発熱、黄疸、右の脇腹…胆嚢炎はどこに注目すれば発見できるのか?
急性胆嚢炎は発熱・黄疸(おうだん)・右の脇腹の痛みなどの症状があります。重症の場合などで手術が必要になります。素早い治療には的確な診断が大切です。症状や検査結果をもとに見分けられるかが検討されました。
急性胆嚢炎を診断する材料の調査
急性胆嚢炎の診断について、文献の調査により、症状や検査結果による判断の信頼性を調べた研究を紹介します。
この研究は、1965年から2016年3月までのデータベースを検索して、関係する研究報告を集めました。
検査の性能を評価するために、
感度とは、実際に病気がある人のうち、検査で陽性(病気の疑いあり)と判定される人の割合のことです。たとえば感度70%の検査なら、病気があっても30%は見逃されます。
特異度は、実際に病気がない人のうち、検査で陰性(病気の疑いとは言えない)と判定される人の割合です。特異度70%の検査なら、実際には病気がない人のうち30%が病気を疑われることになります。
感度も特異度も高いほうが良い検査です。一方だけでは良い検査とは言えません。何も調べないで全員を陽性と判定すれば感度100%・特異度0%です。逆に全員を陰性と判定すれば感度0%・特異度100%です。感度と特異度の両方をある程度満足させる検査が良い検査と言えます。
検査と同様に、症状などの特徴を判断材料とする場合も、感度と特異度を計算することができます。
超音波検査で感度86%、特異度71%
調査により関係する研究が見つかりました。報告されていた結果をまとめると次のようになりました。
- 発熱
- 感度31%-62%、特異度37%-74%
黄疸 - 感度11%-14%、特異度86%-99%
- 右上腹部痛
- 感度56%-93%、特異度0%-96%
ビリルビン 測定値上昇- 感度40%、特異度93%
超音波検査 - 感度86%、特異度71%
急性胆嚢炎には超音波検査か?
急性胆嚢炎の調べ方についての研究結果を紹介しました。
ここで挙げられた数字にはどんな意味合いがあるでしょうか。
右上腹部痛や超音波検査は感度が高いという結果でした。言い換えると見逃しが少なく、情報が少ない段階で調べるのに適していると言えます。
黄疸やビリルビンは特異度が高いという結果でした。言い換えると、ほかの原因では異常を示しにくく、もし黄疸・ビリルビン高値が見つかった場合は急性胆嚢炎があると見なせば間違いが少ないと言えます。
ただし黄疸とビリルビン高値はおおむね同義です。黄疸とは皮膚や白目が黄色くなる症状です。血液の中にビリルビンという色素が多くなることで黄色い色が見えます。胆嚢の中には大量のビリルビンが蓄えられていますが、胆嚢炎では血液にビリルビンが混ざり、黄疸が現れます。ビリルビン増加が軽度ならば見た目に黄疸がわかりにくいこともあります。
どの症状・検査も単独で診断を決めるほどの力はありません。症状や身体診察でなるべく多くの情報を集め、順序良く検査に進むことで診断がより確かになります。このためには患者が自分から症状をなるべく詳しく言って伝えることが大きな手がかりになります。
執筆者
History, Physical Examination, Laboratory Testing, and Emergency Department Ultrasonography for the Diagnosis of Acute Cholecystitis.
Acad Emerg Med. 2017 Mar.
[PMID: 27862628]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。