2. 尿道炎でも症状がないこともある?

尿道炎にかかっていても症状が現れないことがあります。症状がなければ問題はなさそうに思う人がいるかもしれません。症状がない尿道炎の問題はなんでしょうか。

症状がない尿道炎の怖い所は、気付かないうちに尿道炎の病原体を他の人にうつしてしまうことです。症状がない尿道炎はクラミジアが原因のことが多いです。クラミジアは症状がなくとも感染させてしまいます。例えば女性にクラミジアをうつしてしまうと不妊症の原因になる病気を引き起こす可能性があります。

尿道炎でも症状がないことがありえて、症状がないために周りの人に対して病原体を広げてしまうことがあります。このようなことは避けるのが望ましいでしょう。

では症状以外の何に気を付ければいいのでしょうか。

素性のわからない異性と無防備な性行為を行った場合などは、症状の有無にこだわらずにクラミジアや淋菌などの検査をした方が望ましいです。それ以前に、無防備な性行為はできる限り避けるべきです。

【参考】

レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版

標準泌尿器科

3. 淋菌性尿道炎とクラミジア尿道炎の症状の比較

尿道炎は淋菌またはクラミジアを原因とすることが多いです。尿道炎の症状には、病原体によって違った特徴があります。症状の特徴は診断や治療において重要です。ここでは淋菌性尿道炎クラミジア尿道炎の症状の違いをみていきます。

淋菌性尿道炎クラミジア性尿道炎の症状の違い】

  淋菌性尿道炎 クラミジア性尿道炎
排尿時の痛み 強い 軽い
尿道からの分泌物の特徴 膿性(うみのよう) 透明でさらさらしている
症状の現れ方 急激 ゆっくり
潜伏期間 3-7日 1-3週間

淋菌性尿道炎は排尿時の強い痛みや膿性の分泌物、外尿道口の発赤(ほっせき;赤くなること)が特徴的です。クラミジア性尿道炎に比べると淋菌性尿道炎の症状は派手です。また淋菌性尿道炎は潜伏期間が短いことも特徴的です。潜伏期間とは感染が成立した時から症状が出るまでの時間です。

クラミジア尿道炎は、淋菌性尿道炎と同様に排尿時の痛みなどはありますが、痛みの程度は軽いことが多いです。患者さんによってはほとんど症状がなく性器周辺の不快感のみと訴える人もいます。クラミジア尿道炎の潜伏期間は長く症状もゆっくりと現れます。クラミジア性尿道炎では、尿道からの分泌物が淋菌性尿道炎とは異なり、透明でサラサラしているのが特徴的です。

淋菌性尿道炎クラミジア尿道炎はどちらも性行為で感染する病気ですが、症状は異なります。ただし症状だけでは完全に2つを見分けることは難しいです。2つの病原体がともに感染を起こしていることも珍しくはありません。原因の確定診断には検査を用います。

参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科

4. 男女による尿道炎の症状の違い

尿道炎は男性に多いですが、人数は少ないながらも女性にも起こることがあります。尿道炎は男女で症状は違うのでしょうか。

男性の尿道炎の症状は、典型的には排尿時の痛みや尿道口から分泌物が出る、尿道口の違和感などです。女性の尿道炎はどうでしょうか。

女性の場合は膀胱炎(ぼうこうえん)に似た症状が出ることが知られています。具体的には排尿時の痛みや頻尿(ひんにょう)などです。頻尿とは排尿の回数が増えることです。排尿時の痛みは尿道炎でも現れますが、頻尿の症状は尿道炎では多くはなく、どちらかというと膀胱炎でよく現れる症状です。女性の膀胱炎と尿道炎は見分けることが非常に難しいです。膀胱炎と尿道炎では治療に用いる薬が異なるので、本当は尿道炎なのに膀胱炎と診断して治療をしていると効果が不十分なことがあります。

なかなか治らない女性の膀胱炎は尿道炎の可能性も考える必要があります。

女性の尿道炎の原因になるのは男性の場合と同じく主に淋菌やクラミジアです。女性の場合は淋菌やクラミジアに感染すると尿道よりは膣や子宮で菌が増殖することの方が多いです。排尿時痛や頻尿の症状の他に、一見関係がなさそうに思えるおりものの増加や下腹部の痛み、性交痛などがある場合は治療を担当する医師に伝えることが大切です。

参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科