2017.07.31 | ニュース

胆石かと思ったら違うものが詰まっていた73歳女性

ブラジルから症例報告

from Case reports in medicine

胆石かと思ったら違うものが詰まっていた73歳女性の写真

成人が異物を飲み込んでも多くは自然に出て行きます。しかし、尖ったものが胃や腸に穴を開けたり、違う場所に移動する場合もあります。胆石によると思われた症状をきっかけに異物が発見された人の例が報告されました。

ブラジルの研究班が、総胆管から異物が見つかった73歳女性の例を専門誌『Case Reports in Medicine』に報告しました。

この女性は、前の月から軽い腹痛と食後の腹部の張りを感じていました。

診察では腹部に異常は見つかりませんでした。

超音波検査とMRIで総胆管に何らかの異常がある様子が見つかりました。

総胆管とは、肝臓・胆嚢と十二指腸をつないでいる管です。総胆管の中には胆汁が流れています。胆汁は肝臓で作られ、胆嚢で蓄えられて、十二指腸に向かって流れていきます。胆汁の成分が石のように固まったものが結石(胆石)です。

この人は総胆管結石症を疑われ、内視鏡治療が行われました。

十二指腸乳頭(総胆管の出口)のすぐ近くに憩室(腸の壁が飛び出したもの)がありました。

十二指腸乳頭を切開した結果、つまようじが取り出されました。

治療翌日に退院となりました。

 

研究班は考察として、つまようじが総胆管に入り込んだしくみを説明しようとしています。その中では十二指腸憩室が関わっていることが想定されています。つまり憩室につまようじが引っかかり、さらに憩室があったことで十二指腸乳頭に異物が入りやすくなり、つまようじを総胆管に進める方向の逆流が起こったのではないかという説明がなされています。

背景として、成人がつまようじを飲み込むことはよくあります。

異物を飲み込んでも内視鏡で取り除ける場合がほとんどで、取り除けなくても自然に出て行くこともあります。ただし異物が胃や腸に穴を開けてしまうこと(穿孔)には注意が必要です。特につまようじは穿孔のリスクが高いものです。1927年から2012年までの136例を分析した報告によれば、つまようじを飲み込んだ人の80%近くで穿孔が起こっています。つまようじが肝臓まで移動して肝膿瘍に至った例も15例以上報告されています。

診断と治療のために内視鏡、腹部超音波検査、X線写真、造影CT、大腸内視鏡などを使い、見つからなければ入院して観察するといった指針が提案されています。

この女性では穿孔はなく、内視鏡で無事につまようじを取り出せました。

 

総胆管からつまようじが見つかった人の例を紹介しました。珍しい事態ですが、大事に至らず済んで、本人も主治医もほっとしたことでしょう。

考察にも挙げられているとおり、子供だけでなく大人も異物を飲み込んでしまうことはあります。高齢の人で入れ歯を飲み込んでしまうことなどはとてもよくあります。

もしもの時は、気付いた時点で慌てず医療機関に行って相談してください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Toothpick inside the Common Bile Duct: A Case Report and Literature Review.

Case Rep Med. 2017

[PMID: 28356912]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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