きゅうせいたんのうえん
急性胆のう炎
胆のう内で細菌が感染を起こしたり周囲の炎症が胆のうに達したりすることなどによって、痛みや吐き気などの症状が起きる病気
13人の医師がチェック 135回の改訂 最終更新: 2019.10.18

急性胆のう炎で行われる検査について

急性胆のう炎が疑われた人では身体診察や血液検査、画像検査が行われ、診断基準に照らし合わせて胆のう炎かどうかが診断されます。また、どの程度の胆のう炎なのかも判断します。ここでは、急性胆のう炎が疑われた人が受けることになる検査について詳しく説明します。

1. 問診

問診では受診のきっかけになった症状やこれまでにかかった病気などについて、お医者さんから以下のような質問を受けます。

  • どのような症状がいつから起こったか
  • 症状が起こったきっかけ
  • これまでに胆石と言われたことがあるか

それぞれの質問について解説します。

どのような症状がいつから起こったか

急性胆のう炎では右上腹部の痛みが起こることが多く、最初は比較的軽い痛みだったのが徐々に強くなっていくことが多いです。いつごろから痛みが起こったのか、痛みが強くなったのはいつなのか、熱が出たのはいつなのか、などは重要な情報です。

症状が起こったきっかけ

急性胆のう炎では、脂っこい食事を食べた後などに症状が始まることが多いとされています。それ以外に、特にきっかけはなく痛みが始まることもあります。痛みが始まるきっかけになったものに心当たりがある場合にはお医者さんに伝えてください。

これまでに胆石と言われたことがあるか

急性胆のう炎の原因の大部分は胆石(胆のう結石)です。これまでに健康診断や人間ドックなどで胆のう結石と言われたことがある人はお医者さんに伝えてください。

2. 身体診察

身体診察では全身の状態を調べるとともに、お腹を中心に詳しく診察を行います。

バイタルサイン

バイタルサイン(vital sign)とは直訳すると生命徴候という意味で、全身の状態を把握するために重要な情報です。どのような病気の診察でもまずバイタルサインの測定を行いますが、急性胆のう炎の場合にもバイタルサインは重要です。

バイタルサインでは以下の項目を測定します。

  • 意識状態
  • 脈拍数
  • 血圧
  • 呼吸数、酸素飽和度
  • 体温

急性胆のう炎では発熱が起こることが多いので、体温が上がり、それに伴って脈拍数が早くなったり呼吸数が多くなる場合があります。

それに加えて、意識状態が低下する(ぼーっとしていて呼びかけにすぐに返事ができない)、血圧が低い、酸素の取り込みが不十分、などのバイタルサイン異常を起こしている場合には、生命に危険を及ぼすとても重篤な胆のう炎を起こしている可能性を考えなければなりません。これらは以下で説明する「急性胆のう炎の重症度基準」にも関係する情報です。

お腹の診察

聴診器でお腹の音を聞いたり(聴診)、手でお腹を押したりして(触診)診察を行います。

急性胆のう炎では胃腸の動きが弱くなるため、聴診器で聞こえる腸の音が小さくなります。

お腹の痛みは右上腹部を中心に起こり、手で押すとさらに痛みが強くなるのが急性胆のう炎の特徴です。さらに、右上腹部を圧迫した状態で深呼吸をすると痛みのために十分に息が吸い込めないという特徴もあります。診察では、この「マーフィー徴候(Murphy’s sign)」と呼ばれるサインがあるかどうかも確認します。

3. 血液検査(白血球数、CRP、AST、ALTなど)

血液検査では身体の中の炎症の強さを確認します。また、胆のう腫瘍ができている可能性についても調べることができます。急性胆のう炎では肝臓の数値が悪化することは多くありませんが、もしも肝臓の数値の悪化があれば胆のう炎以外の病気がある可能性を考えなければなりません。

身体の中の炎症の強さを調べる血液検査

急性胆のう炎では炎症反応の指標になる白血球数とCRP値が上昇します。これらの項目は急性胆のう炎の診断基準にも含まれています。

胆のうがんの診断の参考になる血液検査:腫瘍マーカー

胆のう腫瘍(胆のうがん、胆のう管がん)が急性胆のう炎の原因になることがあり、その場合には胆のうがん腫瘍マーカー(CA19-9、CEA)が上昇することがあります。腫瘍マーカーとは、身体の中にがんができた場合に血液中に分泌される特徴的な物質(タンパク質など)のことです。

ただし、腫瘍マーカーの結果だけでがんを診断できないことに注意が必要です。小さながんでは腫瘍マーカーの値が高くならないこともありますし、がん以外の病気で値が高くなることもあります。そのため、他の検査結果と合わせて判断する必要があります。

◎CA19-9
CA19-9は身体のいろいろな部位に存在する糖鎖抗原と呼ばれる物質です。胆のうがんが発生するとCA19-9がたくさん作られるようになって血液中の濃度が上昇します。

ただし、膵臓がん胃がん大腸がん肺がん卵巣がんなどでもCA19-9値が上昇することが知られており、また、がん以外の病気(胆管炎、膵炎、肝炎、子宮内膜症気管支炎など)でもCA19-9値が高値になることがあります。そのため、CA19-9値が正常値を超えているからといって必ず胆のうがんであるというわけではありません。

◎CEA
CEA(Carcinoembryonic antigen, 胎児抗原)は大腸がんの組織から発見された糖タンパク質です。大腸がん胃がん肺がん乳がんなどで血液中の濃度が上昇し、胆のうがんができた場合にも正常値を超えた値になることが知られています。

肝臓のダメージを調べる血液検査:肝胆道系酵素

肝臓にダメージが加わると、肝胆道系酵素(AST、ALT、γGTP、ALP、ビリルビンなど)と呼ばれる血液検査の数値が上昇します。これらの数値が上昇する原因には、ウイルスや薬剤などによって肝臓の細胞が壊されるもの(肝実質性肝障害)と、肝臓で作られる胆汁の流れが悪くなったもの(うっ滞性肝障害)があります。

通常、急性胆のう炎で肝胆道系酵素が上昇することはほとんどありません。これらの数値が上昇している場合には、急性胆管炎が起こっている可能性を考える必要があります。

◎AST
ASTは肝細胞に多く含まれる物質です。肝細胞がダメージを受けると血液中のASTの濃度が上昇するので、肝臓の障害を推定するために用いられます。他には心臓や腎臓などの臓器に多く存在しており、肝臓に特有の検査ではないので他の検査結果と合わせて評価します。

◎ALT
ALTは肝細胞の中に存在している物質です。ASTと同じく、肝臓の障害を推定するために用いられます。

◎ALP
ALPは肝臓や腎臓などのさまざまな細胞でつくられ、胆汁の中にも存在します。胆汁の流れが悪くなる(うっ滞)と血液中のALPの濃度が上昇します。

◎γGTP
γ-GTPの値はALPと同様に胆汁のうっ滞が起こったときに上昇します。アルコールの多飲などでも数値が上昇します。

◎ビリルビン
ビリルビンは古くなった赤血球が壊れたときに出てくる黄色い色素です。身体には不要な物質なので、肝臓で処理されて胆汁の中に排泄されます。肝臓の機能が低下したり胆汁の流れが悪くなると、血液の中のビリルビンの濃度が上昇し、黄疸症状(皮膚や白目が黄色くなる)が見られるようになります。

4. 画像検査

急性胆のう炎が疑われる人は、腹部エコー検査CT検査、MRI検査など受けて、急性胆のう炎に特徴的なサインがあるかどうかを調べます。

腹部エコー検査

腹部エコー検査は腹部超音波検査とも呼ばれ、超音波を使って身体の表面からお腹の中を調べる検査です。超音波の通りを良くするためのゼリーをお腹に塗り、プローブという機械をお腹に押し当てて検査を行います。プローブから出た超音波がお腹の中の臓器に当たってはね返り、そのはね返った超音波を検知した結果が白黒の画像としてディスプレイに表示されます。エコー検査は診察室で簡便に行うことができ、かつ放射線を用いないので放射線被曝の影響がないことが利点です。

急性胆のう炎では次のようなサインを確認します。

  • 胆のうが大きくふくらんでいる(短いところの幅が4cmを超える)
  • 胆のうの壁が厚くなっている(4mmを超える)
  • プローブで胆のうを押した時に痛みがある

これらのサインがそろっていると、急性胆のう炎の可能性がより高くなります。

CT検査

CT(computed tomography)検査は放射線を使って身体の断面像を映し出す画像検査です。撮影する画像の量が多いことから、同じように放射線を使うレントゲン検査と比較すると被曝量はやや多くなりますが、健康に影響がでるほどの量ではありません。

お腹のCT検査では、造影剤という薬を注射したうえで撮影する「造影CT検査」がよく行われます。造影剤は血流にのってお腹の中に広がっていきますが、お腹の中でも血液の多い部分にはより多くの造影剤が入っていきます。造影剤が多く入った部分はCT画像で白くコントラストがついて見えますので、病気の位置や広がり、周りの臓器との位置関係がよりはっきりと観察できます(ただし、造影剤にアレルギーがある人、腎臓の機能が低下している人、喘息がある人などでは造影剤が使用できません)。

急性胆のう炎では次のようなサインを確認します。

  • 胆のうが大きくふくらんでいる
  • 胆のうの壁が厚くなっている
  • 胆のうの周りに炎症が起こっている

CT検査ではこの他に、胆のうの壁が破れていないか(胆のう穿孔)、胆のうの周りにがたまっていないか(胆のう周囲膿瘍)を確認します。

MRI検査

MRI(magnetic resonance imaging)検査は磁気を利用して身体の断面像を映し出す画像検査です。放射線を使わないので被曝の影響はありませんが、身体の中に金属製品(ペースメーカーなど)が入っている人は検査ができない場合があります。

MRIでは磁気を利用してさまざまな種類の画像情報を得ることができます。体内の水分をより強調して表示するT2強調画像、胆管の全体像や胆のうの形態を表示するMRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)画像、がんや炎症のある部位を目立たせて表示する拡散強調画像などです。

急性胆のう炎でMRIを撮影する機会はあまり多くありませんが、胆のうが大きくふくらんで壁が厚くなっていることが確認できます。また、MRCP画像では総胆管結石がないかどうかを確認できます。

5. 急性胆のう炎の診断基準

急性胆のう炎では、特徴的な症状、血液検査、画像検査の結果を合わせて診断が行われます。専門的な内容ではありますが、お医者さんが参考しているガイドラインの診断基準について下記の表で説明します。

【急性胆のう炎の診断基準】

A:症状や身体診察で見られるサイン
 (1) 右上腹部の痛み、もしくは右上腹部を押した時の痛みがある (2) 右上腹部を圧迫しながら深呼吸をすると痛みで吸い込めないサイン(マーフィー徴候)がある
B:炎症のサイン
 (1) 発熱がある
 (2) 白血球数が上昇している
 (3) CRP値が上昇している
C:画像検査で見られるサイン
 胆のうが大きい、壁が厚い、炎症があるなど、急性胆のう炎に特徴的なサインがある

(文献1, 7を参考に作成)

A、B、Cの各項目で1つずつ当てはまるものがあれば急性胆のう炎と診断されます。

急性胆のう炎と診断されたら、次に重症度を判定します。以下の表のような基準に基づいて軽症、中等症、重症に分類されます。

【急性胆のう炎の重症度分類】

軽症 「中等症」「重症」の基準を満たさないもの
中等症 (1) 白血球数>18000/mm3
(2) 右上腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知する
(3) 症状が72時間以上持続する
(4) 壊疽性胆のう炎、胆のう周囲膿瘍、肝膿瘍、胆汁性腹膜炎、気腫性胆のう炎
重症 他の臓器に重篤なダメージが見られるもの
(1) 循環障害(ドパミンやノルアドレナリンを必要とする低血圧)
(2) 中枢神経障害(意識障害がある)
(3) 呼吸機能障害(PaO2/FiO2比 < 300)
(4) 腎機能障害(尿量減少、クレアチニン > 2.0mg/dL)
(5) 肝機能障害(PT−INR > 1.5)
(6) 血液凝固障害(血小板数 < 10万/mm3)

(文献1, 7を参考に作成)

軽症の胆のう炎では早い時期に手術を行うことが多いですが、重症や中等症の場合は全身の状態や炎症を落ちつけてから手術が行われます。

参考文献:

1. 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会. 「急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2018」, 医学図書出版, 2018
2. Yokoe M. et al. New diagnostic criteria and severity assessment of acute cholecystitis in revised Tokyo Guidelines. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2012 Sep;19(5):578-85.