2020.12.29 | コラム

【胆のう摘出術】胆のうを切除しても問題ないのかについて医学的に考えてみる

胆のうの働きや、胆のうがなくなった後の生活について解説します

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胆石症や胆のうがんが見つかった人では、胆のうを切除する「胆のう摘出術」を受けることがあります。しかし、胆のうをとることで身体に不具合が起きるのではないかと心配する人は多いと思います。
このコラムでは胆のうの働きを解説し、胆のうを切除した人にどのようなことが起こるのか、手術後は何に気をつければよいのかを説明します。

胆のうは何をする臓器か

胆のうはお腹の右上に位置し、肝臓と十二指腸をつなぐ胆管から枝分かれした袋状の臓器です。胆管は肝臓で作られる消化液(胆汁)を十二指腸に流すのが役割である一方で、食事のタイミングで多くの胆汁を流せるように貯蔵しておくのが胆のうの役割です。つまり、胆のうは胆汁の貯蔵庫である、と考えることができます。なお、胆汁には脂質やビタミン(脂溶性ビタミン)の消化吸収を助ける働きがあります。

 

胆のうをとる手術とは?

胆のうを切除する外科手術のことを「胆のう摘出術」と呼びます。下記のような病気になった人は、治療のために胆のう摘出術が必要になることがあります。

 

【胆嚢の摘出が必要になる病気の例】

 

どのような病状で胆のう摘出術が必要になるかは、それぞれの病気によって異なります。詳しくは各疾患のリンク先の記事も参考にしてください。

胆のう摘出術は全身麻酔で行われます。腹腔鏡を使って小さな傷で手術を行う「腹腔鏡下胆のう摘出術」と、10~20cm程度お腹を切開して手術を行う「開腹手術」があり、病気の状態やこれまでの持病などを参考に手術の方法が決められます。

手術ではまず胆のうにつながる血管を切り離し、次に胆のうと胆管をつなぐ「胆のう管」を切り離します。最後に肝臓にくっついている胆のうを慎重にはがし取って胆のう全体を身体の外に取り出します(外科手術の詳細な解説はこちらのページも参考にしてください)。

 

胆のうがなくなると何か問題が起こるのか

胆のうを切除すると胆汁を貯蔵するという胆のうの働きは失われます。そのため、食べ物の消化吸収に悪影響が出るのではないかと心配する人もいると思います。

 

消化吸収への影響

胆のうがなくなったとしても肝臓で作られる胆汁の総量は大きくは変化しません。十二指腸に流れ出る胆汁の1回量は少なくなりますが、その分胆汁を排出する回数が増加します。これまでの研究データでは、脂質やビタミンの消化吸収にはトータルで見て影響がないということが分かっています。

 

排便への影響

胆のう摘出術を受けてから1-2ヶ月の間は、排便回数が増えたり、軟便や下痢が見られることがあります。胆汁を排出する回数が増えることで便に含まれる水分量が増えるのが原因と考えられています。このような症状は一時的なもので、術後3ヶ月程度が経過すると排便の状況は元に戻ると言われています。また、軟便や下痢になったからといってうまく消化吸収ができていないわけではありませんので栄養面での心配もいりません。

 

胆のう切除後の生活について

ここまで説明したように、胆のう摘出術の後に体調が大きく変化することはありません。消化吸収への影響もほとんどありませんので、特別な食事制限は必要ないと考えてよいでしょう。節度ある量であればアルコールを摂取することも構いませんし、運動などの日常生活にも制限はありません。

ただし、発熱や強い腹痛などの症状が見られる場合には手術後の偶発症(合併症)が起こっている可能性がありますので、手術をした病院に問い合わせるようにしてください。

 

では、最初の問いに戻ります。「胆のうは切除しても問題ないのか?」でしたね。

この質問に対する答えは「胆のうを切除しても生活に問題ない」です。

 

臓器がなくなるのが怖くて手術を受ける決心がつかない人や、家族が胆のう摘出術を受けるけれど体調への影響が心配という人の不安が少しでも解消できれば幸いです。

参考文献

日本消化器病学会/編, 「胆石症診療ガイドライン2016」, 南江堂, 2016

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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