きゅうせいたんのうえん
急性胆のう炎
胆のう内で細菌が感染を起こしたり周囲の炎症が胆のうに波及することで、痛みや吐き気などの症状が起きる病気
13人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2022.09.19

急性胆のう炎とはどんな病気か

胆のうは胆汁という消化液を貯蔵し、食事のタイミングに合わせて消化管へ胆汁を流して消化吸収を助ける働きをしています。胆のうから胆汁が流れ出る道がふさがり、胆のうの内部に溜まった胆汁に細菌感染を起こしたものが胆のう炎(急性胆のう炎)です。急性胆のう炎では腹痛、発熱などの症状が起こります。抗菌薬ドレナージ炎症をおさえる治療を行うとともに、根本的な治療として外科手術で胆のうを切除します。

1. 急性胆のう炎とは?

胆のうはお腹の右寄りに位置し、胆汁という消化液を貯める貯蔵庫の役割をもつ臓器です。胆のうの中に細菌が感染して炎症が起きた状態を、急性胆のう炎といいます。

病気の詳しい成り立ちは次の通りです。

胆汁は肝臓で作られ、胆管という管を通って十二指腸に流れ込みます。胆管は真ん中あたりで枝分かれしていて、胆汁を貯めるために袋状の形をしている胆のうとつながっています。

急性胆のう炎と胆汁の流れ

胆のうと胆管をつなぐ細い管を「胆のう管」と呼びます。結石などで胆のう管が閉塞すると胆汁の流れが妨げられ、胆のう内に胆汁が溜まった状態になります(胆汁うっ滞)。胆のうは大きく腫れて膨らんだ風船のようになり、痛みを生じるようになります。胆汁うっ滞の状態が続くと、胆のう内に溜まった胆汁に大腸菌などの細菌が感染してさらに強い痛みや発熱を引き起こします。このように、胆のう内に溜まった胆汁に感染・炎症を引き起こしたものを急性胆のう炎と呼びます。

2. 急性胆のう炎の症状

胆のう炎は胆のうが腫れて炎症が起こった状態です。急性胆のう炎では主に次のような症状が起こります。

【急性胆のう炎の主な症状】

  • 腹痛:みぞおちから右の脇腹にかけての痛み
  • 発熱
  • 吐き気
  • 食欲不振

似たような症状が出る原因は他にもあるので、症状だけから急性胆のう炎と判断することは難しいです。詳しくはこちらのページでも説明しているので参考にしてください。

3. 急性胆のう炎の原因

胆のう炎の原因の90%以上は胆のう結石(いわゆる胆石)です。胆石が胆のう管にはさまって胆汁の流れを妨げることで急性胆のう炎が起こります。胆のう結石以外の原因による胆のう炎も10%未満と少ないながらあり、無石胆のう炎と呼ばれます。無石胆のう炎の原因は以下のようなものです。

  • 胆のう管が閉塞するもの:胆のう腫瘍胆のうがん、胆のう管がん
  • 胆のうの血流が悪くなるもの:動脈硬化
  • 胆のうの機能が低下して胆汁が濃縮するもの:寝たきり状態、長期絶食、重症外傷、重症熱傷、大手術後

無石胆のう炎は多くはありませんが、具合の悪い人に起こりやすい病気であり、胆石による胆のう炎に比べると治療後の経過がよくないといわれています。

4. 急性胆のう炎の検査

急性胆のう炎が疑われた人は以下のような検査を受けます。

  • 問診、身体診察
  • 血液検査
  • 画像検査:腹部エコー検査CT検査、MRI検査

急性胆のう炎では、胆のうがあるお腹の右上あたりを押すと痛みが強くなります(右上腹部の圧痛)。また、右上腹部を押した状態で深呼吸をしようとすると痛みで息が十分に吸い込めなくなります〔Murphy’s sign(マーフィー徴候)〕。お医者さんの診察では、急性胆のう炎に特徴的なこれらのサインが見られるかどうかが確認されます。

血液検査では、炎症反応(白血球数、CRPなど)、肝胆道系酵素(AST、ALT、γGTP、ALP、ビリルビンなど)、腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)を調べます。

どの程度の炎症が起こっているのか、胆のうがんがないかなどを調べることが目的です。

急性胆のう炎では肝胆道系酵素の値はほとんど上昇しませんが、これらの数値が大きく上昇している場合には急性胆管炎が起こっている可能性を考えなければなりません。胆のうと胆管は隣り合っている臓器ですが、急性胆のう炎と急性胆管炎では治療法が大きく異なるので区別する必要があります。

画像検査ではまず腹部エコー検査を行います。胆のうが腫れていて、炎症のために胆のうの壁が厚くなっているのが急性胆のう炎に特徴的なサインです。また、胆のう炎の原因となる胆のう結石胆のうがんがないかどうかを調べることができます。CT検査ではこれに加えて、胆のうが破れていないか(胆のう穿孔、胆汁性腹膜炎)、胆のうの周りにがたまっていないか(胆のう周囲膿瘍)を調べます。病状によっては追加でMRI検査を行うこともあります(なお、診断基準については、こちらのページを参考にしてください)。

5. 急性胆のう炎の治療

急性胆のう炎の根本的な治療は胆のうを摘出する手術です。治療は以下のように段階的に進められます。

1. 抗菌薬と痛み止め

初期治療では食事を止め、抗菌薬と痛み止めを使って症状を落ち着かせます。

2. ドレナージ

初期治療で炎症がおさまらない人や重症胆のう炎の人は、胆のう内の感染した胆汁を身体の外に排出する治療(ドレナージ)が必要になります。ドレナージの方法には2種類あり、右の脇腹から胆のうに向かって針を刺してチューブを差し込む方法(経皮経肝胆のうドレナージ:PTGBD)と、内視鏡を使って鼻から十二指腸を経由して胆のう内までチューブを差し込む方法(経鼻胆のうドレナージ:ENGBD)があります。

3. 外科手術

胆のう炎の根本的な治療法は外科手術(胆のう摘出術)です。もともと健康で持病がない人は早い段階で手術を行うことが望ましいといわれています。持病があったり全身麻酔のリスクが高い人では、抗菌薬やドレナージで炎症を落ち着かせたあとに手術を行います。

6. 胆のうを切除した後の日常生活

胆のうを切除すると、食べ物の消化吸収に影響が出るのではないかと心配になるかもしれません。胆のうがなくなっても肝臓で作られる胆汁の量は変化しないので、消化吸収には影響がありません。手術の影響で一時的に下痢や軟便が増える人もいますが、ほとんどの人は術後3ヶ月程度たつと元に戻ると言われています。

手術の後も特別な食事制限は必要ありません。健康のためには栄養バランスのとれた食事をとるように心がけてください。また、節度ある量であれば飲酒をしても構いません。飲食以外の日常生活や運動についても特別な制限はありません。

参考文献

1. 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会. 「急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2018」, 医学図書出版, 2018
2. 日本消化器病学会/編, 「胆石症診療ガイドライン2016」, 南江堂, 2016